第32話
「主様、おはようございます」
「おはよ、生活には慣れそう?」
「はい! すごく快適で感謝しております!」
彼女はカル、新しく着たハイコボルト姉妹の長女でこげ茶色の毛並みに赤茶の髪のロングが特徴だ。ちなみに次女が茶色の髪をポニーテールに結んだキル、三女が薄茶色のセミロングで少しおっとりしている感じのクルというらしい。同じハイコボルトと言ってもアル達とは雰囲気が全然違う。何ていうか、アル達は柴犬、カル達はシベリアンハスキーという雰囲気の差があった。
「コボルト達も大丈夫そう?」
「アルさん達のお陰ですでに採掘や石材加工を始めております、子供達も順調に育っていて助かっております」
新しく着た者達だがハイコボルトのカル達が三人でコボルトが十五匹プラス子供が六人という感じだった。ダンジョンと繋がりモンスターが押し寄せたせいで多くの者が犠牲になりどうにか逃げ伸びたのがこの人数だったらしい。
「それならよかったよ」
「はい!」
尻尾がブンブン動いているのを見るとなんだかほっこりする。合計人数はわからないけどアルがコボルト族の代表として束ねてくれているし今のところ反発なども起きていない、今のところ問題ないと思う。
「家の方は少しまってね」
「ホントにいいんでしょうか?」
最初カル達の家を作るという話になった時自分達はコボルトの穴蔵でいいと言っていたがアル達も家を用意しているしいろいろ話した結果了承させた。
「いいの、普通に住んでこうして元気な顔を見せて」
頭をなでなでしているとカルはちょっと照れくさそうだったけど尻尾がすごいブンブンしてるし嫌ではないんだと思う。
「ワン!」
カルを撫でていると自分も撫でろとゴモクがやってきた。
「ゴモク、今日もお前は元気だな!」
撫でてあげると満足そうにしている。なぜかカルが羨ましそうに見つめているけど気のせいだろう。
「主様! シラユキが!」
そんなことをしていたらマリーから呼ばれた、そういえば今日は朝の咆哮が無かった。シラユキに何かあったのかと駆け寄った。
「どうかした!?」
「産まれそうなの!」
「え?」
「え、じゃなくてシラユキの子供が産まれそうなの!!」
マジかい!? 急すぎて思考が追い付かなかった。
「大丈夫なの?」
「体力的にはもう問題ないくらい回復してると思うんだけど、骨折してる足がちょっと心配で」
シラユキは苦しそうだ、ホントにもうすぐにでも出産が始まりそうだ。
「主様、足を抱えて固定してあげて、そうすれば踏ん張ることができると思うの」
「な、何かお手伝いを」
あわあわしながらカルが志願してくれた。ゴモクも心配そうに座っている。
「お湯を持ってきて、できるだけ多く!」
「わかりました!」
朝から大騒ぎで皆も集まってきて総出でシラユキのフォローを始めた。ちなみに俺はシラユキが踏ん張れるように骨折している足の代わりになっていた。
「ピィィ!!」
シラユキは吠えるとゆっくりと立ち上がった。足に力が籠るのを感じてその足の代わりをしてあげる。
「出てくる!」
「ピャアァーーール」
マリーの声とほぼ同時にシラユキは吠えお尻から血塗れの何かが飛び出して来た、マリーはそれを受け止めるとお湯につけて綺麗に洗い流していく。グリフォンには卵生と胎生のパターンがあり強い上位種になればなるほど胎生の傾向が強いらしい。しかしグリフォンの場合、産まれた後に体液を拭ったり膜などを外してあげることができないため赤ちゃんが自力でどうにかする必要が出てくる。そのせいで生存率が低くグリフォン自体、野生での個体数が非常に少ないとのことだった。
「誰か、まだ居るの! 受け止めてあげて」
マリーの声に皆驚いた、赤ちゃんは一匹だけじゃないらしい。
「ピヤァアアァ!」
吠えた瞬間アズハが飛び込み二匹目の赤ちゃんを受け止めた。
「ナイスキャッチ!」
「よかったぁ……」
アズハはマリーの真似をしてお湯で赤ちゃんの血や膜などを洗い流し始めた。
「ピィーーーーーーー!!」
「まだいるぅ!」
マリーが叫んだ瞬間少しバタバタしたがどうにかアル、カル、セオ、リコがごっちゃになりながらもどうにか受け止めてくれた。
「お疲れさま」
シラユキは三匹の赤ちゃんを産んだ後疲れ切ったようにその場に倒れ込んだ、もう立派なお母さんだ。三匹目もお湯で体を綺麗にしていき、赤ちゃん達をクーネリアが用意してくれた布で順番に拭き取って行った。
「シラユキ、無事に生まれたよ」
マリーが一番最初に生まれた子を顔の傍に連れていくと、シラユキは愛おしそうにクチバシで撫でていた。二番目、三番目の子も順番に撫でて自分の子供と認識しているようだった。
「後はお母さんに任せましょ、ただ羽がまだ完全じゃなくて暖めてあげれないから毛布とかで赤ちゃんを暖めてあげましょ」
赤ちゃん三匹はピーピーともう鳴き始めており、シラユキは大事そうに前足で囲って抱きしめていた。グリフォンは乳ではなく生まれてしばらくすると親から餌を分けてもらい育っていくとのことなので後はお母さんに任せることになった。もちろんお肉などご飯は困らないようにしてあげるつもりだ。
「一段落だね、マリーお疲れさま」
「一匹も落とさずに済んでよかったわ……」
朝から大騒ぎだったが無事に生まれてくれてよかった。
「ワンワン!」
安心していたらセッカがこっち来てと言わんばかりに飛び込んできた。実は最近セッカとフブキが出てこなかった理由、こっちも子供ができていたからなのだ。
「セッカ、もしかしてそっちも?」
「ワンワン!!」
「え? でも前回無事に五匹生まれたのよね?」
早く来てと言わんばかりセッカが催促しているのでマリーとフブキの元へと来てみると、案の定出産の真っ最中ですでに一匹産まれていてその子はセッカが舐めて体を綺麗にしていた。
「なんか様子が変……」
マリーが違和感を感じてフブキの様子を見に行った。すると……
「逆子だっ!?」
マジかいっ!!
「主様手伝って!!」
「引っかかっちゃってるからゆっくり、ゆっくり引っ張て出すの」
「わかったっ」
俺はマリーと一緒に慎重に途中で引っかかってしまっている赤ちゃんを取り出していく、シラユキも大変だったがこっちも大変なことになっていた。すでに生まれた一匹はセッカが面倒を見てくれているから大丈夫だ、とにかくこの子を助けなくては。
「フブキがんばって、もうちょっとよ」
「ワオーン」
フブキが吠えた瞬間、一気に赤ちゃんが飛び出して来た。それを二人で受け止めるとマリーはすぐさまお湯の溜まった桶の方へ走って行った。
「フブキ大丈夫だ、頑張れ」
俺はそのままフブキの元に残って撫でていると三匹めの出産が始まった。今度は普通に頭から出てきて、すかさずセッカが舐めて綺麗にしていく。
「フブキ、もうちょっと!」
「ワウゥゥゥ!」
三匹目が産まれてからしばらくして四匹目の出産が始まった、ゆっくりとだが頭から出てきている。
「大丈夫、頑張れ」
四匹目が産まれた、二匹目以外は皆問題なく生まれてきてくれたようでよかった。セッカはまだ三匹目を見ているので四匹目は俺が抱えてお湯ので流してあげることにした。
「フブキちゃんもう大丈夫みたい」
アズハがそう知らせてくれた。どうやら今回は四匹だけだったらしい。
「マリーそっちは?」
「大丈夫、セッカがすぐに知らせてくれたから衰弱しないで済みそう」
「よかった……」
綺麗に洗い拭き取ってあげた二匹をフブキの元へ連れて行くと二匹とも舐めて歓迎してくれた。育児放棄とかしないでくれてよかった。
「フブキもセッカもお疲れさま」
二匹を撫でているととても嬉しそうだった。四匹ともフブキのお乳を元気に飲んでいるみたいだしもう大丈夫そうだ。
「皆もお疲れさま」
「ほんとよ……」
マリーが一気に気が抜けたのかペタンと座り込んだ。するとゴモクが肩に前足を置いてワン! と吠えた、おつかれと言ってるようでちょっと面白かった。
「あんたの兄弟よ、しっかりしなさいお兄ちゃん!」
マリーがゴモクの頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振っていた。朝からドタバタだったが赤ちゃんが全員無事でよかった、これから立派に育ってくれると嬉しいな。




