倒した魔王が起き上がること99回目〜そろそろ飽きたから本気出せよ〜
フユヤスミダァ!!!
2024/05/30
久々に読み返したらところどころ納得いかなかったので、一部書き換え。
「グアアアァァァッ!!!!!」
魔王の断末魔が響き渡る。
俺、勇者マツダは、とうとう魔王を討ったのである。
魔王が地に伏せると同時に、相当の経験値が入ってくるのが分かる。
「ふっふっふ、見事だ、マツダ殿」
「!?」
聞こえるはずのない声に振り向くと、さっき倒れた魔王が腹に風穴を開けたまま立っていた。
「我を本気にさせたのは、お主が初めてだ。褒めてつかわせよう。しかし、ここからが本当の勝負だ!はあああぁぁぁ!!!」
たちまち魔王が闇の球に包まれる。
闇が晴れると、そこには漆黒と言うべき色の龍が鎮座していた。
「チッ!こっちのパターンかよ!」
復活した魔王に、思わず舌打ちしてしまう。
俺は実は転生者だ。
現代日本で一度死んだ俺は、この世界にて再び生を受けた。
前世の記憶が残っている俺は、遊んでいたゲームでこの手のパターンを幾度となく見てきた。
「テンプレでも、現実にあるとつくづく厄介だな」
計算外のことだから、体力も魔力も、ともに使い果たしている。
「あれ、でもさっきレベル上がって……」
咄嗟にステータスを開くと、レベルアップによりHPとMPがともに以前の1割増で満タンだ。
「ぶつぶつと独り言を言っていても始まらぬぞ!さあ、始めるぞ!」
レベルアップと同時に全快するチートをつけてくれた神に感謝しながら、俺は魔王に立ち向かっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「グハハハハ、見事である、勇者マツダ。しかし我には、更なる奥の手がある」
「えぇ……」
「そんな抜けた声を出すでない。さあ、行くぞ!はあああぁぁぁ!!!」
これで何回目だろう。
魔王が倒れては起き上がり変身して倒れるを繰り返している。
こんなパターンは見たことが無い。
10回目辺りではビックリしてたけど、30回目くらいからだんだん呆れてきて、恐らく99回目かそこらの今、もう飽きてます。
しかも、倒す度に結構な経験値くれて、毎回レベル上がっているんだよね。
50回目くらいから作業ゲーになってきているし、さっきからツノの数しか変わってないよね。
もしかしてネタ切れ?
「ねえねえ、魔王さんや」
「ぬ、話しかけて気を散らす気か!?小癪な!」
「じゃなくてさ、お前本当に俺を倒す気あんの?」
「勿論だとm…ゥガッ!どんどん我は強くなっているぞ!」
「そうだけども!毎回くれる経験値と、1個づつ増えてくそのツノはなんなんだよ!お前の弱点ツノだってこと、もう分かってるし!」
「なっ!」
「だから、お前自身強くなっててもマイナス要素でプラマイゼロだから!そい!」
「そ、そうなn…グハァッ!」
話しながらでも、しっかりと攻撃を当てていく。
破壊したツノは99個。
あと1つ斬って本体に攻撃すれば今回は倒せる。
しかし、また次があるだろう。
それではキリがないので、この辺りで何とかしたい。
攻撃を一旦止める。
「なあ、魔王さんや」
静かに魔王に歩み寄る。
「グヌヌヌ」
魔王は呻っている。
「何で最終形態にすぐならん?」
「!?」
「こちとらだんだん飽きてきたんだけども。そろそろ決着付けたいからどうにk…」
「その手があったかあああぁぁぁ!!!」
なんか目的あるとかじゃなくて、本当に気づいてなかったのぉぉぉ!!!???
「じゃ、その前に」
なんとか平常心に戻った俺は、舞い上がって無防備な魔王のツノを削ぎ落とし、そのまま兜割りを脳天にお見舞いしてやりましたとさ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「勇者マツダ殿、魔王の討伐、ご苦労であった。未だ魔物は見られるが、いずれ消えてしまうであろう」
魔王討伐後の人王への謁見。
100回目に最終形態になった魔王は、レベルの上がりまくった俺には全くもって敵わなかった。
まあ最後はツノだらけの全身トゲトゲ状態だったし、かえって動きにくそうであっさり倒せた。
ていうか、あの数までツノを1本づつ足される筈だったのかと考えると、吐気がしてくる。
本当に先に話付けておいて正解だったと思う。
「さて、マツダ殿。今後どうしようと考えているか?」
これから、か。
どうしたものか。
俺はこの世界に生まれてすぐに、勇者としての才を見出された。
魔王の討伐こそが俺の全てであり、それが為された現在の俺には、そこまでしたいことがない。
まあ、魔王を討った名声と報酬で、一生生きていくには困らないだろう。
それなら気ままに旅とかするのも…
「人王様!大変です!」
これからの人生に思いを馳せている中、一人の衛兵が広間に飛び込んできた。
「人王様は謁見中だ!無礼に当るぞ!」
「構わぬ、何があったか。申せ」
咎めようとする近衛兵を遮る人王。
「新たな魔王が現れたとの知らせが入りました!以前の魔王とは見た目が違いますが、再び蘇ったとの宣言があったとのことで…」
「なんだって!?」
思わず俺は大声を上げてしまう。
また復活したのかよ、あいつ!
「失礼。今の話、誠であるならば、この勇者、直ちに討伐に参りましょう」
俺は怒りに満ちていた。
いつまでも本気を見せない魔王が許せなかった。
同時に、俺がやらなくて誰がやる、という気持ちもあった。
俺以外にあいつの手を知る者はいない。
俺だからこそ倒せる相手である自負があった。
「誠であるか!?そうであれば話は早い。是非そうしてくれると嬉しい。勝利の報せを待っているぞ!」
「はっ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい、魔王!どういう事だ!どうして本気を出さねぇ!」
魔王城を攻略し、魔王の前に姿を現わす。
そこには、瘤だらけの姿になった魔王が待ち構えていた。
「グハハハ、久しいな勇者。待っておったぞ!さあ、表面積を増やしたから、また始めようではないか!」
「まずそのバカをなんとかしろ!!!!!」
ほんと変わんねぇな、お前!