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第54話

 終焉の森、そこに住まう生き物は桁違いの強さを誇り外からの侵入を拒絶する大陸中央の領域。少し前、ここに魔竜が住みついたと聞いた。その魔竜は二つの国に致命的な支障を与えた危険な存在、しかし周囲の領地には庇護を与え繁栄を約束するという。

「北の領地では守護竜と呼ばれているようだが所詮ドラゴン、気まぐれで危険な存在だ。何としても討伐するぞ」

 派手な装飾の付いた白銀に煌めく甲冑を纏う青年は先頭を歩きながらドラゴン退治に絶対の自信を持っている。

「勇者様の力があれば勝利は間違いないでしょう。ドラゴンといえど好き勝手動いてるのを見るにたいしたものではないでしょうしね」

 戦闘の青年の後ろで馬に跨り好き勝手話している。衣服もなんか高級で偉そうだ。

「宰相様までついて来てよかったんですか?」

 戦闘の少年の隣を歩く弓を背負った女性、多分仲間のレンジャーという感じだろうか。

「私も戦いには自信がありますし、ドラゴンの住処を奪えばこの大陸中央に拠点を築けるかもしれません。これは我が王国にとってとてつもない利益になります」

「元々は珍しいリザードマンの捕獲だったのにそれが逃げてドラゴン退治ってか? まったく退屈しないねぇ」

 巨大な斧を背負ったガタイのいい男性が腕を回しながら楽しそうに話している。

「強大な名立たるドラゴンは自身の住処で余裕もって動かぬもの、好き勝手に動き回っていることを考えるにたいしたドラゴンではないでしょう。しかしドラゴンはドラゴン、竜殺しの名誉は勇者様の名と共に大陸に響き渡るでしょう」

「俺は勇者として国を守るだけだ、今までもたくさんの化け物を倒してきたんだ。今回だって倒して見せるさ!」

「流石勇者様です。それに今回は国王様のお陰でこのような大規模な軍勢をそろえることができました、負けることなどありえませぬ」

 確かに先頭の勇者パーティっぽい人達の他、後ろにすごい数の兵士がついて来ている。こんだけいたら問題なく終焉の森も越えられるんだろうなぁ。

「行軍開始からしばらく経つ、距離的にもそろそろ魔竜の住処ですよ」

「皆、気を引き締めろ!」

「まって、誰かいる!」

 女レンジャーの声で勇者一団は正面の人影に気づき停止した。冒険者だろうか? こんな危険な森の中に一人というのもおかしなことだが正面に居るのはたった一人だった。

「お前は誰だっ!」

 得体のしれない人物に緊張が走る。どうやら男のようだ、剣を腰に装備しているようだが衣服は布装備、とてもじゃないがこの森を一人で抜けれるような装備ではない。だからこそ違和感を感じるし怪しい、一気に緊張が走る。

「お前が勇者? 突然で申し訳ないが一手お手合わせをお願いします」

「何を馬鹿な、我々はこれから大事な用事がある貴様のような木っ端の相手などしてられぬ」

 宰相とか呼ばれてた奴がそう言っているが関係ない。

「問答無用だ!」

 俺は刀を抜刀し居合の如く勇者を斬りつける。いろいろ言ってくれてたし、ちょっとだけ遊んでもらおう。

「くっ、やむおえん! 皆、行くぞ!」

 俺の刀をギリギリで躱して勇者は剣を抜く、しかしその剣は刀身がない。見えない剣なのかな?

「はぁぁぁぁぁ! 抜刀! オーラシオン!!」

 勇者がそう叫ぶと光るオーラのような刀身が現れた。なんというかあれだ、たぶん魔法のライトセーバーとかビームソードみたいな剣なんだと思う。

「せぃ!」

 勇者は思い切り踏む込み一撃を撃ってくる。切れ味はいいらしく掠めた髪の端が空を舞う、確かにこの剣ならドラゴンにもダメージを与えられそうかな。

「どぉりゃあぁぁぁぁ!」

 勇者の攻撃を避けると間髪入れずに大男が斧を振り上げ一気に踏み込んできた。正直勇者以外にはあんま興味ないんだよね……

「ぐはっ!?」

 俺は大男の腹部に左手の手刀を突き刺した。なんかブヨブヨした気持ち悪い感触がするからそのまま突き飛ばす。まず一人かな。

「こいつぅ!」

 レンジャーが弓を構えて狙い撃つ、でも残念しっかり見えてます。矢を回避しながら刀を頭上に放り投げ、炎の弾丸を生成して投げつける。

「うっ!?」

 レンジャーは炎の弾丸を避けて見せたがその場に崩れ落ちた。何が起きたかわからないという顔をしているがよくよく見ると太ももに投げナイフが突き刺さっていた。魔法は囮、本命はこっちだったのだ。

「貴様ぁ!」

 勇者は怒って斬りかかってくる。これまでどのような戦いをしてきたか知らないけど、怒るのが早すぎない? もうちょっと冷静に戦わないと……

「何なのだあの男……おい、全員で取り囲みあの男を殺せ……どうした? 早くうご、かぬ、か?」

 勇者の苦戦にだいぶイライラしていたらしい宰相様は命令を出す。しかし誰も動かない、不思議に思い振り向くとそこには誰一人兵士は居なかった。正確には立っていなかったのだ。

「これは、いったい!?」

「ご主人様の邪魔をしようだなんて無粋な人間ですね。まぁこんな雑魚ばっかじゃ相手になる資格すらございませんけど」

「貴様は帝国の、白亜の終炎……なぜこんなところに、堕天したというのは本当だったようだな」

 ルーフェは見下すように笑い更に続ける。

「すみません、貴方が何言ってるかわからないの」

 この時宰相は、自分の声が周囲に聞こえていなかったことに初めて気づいた。

「サイレンス、沈黙の魔法は初めてでした? 全く気付きませんでしたもんね」

 宰相は絶望を感じている。目下に広がる光景に、兵士達の亡骸、そして自分達を囲む二人の堕天使、そして巨大な蜘蛛に狼、グリフォンまで居る。全て災害級と呼ばれる桁外れの化け物である。あれだけ居た兵士が音もなく全滅していた、この状況に絶望を感じない人間など居ない。

「ゆ、勇者様っお助けをっ……」

 自身の声が周囲に聞こえないのも忘れいつの間にか糸で拘束され動けなくなった馬からも転げ落ちながらも最後の望みである勇者に助けをこう。

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 宰相の目の前で勇者の右腕が吹き飛んだ、持っていた剣も光を失いカラカラと転がっていく。頭が真っ白になって行く、そう言う顔をしているのが一目でわかる。

「セッカ、イチカ、シロー、ヨゾラ食べちゃダメだよ、蜘蛛さんズも、人間なんて食べてもロクなもんじゃない」

「ワン!」

「ピャ!」

 実際俺も人間は噛み殺さないしね、絶対不味いもん。

「たまにはこういうのもいいでしょ、別に家で待っててくれてもいいんだけどさ」

「時々は戦わないと腕が鈍ってしまいます」

 セッカ達もたまにはいいとこ見せたいという顔をしている、いつも狩りとかで活躍してくれてるんだけどなぁ。

「さてと、お客様を放置してるのも悪いしそろそろ終わらせなきゃね」

 俺はドラゴンモードへと姿を変える。まぁ意識のある連中はすごい面白い顔するよね。討伐しようとしてたドラゴンからやってきちゃったんだから。俺は彼らにどう映ってるんだろう? 絶望、悪夢? 間違いなくそっち系だろう、だって顔がそうい顔してるし。

「それじゃあ侵略者諸君、その報いをうけるといい」

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