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一年前から仕えているスナイル王子は『完璧な王子』そのものだった。


彼は完璧に自分をコントロールする術を習得していて、まさに周りから求められる王子像を体現していた。

誰に対しても笑顔で対応しながらも、決して隙は見せない。どんなことも簡単にやっているように見せているが、影では努力を怠らない。


 王族って大変なんだな。

 もっと優雅で楽な生活だと思っていたけど…。


凄いなと心から感心するとともに尊敬もしていた。

自分にはとてもじゃないが真似できそうにない。

それに真似をしたいとも思わなかった。


優雅で贅沢な生活は保証されているが、その生活は平民では想像出来ないくらい自由がなく精神的に窮屈なものだった。



王子に仕え始めた頃は住む世界が違うので親しくなるなんて思ってもみなかった。

だが歳が同じこともあり王子はだんだんと素顔を見せてくれるようになる。思っていた以上に心を許してくれたスナイル様に親しみを覚えるのに時間は掛からなかった。



いつの間にか王子は二人だけの時は飾らない口調で話してくれるようになっていた。

その素顔は気さくだったが、やはり王子らしい考え方が身に沁みていて、結婚や恋愛などは最初から諦めてるのが当然だと言っていた。


『スナイル様はそれでいいのですか?』

思わずそう訊ねてしまった。

『王子なんだから当然だ。別にそれでいいさ』

そう言い切る表情に迷いは一切なかった。


このままでも彼は立派な国王になり、名声という名の幸せを得るだろう。それは国の頂点に立つ者にとって最高の幸せと言える。


だがスナイル様を知れば知るほど、彼に『当たり前の幸せ』も手に入れて欲しいと願うようになっていた。



『スナイル様、王族だって愛し合う関係を築けると思いますよ』

『はっは、奇跡でも起きればな。だが起きないから奇跡っていうんだろう』

王子は笑って聞き流す。


『結婚っていいですよ。義務だと割り切らずに前向きに考えたらどうでしょうか』

『結婚は人生の墓場だって誰かが言っていたな?そうそう確か父上と叔父上と曽祖父と…。はっはは、王族全てだな』

『……考え方は人それぞれです』

残念なことに王子の身近には良いお手本はいないようだった。


王子に当たり前の幸せを望んで欲しくてこんな会話を何度となく繰り返していた。だが彼の心には響くことはなく、無力な自分が悔しかった。





(作者のひとり言)


【カモノハシの昔話】

あれからカモノハシは親友であるケイの元に毎日せっせと通っている。

「なんかさ、ケイのこと昔から知っている気がしてたんだよね。なんでかなって3分考えたらその理由が分かった。ケイはずっと昔に川に来ていたボッチに顔がそっくりなんだ。

その男はさ、一人で川岸に立って『ロナ…ロナ、ロナ…』て女の名前を呟いていたんだ。カモノハシ達みんな同情してたんだ『あれは女に振られたなっ』てさ。だが暫くしたら『ロナ…、ケイ…』って言うようになってさ。みんなで呆れたもんさ『両刀使いの二股野郎なんかいっ』てさ」

「…………」

ケイ・ガードナーはその人物に心当たりがあった。だが言えない…。

「あれ?そう言えば『ケイ』って名前が一緒だな。人間にはケイって名前が多いのか?」

陽気に訊ねるカモノハシ、悪気はないが罪は重い。

「……はっ…はは、たぶん…」

自称親友はケイの苦笑いに全く気づかない。

「たまに思うんだ、その両刀使いの二股野郎はどうしてるかなって。いつの間にか来なくなっていたからあの世にいるのかな~、ケイはどう思う?」

笑いながらカモノハシは聞いてくる。

「…きっと生きてる、とても幸せに。

それに両刀使いではなくて愛妻家じゃないかな…」

ケイ・ガードナーは心当たりがある人物の名誉の為にさり気なく訂正をする。

だが『ないない、性癖は変わらないからな』とカモノハシによって一蹴されてしまった。



*この話は『ある日愛する妻が何も告げずに家を出ていってしまった…』(アルファポリス様で投稿完結済作品)を読んでいると笑えるはず…?

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