表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/147

第112話

「はぁ~」

 俺は温泉に体を沈めた。お昼からこうしてのんびり過ごせるのはホント幸せだと思う。

「寝湯ができるようにしたのは正解だったなぁ」

 温泉に浸かりながら寝れるなんてすごい贅沢、石材から削りだしたツルツルの枕もあるため溺れる心配もない。

「そう言えば一人で入るのは久しぶりかもなぁ」

 温泉が完成して以来、入るかと思うと誰かしらが狙っているようで必ず一緒に入ってくるのだ。愛されてるのは嬉しいのだが正直のんびりは出来なくなってしまう……どうしてかは想像にお任せしようと思う。

「タカト~」

 そんなことを思っていると俺を呼ぶ声が聞こえた。ここで暮らすからには一人にはしてもらえないらしい。

「アズハ? 珍しいね」

「うん、タカトが温泉に行くの見えたから着ちゃった。一緒に入ってもいい?」

「いいよ、おいで」

「おじゃまします~」

 そういえばアズハと二人っきりになるのも久しぶりかもしれない。一番の相手とは言えあれだけ人数が多いのだ、なかなかにチャンスが減ってしまうというものだった。

「二人っきりって久しぶり?」

「そうだね~、タカト最近忙しそうだったし」

「それはアズハもでしょ。ここの事丸投げしちゃってごめんね」

 外敵や障害の排除や拡張が俺の仕事なら、維持、調整など内政を仕切っているのがアズハなのだ。もちろんカエデ達も居るので一人ですべてというわけではないが最終的な決定など重要な事は全て受け持っている、ここには欠かせない存在となっているのだ。

「旦那様ができないことを補うのが妻の務めですから」

 なんと言うか、ホントに敵わない。地球に居た頃じゃこんな相手絶対巡り合えないだろう、あの世界は男女共に要求値が高すぎるし学生時代に出会えなければ忙し過ぎてもう巡り合う機会すら滅多にない気がする。

「ありがと」

「いいえ~。そういえば体は平気? 神滅剣だっけ、新しいのが体に入っちゃったんでしょ?」

「あぁ、テンザンね。大丈夫そう、ガルザークと同じで時間が経って馴染んだみたい」

「ならよかったのかな? でもまさかその二本ともがアレクロンの仕業だったなんてね」

「まぁね、お義父さんも利用されちゃったみたいだしね」

「ねっ」

 あれからわかったことなのだが、ガルザークにテンザン両方ともアレクロンが所有していたのだ。どうやら自国に対して危険と判断された領地や国に錆びついてボロボロだったガルザークをポインターとして設置、そこに目掛けてテンザンを装備したホムンクルスを特攻させる。神滅剣同士が引き合う特性を利用した大規模殲滅作戦だったらしい。ホムンクルスは使い捨てで負荷に耐えられず崩壊、終わった後に廃墟に残った二本の剣を回収するだけで脅威が取り除ける無差別破壊兵器だ。今回は俺を殺すために使用されたようだが誤算があった。ガルザークが俺に共鳴して覚醒し復活していた事。黒嵐にこちらが気づいた事、気づいたとしても俺を殺せれば問題なかったのだろうがガルザークのおかげでテンザンを受け止めることができた。未然に阻止できたことが何より大きかった。ちょっと気になることもあるけどね……王位継承者、もしくは貴族の誰かが返り討ちに合うことを予測していた可能性だ。急務かもしれないが王維争いが起こるのが早すぎるのだ。もしかしたら暗躍していた何者かが居るのかもしれない、もし居るなら俺は踊らされたということなのかな? でも俺に選択肢は無かった、あれを放置してたら大切な人たちが危険にさらされていた。それだけは絶対に阻止しなければいけなかったのだから……何を犠牲にしてもだ。

「タカト、無理しないで」

 考え事をしていると、ふと優しい感触に包まれた。気が付くとアズハに抱きしめられていたのだ、すごく癒される。憑き物が落ちていくような不思議な感覚だった、彼女が居なかったら俺はホントに世界を滅ぼす最凶最悪の魔竜になっていたかもしれない。強い力の責任、自由の責任。一人で抱えるにはあまりにも重すぎる……

「私が居る、皆が居る。タカトは一人じゃないよ、だから大丈夫これからも皆で楽しく暮らせるよ」

 感情が溢れた、この世界に来て初めて涙が零れたかもしれない。いや、地球でもこんな気持ちで涙が溢れたことなんてなかった。俺はただ一言、それだけしか出てこなかった。

「ありがとう」

「うん」

 俺とアズハはこの日、ずっと二人で一緒に居た。周りの皆も空気を読んだのかやってこなかったし本当に久しぶりの二人っきりを満喫した。これからも俺はここを皆が豊かに、楽しく暮らせるように成長させ守っていく。冬を超えればまた春が来る、来年も俺は黒い巨体をアズハ達の幸せのために捧げよう。皆が愛してくれる限り俺は全力でこの生涯を生き抜くのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ