第43話
いろんな人や動物、昆虫達が増えて賑やかになってきたなぁと思っていた夏のある日。新たなお客さんがやってきた、しかも大勢……
「えっと……」
今日、俺達の住処にボロボロの団体がやってきた。
「ドワーフとエルフですね、一緒に居るなんて珍しいですけど」
「あ、やっぱ珍しいんだ」
「はい、私達は基本的に森の中で部族の集落規模で暮らしをしているんですけど、最近は戦争や人狩りの影響で散り散りになってる場合が多いです」
様子を見ていたセナが教えてくれた。
「ちなみに私達ドワーフも鉱山地帯に村を作って暮らしてるしエルフと同じ理由で散り散りに生活している場合もあるけど」
アリッサとセナの話を聞いた感じやっぱり意外な組み合わせではあるらしい。しかもよく見ると馬と荷車、いろいろと荷物も多いみたいだ。
「あれ? ガンプのおっちゃんじゃない?」
「マリエール嬢ちゃんか?」
「やっぱり! どうしたの?」
先頭に居る、たぶんこの集団のリーダー的存在のドワーフをマリーは知ってるようだ。
「知り合い?」
「うん、彼はガンプ・ドランプ、帝国でも指折りの鍛冶師長よ」
え、また帝国? なんかしたっけ?
「あれ? 帝国って人間国家で他種族嫌いじゃなかったっけ?」
「その帝国で鍛冶師長ができる腕の職人だったの、しかも帝国屈指と言ってもいいくらいの」
あ、なんか面倒事があったっぽい気がしてきた……
「そんな鍛冶師長様がどうしてこんな辺境に?」
「なんつうかなぁ……」
ガンプは言い難そうに頭を掻いている。
「親方、帝国のお偉いさんと喧嘩しちまったんっすよ。しかもド派手に」
ガンプの後ろに居た弟子でいいのかな? 一人のドワーフがそう言った。喧嘩して帝国から出てきたとかそういう感じかな?
「それでもおかしいです。ガンプ・ドランプ、貴方は帝国鍛冶師の中でも貴重な技術を持つ者。たとえ皇帝と言い争ったとしてもそう簡単に手放せる人材ではないはずですよ?」
「ルーフェリアス様!?」
ルーフェが来た途端ガンプ達ドワーフは跪き頭を下げだしたし、それを見たエルフ達が動揺しまくってる。そういえば帝国の守護神的な感じだったな……
「貴重な技術って?」
「魔剣精製です。ガンプは魔法を織り交ぜた武器、しかも高精度の物を作れる数少ない職人なのです」
とりあえず、帝国は国宝級の人材を捨てたらしい。捨てても大丈夫な理由ができたということ? 今の帝国って俺のせいで結構追い込まれてるはずだし衝動でそんな人材捨てるほど馬鹿じゃないよね?
「ん~とりあえず仮宿で話を聞こうか、マリー、レフィも呼んで怪我人の手当てをお願い。」
「わかりました、主様」
そう言うとマリーは走って行った。
「セナ、リサ、エルフ達の方はとりあえず任せていい? 同じ種族の方が彼女らも安心できるし話しやすいでしょ」
「はい、お任せください!」
とりあえず怪我人も多い、このまま外で話しているのも可哀想だし続きは座ってゆっくり聞きましょう。
「とりあえず、帝国を追い出された理由をまず教えてくれる?」
場所を移動してあらためてガンプ達に話を聞く。理由を確認しておかねば、急に喧嘩売られてもめんどくさいしできれば帝国とかもう放置しておきたい。
「帝国は領土拡大の為に各国に戦争をしかけていたのは知っているだろ?」
なんか聞いたような聞いてないような。とりあえず好戦的なのは知ってた。
「帝国がそんな強気だったのは最強と呼ばれ、国々に恐れられる後ろ盾が存在していたのが大きな理由だった。しかしここ最近になり、その後ろ盾だった帝国最強の剛獣騎士団の壊滅、帝国怒りの象徴シルバーワイバーンの討伐、挙句の果てが帝国の守護神ルーフェリアスの出国。帝国としては今までの事が全て崩壊した緊急事態だ」
はい、全部俺がやりました。てか、絡んでこなければ後ろの二つは維持できたんだから自業自得です!
「焦った帝国は侵攻を中止、軍を国境に戻して現状維持に専念。しかし今までの行いの付けが回ることを恐れた結果、帝国は禁術を行使しました」
「現状、帝国が行使できる禁術……勇者召喚ですね」
あ、なんかすごい知ってる展開になってきた。流行のラノベみたい……
「はい、しかも大規模な召喚を行ったらしく異世界の強者を四十人ほど呼び寄せたと」
「そんなことしたら帝国の宝具がもたないのでは?」
召喚人数が多いな、てことはどっかの高校あたりの一クラスを丸っと召喚とかそんな感じだろうなぁ。まぁ、俺が転生してる時点で他に異世界召喚、転生があってもおかしくないよねぇ……絡みたくはないけど。
「召喚が行える宝具は破損して修復不能と聞いています。で、ここからが俺らの問題なんですが……首脳部から依頼が来たんです、召喚された勇者総勢四十人の為に魔剣、防具一式を早急に用意せよと」
「無茶ですね」
「ええ、俺達もそれは無理だ。せめて時間をくれと抗議しました、しかしあいつ等聞く耳持たなくて……」
「あいつ等、帝国で仕事させてやってるんだから言うこと聞けとか言って兵士連れて脅してきたんでさぁ。しかも料金は据え置きで……」
ブラック企業じゃん……まぁ人間至上主義の国みたいだしドワーフには冷たいんだろうなぁ。
「それであなた達はどうしたんです?」
「無理な物は無理と抗議を続けたら工房から追い出されてそのまま追放されちまいました。どうにかこうにか持ち出せた荷車一つ分の荷物と一緒に途方に暮れていたところで森エルフの嬢ちゃんたちと出会ってここの噂を聞いたんです」
うわぁ、帝国ろくなことしないなぁ……現代地球なら全国大ブーイングの暴挙だ。
「ガンプ、貴方の弟子には人間族も居ましたよね? その人達はどうしたんですか?」
「……」
黙っちゃった?
「あいつ等、親方の技術を盗んで首脳と裏取引してたんでさぁ特急料金を貰う代わりに装備を期日以内に揃える。だから俺達を追い出した工房を自分達の物にしてそのまま運営するってぇ……」
あれ? 状況ってか待遇違くない? てか差別ひっどいあいつら……そもそもガンプ達を追い出す計画だったのか?
「事情は分かりました、後はご主人様が決めてくださります」
ルーフェ、ここまで進行してくれたのに最後に丸投げですか……
「ガンプさんだっけ? エルフ達にここの事を聞いたってことだけどなんて聞いたの?」
「南の辺境、終焉の森に黒き魔竜が住みついた。名をヴリトラという、その竜は亜人を庇護し自身の住処へと迎え入れ、繁栄へと導くと」
ここ一年くらいでだいぶ有名になってた……来て早々動きすぎたかな?
「アリッサ、ちなみになんだけどあの村でこの人達を迎え入れることはできるの?」
「え、あ~できると思いますけど、元々の村人の配下に着くという形になるので待遇がちょっと微妙になるかと……」
「あ~そうなんだ……」
「部族で暮らしてる者達が多いので上下関係ははっきりさせてる感じですよ。ここは主様がそういうの気にしないしすごい寄り合い集落なのでそうとう緩いですけど」
個人的には差別なんてするつもりないし、そういうことなら迎え入れても全然おっけ~だし肝心なのは彼らがどうしたいかかな?
「ガンプ、貴方が今回の一団の代表として確認するどうしたい? 何を望んでいる?」
一瞬ガンプに恐れられた感覚がした。そういえばこの前ルーフェに、ご主人様は真剣になる時竜の覇気が溢れ出る癖があるって言ってたっけ? 自分じゃ全然わかんないんだよなぁ……
「ワシらは、できるなら鉄を打ちたい! 武器だけじゃない、道具や防具最高の物をただ打ち続けたい! ワシらは鍛冶師なんじゃ、今までもこれからもただ打つ、打って打って教え、伝えていくのみじゃ!」
かっこいい、ガチガチの職人頑固おやじってイメージだったけどめっちゃかっこいい。すごいなぁ、こんな生き方してみたかったなぁ。
「アリッサ、ドワーフ達を取り込んで鍛冶場を拡張するとしてどのくらいの規模がいる?」
「そうですね、今の環境だと質は保証できますけどスペースが全然足りてないですね」
「なら、一度解体。再構築して鍛冶場を拡張しよう、後でセナ達にも確認してもろもろ調整しようか」
「わかりました! 私的にもガンプさんの技術は気になります!」
アリッサも職人だなぁ。凄腕の職人が来たのなら技術を見たい、盗みたいと思うのはサガなのかな。
「最後に、ここはいろんな種族が平等に暮らすたぶん特別な場所だと思う。貴方達はそこで一緒に暮らしていける?」
「もちろんだ!俺達は人を選ばない! 誰とでも誰のためでも打ってみせらぁ!」
「わかった、鍛冶師ガンプ。俺、ヴリトラは君達を歓迎する。ようこそだ!」
「ありがとうございます!」
「ルーフェ、アリッサ、後の事は任せていい?」
「はい!」
「お任せくださいご主人様!」
ガンプ達ドワーフは深々と頭を下げてきた。とりあえずドワーフ達はこれで大丈夫、次はエルフの方かな。大勢さんが来ると大変だ……
「セナ、リサそっちはどお?」
「主様! 今手当て終わったところです」
ドワーフ達との話結構長かったしなぁ。待たせちゃったかな?
「彼女達はどうしてここに?」
もう察してるかもしれないが、今回来たエルフも全員女性である。エルフって男性が希少な種族なのか?
「私達は、帝国南部の森で隠れながら暮らしていたんです」
手当てを受けていたエルフの一人が話してくれた。
「あれ? 確かそこらへんって」
「はい、前に主様がブドウ? でしたっけ、黒の実をつける木を採取しに行った場所です」
あの時薬草探しに森にも少し入ったけど気づかなかったなぁ。
「今回どうしてドワーフ達と一緒に?」
「私達は森で隠れながら暮らしていました。ホントは噂を聞いた時にすぐにでもここに向かいたかったのですが……」
エルフは人狩りに狙われやすいし、ここまでは結構な距離がある。そのリスクを考えるとなかなかでれないよね。噂はたぶん俺が亜人を庇護するとかのあれ系だと思う!
「じゃあドワーフ達と偶然出会ったんだ」
「はい、向こうも今後の事で困っていたので。ここの事を教える代わりに護衛をしてもらいここまでやってきました」
確かに理にかなってるし結構な人数の旅だ、安全性は格段に上がるだろうしガンプ達は職人とはいえ魔剣鍛冶師。それなりに戦えるのだろう、ドワーフは力があるって言うし。
「じゃあ君たちはこれで全員ってこと?」
「私達の部族はそうです。森の中を転々と移動してましたけど他の部族と会うことはなかったですね」
セナ達の時も思ったけど、少人数でばらけてるなぁ。しかも女性ばっかり、どっかに大きな集落とかあるんじゃないのこれ?
「やっぱ他の集落に合流するといろいろ問題ある感じなの?」
「はい、合流というより配下に入るという感じになりますので。奴隷よりましですけど特に女性の扱いは良くないですね……」
前にも聞いた気がするけど、やはり無理をしてでもここに来ようと思う者が現れるのは安全性というのもあるが、待遇が段違いでいいとのことらしい。
「とりあえず全員居住希望だよね?」
「そうですね、そのために皆さん命がけで来ましたからね」
「了解、ただ一気に増えたから寝床がなぁ」
ドワーフ達も多いし仮宿だけではたぶん足りないだろう、それに仮にも男女だし一緒にするのもダメな気がする。
「最初は私達の家も解放しますので、雑魚寝してもらう感じですかね。重傷者はレフィさんが魔法で治療、軽傷者はマリーさんが手当てしてくれているので問題ないです」
「じゃあしばらくそんな感じで、ついでに人も増えたし改築して行こうか」
「はい!」
エルフ達は先任のセナやリサ達が居たおかげでスムーズに終わった。この感じだとしばらく伐採かなぁ、木材足りなそう。
「あ、とりあえず皆に挨拶だけはしといてね?」
「あ、はい」
セナ達は何かを察したようだった。そして新規エルフとドワーフ達は予想通りセッカやシラユキ、昆虫軍団を見て真っ青な顔をしたり気絶していた。もう何と言うか恒例イベントだし頑張って慣れてもらうしかないね。




