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シルメア戦記  作者: 大和ムサシ
亜人の国ウルガルナ編
26/72

バルディア軍団、ウルガルナ方面へ転進す

『南西方面軍団長バルディア将軍へ命ずる。現在ウルガルナに侵攻中の南東方面軍が苦戦中である。現在侵攻中のシルメアよりただちに撤収し、ウルガルナへ向かわれたし。魔道元帥メルフェトの指揮下に入り、合同してウルガルナを攻略せよ。  ダレム帝国皇帝 リオルド』


皇帝からの勅命が書かれた文書を読み上げ、バルディアは険しい表情を見せる。


「なんだこの内容は!? 陛下は先に命じられたシルメア攻略よりもウルガルナを優先されるというのか!?」


 ウルガルナは帝国からみれば南東、シルメアからみれば東に位置する、エルフやドワーフ達が統治する国家である。バルディアらがシルメア侵攻をおこないながら、別方面の軍団がウルガルナ侵攻を始めた背景には、やはり帝国軍内の権力争いの影響があった。近年軍の組織として成立したメルフェト率いる魔道旅団は、組織としての実績に乏しく、戦果を上げることに貪欲であった。特にバルディア率いる南西方面軍団には対抗意識を燃やしており、メルフェト自らウルガルナ侵攻の必要性を皇帝に直訴したのだった。


 かくしてダレム帝国は2方面で戦争することとなったのだが、ウルガルナ方面は開戦当初の戦略目標として優先さえれていなかったので、どちらかを優先するとなれば当然シルメア方面になるはずであった。


 手紙の内容にはジェノンも憤慨している。一方ケイレスは帝国軍内の派閥争いの事情も察しており、皇帝からの勅命の意図も読み取った。


「バルディア殿、おそらくメルフェトが帝国内で奸計をめぐらしたのでしょう。攻略地方を変更することは、陛下の意志というよりはメルフェトの思惑が感じられます」


「魔道旅団はなぜそうまでしてウルガルナに攻め入るのでしょうか? やはり戦争に勝利したという実績が欲しいのでしょうか?」


ジェノンの問いにケイレスが答える。


「実績作りもあるかもしれないが、奴らの狙いはおそらくウルガルナにあると言われているミリス鉱の鉱山だろう。主にドワーフ達の領地で採掘が行われているらしい。ミリス鉱を精製して作られた武具は、魔力を持つものが握ればその力を増幅させると聞いている」


ケイレスが推測するには、魔道旅団はミリス鉱の採掘所を支配下に置き、自軍の増強をはかるつもりとのことである。ミリス鉱は魔力を持たぬ者が手にしてもただの柔らかい金属だが、魔力を通すことで飛躍的に硬度が増し、なおかつ所有者の魔力出力をも強化する性質がある。帝国領内ではごく少量のミリス鉱が流通しているものの、まとまった鉱山は発見されていない。


「便利そうな代物ですね。ミリス鉱はこれまで帝国でもあまり戦略物資としては扱われていなかったように思いますが……」


「これまではそもそもミリス鉱は、魔法の研究に少量が用いられていただけだったのだ。魔道旅団が軍の組織となったのは最近のことだからな。軍事利用するという着想にいたったのも、魔術師が戦場で直接戦闘するようになってからだろう」


帝国内ではもともと魔術師は、火や雷の力を生活水準の向上のために利用する研究をする職であった。現軍団長のメルフェトが魔法の力を軍事利用することの有用性を帝国上層部に説いたため、魔術師が直接戦場に立つようになったのだ。


「バルディア殿、司令の内容には心から賛同しかねます。しかし、陛下の勅命とあれば従うしかないと思いますが……」


ケイレスの確認に対し、怖い表情をいっそう険しくしたバルディアは答える。


「我々は軍人だ。陛下の命令に従うしかあるまい。ただちにウルガルナ方面に軍を動かす」


「分かりました。ただちに出立準備を整えます。ウルガルナ軍に苦戦するメルフェトの顔でも拝んでやりましょう」


かくしてシルメアの国内に侵攻していたバルディア率いる帝国軍は、急遽東へ進路を変え、ウルガルナ方面へ向かったのであった。


本話から新章「亜人の国ウルガルナ編」開始です。今後の展開にご注目を!

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