第103話
ゴツイ剣を振りかざしてすごいスピードで迫ってくる女の子、明らかに一般人の速度ではなかった。マジで速い……
「うお!?」
体を反らしギリギリで回避したが彼女は俺の首元をスレスレですり抜けて行った。
「ヤバいな……」
地面に着地するとくるりとこっちを向き再び迫ってくる。完全に狙われている……
「危なっ!?」
俺は上空に飛翔して攻撃を回避する。相手は異常な身体能力をしていたとしても人間、空は飛べないはずだ。
「ご主人様!!」
ルーフェの声のお陰で反応できた。彼女が地上で剣を振り抜くと黒い波動のようなものが飛んできた。対空戦も可能らしい、めんどくさい!
「恨むなよ!」
俺は火炎弾を彼女目掛けて吐いた。しかし彼女はそれを切り裂いて防いで見せる。
「はぁぁぁぁ!」
様子を見ているとルーフェが急降下して女の子に斬りつける。しかし彼女はそれを真正面から受け止めたのだ。
「お姉様!!」
レフィが背後を取り持っていた鎌で首を狙い振り抜く。決まったと思ったが女の子は人間とは思えない反応速度で体を反らしてそれすらも回避してみせた。
「バスターストリーム!」
直感だったが間違いなく二人が殺される気がして咄嗟に上空からブレスを叩きつけた。ルーフェとレフィは衝撃に吹き飛ばされたが無事なようだ。あのまま見ていたら間違いなく二人は斬られていた……なぜならルーフェの武器、俺の鱗から作られた剣が真っ二つにへし折られていたのだ。斬られたと言う方が正しいかもしれない。彼女も異常だがそれよりもあの剣が危険すぎると感じる……
「二人とも無事?」
「ご主人様こそ大丈夫なんですか?」
ルーフェが突っ込んだ理由、最初の一撃で俺の首を狙った一撃を避けた時完全には避け切れずに掠めていたのだ。しかし肉には届いてないが俺の鱗はその一撃で斬り飛ばされていた。避けなければあれで間違いなく死んでいたのだ……
「平気、それよりこいつは……」
「危険です。ここで仕留めなければとてつもない被害が出ると思います、間違いなく化け物です」
俺の防御力はこの世界でも間違いなく最高クラスと自負していた。しかしそれをあっさり切り裂いてきたあの剣、明らかに尋常じゃない。
「防御!!」
彼女は剣を正面に構えた。すると黒い衝撃波が周囲に広がって行く。明らかにヤバイ雰囲気だったので俺は魔力で壁を作りルーフェ達を庇った。
「すごい威力です……」
「主様の魔力障壁でどうにか防げてますけどこの威力は不味いですね」
後ろでイリオやルーフェが話しているがこっちは話す余裕ないっ! 少しでも気を散らすと障壁が吹き飛んで全員ズタズタにされる……てか魔力がゴリゴリ持っていかれるっ。
「まさかあんな少女が黒嵐の正体だったとは……」
「少女というよりあの剣が黒嵐の正体だと思います。明らかに異常です」
しばらくして衝撃波は収まったがこっちもだいぶ消耗してしまった。あの女の子は表情一つかわらない、殺気などの気配どころか感情すら感じられない、人形と戦っているような気分だ。
「アーデは悪くないっ! あの剣を持った途端にああなってしまったんだっ! 離してくれ、俺はアーデを助けるんだ!!」
完全に存在を忘れてた……シラユキが掴んでいる青年が叫んでいた。
「大人しくしてください! 死にますよっ!!」
「アーデェェ!!」
たぶんあれを放置したら家族に被害が出る。そしてドラゴンを殺せる剣……しかも俺のブレスや魔法も切り裂けるおまけつき。こういう敵はさっさと倒さないと後手に回って追い詰められる、勘弁して欲しい……
「皆は上空で待ってて、危なかったら逃げてくれ」
「ご主人様、いいのですか?」
「こういう敵が出てくることは想定済み、任せて」
「わかりました。ご武運を」
ドラゴンは物語にお約束と言ってもいいほど出てくる定番の強敵、そして確実に倒される存在。ならば現れるであろう天敵の対策をしておくのが当然だよなぁ!
「行くぞ!」
俺は姿を変える。この巨体では相性が悪い、ならば同じ土俵に立てばいい。ドラゴンの力を維持しつつ人間サイズに凝縮する……まぁ早い話が半人半竜の姿になるのだ。
「さぁ人形娘、第二ラウンド開始と行こうか!」




