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第35話

「ピャアールルルルルルラー!!」

 春もそろそろ終わりが近いのかなと思う今日もシラユキの咆哮から一日が始まる。出産後すっかり体力も回復し骨も繋がったようで最近では少しずつ歩きながらリハビリを始めている、子供達もそれについてピコピコ飛び回っているのがすごく可愛らしく毎日癒されている。

「ピィーヒャルルルルルラー!!」

 しかし今日はいつもと違った。咆哮に返事があったのだ、だいぶ遠くだと思うが間違いなくシラユキに反応している。証拠にシラユキが普段見せないほどに落ち着きが無くなって今すぐにでも飛び立ちたそうにしだしたのだ。

「シラユキ、落ち着け!」

「おチビ達も居るんだから落ち着いて!」

 起きていた皆でどうにかなだめているが常にソワソワして落ち着く気配がない。絶対に何かある、そう確信できる。

「ルーフェ、レフィ起きてる?」

「もちろんですご主人様!」

「ワタクシも起きてますよ~」

 声をかけると二人とも既に後ろに居た。

「さっきの鳴声の方見に行ってみようと思うんだけど付いて来てくれる?」

「お任せください!」

「は~い」

 そういうと俺はドラゴンモードへと変身した。

「じゃあちょっと見に行ってくるね」

「いってらっしゃい、気を付けてね」

「アズハ、シラユキの事任せるね」

「うん!」

 そうして俺達は様子を見るために家を飛び立ったのだった。

「今までなかった返事が返ってきた、二人はどう思う?」

「シラユキさんはずっと吠えていましたし返事を待ってたのはわかるんですけど、今まで聞こえていても返事がなかったことを考えるとシラユキさんを迎えに来たというより助けを求めるような気がしますね」

「少しづつでも近づいて来ていたと考えても、急に返事をしたのがすぐに行ける距離になったからなのか、何か危険が迫って助けを求めたのか意図がわかりません」

「とりあえずミラーハイドで姿を隠すから様子を見ながら判断しようか」

「はい!」

 俺は自分とルーフェ達を魔法で包み姿を覆い隠す。これは敵対した時に不意打ちで攻めれる以外に無駄な混乱を避ける意図もあるので最優先で習得して正解だった。ドラゴンになるといろいろ大変なのだ、去年一年で実感した。

「見えてきました」

「何かが戦ってますね」

 空中で止まり、戦闘の様子を窺うことにした。正面では漆黒のグリフォンが頭と下半身はライオン、上半身はゴリラ、サソリのような尻尾に蝙蝠のような巨大な翼、おまけに水牛のような大きな角と鋭い鎌のように長い牙と爪を持つ化け物と激闘を繰り広げているようだった。

「あのグリフォンが戦ってる奴は?」

「マンティコアですね、アレクロン王国がヘルハウンド同様に使役している魔獣です」

「全部で五匹ですかね、しかも全部上位種、王国秘蔵のレアな種族ですよ」

「なんでそんなのが出てきてるんだよ……」

「捕獲もしくは殲滅、どうしても手に入れたいもしくは何処にも渡すわけにはいかない相手なんでしょうかね」

「人ですかね? もう一人マンティコアと戦ってる方が居ます」

 ルーフェの声に視点をグリフォンの下に向けると空中でマンティコアと戦っている人影が見えた。

「人? 空飛んでない?」

「珍しいですね、あれは妖精族です。しかも戦妖精、ウォーフェアリーです」

「通常のフェアリーやピクシーは手に乗るほどの大きさですごく小さいのですが、ウォーフェアリーは通常の人間と同じくらいの大きさに成長するんです」

 なにそれ? という雰囲気を醸し出してたら教えてくれた、二人とも優秀です。

「主に妖精王ティターニアの警護に着くと言われている特別な存在なんですけど……」

「強いの?」

「普通に強いはずですよ、ただ今回は相手が悪いですね。一対一ならまだ戦いようはあると思いますけど五匹をグリフォンと分担して受け持ってるのでそうとうキツイかと」

 実際さっきから戦闘を見ているがグリフォンは三匹を受け持ち防戦一方、反撃する余裕が全くないしフェアリーの方は苦しそうで次第に押されている。もうやられるのは時間の問題という雰囲気だ。

「ちなみにルーフェ達ならどう? 倒せそう?」

「余裕です、むしろこの剣の試し斬りがしたくて……」

 うずうずしてるのね。ルーフェはここに来てから、というか堕天してから装備を一新した。ヴリトラに使える者として戦闘用の鎧と剣を俺の鱗で作った漆黒の物に変えてずっと試したいと言っていたのだ。ちなみにレフィの方もお姉さまと同じものを! と言ってアリッサにお願いしていた。

「あ、妖精さん不味いですよ。剣が折れちゃいました」

 ウォーフェアリーが攻撃を受け流そうとした瞬間剣が砕け、マンティコアの殴りつけが直撃し墜落していく、流石に不味い雰囲気が強くなってきた。

「レフィ、あの妖精を見てあげて。ルーフェ、あの二匹好きにしていいよ」

「了解いたしました」

「は~い」

 俺は咆哮を上げ、迷彩を解除してグリフォンの相手していた一匹に急接近し鼻先の角で胸の辺りを貫き勢いのままに吹き飛ばし、別のマンティコアには尻尾で思いっきり殴りつけ地面に叩き落した。

「助けてやるから頑張りな」

 漆黒のグリフォンもシラユキのようにこっちの意図をしっかりと理解してくれているようだった。突然仲間を二匹も叩き落され吠えながら怒り狂ってるマンティコアがそのまま襲い掛かってくる。

「滅べ、バスターストリーム!!」

 襲い掛かってくるマンティコアに風属性のブレスを正面から浴びせる、イメージ通り奴はブレスの直撃と同時にズタズタに引き裂かれそのまま墜落していった。昔遊んでいたカードゲームに似たような技を使うドラゴンが居てすごくイメージに残っていたのだ。実際自分で撃てるのはめっちゃ楽しい!

「まず一つかな」

 着地すると同時に周囲を見るとズタズタになりたぶん即死した個体が力なく転がっている、さっき叩き落したのは三匹残り二匹はどこだろう……そう思っていたら背後と正面から同時に飛び掛かってきた。でも残念、ドラゴンにはそんなこと通用しない。後ろは尻尾で殴り飛ばし正面はそのまま受け止めてしまえばいい。

「二つ目!」

 正面の個体の掴みやすい二本の角を両手でギュッと握りしめて車のハンドルを切るように力いっぱいひねり上げるとゴキゴキゴキと音を立てて明後日の方向を向いて動かなくなった。

「グアァアァア!」

 尻尾で払っていた最後の一匹がブチギレてサソリのような尻尾で突き刺そうと振り回してくる。毒攻撃っぽいし当たりたくないなぁ……そう思いながら体を反らして尻尾避けながら掴んで見せる。どうでもいいかもだけど、ドラゴン相手に怖がりもせず攻撃してくるあたりこいつらってめっちゃ強いの? それとも馬鹿なのかな?

「馬鹿ですね」

 あ、心読まれた……

「ご主人様~それが最後の一匹ですよ~」

 笑顔のルーフェが手を振っている。俺が遊んでいるように見えてるようだ……確かにこいつは胸に穴開いてるしほっとけば死ぬと思うけど、それは可愛そうかな?

「えい!」

 爪に風を纏わせ刃をイメージ、そのまま首元を薙いでみた。実験感覚だったけどズルりとマンティコアの首が落ちてびっくりした、身体強化というか魔法を纏う感覚は新鮮だし結構な威力が出るみたいだ、覚えとこ……

「お見事ですご主人様!」

「早かったね」

「格下でしたし、ご主人様も練習台にしてたじゃないですか」

 確かに実験台にしたけど……遠くでスライスされてるマンティコアを見るとやっぱルーフェって強かったんだなぁ。

「主様~」

「レフィ、その娘は無事?」

「はい、重傷ですしだいぶ消耗してますけど大丈夫だと思います」

 レフィは治癒魔法が使えるらしく意識を失っている妖精の介護をしてくれていた。

「ご主人様、お客さんが降りてきますよ」

 上を見上げると何が何だかまだ驚いているような困った顔のグリフォンが降りてきた。

「無事そうだね」

「怪我はしていますが飛べているし彼は問題ないかと思います」

 体中に怪我はしているが漆黒のグリフォンは無事そうだった、そしてなにより敵意が無いのを理解しているのか警戒もしていないようで助かっている。

「それよりももう一人お客様みたいですよ~」

 レフィがそういうとグリフォンの後方の茂みがガサガサと揺れたと思ったらそこから緑がかった金髪の美しい女性が姿を現した。

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