第26話
スッポン祭りから数日が経った。何というかすごい効果だった……味はすごく美味しかったけどいろいろ大変だった、特に夜が。
「あれ? イツホシさんとムツホシさんどっか行くの?」
朝、蜘蛛さんズのうちの二匹、イツホシとムツホシが俺に挨拶をして森に入って行った。
「クーネリア、なんか知ってる?」
「あぁ、住む場所に困ってそうな仲間を勧誘しに行くみたいですよ、いろんな能力持ってる奴が多いですし何かと便利になると思いますよ」
「そうなのね」
蜘蛛さんズことハイエリート・スタースパイダーだが実は昆虫よりも魔物に近い存在らしく知能も高いらしい。今回は生活に役立つ能力を持つ便利魔物の勧誘に出かけたらしくしばらくは帰ってこないだろうとのことだ、怖いのや不気味なのはできれば遠慮したいなぁ。
「とりあえず、アズハ、こっちの事任せちゃっていい?」
「は~い」
アズハは笑顔で手を振ってくれた。今日は春になったことだし森の探索、北西方面に行ってみる予定だ。
「じゃあ今日はよろしくね」
「お任せください主様!」
探索ということで今回はセリィ、ナナホシさん、そしてシローを連れていくことにした。セリィは探索が上手いしナナホシさんもフォローが上手い、シローを連れて行くのは姉弟で一番真面目で気が利くからだ。
「行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
種植えなど農作業など土地の作業をアズハ達に、俺達は探索に飛び立った。北西は魔王領方面でありまだ探索に向かったこともなかった、丁度いいだろう。
「沼地っぽいですね」
「歩きにくそう……」
「あちらの方は平地みたいですよ」
セリィが指差してくれた方は比較的平らで動きやすそうだった。
「じゃあそこに降りようか」
同じ森のはずなのに湿地帯という雰囲気だ、ホント無駄に広い森の中なんだなぁと感じさせる。てかドラゴンが飛び回っても余りある広さってヤバくない? 流石終焉と呼ばれる場所なのかな。
「ワン!」
シローは背中から降りると周辺索敵に飛び出していった。今回も籠にいろんなアイテムを積んできたのだ、いろいろ採取しようと思う。
「木の実とか食べれそうなの探してもらっていい?」
「わかりました!」
「ナナホシさんも一緒に行ってあげて」
セリィとナナホシさんのペアが食べ物を探しに行く、そして俺がやること、せっかくの湿地帯で沼があるということはガサガサだ! 蜘蛛さんズお手製のY字型の枝に糸を編んで作ってもらったガサガサ網、これで周囲の水生生物探索だ。
「よっと……お、何か入った」
沼の中にある枝や古木が溜まってそうな場所に網を刺し込みガサガサと網で刺激してすくい上げる。するとそこに隠れていた生物が網に入るという採取方法だ!
「でっか!? エビかこれ?」
網の中にはビチビチと動くそれは半透明な体に甲殻、体を曲げたり伸ばしたりを繰り返しビチビチ暴れていた。見た感じヌマエビ系だとは思う、地球のと比べると異常にデカいということ以外は。クルマエビとかよりデカいんじゃないこれ?
「食べれるかな? 養殖できればエビフライとか行けるかな?」
とか思いつつ樽に水を張って捕まえたエビをポイポイと放り込んでいった。体がデカいということはそれだけ生命力が強いということ、ある程度雑に扱っても大丈夫でしょう!
「次はこっち!」
エビを大量に捕ったら次は投網を思いっきりぶん投げる! 魚とかも見ておきたいしね! 網をズルズルと引っ張り、引き上げるとこれまた巨大生物が絡みついていた。
「ザリガニ? ロブスターよりデカくねこれ……」
赤い体に巨大な鋏、ビチビチと動くそれはまさにザリガニだった、デカさ以外は。大きさだけで言うとロブスターや伊勢海老クラスのボリュームでさわったらわかる、超分厚い……ちょっと沼臭い感があるけど食べれるはず!
「綺麗な水で泥抜きすればいける、かな?」
しばらく沼で採取しているとカニ、エビ、ザリガニと甲殻類が大量だった、なんかウネウネしてるのも居たが見なかったことにしてリリースした。
「こんだけ取れたら十分かな」
樽の中で甲殻類が蠢いている、ちょっと不気味な光景だけど大事な食糧だ……カニは出汁か殻のまま齧るんだっけ? ザリガニはロブスターみたいな感じでいけると思う。てかヌマエビって食べれたっけ? サイズ的にはクルマエビみたいな感じだし行けるとは思う、たぶん。
「ワンワン!」
収穫物を眺めているとシローの吠えような鳴声が聞こえる。
「主様!」
セリィに呼ばれ急いで駆け付ける。
「こいつは、グリフォン?」
そこには猛禽類のようなりりしい頭に鋭い爪の生えた前足とライオンのような大型猫科獣の体と後ろ足を持ち大きな翼を広げて威嚇しているファンタジーと言ったら! 出てくる代表的なモンスター、グリフォンで間違いないと思う。
「ただのグリフォンじゃないです。これスノーホワイトだと思います、そうとうな希少種ですよ」
セッカ達もだけどなんでそんなレアモンスターが頻繁に出てくるのか……確かにグリフォンと言えばワシとライオンが融合したようなモンスターで色も茶色系のイメージなんだが、どうやら正面に居るのは希少種らしく全身雪のように白く美しい毛並みと翼を持っていた。
「怪我もしているみたいだし、そうとう気が立ってるみたいです」
グリフォンはその白い美しい姿に似つかわしくないほど傷つき血が滲み翼も折れているかもしれない、満身創痍という状況だった。
「手当てしようにも、触らせてくれないよなこれ」
「たぶん無理だと思います、そうとう警戒してますしこっちも危ないです」
シローが攻撃してないことを考えるとちょっと仕留めて素材にとかは気持ち的にやりにくい……
「ワン! ワン! グゥルルルル!!」
突然シローが吠えて威嚇しだした。グリフォンとは違う何かが迫っているということだろう、俺達も警戒する。
「ヘルハウンドです!」
茂みの奥から黒い狼のような獣が飛び出し、襲い掛かる。狙いは明らかにグリフォンだ。
「シロー!」
名前を呼んだだけで意図をくみとりシローは素早く飛び出し、ヘルハウンドの横を取るとそのまま首筋に食らいつき一撃で仕留めて見せた。まだ大きさはセッカの半分もないんだがその戦闘能力はさすが神狼という感じだろうか、そこら辺の雑魚じゃ相手にならないようだ。うちの子強い!
「まだ来ます!」
セリィは気配感知能力が高い、探索に行く場合よく感知してくれて助かっている。
「流石にシローだけに任せるのも悪いよね!」
俺もドラゴンモードになって迎え撃つことにした。このモードなら多少つつかれても平気だろうしグリフォンを庇うように尻尾で覆い守ってあげる。
「うちには優秀な愛犬が居るから間に合ってますよと」
飛び出してくるヘルハウンドを手でベチベチと叩き落としていく。向こうからしたらこれだけでも爪が刺さり致命傷らしく一撃でどんどん転がっていく。撃ち漏らした奴はシローとナナホシさんが確実に仕留めてくれるので問題ない、俺はセリィとグリフォンを守っていればいいだけなのですごく助かる。
「結構数が多い」
「たぶんどこかの国のハンター部隊だと思います」
ヘルハウンドは大型の黒い犬、シローより少しデカいくらいかな? それである程度知能があり主の命令に忠実という特徴から狙った獲物や人を襲撃するハンター部隊として飼育繁殖している国があるとのことだった。
「セリィ、離れないでね」
「大丈夫です、グリフォンはお任せを!」
グリフォンも状況を理解してくれているのか暴れたりせずセリィの横で俺に守られてくれている。ほんとお利口で助かる。
「ワオーン」
シローの雷撃が群れを撃ち抜く、そしてすごいのがナナホシさんだ。糸で結界を作ったと思ったら次々とヘルハウンドを捕えていく、そしてある程度溜まったと思ったら前足で手元の糸を引っ張る。そうすると捕えている糸が奴らに喰い込み細切れにしていくのだ! ちょっとしたスプラッターみたいだけど仕事人みたいでかっこいい。
「ラスト!」
最後の一匹を爪で切り裂き、ヘルハウンドの襲撃は収まった。グリフォンもどうやら無事らしい。
「あ、ちょっと!?」
迎撃が終わった瞬間、緊張の糸が切れたのだろうか? グリフォンが倒れてしまった。
「生きてる?」
「はい、ただすごく消耗してるみたいです」
確かにあれだけボロボロだったのだ無理もないか……
「今日は切り上げて帰ろう」
「はい、早く手当てしてあげないとまずいかもしれませんし……」
ここまでして死なれたら寝覚めが悪すぎる……俺達は今収穫した物を籠に突っ込み、グリフォンを抱えて家に向かって飛び立った。




