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第16話

「ドリルスプラッシュ!」

 俺は家から一番近い川まで木を引き抜き地面を慣らして簡単な道を作った。そして現在、ブレスで地面に水路を掘っている。加減を間違えると掘りすぎてしまう結構気を遣う作業だった。

「主様が掘った場所を整地していきますよ!」

「はい!」

 俺が雑に水路を形成、そこに石材と木材を敷いて綺麗に整えていくのだ。寒い中皆が協力してくれてありがたい限りだが、温泉の事を話したらすごく興味を持っていたのでそれが一番の理由だと思う。なんでもこの世界でお風呂と言うものはあまり普及していないようでそれこそ上位の貴族や王族が体を綺麗にするためにお湯に入るらしいが、一般人は水浴びもしくは桶に水をためてそれで体を拭く程度しかないらしく。冬場などは頻度を大幅に減らして気合で洗う、もしくは少量の水を温めて拭くらしい。となると何としても温泉を作りたい! そうして真冬の寒い中、総出で作業を開始したという雰囲気だ。

「こんなもんかな。アル、石材とか運ぶから貸して」

「あ、主様! 加工はできてますのでお願いします!」

 石材を抱えてセナ達が作業している場所へと戻る。もちろんまだ川とは繋げてないので水は流れていない、知識が無くても流石にそのくらいは理解してますはい! 予定としてはこのまま水路を溜池に繋げるこれを冬のうちに終わらせる予定で、そこから生活用水などなど分岐させていく予定である。ちなみに現在、間欠泉は事故防止のため石の板で塞いである。熱伝導で石が温められているためたまにセッカ達が座ってぬくぬくしているのが可愛い。

「なんか、私の中のドラゴンのイメージが崩壊したわ」

 マリーが唖然としているというか呆れているというか、自分の中で何かが盛大に砕かれたという雰囲気だった。

「ドラゴンが土木作業するのがそんなに不思議?」

「不思議というか前代未聞よ」

 この世界にはもちろん俺以外のドラゴンが無数に存在している。名を馳せた唯一無二の存在から数を増やし世界に危険視される群れまでその存在は多岐にわたる。知能が高く王として君臨する者も居ればただの魔獣同然に暴れまわる者がほとんどで、俺みたいに他種族と会話したり一緒に作業をするドラゴンは異端中の異端らしい。正直そんな気はしてます!

「まぁ、他のがなんかしてこない限りは不干渉だしほっとこう」

 同じドラゴンだからって会いに行ったりするつもりは無い、話に聞く感じそうとうめんどくさい性格してるのは目に見えてるし触らぬ神に祟りなしということだろう。

「ホント、今までの生活がバカバカしくなるわね」

 マリーはそう言いながら魔法で水路工事を手伝ってくれている。もう立派なここの住人である。

「川も見たけど、あれくらい大きい川なら早々干上がったりしないだろうし大丈夫だと思う。大雨とかで氾濫した時がちょっと怖いかもだけど」

「溜池以外にもいろいろ作るし、ある程度対策しておこうか。マリーの知識も頼りにしてるよ」

「ま、任せなさい」

 顔を赤くしてちょっと照れたような仕草は可愛い女の子だなと思う。

「あ、主様この後吹雪になるみたいだから早めに切り上げたほうがいいかも」

「了解」

 俺達は作業中のセナ達を呼んで家へと帰還し吹雪に備えて屋内に戻ろうと話していた。しかし事件と言うのは突然起こるもので居住区に強大な咆哮が響きわたった。

「グゥルゥゥゥゥ!」

 セッカ達が威嚇し警戒し始めている。

「主様、上!」

 上空を見上げる、そこには大きな翼を広げ巨大で立派な体躯をした銀色のドラゴン? いや、腕が無いのを見るにワイバーンだろう奴が今にも襲おうと地上の俺達を睨みつけている。

「あれは、帝国が使役に成功したと言っていたシルバーワイバーン……なんでこんなところに!?」

「マリーを追ってきた?」

「私一人にそんなことする価値無いと思うけど……金色の首輪が見えるでしょ、あれが制御装置で情報的にも帝国の使役した個体で間違いないと思う」

 原因はわからないが敵対しているのは間違いない、そうなるとやることは一つだ。

「あいつ、ここを焼き払うつもりよ!」

 ワイバーンは何かを吐き出そうとしている、何かしらのブレスなのだろう。

「ったく、せっかく戻ったっていうのに……」

 俺はドラゴンモードへと変身しそのままワイバーンに突撃、鼻先の角で腹部を貫き吹き飛ばす。奴はその衝撃でブレスは失敗、腹部の激痛によろけるも空中に留まっている。なかなか強いみたいだ。

「グオワァァッ!?」

 咆哮を上げ威嚇しようとするワイバーンに高速で近づき口を手で鷲掴みにして塞ぎ、もう片方の腕で奴の翼を力任せに引き千切った。激痛に悲鳴を上げたいのだろうがそれも許さない、俺と俺の大事者に喧嘩を売ったんだ、覚悟はできているだろう。

「お前の意志は関係ない、喧嘩を売る相手を間違えた不運を呪え」

 ワイバーンの首を掴み、そのままギチギチと絞め上げていく。口から泡を吐き、白目を剥きながら体を痙攣させている。そのまま力を籠めると何か硬いものが鈍い音を立てて砕けたような感触がした。するとワイバーンの全身から力が抜け、急にぐったりした。

「わお……」

「流石主様」

 手を放すとそのまま地面に墜落し、二度と動くことは無かった。

「終わったよ」

 マリーは早速ワイバーンの死骸を確認しているようだ、何かわかるといいけど。

「やっぱり帝国の使役してるワイバーンだと思う。なにか命令を受けていたのか、逃げ出したのか……」

「とりあえず調べるのは後回しにしよう、吹雪が来る」

「うん、その前にこの首輪だけ破壊してもらってもいい? よくない装置だと思うから」

「わかった」

 俺は首元の金色の首輪を掴み力を込めて砕いた。

「じゃあ皆、こいつの事は後回しで吹雪に備えよう。セッカ達も家に入りな」

「ワン!」

 俺達は突然の来訪者に対応し、迫る吹雪に備えるのだった。会話もできなさそうだし、放置したら被害が出そうだったから仕留めちゃったけど、めんどくさい事にならなきゃいいなぁ。

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