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スナイル王子と過ごす時間が増えていくにつれ彼に抱く思いが変化していく。


事前知識は『完璧な王子』で出逢った第一印象は『嫌な王子』、そしてその三日後には『治療中の王子だった』。

そして今はただの思いだったものが、不思議な想いになっている。



会えば嬉しくて胸が高鳴り、会えない時には胸がギュッと締め付けられるように切なくて…。



 これってどうしてかしら…。

 もしかしてこれが恋ってもの?!



好きという気持ちは知っている。亡くなった両親やルイーズや町での知り合いも好きだし、野に咲く花や可愛い小動物もみんな好きだ。

それに胃腸の不調から少し弱った継母達のこともちょっとだけ好きかもしれない。



でも恋はまだしたことがない。


恋愛小説を呼んで知識はあるけれども、実際に経験したことはないので、今の気持ちが恋なのか判断できない。


だから聞いてみることにした、その道の達人に。


「ねえルイーズ。ちょっと教えて欲しいことがあるの…」


王子との出逢いから今日に至るまで包み隠さずに話してみる。彼女だったらこの気持ちの名を教えてくれると信じていたから。


黙って聞いていたルイーズは私が話し終わると同時に口を開いた。


「お嬢様、それは恋ではありません。ずばり狭心症です、動悸息切れがその証拠です。はい、これでも煎じて飲んでくださいな」


そう言い切って蜥蜴と同じ形をした怪しげな干物を『びんびんに元気になりますから』と渡してくる。

なんだか特定部分だけが無駄に元気になりそうだ。


 えっと、これはどこに効くのかしら…。



疑うわけではないけれども、相談する人を間違えた気がしてくる。


「でも、でもね…狭心症ではないと思うの。ほらこんなに元気だし走っても大丈夫なのよ」


その場で全力で足踏みをしても、息が切れないところを見せてみる。


「はぁーーー、騙されませんでしたね。

残念ですけど合格です、お嬢様」



 ……………。

 ……その前振りは必要ですか…。

 


思わずルイーズをジト目で見てしまう。

すると彼女は『もちろん、必要でしたとも!』と私の考えていることを察して答える。


「いいですか、お嬢様は今恋をしています。それも普通の恋ではありません。

いろいろと猿並みかつ妄想にふけって錯乱している特殊な相手に恋をしてしまったのです。

恋は盲目、蓼食う虫も好き好きとはよく言われていますが、お嬢様はその比ではありません。

正常な判断をドブに捨て愛という名の生き地獄に足を踏み込もうとしているのです」


 そ、そこまで言うの…。

 そんなに重くはないけれど。


そう思うけれどもルイーズの気迫に押され黙って聞いている。

なんか余計なことを言えば瞬殺されそうだ。


「だ・か・ら、その覚悟があるか試したんです。

もし『あっ、狭心症な気がしてきたわ』とお嬢様が言ったら、まだ正常な道に戻る可能性があるとみなし、私はなんとしてもこの恋を握り潰したでしょう。

ですがもう手遅れのようですね。

だからこのルイーズが自らお嬢様に引導を渡しましょう。


お嬢様、ずばりあなたは恋をしています!」


「…………はい」


できれば最初にその最後の言葉だけを聞きたかった。



それから夜通しルイーズから経験を元にした為になる話を延々と聞かされる。いつそれが役に立つのかは分からないまま、気づけば夜明けを迎えていた。


『恋』


たったそれだけを確認したかっただけなのに……。

なんか確認するだけで精も根も尽き果ててしまった。これも恋の苦しみというやつなのだろうか。


ぐったりしている私にルイーズが『大事なことを言い忘れるところでした』と話し出す。


「お嬢様にお渡しした干物はぜひスナイル王子に渡してあげてください、いつかきっと役に立つはずですから。このルイーズからの前祝いです」


ルイーズは真面目な表情で腰を絶妙に動かしながら、そう締めくる。

最後の言葉は本当にいらなかった…。



(作者のひとり言)


【辿り着いた真実】


親友のケイからあの男が離れていった。

フラフラと近づき声を掛ける。

「…ケ…イ……」

ただならぬカモノハシの様子にケイは慌てる。

「どうしました?もしや食べられそうになりましたか?」

「いいや、俺の女は関係ない」

ケイの質問とカモノハシの答えは噛み合っていないが、微妙に会話は成立してしまう。


「あのさ、知っているとは思うけど俺って懐がものすごーく深いカモノハシなんだよね」

そんなことは全く知らないが黙って頷くケイ。

カモノハシは話しを続ける。

「だから大概の愛の形はOKだと思っている。

異種間愛も同性愛もそして特殊なプレイだって死なない程度ならいいんだ。あっでも後遺症はギリアウトだな」

「………そうです…か」

懐の深さの意味に同意はしかねるが否定はしなかった。

なぜならカモノハシが今にも泣きそうだったから。

「だけどよ、あれだけは許せねぇ。親友だけれど…許せねぇんだ!目を覚ませ、ケイーー!」

叫びながら号泣するカモノハシ。

ケイはそれを見てただ立ち尽くしていた。


~次回に続く~


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