第40話
「おおぅ……」
春の終わり朝早くに妖精達が何時もより騒がしかった。何かと思ったら土地の中心に一人の女性が立っていた、しかも裸で……
「えっと、彼女は?」
薄い緑の肌に緑色の蔓みたいな長い髪、スタイルもよくなにより特徴的なのは頭にある赤い大きな花だ、綺麗だが見たことのない不思議な花だった。
「彼女はアルラウネですね、ほぼ完璧な人間体が構成されてるところを見ると上位種です、会話もできるかと思いますよ」
レフィが教えてくれた、アルラウネって見た感じからもたぶん植物系だよね? 大丈夫かな……
「アルラウネってあれじゃない? 男を誘惑して誘い込んで養分にしちゃうとかそういう系じゃないの?」
「それは、環境次第です。我々は基本的に土と水と日光さえあれば困りません、生物を養分にする場合はそれでしか生命維持ができない劣悪環境下のみです」
アルラウネの女性は話しかけてきた、植物系だと思うが知能も意思もしっかりあるみたいだ。
「君はどうしてここに?」
そう聞くとアルラウネは頭を下げてきた。
「私を、どうかここに住まわせていただけませんか?」
セッカ達が攻撃しなかったのを考えると敵意はないんだと思う。植物系だしファウと同系として考えてもいいのかな?
「アルラウネは植物に精通しています。力を貸してもらえるなら心強いお方ですよ」
「リュクス、そうなの?」
「はい、彼女達は早い話が会話のできる植物、畑などを作るならあらゆる状況を教えてくれますし活躍してくれると保証します」
リュクスはそう言うと微笑んで見せた。
「どうして急にここへ?」
ファウの時はセッカが役に立つよと言わんばかりに咥えて連れてきたけど、自分の意思で来るパターンは何かしらの理由があった。そこが気になる……
「環境、ここの土地は植物の育ちやすいいい環境です。私もそこで暮らしたい、貢献が必要なら私のできることを全て提供いたします。ですので是非にお願いいたします」
なんか、想像以上に丁寧だ。どこでそんな言葉覚えてくるんだろう? でも植物の状態が把握できるならありがたいことだし歓迎しようと思う。人も襲わないらしいし!
「わかった、歓迎するよ。えっと名前は……」
「私達は個で完結していますので個体識別の名前はございません。もし必要でしたら貴方様がお付けください」
周りの人達と顔を見合わせると、主様にお任せしますという雰囲気だったしせっかくだから名前を付けることにした。こういうのはシンプルなのがいいよね?
「ん~……じゃあラウネラとかどう?」
「ありがとうございます、では今日から私はラウネラと名乗ります。どうぞこれからよろしくお願いします」
こうして新しい仲間が加わった。てか服着て欲しい……美人だから目のやり場にホントに困る。
「とりあえず今日の作業始めようか」
「はい!」
ラウネラは畑の近くに歩いていくと早速日光浴を始めたようだった。水と日光で生活できてしまうのは羨ましい限りだ。
「意外なお客さんでしたね」
「そうなの?」
「ラウネラさんは言葉がわかる知識とちゃんとした意思のあるアルちゃん達みたいな存在ですからね。通常種ならなにも言わずに勝手に生えてセッカちゃん達に襲われてたんじゃないですか?」
セッカ達はそこまで容赦ないわけじゃないはずだけど、否定できないところがある。
「そう言えばオンセン? でしたっけ? あれの温度を調整するために後で掘ってもらいたいとこがあるんですけどいいですか?」
「あ、了解。詳しい事は後で教えて」
「はい! じゃあこっちも朝の仕事終わらせてきますね!」
「あいよ」
とりあえずいつも通りカエルの解体を終わらす。今日はちょっと試したいことがあるからマリーとお出かけだ。
「珍しいわね、主様」
「ちょっと試したいことがあったからね」
「なにかしら?」
「人間体での魔法をさ、ちょっと使ってみようかなって」
「ドラゴンの時に使ってるじゃない? あれと大差ないわよ?」
この世界の魔法はイメージと個人の持つ魔力次第でだいたいの物は使用できる、しかしこれに加えて適正属性というものが存在していて自分と適合している属性しか扱えない。そして大規模になればなるほど魔力を消耗していくしイメージまでに魔力が尽きれば暴発、もしくは霧散して失敗する。
「この姿の時はあんな大規模魔法使えないんだよね」
「そうなの?」
ここ最近に来て気づいたのだが人間モードとドラゴンモードの時、明らかに保有魔力に差があった。早い話がドラゴンモードの戦闘力が人間モードでは発揮できないのだ。
「だからちょっとこっちの姿でも戦えるようにしようかなってっさ」
「なるほど、わかりました。お付き合いしますわ、主様」
前に聞いたが一般的には個人差を無くし、軍としての使用効率、消費魔力の安定化を目的とした教育が行われその性能は全国家共通のものが実用化し常識と化している。ファイヤーボール、エアブレード、アイスランス、サンダーショット、アップグレイブこのあたりが一般的で他はというと土の壁を張ったりなどになってくる。上位魔法は個人差が出てくるため個々に依存しているのだ。
「意識と認識で好きなように使えるんだよね?」
「基本的にはね、冒険者は自分の好き勝手に使う傾向にあるけど。軍とか国家になってくると指定のものになってくるかな」
ちなみに属性には火、水、風、土、雷の他に光と闇があるらしいけど正直感覚がわからない!
「属性って感覚的にわかるんだよね?」
「光と闇以外はね、この二属性は希少だし感覚が違うらしいからわからないのよね」
俺の使える属性、なんとなくで把握できているけど火、水、風の三属性らしい。ちなみに複数属性持ってる人は貴重らしく基本使える属性は一つだけというのが常識とのことだ。
「正直基本っぽい魔法は感覚で使えちゃうんだよね、どの規模までがこの体の時に使えるかどうかだけど」
そう言いながらファイヤーボールのような火炎弾や尖った氷を飛ばしたり、風の刃を作って飛ばすみたいなことをやってみせた。
「それができるなら問題ないんじゃない? 後は魔力を纏って身体能力強化をしたりかなぁ?」
ん~どうだろう? 服みたいに魔力を着る感じかな?
「こんな感じかな?」
「そこは本人しかわからないからなんとも、ためしてみて?」
お試しに軽く走ってみようと踏み込んだ。
「ぎゃん!?」
「纏うというより魔力を吹き出してるって感じじゃない?」
一歩踏み込んだ途端に勢いあまって吹き飛び木に激突してしまった。確かに今のは車のアクセルを踏み込み過ぎたような感覚だった、少し練習が必要な感じがした。
「ドラゴンの姿が規格外過ぎて地味に感じるかもだけど、主様その姿でも十分に化け物だと思いますよ」
「とりあえず感覚に慣れなきゃなぁ……マリーまた時間見つけて付き合ってもらっても?」
「主様の魔法は見てて面白いしいくらでもお付き合いいたしますわ!」
「それはありがと」
しばらく魔法の加減や魔力制御などを教えてもらいこの日は帰ることにした。今後ちょこちょこ練習して行こうと思う。




