第100話
ドクトルが帰ってから数日後、物資の受け渡しの為に数人の部下を連れて再びやってきた。
「デカいですね」
「今回は搬送用に連れてきましたが、アクババは魔王国屈指の戦力でもありますからね」
広場には黒い巨大なハゲワシ、コンドルのような姿をした鳥が二羽降り立っている。ドクトルの言う通り強力な魔物なんだと思う、証拠にここに来ても怯える様子がない。俺を相手にするとだいたいの魔物や獣は逃げてしまうのだがまるで輸送機のように鎮座している。むしろ作業の為に一緒に来た作業員がビクビクしている気がする。
「あら、彼が噂のヴリトラ様? なんか普通の青年って感じだけど」
ドクトルと話していると一人の女性が歩いてきた。大人のお姉さんという雰囲気でスタイルも良い、ここで暮らしてなかったら一目惚れしていたかもしれない美人さんだった。
「貴女は?」
「初めまして、私はモルテナ。魔王軍で魔獣使いをしています」
そういうとモルテナはお辞儀してみせた。なるほど、たぶんこの人がアクババの主なんだと思う。彼女の命令がない限り動くつもりは無いという雰囲気だ。
「モルテナは魔王七戦姫の一角でもあるのです、お強いですよ」
魔王七戦姫、初めて聞く感じだけど雰囲気的に全部で七人の女性で構成された人達で四天王的な感じなんだろうな。
「七戦姫、獣魔のモルテナ。私のかわいいペット達は敵を容赦なく蹂躙いたします、以後お見知りおきを」
「アクババもワイバーンなどを倒せる数少ない上位の魔獣ですが彼女はそれ以外にも強力な物達を従えておりますよ」
こういう戦力もしっかりあるんだなぁ。まぁ、強くないとこんな物騒な土地の維持できないか。
「今食料の用意をしていますので少し待っていてください」
俺は運搬の手伝いをしに行った。こういう時サラ達ケンタウロスのパワーにはすごく助けられる、皆働き者だ。
「モルテナさん、今日は大人しいですね」
「そりゃね、あんな化け物相手にできないわよ」
「そんなにですか?」
「ええ、だってイタズラ好きなアクババ達があんな静かにしてるなんておかしいもの。それに私に一切反応しないあのエルダーウォルフやグリフォン達、魔獣使いとしての自信もなくなっちゃうくらい」
「まぁ、ヴリトラ様の眷属みたいなものでしょうしね。それよりここの魔物をテイムしようとかやめてください、せっかく友好的にきてるんですから……」
「わかってます! でもここまで無視されると面白くないじゃない」
「勘弁してください……」
ドクトルとモルテナはいろいろと会話しているようだ。まぁ魔王国のお偉いさんだしいろいろあるんだろうなぁ。
「主様、今回の取引で少し多めに提供していますけどよろしいのですか?」
「ん? あぁ大丈夫、越冬は問題ないし実質魔王国はここの防波堤みたいなことしてもらってるからこの位はしてあげなきゃ」
実際好き勝手周辺国に喧嘩を売って平気なのはドラゴンを恐れているというのも勿論あるが魔王国が近くにあるため下手に動けないというのが大きいと思う。
「一通りの物資は揃いましたね」
「こんなに大量の物資、本当にありがとうございます」
受け渡しが終わりカエデとドクトルが会話をしている。後はあのデカい鳥に持って帰ってもらうだけだし俺のやることは無いかな、それとも挨拶したほうがいいのかな?
「あ、そうでした。ヴリトラ殿」
「なんでしょう?」
挨拶するか考えていたら急に話を振られた、何だろう?
「アレクロン王国が何か動いているとうわさに聞きました。私達にかそちらになのかはわかりませんがお気を付けください」
「ご忠告感謝します」
懲りないなぁ……お城壊したくらいじゃ諦めてくれないらしい。まぁ怖くて手を出さなくなればそれでいいけど逆に恨んで何かしてくるのもおかしくないかな。魔王国に戦争をしかけようと考えた時ここを邪魔に感じて何かしてくる可能性もあるか。
「ドクトル~いつでも行けるわよ~」
モルテナがアクババに乗り手を上げて合図をしている。あのデカい鳥を使役して手足のように扱える、さっき聞いたけど魔獣使い、モンスターテイマー的な奴なんだろうけどそうとう強いんだろうなぁ。
「それではヴリトラ様、またお会いしましょう」
「そちらもお元気で」
こうしてドクトル達はアクババに乗り飛び立っていった。いろんなスパイスや薬をくれるし数少ない仲良くしてくれる国だ、願わくば無事に乗り切ってくれることを願おう。俺が行って薙ぎ払うのもありかもしれないけど、その後がすごくめんどくさくなりそうだし表立って助けるのは良くなさそうなんだよね……国同士の問題とか知ったこっちゃないし俺は上に立つ器ではない。いくら強力なドラゴンになったと言っても根本的には普通の家庭に生まれて育ち普通の会社で仕事していたどこにでもいるただの凡人なんだから。
「ご主人様、さっきの話ですけど」
「馬鹿な国がなんかしてるってやつ?」
「はい、魔獣系の戦力はないはずですけど、歴史ある国は何が出てくるかわかりません。一応調査しておいた方がいいかと」
「そう言えばあの国も勇者召喚かなんかしたんだっけ?」
「はい、その勇者がどれほどかもわかりませんし害になるようなら早めに対策するべきです」
こういう時、真っ先に動いてくれるのがルーフェとイリオだ。実戦で吹き飛ばすのは俺の役目ではあるが考えて上手くいくよう導いてくれている、俺一人だと間違いなく国々を襲う化け物になっていたと思う。そういう意味でも魔竜領域の主ヴリトラとして有名になり国々の進行をある程度防いでくれているのは間違いない。一人ならどうとでもなるけど家族を守りながらでは絶対に犠牲がでる、それだけは絶対に阻止しなければならない、ここは俺の全てなのだから。
「悪いんだけど、お願いしていい?」
「ご褒美期待してますね!」
「わかったよ」
「では!」
そう言うとルーフェは飛び立っていくのであった、本当に頼りになる堕天使様だね。




