第63話
冬になるとやることが一気に無くなる気がする。家畜の世話はあるがホリィン達と手の空いた人、ニコとミミだけでも回っている。生産している作物も減らしているからそっちも問題ないし一年中大騒ぎというか忙しそうに回っている鍛冶場と酒造所は専門外で手伝えない、てかわからない!
「主よ、熊肉ポットパイとサツマイモのスイートポテトを作ってみたぞ! 感想を聞かせてくれ!」
温泉に入ってのんびりする位しかなかった俺はガレオンの料理の試食をしていた。ちなみに他にも暇な娘が何人か来ている。
「あ、美味しい。熊肉って臭いって言うのにぜんぜん臭わないね」
「ふふふ、我の持参した魔王国で生産されているスパイスや香料を使って臭いを消したのだ。まぁ在庫に限りがあるからそんなに作れないのだがな」
そう言えばスパイスとか香料、ハーブみたいなの作ってなかったなぁ。魔王領にも行ったことないし今度行ってみようかなぁ、調味料は多い方がいいし。
「そっか、スパイスかぁ……ガレオン、種とか苗みたいな育てられる奴はある? 春からになるけどここで育てて量産しよう」
「おぉ! それはありがたい、いくつか育てられる物があるから是非お願いしたい!」
「おっけ~どのくらい作るかは任せるから分けといて」
「承知した!」
ガレオンは見た目は百戦錬磨の獅子という姿なのに中身は繊細な作業も得意な本物の料理人なのだ。彼の腕前のお陰でここの食事は一気にレベルが上がったと言える。現在彼専用の食堂を建設する予定も考えている、ここまでやってくれるなら本格的な調理場を作ってあげたくなるのだ。
「スイートポテトも美味しいです~」
「甘味が多いのはいいことです!」
「前に作ってくれたアイスとかプリンも食べたいですね」
女性陣はやはり甘いものが好きらしい。ガレオンの何でも作ってみせるところはホントにすごい、最近はクリームを安定して作りたいと研究している。ちょっと前にクレープの話をしたらこれには無限の可能性がある! と最近よく研究している。
「そういえば、ルーフェ」
「はい、なんですか、ご主人様?」
「ここってなんで終焉の森とか呼ばれてるの?」
場の空気が変わった気がする。何をいまさらという雰囲気が……
「えっと、知らずに住んでたんですか?」
「まったく」
「二年も?」
「イエス」
あれ? ひょっとして一般常識? 知らないの俺だけ?
「もしかして、皆知ってるの?」
「結構有名な昔話ですよ」
「そうだったのね……」
「では、とりあえず簡単にこの私が説明いたしますね」
「さすがルーフェさん頼りになる!」
「昔、この世界には動く大地、と呼ばれる超巨大な神獣ユグドラシルという化け物が存在していたんです。この場所は元々中央に山が立っているクレーター型の山脈だったんです」
つまりここには元々森は無くてドーナッツ状のクレーターだったのね。
「神獣ユグドラシルは生命の化身と呼ばれるほど生命力が溢れていました。しかし神獣は寿命を迎えたのです、最後の死ぬ場所としてここを選びクレーター内にその巨体を埋めて天寿を全うしたのです」
なるほど、この森はユグドラシルの遺体が元になってるのね。
「しかし生命力の塊であったユグドラシルの体は命を落としても活性化し続けています。それがこの森の作物が異常に活性化して育つ大きな理由になると思います」
「そうだったのね、不思議に思ってた作物の生産効率の理由がわかってちょっと納得した」
「これ、昔話で結構有名なんですけど知らなかったんですね」
「まったく! でもそんな恩恵あるなら是非ともご相伴にあずからねばね」
「ご主人様のマナ吸収効率のいい鱗の肥料と合わさっておかしい効果を出してますね」
ドラゴンの素材は万能だし、神獣の加護もある。偶然ではあったがいい立地だ、来年からも全力で活かさなければ。
「まぁ、タカトは知識に偏りがあるから。不思議なことばっか知ってるのに有名なお話とか全然なんだよね」
「アズハさん、それ褒めてますか?」
「褒めてるよ~」
アズハが可愛く笑っているからいいかなぁ。
「とりあえず今後の事もあるし冬のうちに考えなきゃなぁ」
「まだ何か作るんですか?」
「ん~この仮宿をばらして、ガレオンの専属食堂と本格的な宿屋にしようかなって」
「それなら仮宿はそのままに宿屋として運用して、ガレオンさん用の食堂だけ新しく作りましょう。宿の近くがいいですね、宴会場も設置してそちらにもにも料理持ってきて貰えるようにしたいですね」
セナと今後の建築の予定を考えているが着手は雪が落ち着いてからになるだろうしヘラクス達が起きてこないとペースもあんまりよくないんだよね。
「考えなきゃいけないことが多い……」
「がんばれ~」
「手伝えることは頑張りますから!」
ほんとにいい娘達だ、皆のためにもいろいろ考えなきゃいけないんだなぁ。
「おう、皆揃ってるな。米からの酒ができたから試飲してくれねぇか」
「お、いいね!」
「ならばマヨネーズと軽くサラダでも作るか。生ハムやウィンナー、チーズも用意するぞ!」
「やったー!」
こうして俺達は試飲と試食からのちょっとした宴会をたのしむのであったのだが、騒ぎを聞きつけた皆が集まってきてそのまま宴会は更に大きくなっていったのだった。




