第110話
「うわぁ……お城が無くなってます……」
「ご主人様、ガルザークを使用したのですか?」
「うん、破壊に特化したってことだったからお試しに」
二人の無事を確認したのち、俺達は一度外にでた。来た時はあった巨大な城が跡形もなく消滅してクレーターになっているのを見たルーフェ達が唖然としていた、破壊力にちょっと引いてるのかもしれない?
「これで大人しくなってくれるかな?」
「まぁ、国営機関が消滅したので戦争どころではなくなるでしょうね」
「生き残った王族や貴族の権力争いで内戦になるのは確定でしょうけどね~」
「そこはせっかく勇者様が三人も居るんだ、頑張ってもらいましょう。なんせ勇者なんだからね、その肩書の重さは伊達じゃないんだよって」
「あれ? ここの勇者って確か四人居ませんでしたっけ?」
「あぁ、さっき城吹き飛ばした時に一人やっちゃったっぽい? 俺を倒すとか息巻いてたし、装備も一人だけ金ぴかでド派手だったから間違いないと思う」
「それならナオヤだと思う、あいつは王様のお気に入りだったし俺達とは桁違いの支援を受けてたからな」
外で話しているとトールとアーデが出てきた。
「もういいの?」
「ああ、アーデの服もあったし。こっちはもう大丈夫だ」
「ヴリトラ様、黒嵐にされた私を助けていただきありがとうございます。改めて感謝いたします」
「俺からも礼を言う。本当にありがとう……」
二人は深々と頭を下げた。
「いいさ、あれを放置できなかったのはこっちだしね」
「ついでと言っては何だが一つ聞いてもいいか?」
「いいよ」
「なんで俺達を殺さなかった?」
「ん?」
「ナオヤや王、城の人々をなんの躊躇もなく殺している癖になんで俺達は殺さなかったんだ?」
ん~なんでだろ? 正直特に考えてなかった、俺達は黒嵐を処理するためにやってきただけで雑魚に構ってられなかっただけなんだよね……アーデの方は黒嵐が片付いて余裕があったから状況確認のついでに助けた感じだった。
「なんとなく?」
「んなめちゃくちゃな……」
「俺ドラゴンだし? 気まぐれなんだよ。お前たちは運が良かっただけ」
とりあえずこういうことにしておこう。どうせ俺は災いをもたらす悪竜らしいし?
「まぁでも、基本的な判断基準は会話をする気があるかないかかな。さっきの城の勇者なんて自分がゲームの主人公になったみたいに自分に酔っててとてもこっちの話聞きそうになかったしね」
「確かにナオヤは王の話を鵜呑みにしているとこがあったしなぁ……」
「お前は俺の事よりアーデが大事すぎてそれどころじゃなかったからね、愛の力に感謝しな」
間違いなくあの時俺に攻撃してきたらトールも殺していただろう。
「……」
超照れてる! 人の恋路ってなんでこんなに見てて楽しいんだろ? 俺は内心ニヤニヤしながら二人を見ていた。
「僕としては娘が嫁に行くようで少々複雑なんだけどね。まぁアーデルの決めたことなら尊重するさ」
そんなことを言いながら博士がのこのこと出てきた。
「あ、でもこれだけは覚えておいて欲しいんだけど。プロトゼロは完全な人間を目指して作られた最高で最弱の体なんだ、セブンは神滅剣の器として戦闘用に作られていたけど今の体はそうはいかない」
「わかっている。俺はアーデを守り抜く……絶対だ!」
なんか、すごく物語の主人公してるなぁ……
「とは言っても普通の人間以上には動けるからそこまで神経質にならなくて大丈夫だよ」
「確かに見た感じ魔力量も多いですし一般的な魔導士より遥かに優秀でしょうね」
「それだけじゃないよ! プロトゼロは人体をほぼ完璧に再現した肉体、つまり子供が作れるのだ! ……ぐふぁ!?」
博士がそれを言った瞬間周囲が凍り付いた……そしてトールが真っ赤になってアーデが博士の腹部にすごい勢いの右ストレートを撃ち込んだ。その顔が赤くなっていたのを俺は見逃さなかった!
「そんな照れなくてもいいのに」
「うっせぇ……」
博士は崩れ落ちてピクピクしているがとりあえず話を進めよう。
「で、お前たちはどうするんだ?」
「どうするだと?」
「この国は間違いなく荒れる、二人で平和に暮らしたいなら俺の住んでるとこに連れて行ってもいいけどどうする?」
まぁ乗り掛かった舟だし最後まで面倒は見るつもりだけど、決めるのはあくまで彼らだ。
「私はトールと共に」
アーデは何があってもトールと共にと決めているらしい。
「確かに平和に二人で暮らすのも魅力的だな……でも、この国には世話になった奴らが居るんだ。少なくとも俺はそいつらをほおっておけない」
「そっか、まぁ気が向いたらいつでも終焉の森に来るといいよ。お前らならあの森を進んで俺らの家まで来れるだろ」
「ヴリトラ、世話になったな」
「まぁ同郷のよしみってやつだよ」
「まさか、お前も……?」
「俺はただ気まぐれで自由なドラゴンだよ」
まぁこの位は話していいだろ、たぶんこの先トールが敵として対峙することはもうないだろうしね。
「確かに容赦ないドラゴンだな」
「話の分かる方だとは思うよ?」
俺とトールは笑いあった。同じ日本人の異世界来訪者、ラノベやアニメ見てるならある程度察せるでしょ。
「ヴリトラ殿、お礼に関しては僕の方から用意させてもらったよ」
いつの間にか復活した博士が眼鏡をクイっと上げながら立ちあがった。そして研究所の巨大な扉が開き中のコンテナのような物を指差してみせる。
「これは魔力で解放される魔導コンテナ、中にお礼の品を入れてあるから是非受け取っておくれ! 開け方はさっきの装置と同じで魔力を流し込んでくれればいいから!」
なんか胡散臭い感じもするけど、悪意はないだろうし貰えるものは有り難く貰っておこうかな。
「中には僕の持ってる情報なども入ってるから役に立つと思うよ!」
「情報は大事ですね! 主様、是非いただきましょう!」
イリオがすごく食いついてるし、もういらないとは言えないなぁ。
「ならお礼として貰っておくよ。じゃあ俺達は帰るとする、機会があったらまた会おう」
「本当に世話になった!」
「じゃあな!」
俺はドラゴンモードに変身してお礼のコンテナを抱きかかえ飛び上がり家に帰るのだった。まったく、魔力がっつり持ってかれてホントに疲れた……帰ったらさっさと寝よ。




