第44話
ガンプ達が来てから数日、すっかり賑やかになってしまった。ちなみに連れてきていた馬は問題なく馴染んだようで既に群れとして溶け込んでいる。
「旦那ぁ! ドラグメタルなんですが、実験用の試作品にも使ってみていいんですか?」
「ん? ああ、鱗は気づいたらゴミみたいに出るしいくらでも作って使って構わないよ」
「感謝するぜ旦那!」
俺の鱗を混ぜ込んだ鉄の事、てか竜の鱗を混ぜた金属をドラグメタルというらしく魔力伝導率の高さを始め超高級素材の一つらしい。そもそも加工技術と加工に竜炎が必要なため生産自体が難しいとのことだ。ここでは竜の鱗は剥がれては新しいの生えてくるしアル達のお陰で鉄も安定しているし炎は俺が吐けばいい。加工さえできればいくらでも生産できてしまうのだ。ガンプ達も最初は竜炎の扱いに苦労していたがアリッサも居たし既に使いこなしている。
「賑やかだなぁ」
鍛冶場が一気に拡張したせいか鎚の音が景気よく響くようになった、アル達コボルトとも友好的だし今では鉱物の相談をしたりと毎日楽しそうで何よりだ。今回やってきたドワーフは十五人、内九人が鍛冶師で八人がガンプの弟子だ。他にも彫金師、皮細工師と職人が勢ぞろいで各種作業場の建築も始まっている。皮に関してはクーネリアの工房を今は一緒に使わせてもらっている、思う存分生産研究ができて彼らはとても喜んでいた。
「主様~ちょっと加工して欲しいものが!」
「今行くよ」
セナ達は毎日建築に追われている、俺も木材加工のお手伝いや伐採で手伝わされている。新たに加入したエルフは十二人、合計で二十人と人数がだいぶ増えたしヘラクスやタランドゥス、蜘蛛さんズのサポートもあるため想像以上に作業が早い。問題としては一気に人が増えたためまだ名前の把握ができてないことだろうか……
「この長さに切断してください!」
「あいよ」
ドラゴンモードになり指定された大きさに原木を切断していく、そうすれば後はセナ達が加工して持って行ってくれるのだ。ちなみにドラゴンモードを始めて見た新規さん達はホントに居た、噂は本当だったとすごく目をキラキラさせていた。まぁドラゴンが農業しているのを見てどう思ったかは知らないけどね。
「あ、タカト~用事終わった?」
「終わったよ」
今日は久しぶりにアズハとお出かけするのだ、最近ばたばたでなかなか一緒に居れなかったのでちょっと嬉しい。ちなみに、ルーフェとかは構わないと暴れることがあるから大変だったりする。
「じゃあ行こうか」
「うん!」
久しぶりのお出かけとは言うがまぁ、アズハパパの領地に用事があるというだけで純粋なデートと言うわけではない。アズハが一番なのは全員が認知しているがそれでも後がいろいろ大変なのだ……もうほんといろいろと。
「結構期間空いちゃったね」
「なんかお願いしてたんだよね?」
「うん、この前言った時に欲しいものがあってお願いしといたの」
そういえば、聞いた話だけど普通終焉の森を横断するのに一月以上かかるらしい。初めて会った時のアズハも一週間近くかかってあの場所にたどり着いていた、結構広大なエリアで俺みたいに飛行できないとホントに命懸けの横断となる未開の森らしい。好き放題飛び回って採取してる身としては想像できない難所らしい、てかそうなると一人で森に飛び込んだアリッサってホント必死だったんだろうなぁ。
「ちょっと人増えた?」
「冒険者かな、結構居るみたいだね」
そんな未開の森を一時間程度で縦横無尽に飛び回るドラゴンさんはパパの領に近づき変化に気づいた。明らかに人が多いのだ、武装してパーティのように行動してるし人同士で争うこともない、何よりエルフやドワーフ、獣人系など亜人種が混成で居ることを考えると冒険者だと思う。とりあえずここら辺の情報は仕入れなきゃ不味いかな。
「あ、見えてきたよ」
「えっ……?」
久しぶりに領地にやってきて目にした光景に驚いた。村というより小さな町のように成長していた、区画が綺麗に整理され、畑などの作物エリアも拡張されているのだ。
「こんなデカかったっけ?」
「ん~ん、すごくおっきくなってる……」
アズハも困惑するほどの成長を遂げていた。
「てか、あれなによ……」
町の中央あたりにドラゴンを象った立派な像が鎮座しているのだ。
「なんとなくタカトに似てるね」
てかモデルは間違いなく俺だろこれ……
「ヴリトラ様、よくぞいらっしゃいました!」
像の広場に着陸すると、知ってる領民達は普通に出迎えてくれる。周囲に居た冒険者や新顔? であろう人達はギョッとして青い顔をしていた。
「アズハ!」
「お父さん!」
背中からアズハが降りるとここの領主であるアズハの父親が走ってきた。
「ヴリトラ様もよくぞ参られました。今日は何用で?」
知りません! 俺はアズハが用事があるというから連れて来ただけです!
「お父さん、冬前に来た時お願いした物なんだけど、用意できてる? 春頃にはっていってたじゃない?」
「あぁ、あれか。大丈夫いつでも渡せるように準備はできてるよ」
「よかった!」
話を聞きながら俺は人間モードに戻る。周りの視線が気になるから……ドラゴンで居るとめっちゃみられるのだ。
「お義父さん、なんか人が増えましたね。領地も広がってるみたいだし」
「それがですね……」
アズハパパはちょっと困ったような顔をして見せた。
「この領地がヴリトラ様の庇護下にあり実質的な中立地帯として扱われるようになりまして。税も無いようなものですし移住者が大量にやってきたのです。」
まぁ周囲の王国や帝国がグダグダやってるしそんな不安定な場所には居たくないよなぁ……
「中立地帯と言うこともあって冒険者組合からギルドの配置の依頼も受けてそれを受理した結果冒険者や商人の集まるちょっとした町として発展してきております」
おかげで毎日いっぱいいっぱいと小声で呟いたのを聞き逃さなかった。なんかここが様変わりしている理由はわかった。
「ここ冒険者に需要あるの?」
「あ、はい。魔竜領域を囲む山々ですが、そこは数世代前から世捨て人が住む山で大量のダンジョンがあるのです。なのでここに拠点があると冒険者達も動きやすと、ついでに森の植物や動物の狩りもして肉の供給も安定しました」
なるほど、こっちもこっちで発展しているのね。俺はここには一切口を出さないから頑張ってくださいお義父さん!!
「こっちに被害が出ない限り俺は何もしないから好きにしてください。ところで、アズハのお願いしてたものって?」
「あ、そうでした。こちらへ」
そう言われてアズハパパに連れられて歩いていく、周りからは様子を見るようななんとも言えない変な視線を感じるけどまぁ気にしないでおこう。
「アズハ、何を頼んでたの?」
「んとね、あの時まだ牛が手に入ると思ってなかったから。家畜をお願いしてたの」
なるほど、あの時既に先を見据えてアズハは用意していてくれたらしい。さすが俺の嫁、超優秀!
「とりあえずこちらも最近余裕がありましたので、ヤギと羊を十匹ずつと牛も二頭用意できました」
すっごい数用意してくれてた。牛はオスメスペアでヤギはメス七のオス三、羊はオスメス五匹ずつとバランスもいい感じだった。
「お代は?」
「いりません、税の徴収も無くなり、しかも金銭の廻りもとてもよく裕福になってきているのです。これは感謝の印ですのでどうぞお持ちください!」
確かに前に来た時より発展してたしいい傾向なのだとは思う。でもこの数貰っちゃっていいのかな? てかどうやって持って帰ろう……
「私が寝かせるから籠と入らない分は縄で吊るして持って帰ろ」
結構無茶言ってません? とりあえず急いで帰らなければいけないことはわかった。
「じゃあさっさと詰めちゃおうか」
「うん!」
ドラゴンモードに変身してアズハが寝かせた家畜を順番に詰め込んでいく。できるだけ負担にならないように牛を一番下で順番に乗せていく、幸い籠に全部入り切ったが負荷がすごそうなのでさっさと撤収する!
「アズハ乗って」
「うん、じゃあお父さんまたくるね!」
「いつでもおいで! ヴリトラ様も歓迎いたします!」
「感謝する! 一応お礼だ、好きに使ってくれ」
そう言って鱗を二三枚落として飛び立った。ゆっくりデートしたかったがまさかの荷物を急いで持って帰らなければいけないのでもたもたしてられない、また今度ゆっくりデートしに来るとしよう。今度はこっそりと!




