第107話
アレクロン王国、ここに来たのはもう一年くらい前だと思う。
「城って一年で直せるもんだっけか?」
目の前に立派な王城が広がっている。間違いなくダイナミックお邪魔しますとオメガバーストで半壊させたと思うんだけどなぁ……前より立派になってる? もしかして国民すごく酷使したのこの馬鹿王国……
「今回姿見せっぱなしだったからなぁ。流石に騒いでる……」
城の空中庭園というのかな? 王城の上の方にある広場に兵士や魔導士がぞろぞろと集まりこっちを見つめている。その奥で見覚えのある顔も居た、あの馬鹿王だ。そして王を庇うようにキラキラと主張の激しい鎧を纏った青年が剣を構え俺を睨みつけている。トール同様召喚された勇者の一人かな?
「出たな邪悪竜! この俺が退治してやる、さぁ降りてこい!!」
え? 馬鹿……? 確かによくあるRPGゲームならこういう展開になったら相手の場所までわざわざ降りて行って戦闘になるけど、それはゲームであって親切に戦ってあげるわけないじゃん。
「どうした? 怖気づいたのか黒トカゲ!」
ちょっとイラっとした。まぁやることは変わらないし許してあげよう、仮にも地球では大人だったのだ。ガキの挑発なんかに乗らないのだ……
「さっさと終わらすかな。ガルザーク!」
融合して少しずつ馴染んできたせいか剣の記憶のようなことがわかるようになってきた。神滅剣は神を殺すために一点特化、そして圧倒的な能力を行使するという最上位の武装らしい。それの一振りであるコイツの正式名称は破界剣ガルザーク、神の行使するあらゆる神器を破壊し深い一撃を与える先陣を切り開く始まりの剣ということだった。そしてこいつは主の姿に合わせ姿を変える。実際ドラゴンモードで呼び出したところ俺の右側に現れ浮遊しながら命令を待っている。しかもサイズがドラゴンサイズととてつもない大きさになっていた、これなら恐らく一撃で決めれるだろう。
「お前達に二度目はない」
俺が右腕を掲げるとそれに合わせるようにガルザークが上空で魔力を集めていく。今回狙うのは神滅剣の本領を確認すること、全開で行使した場合の威力を確認したいのだ。だから会話も何も最初から余地はないのだ、なにせタダの的なのだから。
「無慈悲なる神狩りの一撃、圧倒的な絶望を抱え塵と化せ……破滅一閃!」
俺は王城目掛けてガルザークを振り抜く。すると黒い衝撃波のような恐らく膨大な魔力であろう塊が広がりながら飛んでいき、力を開放した神滅剣の残光は巨大な城を一瞬で包み込んだ。さっきまで聞こえていた人々の声は途絶え静寂に包まれた。
「なるほど、大規模で使うと指定範囲を包み込んで内部を破壊していくのね。生物だろうが物質だろうが関係なく平等に与える破壊って感じかな?」
しばらくして城を覆う黒い魔力の塊が消えていく。そこは半円状のクレーターができているだけで立派に立っていた城は姿を消していたのだった。前にルーフェと使った魔法よりも破壊するという意味では遥かに上の威力を誇るらしい、魔力消費を考えると二度と使いたくない位疲れたけど……しかも使ってみてわかったが少し制御を失敗すると暴発逆流など最悪自分と仲間を巻き込む大惨事になりかねない諸刃の剣だった。暴走して俺の命を吸収したら恐らくアレクロン王国くらい平気で消滅させると思う、神殺しの武器というのは想像以上に厄介な代物だったみたいだ。
「制御、でも練習も下手にできないしなぁ……てかよく城だけ破壊なんて器用にできなたな俺……」
とりあえずガルザークの事は後で考えるとして、ルーフェ達に合流しようかな。仕返しは思ったよりもあっさり、一瞬で終わってしまった。暴力で解決なんて野蛮とかなんたらかんたら地球だったら言われただろうし生き残った相手から恨まれるのは覚悟の上だけど話してわからないなら戦うしかない。殺し過ぎと思われるかもしれないけど、赤の他人と自分の周囲の人々を天秤に掛けた時大事なのは決まっているし考える余地すらない。大切な人を守りたいならなおさらだ。残酷かもしれないけど俺は頭が良いわけでも偽善者でも高い椅子に座って何もできない口だけのお偉いさんでもない。シンプルで原始的且つ野蛮かもしれないがこのやり方を選ぶ、何としても俺は大切な人達を守りたいのだ……何を犠牲にしてもだ。こんなことを考えて言い訳を探してしまうあたり俺もまだ半分くらいは人間で居られているのかな?
「ミラーハイド」
流石にこのまま飛び回るわけにもいかないし、一度姿を隠して人間モードになってから合流しよう。
「何だっけかな、魔導研究所はっと……ルーフェの魔力を追ったほうが早いか」
結構城から離れているようで巻き込まずに済んでよかった。いろいろ言い訳を考えていたが戦争するよりもよっぽどマシだと思いたいし死者も最低限だと思う、どっかの世界みたいに使ったら最後星すら汚染する最悪の兵器を振りかざして平和を謳う奴らよりも遥かにマシだ。まったく、行き過ぎた科学も考え物だよね。
「助けられるならあのホムンクルスくらいは助けてあげたいな、あの娘も被害者だろうし」
俺はルーフェ達の居る研究所を目指して飛び立つのだった。




