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お姫様な私でいたいだけ

作者: 黒ユリ

お久しぶりです。グロイ等過激な表現はありませんが女の子の裏側を書いてみたのでぜひ楽しんでくれると嬉しいです

 愛されたい。でも愛したくない。だって捨てられるのが怖いもの。

 捨てられる前に私が捨てるわ。

 捨てられるなんて、そんなの私のプライドが許さない。


 鏡に映る私は誰もが目を引くほどの美人ではないが、そこそこの美人であるとの自負はある。

 安い化粧品なんて使わない。高い化粧品で化粧を施していく。だって高い化粧品の方がそれなりに質が良いんだもの。ヘアオイルをつけ、コテで髪を巻く。内側は外巻き、外側はミックス巻きで。最後に香水を手首につけ、それを首筋にも擦り付ける。


 あ。これもつけなきゃ。


 アクセサリーボックスからボーナスで買ったピアスをとり、つける。白い花のシンプルでかわいいお気に入りのピアス。


 高いもので身をつつむ。だってその方が強くなれた気がする。


 時計を見れば針は思ったより進んでおり、時間は差し迫っていることを告げている。

 鏡をもう一度見れば満足気な私が映っていた。支度は出来た。

 8センチのヒールブーツに足をねじ込み扉を開ける。


 コツコツとリズムよく聞こえるヒールの音が好きだ。


 彼氏との待ち合わせ場所に向かうが、案の定彼氏は5分の遅刻。大きな遅刻はしないが、小さな遅刻を繰り返す。私は10分前にはついておきたいタイプなので初めから少し遅めに家を出れば丁度良いのかもしれないが、待たせるという行為が嫌いであるため、もしも彼氏が遅れずに来れたらと思うとできない。


 彼の友達は遅刻癖があり、集合時間に家を出るという話をよく聞く。そのせいで時間にルーズなのかもしれない。それは一先ずは置いておこう。


「おまたせ。ごめんね」


 声がした方を向くとにこにこと笑顔でこちらに向かって歩く男性がいる。今日はグレーのコートに黒いニットセーター、チャコールグレーのベルベット生地のズボンを履いている。セーターは15000円、ズボンは18000円。高かったという話を繰り返し聞かされるため値段を覚えてしまった。


「ううん、大丈夫」


 今日も遅刻か、という気持ちを抑えてほほ笑む。たった5分で、と思うかもしれないがかなりの頻度で遅刻すると思うとさすがに呆れてくる。もちろん電車の遅延や乗り換えを間違えてしまったという理由なら快く了承できるが理由はただの遅刻だ。


「どこに行く? 食べる?」


 差し伸ばされた手に手を重ねる。駅構内とはいえどまだ寒く、手は冷たくなってしまったため温かい体温が心地よい。

 あたりを見渡せばRUMINEの文字が目に入った。


「駅ビルの中で探す?」

「うんそうしようか」


 ビルに入り、エスカレーターに乗るタイミングで繋いだ手を放す。毎度エスカレーターに乗るタイミングを考える。1段飛ばすと友達との距離で少し遠い気がするし、彼氏の次の段に立つと近すぎる。でも次の段に立って毎度後悔するため1段飛ばして立つ。遠ざかっていく店舗を眺めていると前頭部が温かく少し重みが加わる。どうやら頭を撫でられているようであった。いつもなら少し恥ずかしそうな表情を作って少し眉を寄せるか、恥ずかしそうに笑いながら頭の位置を彼の手からずらすのだが、今日は前日の仕事で疲れていたため反応せず無反応で店舗を眺めていた。

 

《君ってプライド高いよね。俺のことなんて好きじゃないでしょ。いつも俺ばっかだよね》


 以前別の人から言われた言葉を思い出す。


 エスカレーターを降りるタイミングで彼の右手に左手を乗せる。彼がこちらを向いたタイミングでぎゅっと左手に力を入れ、笑顔を浮かべる。彼は嬉しそうに笑顔を浮かべるタイミングで手の力を抜く。ずっと力入れてたら疲れちゃうもの。当然でしょ。


 彼は俺のこと大好きだよね、とよく言う。2年付き合った前の彼にも言われた言葉。

 その言葉にいつも笑顔でだいすきと笑顔で答える。

 君って顔に出やすいよね。この言葉もよく言われる。

 頬を両手で包み首をかしげて、そんなに分かりやすいかな。すぐばれちゃうね。と答える。


 繰り返し言われる言葉に繰り返し答える。

 いつでも別れを考えている私に言う言葉が滑稽でおかしい。


 私は決めているの。別れる日付を。

 でもまだ別れない。だってまた付き合って1年経ってないもの。1年は付き合わないと元カレとはとの位付き合ったの?って聞かれたときに短すぎると良くないじゃない。


 だから、来月の今日。ちょうど1年経つからお別れしましょうね。


 私は知っているの。私に愛されて安心しているでしょ。連絡頻度も少しずつ減ってきているし、遅刻も増えてきた。でも私はぞんざいに扱われるのが嫌なの。


 私は常にお姫様でいたいの。


 貴方って女好きなのも知っているわよ。浮気しないのも知っているけど、好意を抱かれるような行動するの好きよね。


 私はお姫様でいたいの。可愛いふわふわした女の子ではなく我儘で猫のような気まぐれさも許されるようなお姫様。


 私は従順な(わんちゃん)じゃないわよ。勘違いしないで頂戴。

 

 

 

 


皆がこんな女のことは限りませんけどね笑

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