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第70話

 飛んで狩られる春の飛竜。仕留めたワイバーンはスタンバイしていた皆によってあっという間に解体された。まず頭部を外し全身の鱗を剥く、両足は爪を取り生ハムに、羽は翼膜と骨で切り外し全身の皮も剥いて内臓はマリー達が研究、薬品加工にまわされた。ただし腸は使いにくい部位の肉を全てミンチにして香辛料と混ぜ、腸詰。ソーセージにする、前回も作ったがこれも美味しかった。今回はガンプ達も居ることだし骨もフル活用して一切無駄にせずに使い切る予定だ、理不尽に狩ったのだからそれくらいはしないと供養にならないだろう。

「ソシエ、ソーナ、調子はどう?」

「あ、主様、順調ですよ! 今回も期待しててください、美味しく仕上げますよぉ!」

 考えてみると燻製所を作る切っ掛けがワイバーンだったせいか結構大型になってしまった。この二人しか作る技術がないから任せっきりだが誰かヘルプによこした方がいいのかな?

「なんか手伝いとかいる?」

「力仕事の時に主様や蜘蛛さん達が手伝ってくれているので大丈夫ですよ、二人で十分回せます!」

「了解、何かあったらいつでも言ってね」

「はい!」

 燻製系は保存が利くし助かっている、二人が技術を持っててホントよかった。魔法で冷凍室が作れるから保存に関しては初期からそれほど困ってはいなかったけど常温で保存できるし美味しいから重宝している、ガレオンが来てから更に需要が増した気がする。

「ワン!」

「セッカ、今日はのんびりだね」

 燻製所の外でセッカが待っていた。今日は俺について来てくれるらしい、そう言えば今年は子供を作らないようでよく出歩いている。というよりロクロ達に狩りや戦い方などを教えているようだった、イチカ達の時より少し成長が遅い気がするがなにか差があるのだろうか? そう言えば初めて会った時には既に生まれてたんだよなぁ。

「畑もとりあえず終わったしちょっと暇になってきたね」

 セッカを撫でながらちょっと思ったけど、やっぱ娯楽は必要かな? 皆何かしらやってるから気にしてなかったけど、そういうのは大事だよね……と言ってもロクロ達と遊んだり皆それなりに暇つぶししてるんだよなぁ。戦闘訓練が多いのかな?

「主様~」

「サラ、どうしたの?」

「お客様です」

 え、またなんか来たの?

「移住希望者?」

「いえ、魔王国からの使者だそうです」

 意外なお客さんだった。何の用だろ? そう言えば使者とか話し合いに来た国の人って初めてかもしれない。今まで喧嘩は売られてたけど……

「とりあえず行こうか」

 俺はセッカを連れて入り口の方へと向かった。ここには基本野生の獣などが寄ってこないから柵などは特に設置していなかった、でも建築とかしているうちに自然と入り口っぽい場所ができていていつからか定着してしまった、お客さんもそこから来るしね。

「貴方が、魔竜領域の主ヴリトラ様でいらっしゃいますか?」

 入り口には黒い口髭が特徴的な四十代くらい? の男性が立っていた。

「そうですよ、貴方は?」

「申し遅れました。私はドクトル、この度は魔王様の使いとしてまいりました」

 そう言うと丁寧にお辞儀してみせた。それはそうとこの人はセッカを見ても動じてない、初見でこの反応は初めてかも?

「ドクトル殿、遥々よくぞいらっしゃいました。歓迎いたします、ところでどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」

 何の理由もなしにここに来るとか普通にありえないよね、ただでさえいろいろやらかしてる気がするし。

「この度は貴方様と友好を結びたく参りました。それと、我が領内に現れたワイバーン討伐の感謝に」

 あ、あの山魔王領だった……勝手に侵入して狩ってきちゃったのか。

「それには及びません、こちらも勝手にそちらの領内に侵入してしまったのですし」

「あの規模のワイバーンには相当な兵力が必要となります。それを倒していただいたのです、感謝いたします」

 前に雑談で少し聞いたのだが、ワイバーンは本来危険度の高い強力な生物でドラゴンには及ばない下位種ではあるが現れると甚大な被害が出ると。帝国もそういう理由から強力な兵器としてワイバーンを使役したかったのだとか。

「そういうことでしたか。では立ち話もなんですからこちらへ」

 俺はドクトルをガレオンの食堂へと連れて行った。ここはこの前完成したばかりで、食堂兼宴会場として広く作っているからこういうお客様をおもてなしするなら一番いい場所だろう。

「それでは改めまして、感謝を。つきましてはお礼の品をお持ちしましたのでお受け取りください」

 そう言うとドクトルは指をパチン! と鳴らして見せた。するとテーブルの上にいろいろな物が出てく出てくる、思ってたよりも量がすごい。

「ヴリトラ様は金品よりもこういう物の方が好みだと伺っておりますので、我が国での特産品をお持ちしました。生産用に苗や種などもありますのでどうぞお納めください」

 この匂い、香辛料だ。ガレオンが持ってきていた物もあるし見たことないのも結構ある。

「これらをお好みで調合して野菜や肉と合わせて煮ると辛みの効いた食欲をそそる我が国名物のカリーが作れます。パンと一緒に食べると美味しいですよ」

 あ、これは異世界定番。誰もが食べたり作ったりするカレーだ! たぶんルーになるスパイスが一通りそろってるんだろう。あとタマネギもある! そういえばネギはうちになかったなぁ。これは嬉しい!

「ガレオン、カリーって作れる?」

「む? レシピは覚えておるぞ、ただ作り手の好みが強く出る料理なのでなかなか難しいとこがあるが」

「あ、じゃあ後で俺の知ってること教えるから作ってみてよ。せっかく一通り材料貰ったんだし試してみよう」

「心得た! それでは我は下ごしらえを始めようか。タマネギを頂いても?」

「お願い!」

 ガレオンはタマネギを持って調理場へと入って行った。三年目にしてカレーが食べれるのはいいことだ、シチューと違ってスパイス系がどこにあるかわからなかったから作れなかったんだよね。魔王国の特産品だったとは……

「ドクトル殿も召し上がって行ってください」

「ありがとうございます」

 敵意が無いなら最初から拒絶なんてしない、仲良くできるならそれに越したことは無いのだから。

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