私の魔道具壊れた! ー いや壊れてないぞ?
3行あらすじ
女神から万能工具をもらって異世界転移した。
転移先は孤島にある廃墟となった巨大な宇宙戦艦。
壊れた宇宙戦艦を万能工具を駆使してナビロボットと2人で修理中。
電気が復旧して何日か経った頃。俺はドッグで魚釣りをしていた。
この戦艦のドックは出てすぐがこの島の浅瀬だ。ここで釣れる餌が良いのか魚は脂が乗っててマジで美味い。毒を持ってる激似の魚もいるけどその辺は魚の調査をしっかりやってくれたクルーの皆さんに感謝だ。
なんて感じで釣り糸を垂らしてたら。
「やばい、やばい、やばい! 落ちる、落ちる、落ちるー! きゃああああああ!」
バシャーーーーーン!!
何だ? 叫び声と水しぶきの音。見るとちょっと遠くの海面に人が居た。変な乗り物に乗ってそれが水に浮いていた。
何だあれ?
ナ○シカに出てきたような1人乗りの飛行機に見える。
「おーい、大丈夫かー?」
「大丈夫じゃなーい、助けてー!」
声からして女の子。
「とりあえずこれに捕まれー。」
その女の子に向かって釣バリを投げる。女の子が釣り針を掴んだのでドックまで手繰り寄せた。
「ふいー、助かったー。」
そこに居たのは青い髪の女の子。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとー。なぜかこの子が動かなくなっちゃって。」
この子というのはこの小型の飛行機みたいなの。直前まで飛んでたっぽいけど、これプロペラらしきものも無いのにどうやって飛ぶんだ?
「なあ、これってどうやって飛ぶんだ? ちょっと触っても良いか?」
「いいわよ。でもあたしにしか飛ばせない魔道具だから盗んでも無駄よ?」
「盗む気は無いよ。」
てか魔道具? 魔法で動く飛行機って事か。
「この子、なんで急に動かなくなったのかしら。……よっと。」
そう言って女の子は小型飛行機に乗った。
「え……? あれ……? やっぱり動かない……。もしかして……壊れた? ウソ!?」
女の子はメッチャ焦り出した。
ーー
「ダメ……完全に動かない。……ついに私のも……」
まさかまさかまさか私の魔道具が壊れた? よりにもよってこの「鉄の箱」のある孤島で。この辺は海賊船すら近寄らないほど凶悪な海のモンスターが出現するのに。
この空を飛ぶ魔道具が無ければ大陸に戻れない。
そう言えば私を助けてくれたこの怪しいお兄さんは……
「……ねえ? あなた、ここに住んでるの?」
「俺? まあそうだよ。」
聞いてみたらマジだった。
「ここにはどうやって来たの? 船?」
「ええと、流されて?」
このひと、漂流者だった!
私はガックリと膝をついた。
「ふえぇぇ、どうしよ〜、帰れない……。」
私も似たような遭難者だけどさ。
どうしよう……。
パパ……
ママ……
……もう会えないのかな?
……
「なあ、これって直せないのか?」
「は?」
「この魔道具。」
……はあ。
……この人は魔道具の常識を知らないのね。
「……無理よ。…。魔道具は一度壊れるともう直らないの。直す方法は無いわ。」
昔から色んな人が研究してるけど動かなくなった魔道具は直せない。無理矢理に分解しようとして爆発を起こしたって話も少なからず聞く。
そう言うと男は「ふーん。」と少し考え込んで何かを取り出した。
何だろう?
小さい鉄の箱が手にある。
「……何それ?」
「デジカメ。」
でじかめって何?
その男はそのでじかめとやらを私の魔道具に向けた。で、何かスイッチを押したと思ったらピカッと光った。
「へー、割とシンプルな構造だな。」
「え? 何が?」
「この魔道具のシステム構成が単純って事。」
しすてむこうせい?
そして男は私の魔道具をベタベタ触り始めた。
「こことここを長押しか。それで電源ON……」
なんか私の魔道具の「何も無い所」をずっと指で押している。
何してるのこの人?
「あ、登録者を増やす機能もある。今度はこことここを長押し……。長押しが多いな。変な設計思想。」
とうろくしゃをふやす?
男はまた別の「何も無い所」指で押している。
で、男はおもむろに私の魔道具に乗った。
「なあ、これただ電源が落ちてただけみたいだぞ。」
「え? でんげん? どゆこと?」
「どこも壊れてなかったって事だ。ほら。」
男は私の魔道具を浮かせた。
「なんで! 私にしか使えないはずなのに!」
いったいどうやって? この魔道具は「初めて乗る人」以外に操作出来ないはずなのに!
男は魔道具を浮かせると飛んで行ってしまった。
「おお、異世界の魔道具スゲーーー!!!」
男は遥か上空をグルングルン飛びはじめた。
えっ!? 操作にはかなりコツがいるのになんであんな上手く飛べるの! 私は操縦を覚えるまで試行錯誤を何度も繰り返してすっごく苦労したのに!
「ヒャッホーーー!!!」
すごい大旋回を始めた。
ちょ! 私でもあんな動きはした事は無い。
なんかだんだんと嫉妬の炎に火がつき始めて、
「コラーッ! 私の魔道具返せーー!」
思わず私は声を張って叫んでた。
もう帰れないって考えてた時の私の気持ちはどっかに吹っ飛んでた。