第53話
「ザウさん、リザードマンさん達の居住区ですけど問題は無いですか?」
「はい、とても快適で感謝しております」
「何か問題があったら言ってくださいね!」
リザードマン達がやってきてしばらく経った。彼らは狩猟民族で主に魚がメインだったらしいが種族としては雑食で野菜や肉も問題なく食べれるらしく安心した。沼地を好んで生活していたとのことだったので田んぼと溜池の魚、カエルの解体などの面倒を見てもらうことになった。
「正直元々居た集落よりも遥かに快適で、繁殖もできればと考えております」
「主様もそこら辺は好きにしてくれて構わないと言っておりましたし大丈夫ですよ」
「ホント感謝しかないですね」
彼らは基本卵生でザウの娘二人は特別例外だったらしい。本来は水辺の柔らかい土壌に卵を複数産卵し孵化を待つらしいのだが、姉妹は胎生で生まれてきた。その負担が大きすぎて母親は産んですぐに命を落としてしまったらしい、ザウにとっては大事な娘であり妻との絆、思い出で何に変えても守ると誓った存在らしい。尊敬できるお父さんだと思う。
「主様、ホントにありがとうございます」
「主様、あたし達を受け入れてくれて感謝します」
水色の髪に青い鱗の方が姉でアイナ・ジェダ。赤い髪に暗めの赤い鱗が妹でフラム・ジェダといい、部族の名前っぽくないなと思ったらどうやら大いなる祖サラマンドラの得意としていたとされる技から名付けられたらしい。
「アイナとフラムは慣れた?」
「はい! でも、私達だけ別の家を作ってもらってよかったんでしょうか?」
「別に皆と一緒で特別扱いしなくても……」
「二人は人間に近いみたいだからね、こっちの方が暮らしやすいと思って、だから気にしないでいいよ」
アイナとフラムは早い話がアルやアーシラみたいな特殊個体であり通常種とは少し違う。アル達と生活していて気づいたのだが通常種と同じような生活よりも人としてこっち側に合わせたほうが暮らしやすそうなのだ。だから彼女達にも同じように対応した、ちなみに他のリザードマン達は夫婦や家族で別れて集落に近い家を建てて暮らしてもらっている。生活の為に土を掘り返して溜池と連結、水辺も作ったし産卵して繁殖できる環境も作り上げたのだ。
「あ、ホリィンが後で沼ブタについて聞きたいことがあるって言ってたから誰か行ってもらっていい?」
「あ、なら私が行きます!」
沼ブタ、リザードマン達がここに来る時荷物を載せていたブタのようなバクのようにも見える牛位の大きさの獣で全部で四頭いる。基本的には牛や豚と同じように飼育できるようだったのでそのままホリィン達にお願いしてしまったのだ。そして俺はどこかでこいつらを見たことある気がしてずっと考えて動画を漁ってついに思い出した、沼ブタは地球の古代生物象の祖先フィオミアそっくりなのだ! ゲームで見たことあったわけだ。
「主様、あたしお願いしたいことがあるんだけど」
「なに?」
アイナが牧場に向かった後、フラムにふとお願いがあると言われた。
「あたしに戦い方を教えてくれないか? 狩猟じゃなく、姉ちゃん達を守れるようなホントの戦いを……」
気持ちはわかるし、多分フラムの性格は活発なお転婆系だと思う。そして家族や仲間思いの優しい娘。
「ここに居る以上別に戦う必要はないんだよ?」
むしろ農作物の世話とか覚えてくれた方がありがたいです。
「それでも、何かの時に役に立つかもしれないし!」
あんまりこういうやりたいっていう願いを否定するのも嫌なんだよね……どうしよう。
「農業優先にしてくれるなら?」
「それで構わない!」
あ、嬉しそうだ。
「じゃあいい相手を紹介してあげる、ついて来て」
「おう!」
向かったのは鍛冶場裏の広場だ、ここは戦闘訓練やガンプ達の作った武器の試し斬りに使われている。
「シンシア、ちょっといい?」
「はい、主様なんでしょうか?」
最近よくシンシアがお願いされていろんな武器の試し斬りをここでやっているのだ。彼女戦妖精というだけあってあらゆる武器を使いこなして見せる凄腕なのである。俺が言うのもあれだけどここは世間一般から見る理不尽が複数居るから霞みがちだけど、間違いなく彼女も凄腕なのだ。
「フラムに戦い方を教えてあげて欲しいんだ、武器の扱いや兵法とかはシンシアの方が詳しいし」
俺だと理不尽に叩き潰すだけなのでそう言うことは教えてあげれないのだ、地球でも戦国とか三国志とかそういう本全然読まなかったし……
「いいですよ、私も一人だと味気なかったので嬉しいです」
そう言うとシンシアはフラムに手を差し出した。
「師匠! これからよろしくお願いします!!」
フラムはその手をガシッと握り嬉しそうに尻尾を振っていた。なんだろ、こう感情が態度に溢れてくる娘達ってすごくかわいいよね。
「じゃあ後はお願いね!」
「はい!」
「主様、ありがとうございます!」
今日も平和だし皆活き活きしていて俺も嬉しいな。やっぱ家族は大切なんだなって実感する、何が何でも守りたいって気持ちもね。
「ご主人様~」
「ルーフェ、そろそろ?」
「はい、頃合いです」
それでは、この平和を脅かす害獣狩りに行こうとしますかね。




