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第19話

「ワオーン!! ワン! ワン!」

 騒動というか事件というか、こういうことってなんで突然やってくるのだろうか……セッカが吠えて危険を知らせている。

「主様見てください、空が!」

 この日は曇り空で薄暗かったはずなのだが雲の隙間から光が差し込み、俺達の住居を照らしていた。

「グルゥゥゥゥ!!」

 セッカ達が威嚇している、敵意を持つ何かがやってくるのだろうことは確定だ。

「何かが降りてきます」

 雲の隙間から何かが降りてくる。それは白い翼をはばたかせ、黄金の槍と盾を携えた白い衣に金髪とまさに天使という雰囲気の女性だった。頭の上に光の輪のようなものもあるし間違いないと思う。

「汝らか、帝国に盾付きシルバーワイバーンを殺した者は」

 赤い瞳は冷たく俺達を見下ろしている。天使と言うのはこんなに機械的というか無機質な感じなのか? まるで意思と言うものが感じられない雰囲気だ。

「そんな、なんでこんな場所にルーフェリアスが……」

 マリーはあの天使を知っているようだが、顔色が悪い。そんなに不味い相手なのか?

「マリーあれを知ってるの?」

「彼女の名はルーフェリアス、シャジャル帝国最強の翼。力の象徴にして帝国が世界に恐れられている最大の理由よ……姿を見たが最後、その地は焦土と化し何も残らないと言われる白亜の終炎と呼ばれる天使」

 うん、厨二っぽい! てかまた帝国かい!! なんかすごく絡まれてる気がする、ホントめんどくさい国だなぁ……

「その天使様が何の用?」

「帝国の誇るワイバーンが命を落とした。それほどの戦力を持つ存在が確認できた以上放置はできぬ、恨みは無いが刈り取らせていただく」

 白い翼を大きく広げ、槍を天に掲げる、すると槍の先に炎が集まり次第に巨大化していく。地上に居ても熱を感じるほどだ、あんなもの喰らったらせっかく建築した家々が一瞬で炭になってしまう。

「タダでやられる筋合いは無い、抗わせてもらう!!」

 俺はドラゴンモードへと変身し翼を広げ、皆が熱にやられないよう盾となる。

「黒い竜? なぜこんな場所に……しかし危険な存在には代わりない! 殲滅する!!」

 俺の姿を見たせいか更に大きく炎を広げていく。そうとうな実力者なのはわかるがそう簡単にやられるつもりは無い。

「正面から打ち破る!」

 イメージする。ここと全員全てを守り、あの炎を吹き飛ばすならやはり水だ。いつものアクアブレスでもドリルスプラッシュでも足りない、更に強く全てを吹き飛ばす雨、洪水? 津波、海のようにすべてを押し流す圧倒的な力……海神、ポセイドン!

「受けるがいい、すべてを焼き尽くす裁きの豪炎。クリムゾンストームジャッジメント!!」

 豪炎が俺達目掛けて動き出す。

「ポセイドンストリーム!!」

 ルーフェリアスが豪炎を発射した瞬間、俺の海の強大な力をイメージした新たなる水属性のブレス、ポセイドンストリームが放たれた炎を全て飲み込み消滅させる。

「きゃん!?」

 炎を飲み込んだポセイドンストリームは勢いそのままにルーフェリアスを飲み込み吹き飛ばした。彼女は水流に飲まれ、森に墜落していった。

「今きゃんって言わなかった?」

「言った」

「言いました」

「それより、たった一人で戦争を終結させるっていうルーフェリアスの必殺技が吹き飛んだんだけど?」

「吹き飛ばせる水のブレスをイメージしたからね」

 マリーがすごい顔していた。

「まだ、です……」

 話しているとずぶ濡れのルーフェリアスが飛んで戻ってきた。その顔は信じられないと言うような感じだったが、まだ闘志は失っていないようだった。

「水属性の攻撃してれば諦めて帰ってくれるかな?」

「彼女の属性は炎ですし効果的だとは思うけど……」

 帝国最強の存在だ、そう簡単には帰ってくれないというのだろうか? めんどくさいなぁ……

「ワオーン」

 その時セッカが吠える。すると天から雷が降ってきた、もちろんルーフェリアス目掛けて。

「ぎゃん!?」

 雷は彼女に直撃し槍と盾を手放してしまった。てかずぶ濡れに雷って普通にヤバくない?

「ワオーン!」

「ふぎゃ!?」

 とか思ってたら今度はフブキが雷を落とした。もちろんルーフェリアス目掛けて……

「ワオーン」

「みぎゃっ!?」

 次はイチカ。

「ワオーン!!」

「きゃん!?」

 今度はニコ。

「ワオーン!」

「ひゃん!?」

 そしてミミ、なんかこの後の展開が読めてしまった……

「ワン、ワオーン!」

「ぎゃん!?」

 シローの雷が彼女を直撃した。そうとうフラフラしている、ちょっと見てるのが可愛そうになってくるくらい一方的な展開になっている。

「ワン」

 今になってゴモクが宿から出てきた。この子はホントにマイペースというかのんびりしてるというか……

「ワオォーン!!」

「いぃやぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 ゴモクが吠えた瞬間、凄まじい轟音と共に今までの比ではない雷撃がルーフェリアスを襲った。いつものんびりしているから気づかなかったが、ゴモクはセッカ一家で一番魔法に長けている子なのかもしれない……明らかに威力が違う、マジでヤバい音だったし彼女の悲鳴も一番エグかった。

「うわぁ……」

「容赦無し……ですね」

「天使さん、生きてます?」

 全員がドン引きするぐらい一方的で可哀想なことになってしまった。ルーフェリアスは最後の雷で墜落して地面にクレーターを作って中央でうずくまっていた。まさにネットでよく見る地面にめり込んでうずくまってる画像と同じ状態だった。

「あ、ピクピクしてるし生きてるみたい」

 あの画像だと対象は死んでいたが、彼女はどうやら生きているようでちょっと安心した。これで死んでたらちょっと可哀想すぎる気がする……

「ワン!」

 セッカ達はやりました! と誇らしげに尻尾を振って撫でてもらうのを待っている。

「よしよしよし! 流石セッカ、よくやった!」

 人間モードに戻り、こんな感じでセッカ、フブキ、イチカ、ニコ、ミミ、シロー、ゴモクと順番に撫でて褒めて回った。皆すごく嬉しそうにしてたのでこれはこれでよしとしよう。てか、伝説と言うだけあってこの子達めっちゃ強い……

「手当て、してあげます?」

「天使は義理堅いし、敵対してたとしても助けたらすぐ襲ってくるなんてことはしないと思うわよ」

「とりあえず、このままは可愛そうだし宿に連れて行こうか」

「雪も降ってきましたね」

 俺達は瀕死の天使を宿に連れて行き、手当てしてあげることにした。とりあえず、再起不能になってなければいいなぁ。

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