第14話
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ハーフエルフの娘が来てから三日位たったある日、仮宿からすごい悲鳴が聞こえた。急いで向かってみるとその娘が隣で寝ていたゴモクを見て飛び起きたようだった。布団がある場所からだいぶ後退りしたのか壁に激突していた。
「ゴモクはいい子だから襲わないよ」
俺は急に騒ぎ出してなんだこいつ? って顔をしていたので頭を撫でて怖くないよと見せてあげた。
「お腹空いてますよね? スープあるので食べてください」
アズハが温めたスープを持ってきてテーブルに置いて見せた。その雰囲気を見て彼女は恐る恐る椅子に座りスープを食べ始めた。
「美味しい……」
「たくさんありますからゆっくり食べてくださいね、三日ほど寝てましたしお腹が驚いちゃいますよ」
アズハは絶対いい母親になると確信した。俺の嫁は最高です!
「美味しい!」
いつものトマトスープだがどうやらここで作ったスープは味が濃くて美味しいらしい。
「食べ終わったらでいいからいろいろ聞いてもいいよね?」
彼女は食べながらゆっくりと頷いてみせた。恐らく自分がここに居る理由は理解できているのだと思う。
「マリエール・タバサって言います。長かったらマリーで構いません、帝国の魔導学士をしてました」
お腹いっぱいに食べた後、マリーは語りだす。帝国って確かこの前村で潰した奴らの国だったような気がする、そこの人がなんでここまできたんだろ?
「私はもう気づいてると思いますけど、ハーフエルフである貴族が奴隷のエルフに産ませた子とのことで学士としての地位を得てどうにかやってきました」
それでもやはり差別はあるらしくそうとう苦労していたようで、しかも魔術にも長けていたせいで余計に目立ち大変だったらしい。要は孤立していたそうだ。
「そんな中ある情報が入ってきたのです。帝国最強と言われていた剛獣騎士団が数人を残して全滅したと、占領した土地に黒い竜が現れ視察に来ていたバコロン公爵諸共なすすべなく蹂躙されたと」
あ、俺です。噂ってあっという間に広がるんだなぁ……てか、やはり全部仕留めておけばよかった……
「その後、その村を始めとした領地は黒魔竜ヴリトラ様の庇護を受けた魔竜領域と宣言し、独立しました。その領地を攻めたものはヴリトラ様の怒りに触れるとしれと」
なんか知らないうちにすごい宣言されてない? 好きにしろとは言ったけどこのまま放置して大丈夫かなこれ?
「興味を抱いた私は調査の為に冒険者を装ってその村を訪れました。するとヴリトラ様はその村の令嬢を妻とし、奴隷として売る予定だったエルフ達を連れて行ったと聞いて思ったんです。そこにいけば差別をされない、私の居場所があるんじゃないかって」
確かに孤立すると辛いだろうな、話を聞く感じ絶対いじめのようなこともされていたと思う。残念ながら学園とか研究施設でもそういうことはあるんだと思う。
「そう思ったら居てもたってもいられず直ぐに帝国に戻り、自分の研究や必要な物をまとめて旅立ちました。村で話を聞いたところヴリトラ様の住まいは南の端の未開の森の中心近くにいると推測し向かったのです」
飛び出す気持ちはわからなくもないけど、この娘すっごく無謀なことしてない? 冬で雪もあるのにそんなに切羽詰まってたのかな?
「無茶だと思いましたが、魔法には自信がありましたしある程度の事には対応できるつもりでした」
しかし途中で魔力が尽き、意地と根性で歩いていたところイチカ達に囲まれて絶望していたそうだった。
「イチカ達がお利口でよかった、敵対してたら殺されてたね」
「もう、ほんと終わったと思いました……あなたとアズハさんとエルフさんが来なかったらどうなっていたか……ホント、ありがとうございます」
マリーの事情は分かった、さて問題はこのあとどうするかということである。
「事情はわかったよ、で、マリーはどうしたい?」
「私を、私をここに住まわせてください!! こう見えて私魔法の他に地質学や薬学にも通じていて役に立つと思います!!」
なんというかホントに居場所が無いって感じで必死だなぁ……正直そこまで言わなくても住みたいなら構わないんだけど。
「帝国から逃げて来たってことは追手とかは大丈夫なんですか?」
話を聞いているとリサが気になったらしく質問をしてきた。確かに優秀な知識を持つ者が失踪したとなると追手がかかってもおかしくはないか。
「私は嫌われてましたから、居なくなって清々したと思われてるんじゃないですか? もしかしたら研究成果が欲しくてって可能性が無くは無いですけど……」
可能性はゼロじゃないという雰囲気だった。
「ちなみになんだけど、エルフ的にはハーフエルフってどうなの? 好まれなかったりする?」
「そういう部族も居ますけど、私達は全然気にしませんよ。気にしてたら主様に愛でてもらおうなって思いません!」
ですよね~ちなみに、ここに住むエルフ八人はすごく積極的です、何がとは言わないけど。
「もし追手が来たとしてもタカトが全部吹っ飛ばしてくれるし大丈夫よ!」
アズハが笑顔で言い切った。まぁ、俺の大切な者に何かするなら容赦はしないけど。
「そう言うことだから、マリーこれからよろしくね」
「はい! よろしくお願いします!」
マリーはすごくいい笑顔で笑ってみせた。
「となると家が必要ですよね? どんな感じがいいですか?」
「できれば、研究室が欲しいです。薬もですけど、たくさん調べて知りたいことがありますから!」
「じゃあ居住と研究ができる広さの家になるね、クーネリアと同じ感じでいいかな?」
「了解です、冬が明けたら建築始めますね」
「それまではここの寝室をつかってね」
「ほんと、何から何まで、ありがとうございます!!」
こうして冬真っ最中ではあるが新しい仲間が加わった。彼女の力は絶対に役に立つし、これから笑顔になってくれたらいいなと思う。




