第50話
「ご主人様おはようございます!」
ものすごくキラキラした笑顔で朝の挨拶をしてくるルーフェ、さっきドアノックで目が覚めて出てみたら宿の女将さんに笑顔で昨日はお楽しみでしたね! とか言われながらお湯とタオルを渡された。まったくもって余計なお世話だ……
「おはよ、ルーフェも使うでしょ?」
「はい!」
二人して体を綺麗に拭き、服を着る。俺の場合は魔法だから一瞬で着れるけど。ルーフェが見せつけるように着替えてくるのがいろんな意味で困った……ものすごく楽しんでるようだけど。
「今日は買い物してさっさと帰るよ、いい?」
「もちろんです、昨日たくさん頂きましたので!」
何をだよ……
「昨日あんなに酔っぱらってたのにすっかり抜けてるのね」
「ご主人様だって平気な顔してますし!」
確かにお酒を飲んだ時の気持ちよさも感じてたし美味しかった、ドラゴンの体のお陰か酔いに強くなってるのかもしれない。朝起きたらすっかり酔いも抜けてスッキリしている。
「朝食はどこかでとろうか、準備できたら行くよ」
「はい!」
宿屋の女将さんすごくいい笑顔で送り出してくれた……なんなんだろ。
「あ、タカト様、市場やってますよ! 見ていきましょ!」
丁度今日開催していたようだ、これは一日で帰らなくてよかった。俺達はテキトウな店で朝食を済ませて早速市場を見て回ることにした。
「珍しい形の剣ですね」
市場では様々な国々から特産品を持った商人達が集まっていてすごい賑わいを見せている。ルーフェも早速興味を引くものを見つけたようだ。
「刀かな?」
「お、旦那さん物知りだねぇ! 東の国特有の剣でね、鋼を何度も打ち返して鍛え上げられた切れ味のいい自慢の一品だよ!」
紹介された物は完全に日本刀という感じだ、やはり地球でもこっちでも似たような技術を生み出す天才というものは居るらしい。
「買う?」
「はい、二振りいただきます。これと、こっちのがいいですね」
「まいどありぃ!」
ルーフェは長刀二振りをそのまま購入した。ちなみにエマルタではどの国の通貨も同価値として扱ってくれるらしいので助かっている、仲が悪い国同士だと通貨自体が使えないなどザラにあるらしい。
「ガンプさん達に同じのを研究してもらえればもっといい物が作れそうです」
あ、気に入ったんじゃなくて研究用のベースに買ったのね。
「新しい技術だろうし喜びそうだね」
「はい! さ、次も見ていきましょ!」
いろいろ見ているが武器や防具、日用品に特産の作物や何かの肉。ホントにたくさんの店が並んでいる。
「なぁ、聞いたか?」
「なにをだよ」
「ギルドに黒竜の鱗が売られたらしいぞ」
「あぁ知ってるぜ、バンダール領から流れてきたんだってな」
「ドラゴン装備なんて夢のまた夢だぞ、どうするんだろうな?」
「他の国に販売するらしいぜ」
「確かに帝国あたりなら大金つぎ込んででも欲しがりそうだわな!」
あ、俺の鱗すごく話題になってるみたい。むやみにばら撒きすぎたかなぁ……
「ドラゴンの鱗は最高級の素材ですけどその分加工も難しい、そうとうな腕の技術者が必要ですけどそうそう居ませんし宝の持ち腐れになるかと」
ルーフェはこういう戦闘に関することは冷静に分析するんだよなぁ。かっこいいとかわいいが混ざっているようで極端な感じなのよね。
「そういえばアレクロン王国も勇者召喚したらしいぜ」
「あぁ、例のドラゴン様に王城どころか主力の魔獣を皆殺しにされてそうとう焦ったらしいぜ」
「国王が病んじまって今じゃ宰相が好き勝手らしい」
「おかげで魔王国も気が貼ってるなぁ」
「あそこは多種族国家だし領土も広い、狙われやすいからなぁ魔王様も大変だわ」
この世界は魔王の侵略を力を合わせて撃退しましょうというRPGゲームのノリではなく一つの国として共存しているようだ。ただ種族問題などで仲は良くないようだ。
「意外とこっちの方が情報も入ってくるね」
「人が多いですからね、しかもいろんな国から集まっていますし」
召喚した勇者をどう扱うのか気にはなるけど、喧嘩さえ売ってこなければ放置でいいかな。
「タカト様、主目的の物が並んでいますよ!」
そう言われて前を見ると沢山の作物が並んでいた、確かに今回はうちで育てられる物を増やしたいというのが目的だ。いい感じのがあるといいな。
「スイカにメロンこれは種から育てられるね」
「甘味としてもいいですしね」
スイカもメロンもそろそろ時期が終わりそうな気がするけど結構な量が出てるなぁ、近くで栽培されてるのかな?
「それにニンニク、カボチャもいけそうですね」
「あれは、レモンがなんか多い気がする」
なんだか見せを見て歩いているとやたらとレモンが多い気がする、体を動かすと酸っぱいの欲しくなるし冒険者的には需要があるんだろうけどすごい量だ。
「そりゃ兄ちゃん、ここの北側の土地にレモンの果樹園があるんだよ」
「へぇ、結構広い感じなんですか?」
「あぁ、ここら辺ってミードが主酒だろ? レモンと相性がいいからな」
なるほど、生産が多いなら後で木の方を買っても良さそうかなぁ。
「ありがと、少し貰うよ」
「まいど!」
情報をくれたんだ、買わないで去るのは悪いだろ。
「タカト様荷車用意しましたのでこれ使いましょ!」
「ありがと、助かるよ」
実際スイカとメロンは大きいからちょっと困っていた、ルーフェさんはホント優秀だ。ついでだから他の屋台も見て行こう!
「いいねぇ」
俺は屋台に出ていた暗器に興味が行った。ダートナイフと呼ばれる投擲刃だ、仕込み武器ってロマンがあっていいなぁ。てか手裏剣っぽいのもある! 買っちゃおう!
「ルーフェ、何か欲しいものあった?」
「は~い!」
彼女はミードの入った大瓶をいくつか抱えて戻ってきていた。確かにお酒は欲しいけど買い過ぎじゃない?
「こんなもんでいいかな?」
「十分楽しみました!」
結構な量買ってしまったがそれでも荷車一つに収まったし大丈夫でしょ。
「最後に北の方によってもいい?」
「はい、多分問題ない値段だと思います。早速行きましょう」
あ、何がしたいかもうわかっておられる。さすがです。
「おじさん!」
買い物を済ませた俺達は荷車を引きながらエマルタ北部にあるレモンの果樹園にやってきた。
「なんだ? 冒険者が何のようだ?」
「レモンの木を何本か売ってほしくてさ、いい?」
「なんで木なんざ欲しがるんだ? 実なら街でたくさん売ってたろ、何なら苗木だって売ってるんじゃねぇのか?」
確かに街で苗木なども売っていた、しかし俺が欲しいのは既に実をつけることのできるほど成長した木なのだ。そもそも実を付けれるほどに成長するまでどれだけの年月が必要か、時間がかかり過ぎる。今まで種や苗でなく木を植え替えて集めていたのはそういうことなのだ、今後も人数は増えていくと思う。のんびり成長待っていては植えてしまう。
「実がなる木が欲しいんだ、金ならあるよ」
そういうとルーフェが金貨の袋を見せてアピールしてくれる。
「たくさんあるし別に構わん、何本ほしいんだ?」
「四本くらい貰って行ってもいいかい?」
「ここらのでいいなら好きなのもって行って構わんよ、もっていけるならな」
まぁそうなるよな、木なんて普通じゃ引っこ抜くことなんてできないしね。
「ルーフェ、お代の方は任せた」
「はい、ご主人様」
果樹園のおっちゃんはなんだこいつらという顔で不思議そうに見つめてくる。その目の前で俺はドラゴンモードに変身してみせた。
「なっ!? はっ!? えっ……」
いい反応をありがと!
「それじゃあおやじ、四本ほどもらい受ける」
すごい顔してフリーズしてるおっさんを横目にいい感じに実のなってるレモンの木を引っこ抜いて土を落としていく。レモンの木は背が低いし力加減はちょっとめんどくさいけど軽い力で抜けるから楽だ。引っこ抜いた木を荷車の上に乗せていき、丸ごとガシッと鷲掴みにする。
「邪魔したな」
「確かに頂きました。それでは~」
百面相の末腰を抜かしたおっちゃんを尻目に俺とルーフェはそのまま飛び立ち、ミラーハイドで姿を隠し家に向かって飛び去るのだった。なんだかんだいい経験だったし楽しかった、今度はアズハと一緒に行こうと思う。




