第101話
ドクトル達が来てからしばらく経ち冬が来た。あの後早速例の薬をリンゴに使ってみた、確かに一週間程度でドワーフの村から貰ってきた木と同じくらい大きくなった。しかしなんだろうか、生命力が弱く感じる……生命を司る神獣ユグドラシルの加護、俺の鱗を使った肥料を使っていたがやはり無茶な成長をさせているのだろう。来年できる実も気になるが冬に負けないことを祈りながら面倒を見ていくことにした。もちろんカカオなど本命は春になってから実行予定であくまで実験段階である。
「寒くなってきましたぁ~」
「マオは部屋でのんびりしないの?」
「部屋に籠ると主様と話すチャンスが無くなるじゃないですか!」
「そんなこと無いよ、いくらでもあるでしょ」
「無いですよ、主様はちゃんと意識してください! ただでさえライバル多いんですから!」
「あはははは……」
ここに来た娘達は皆最終的に俺との結婚、子供を授かることが目的だったのは察しているし俺が欲しがられる特別な存在なのは理解している。しかしそれだけがすべてじゃない、思うように好きなことをやってみてとそこはかとなく意識を反らしていった。結果は上々と言ってもいいかな? 一部の娘達はやりたいことや夢を見つけてそちらの方に集中してくれていった。まぁそれでもマオみたいに積極的な娘もたくさん居るんだけどね、後で聞いたとこによると正妻のアズハがまだ子供を授かっていないから自重してる人が結構いるらしい、つまり……考えるのはやめておこうと思う。
「今日はどうするんですか?」
「畑はあんま見ることないし、鍛冶場か練習所でも覗きに行こうかなって。来る?」
「いきます!」
確かにマオとあんまり一緒に居てあげれてないしいいかな。鍛冶場に近づくと鉄を打つ音が響いてくる、今日も新作を作ろうと研究中なのだろう。
「ガンプさんこれは?」
「ミスリル核だ、それを握って自分の魔力を注ぎ込んでみな」
鍛冶場を覗くとキッドとガンプが話していた。そういえばここに来た時に武器とか道具一式がぶっ壊れていたから作ってあげてとお願いしたなぁ……ガンプ達は凝り性だし全力全開で取り組んでくれてるんだと思う。ちなみに武器を希望したのはキッドとエイダの二人だけだった、ザボは嫁を貰い田園や生け簀の管理をするようになっていた。エランはエルフ達と一緒に作業しているしユユはマリーのお手伝いをしながらいろいろ勉強しているらしい。レフカは神官だしまた装備の構成などが違うらしくとりあえず二人分みたいだ。
「おお、旦那じゃないか」
「ガンプ、張り切ってるね」
「やるからには本気の物を作らなきゃなぁ!」
「俺の武器は作ってくれないのか?」
「無茶言わないでくだせぇ、前に試した時に核が砕け散っちまったんだから」
実は前に俺専用の魔剣を作ってもらおうと思っていたんだけど。今キッド達がやっている作業をした瞬間ミスリル核が砕け散ったのだ、ガンプ曰くドラゴンの魔力に耐えれる鉱石が現状無いらしく挫折していた。
「あのぉ、ガンプさん。これでいいですか?」
恐る恐るキッドは声をかけてきた。キッド君はまだ俺のことを怖がっている雰囲気がある、まぁ変に名が売れたヴリトラが相手だし本来これが普通の反応なんだと思う。
「お、いい色だな。透き通るような炎のような綺麗な真紅だ」
キッドの手には彼の魔力に反応して変化した真紅のミスリルが握りしめられている、たしかに煌めくという言葉が似合いそうな綺麗な赤色だった。
「こいつを芯にお前さんだけの魔剣を打ってやる!」
「ガンプさん! ありがとうございます!!」
キッドはホントに嬉しそうにしていた。確かに自分専用という物はどんな世界に居ても嬉しいしその特別感は計り知れないだろう。
「まぁその剣を使いこなせるかはお前さん次第だがな」
「シンシアさん達と特訓してきます!」
キッドは勢いよく飛び出して行った。魔剣や聖剣も神滅器同様使い手を選ぶし力がその武器を扱うレベルに達していない場合暴走し何が起こるかわからないと言われているらしい。まぁ言い方からしてロクなことは無いと思う。
「大丈夫そう?」
「まぁ今回作る魔剣は完全に小僧にあわせた特注品、暴走したりはないし本人にあわせて成長していく可能性の魔剣だ。だが力に飲まれる可能性はある……」
「若さゆえの不安要素ね」
「まぁここには凄腕の師匠や共に切磋琢磨する奴らがたくさん居るからな。大丈夫だと信じて作るまでよ」
流石職人、かっこいいなぁ。
「マオも作る?」
「私は武器よりも主様との子供が欲しいです」
「……」
笑顔でそんなこと言われてもどう反応したらいいかわかんないよ……
「旦那もそろそろ腹くくってそっちの方を頑張ったほうがいいんじゃねぇか?」
「何をだよ……」
ガンプは豪快に笑っていたが俺にとっては笑い事じゃない……地球人時代よくあった察して! がほぼ無く純粋な好意を向けてくれるのは本当に嬉しいしもちろん責任を持つつもりだがこちらにも考えがあるのだ。どうしても譲れないこと、この世界で最も大切な人を蔑ろにはできないししたくないのだ。
「まぁ主様の気持ちはなんとなくわかってますので気長に待ってますよ~」
「マオ、ありがと」
俺はマオの頭を撫でてあげる。なんでここの娘達はこんなに察してくれるのだろうか……都合がいいと言えばそれまでなのだろうがここまで尽くしてくれているのだ。全力で応えてあげたいし皆幸せにしてあげたいと思っている。
「ご主人様ぁ~!」
そんなことを思っているとルーフェが飛んできたちょっと焦っているような気がする。
「ルーフェ、どうしたの?」
「黒嵐がやってきます!」
「はい?」




