第104話
ドラゴンか人間の二つの形態しか今まで使っていなかったが中間形態のような姿もちゃんとできるのだ。てかできるようにした! 俗に言うドラゴニュートである。ドラゴンの力を維持しつつ人間サイズで戦えるようにマリーやルーフェと暇つぶし兼ねて練習していたのだ、意外なとこで役に立つもんだね。何事もやって置いて損はない!
「ホント、何の反応もないね」
正面に立ったのに相変わらず女の子は人形みたいに反応がない、ただ剣を構えて突っ込んでくるだけだった。
「やばっ!? ガルザーク!」
俺は咄嗟にガルザークを呼び出して攻撃を受け止めた。流石神滅剣と言うのだろうか、あの斬撃を受け止めて見せた。つまりガルザークならあの剣と渡り合えるということだ。
「何も語らない敵っていうのは……やりにくいなっ」
俺は力任せにガルザークを振り抜いた。爆風を巻き起こし周囲を破壊し女の子をも吹き飛ばした。近くで見て気づいたが瞳に精気が一切感じられなかった、まさに作り物の人形という感じだった。ただ標的を斬るだけの意思のない兵器だ。
「パワーなら負けないよっ!」
素早さは相手の方が上だが眼で追えてるし反応もできてる。受け止めて思ったがやはり男女の差かパワーは俺の方が上、互角……ややこっちの方が上だと思いたいけど決定打に欠けるかな。魔法を切られるのがキツイ……リアクティブウィンドで防衛しても諸共切り裂かれてしまうのだから意味がない、避けるかガルザークで受けるしかないのだ。
「あの無尽蔵の魔力はどうなっているんでしょう?」
「どういうことですか?」
俺が女の子と一騎打ちをしている間、上空では分析が始まっている。正直俺が時間を稼ぐ間に打開策を考えてもらうのが現状の目的だった。
「主様は言わずもがなドラゴンです。しかも世界屈指の」
「確かにご主人様とやりあえるあの力の源は疑問ですね。さっきから使ってる範囲攻撃に黒嵐、そうとうな消耗があるはずなのに全く疲労が感じられない」
「お姉さま、さっき攻撃した時なのですが魔力を吸い取られたような違和感がありましたよ」
「ということは、世界に満ちているマナを魔力として常に吸収し続けている?」
「そんなことしていたら人の体なんてとてもじゃないですが持ちませんよ? 暴走を起こすか崩れるか、間違いなく死亡するはずです」
「人工生命体……ホムンクルス……」
「確かにホムンクルスなら可能でしょう……しかし」
「たぶん、使い捨てなのでしょう。黒嵐を起こすために専用のホムンクルスが必要だった、それを用意するのに時間がかかるため不定期になってしまっていた……」
「あれは天災なんかじゃないということですね」
「ですがホムンクルスということなら……レフィ!」
「わかってます、お姉様!」
「いきますよ!」
ルーフェとレフィが動いた、つまりこの状況をどうにかできる算段が付いたのだろう。ならば乗るしかない!
「ご主人様! 今から魔力を完全に遮断する結界を展開します。なので結界内のマナを全て消費しつくしてください!」
「了解!」
「レフィ、行きますよ!」
「はい!」
「天の恵み、地の恵み、全てを分かつ光の刃!」
「潔癖の意思は汝を隔離する!」
「「遮断結界、プリズマシャッター!!」」
俺と彼女を中心に光の柱が囲み見えない壁が生成され、外と内で完全に遮断、隔離されるのを感じた。そして俺のやることはこの中に残ったマナを全て使い切ること。
「ドラゴンズバーナー!」
俺は口に魔力を集め炎のブレスを吐いた。人に近い姿になってはいるがブレスなども問題なく吐けるのだ、さすがにオメガ、ポセイドン、バスターなどの大規模殲滅系のブレスは使えないけどね。
「……」
彼女は反応しない剣を向けてブレスを受け止めている。しかし俺はブレスを吐き続ける、目的は倒すことじゃないんだ。更にマナを集めてブレスを強めていく、このまま一気にマナを消耗させる!
「……」
攻撃はあの剣に防御されて聞かないだろう。しかし明らかに彼女の動きは鈍っている気がする、このままダウンしてくれることを祈る。
「っ!?」
「そう簡単にはいかないよなっ!」
ブレスを剣で裂きながらゆっくりと迫ってくる。俺は吐くブレスに魔力を更に込めていく。我慢比べだ!
「……」
この無表情でじりじり迫ってくるのは結構怖いけどさっきと違い無傷というわけではないらしく服が燃えたり体が焦げ始めている。
「一気に終わらせる!!」
魔力を集めブレスを強く大きく広げる、急に火力上げたせいかわからないが爆発が起きて結界内が煙に包まれた。
「ご主人様!?」
煙が晴れてくる、ブレスを吐こうとしても魔力が全く集まらない。予定通りエリアのマナを使い切ったようだ。
「主様、前! 前!」
煙の向こうから剣を振り上げた女の子が飛び込んでくる。
「うお!?」
斬撃をガルザークで受け止め何度か剣をぶつけ合ったその時。彼女の剣を握っていた右腕が二の腕辺りからボロっと崩れ落ちた。
「……」
それを見て後ろに飛び退いて距離を取る。すると崩れ落ちた腕を無視して一歩また一歩と迫ってくるのだが途中で左足が太ももの真ん中あたりから崩れその場に倒れ込んだ。しかしそれでもまだ起き上がろうとしてくる。その姿は心苦しかった……こんな姿になってもまだ戦うことを強いられてる、悲しい兵器の女の子だった。
「今、楽にしてやる」
俺は左腕を更に竜化させて鋭い爪を形成する。ガルザークで斬ると恐らく灰すら残さず破壊してしまうだろう、それは可哀想な気がした。現状助けることは多分できない、ならばせめて……
「やめろ! アーデ!! 離せ! 離してくれ! アーデェェ!」
上空から割れんばかりの悲鳴のような叫び声が聞こえてくる。だけどこれを放置するわけにもいかない。俺はどうにか立ち上がろうとしているその胸に左腕を爪を突き立て華奢な体を貫いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
彼女を止めようとしていた青年の叫び声が虚しく響いたのだった。




