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第20話

 天使降臨から数日が経過した。あれからズタボロになっていたルーフェリアスの容態が回復するまで看病し、メタメタになった精神を慰めていた……結果、すごい変化が起きてしまった。

「ご主人様! おはようございます!!」

 そこにはアズハの手伝いをする銀髪に赤い瞳、そして黒く艶やかな翼を持つ美しい女性、ルーフェリアスの姿っがあった。

「アズハ、ルーフェ、おはよ」

 ルーフェリアス、ルーフェはここに来て立ち直ってからすごくいい笑顔をするようになった。あれから数日、いったい何が起きたのかと言うと、彼女は意識を取り戻してから一方的な敗北、しかも手当まで受けて介護されているという状況。つまり完全敗北にプライドとかメンタルとか今までの常識が全てぶち壊され、ものすごくへこんでいたのだ。

「おはよ、ご飯できてるよ」

「うん」

 メンタルケアの最中、愚痴を聞いていた時に判明したのだが、天使族は契約や約束などを大事にする義理堅い種族であり自身の意思はない無機質な種族と言われているが、実際はそんなことなく好き嫌いや得意不徳など普通の他の種族と何ら変わりないらしい。しかし、種族としてのプライドやこれまでの印象的にどうしても高位種族として上に立たざるおえずいろいろ抑え込んでいたらしい。

「ルーフェも一緒に食べるでしょ?」

「はい! もちろんでございます!!」

 その天使様がこうなってしまった理由、それは見た目でわかるかもしれないが堕天しました。愚痴を聞き、慰めていたある日。勢いというか流れというか雰囲気がそうなってしまい……一晩を共にしてしまったのです。今まで自分を律して感情を押し殺していた彼女は全てを投げ出し解放されたというように激しかった、何がとは言わないけど。

「ところで、ルーフェはほんとうにいいの?」

「何がですか?」

「せっかくの白い翼とか髪色とか」

「いいのです! ご主人様が綺麗って言ってくださったので問題なしです!」

 天使族というのは数が少ない、それは単純に行為をすると堕天してしまうからである。一応その後に禊という儀式を行えば天使として元に戻ることができるが内容が厳しく過酷なためあまり好まれない、と言うより嫌がられる。考え方的にも堕天使になること自体い抵抗があるらしく子供を作るという行為に消極的らしい。ちなみに禊を行う条件として頭上にある天使の輪、天輪を維持しているという条件があるのだが、ルーフェはそれを掴み思い切り地面に叩きつけて砕いてしまった。物理的に掴めることにも驚いたが、彼女が躊躇なく砕いたことが意外だった。後で聞いたが、あの夜以降自信の感情が溢れ出て抑え込むなんてバカバカしいと今までのすべてがどうでもよくなっていろんな意味で吹っ切れてしまったとのことだった。

「それが本来のルーフェさんなんですね」

「そうです! これが私なので、今後とも末永くよろしくお願いしますね!」

 正直あれは驚いた。欲望に忠実、と言うか自分をさらけ出す程に髪と翼の色が侵食されていくかのように変わっていったのだから、もうあんな光景二度と見ることは無いと思う。こういう経験をするとエロゲは良くも悪くもエロゲだったんだなといろいろ察してしまった異世界生活とある一日だった。

「でも帝国とかの立場あったんじゃないの?」

「いいんです、どうせ帝国に義理立てしてたのも母の言いつけで力を貸してただけにすぎませんから。私は私でいいのだとご主人様のお陰でわかったんです、これからは全てをさらけ出して全力で生きていきますよぉ!!」

 すごく嬉しそうにルーフェは宣言する。ここ数日で同居人とも打ち解けたし本人ももうここに住みつく気満々なのでいいと思う。

「あ、アズハさん」

「はい?」

「序列はしっかりわきまえていますのでご安心ください!」

「え?」

「子供も一番最初はアズハ様ですしね!」

 アズハの顔がすごく真っ赤になって行くのを見た。てかこの堕天使マジで遠慮というかいろいろ吹っ飛んで無くなってしまった。

「お前は朝から何言ってるんだよ」

「私は何番でもいいのでちゃんと愛してくださいね?」

 俺は飲んでいたスープを勢いよく吹き出して咽た……気に入ってくれたのは嬉しいがここまで吹っ切れるとは誰も予想してない。てかどんだけ自制、自粛してたんだよ……天使という種族がブラックすぎるんじゃない?

「あ、でも明確に帝国と決別してきますので少々出かけますね、母との関係もあるのでそこははっきりさせてきます!」

 ざっくりだがこの一年で起きた俺達と帝国の関係についても教えてもらった。まずアズハの親の領地の出来事だ、立地的にあそこは魔王国を始めとした周辺国家への牽制、戦争時の前線基地として機能する。しかも近くは山岳地帯、そこを超えるにも終焉の森を超えなければいけないと防御面も強力だったため最強戦力である剛獣騎士団を導入して制圧、上位貴族であるバコロン公爵の視察を受けていたところ俺が襲来して全てをぶち壊したとのことだった。ちなみにこれは、周辺全ての国々に知られ終焉の黒竜が現れたと緊張状態に陥っていたらしい。

 そして次だ、最強の騎士団を失った帝国はこの失態を挽回すべく帝国の畏怖の象徴、シルバーワイバーンを投入し正体不明の黒竜を殲滅し土地の奪還を考えた。ちなみに、このワイバーンはルーフェが倒し使役したものを皇帝の言うことを聞くよう命令を下し渡したものだったらしい。しかし、結果は俺がワイバーンを仕留めてしまった。これは主のルーフェの元に契約の消滅という形で知らされ理由を確認するために皇帝の元へと行ったら、ここへ仕向けたことを聞き彼女本人も状況の確認、最悪自信で処理するためにやってきたのがこの前の降臨騒動だったのだ。

「何はともあれ、完全敗北でしたしいろいろケジメは付けてきます!」

「マリー、天使ってこんなもんなの?」

 すこし遅れて起きてきた元帝国人のマリーに聞いてみた。私? という顔されたけど気にしない。

「私に聞かないで……こっちだって今までのイメージがぶち壊れて混乱してるのよ。彼女、帝国の守護神として名を馳せた最強の天使なのよ? それが堕天使になりましたってだけでも大事件なのに……」

 もう笑うしかない、てか帝国滅ぶんじゃないこれ? 知らなかったとはいえすごい致命傷を与えてしまった気がする。

「これから周辺諸国のパワーバランスとかいろいろ崩れて大きく動くとは思いますけど。ここに積極的に手を出す国はそうそうなくなると思いますよ? そこは任せてください!」

 平和になるならそこは期待したい。てか、ここが終焉の森とかすごい名前の森だったのが驚いた。生息している動物、魔獣、植物あらゆるものが巨大になる傾向があり、繁殖能力や個々の戦闘能力が異常なためそう簡単には入れない危険地帯として有名だったらしい。てか、アズハそんなこと一言も言ってなかった気がするんだけど?

「ほっといてもらえるなら楽でいいけど、平気なの?」

「はい、本来上位のドラゴンに喧嘩を売ろうなんて人そうそう居ませんしドラゴン同士は不干渉が基本。場所も場所なので大丈夫かと」

 これは世界中に帝国が致命傷を受けた危険領域として認識されるということだろうか? 異世界ライフを満喫したかっただけなんだけど、世界に多かれ少なかれ影響を与えてしまったみたいだった。

「そもそもシルバーワイバーンを送り込んだのも上位のドラゴンなんてそうそう居ませんし、下位の竜族か黒いワイバーンが出たと思って上位飛竜のシルバーワイバーンなら勝てると踏んでの襲撃でしたしね、たぶん」

 あれ、俺って思ってたより世界的にヤバイ存在? 気のせいだと思ってとりあえず平和にすごそうと思う。ちなみにあのお肉……シルバーワイバーンだが世界的には相当な脅威的存在で弱いドラゴンなどなら圧倒してしまうらしい。

「実際このあたりには有名な上位ドラゴンは住んでませんでしたからね、だいたい天空や山とか希少なエリアを巣にしてますから」

 とりあえず不干渉が暗黙の了解ならそれに従っておこう。もうすぐ春がくる、やることがたくさんあるのだから余計な面倒ごとは全て回避したい一日の始まりだった。

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