俺のスキルは万能工具 ー ナビロボットを直そう②
ナビロボットの胸に手を突っ込んだら感電した。原因はおそらくあの太めの剥き出しの配線。胸のバッテリーから伸びている配線だ。
「電気がのってたか。ちょっとびっくりしたけど逆にバッテリーが生きてた事がわかったな。」
かなりビリビリしたけど得たものはあった。
ところであのビリビリ具合はどれくらいの電圧なんだろう?
あっ、
また手に工具が現れた。
絶縁性が高そうな「ゴム製の作業服」が体に現れて、
絶縁性の高そうな「ゴム手袋」と「静電靴」を装備して、
手には「検電器」があった。
これは……配線が通電してるかしてないかわかる奴だ。しかも電圧値の表示機能付き。試しにその剥き出しの配線に検電器をつけてみる。
「おおっ、219 V! そりゃあんなにビリビリくるわけだ。」
人は42Vでも死ぬと言われている。死にボルト(42V)とも呼ばれているあれだ。俺、よく死ななかったなー。運が良かったな。
……てかそろそろ俺はスキル万能農具じゃなくて万能工具を持っているんだって認めざる負えない。なんで万能工具? って理由は置いておいて。
俺のスキルは万能工具。
万能工具はイメージした工具だったり頭の片隅に記憶しているような見た事がある工具がこの手に実現する。出し入れ自由。手放すと消失する。
またその工具を使う時の保護具も同時に現れる。アーク切断工具を使う時は鉄の面と難燃材の服と手袋をいつの間にか装着している。しかも工具関連の消耗品も使えるみたい。
例えば「絶縁ビニールテープ」。
巻いてあるタイプだ。試しにビニールテープをどんどん出してみる。だが巻いてある方は減ってるようにみえない。無限に使えるという事だ。
これで被覆が破れた配線を補修しとこう。他には例えば「結束バンド」。小袋に入った小さめで白色の結束バンド。あっ、白じゃなくて赤や黒にも変化するしサイズもある。
最大で2メートルくらいの極太結束バンドも使えるみたいだ。とりあえずこれはロボットの配線の区分けに使おう。ゴチャゴチャしているのは性に合わないから。
よし。万能工具の確認はこのくらいでまずこのナビロボットを直そう。まずは切れてる配線を繋ぎ直すために……ここは「圧着工具」と「閉端子接続子」を出そう。
閉端子接続子は通称パラシュートとも呼ばれ配線と配線同士をダイレクトに接続する端子だ。
俺が感電したであろう配線と相手側の配線を「電線カッター」で先っちょを整えたら……閉端子接続子を被せて……で、ハサミみたいな圧着工具で挟んで圧着する。
これで補修完了。本当は活線状態(電気がのった状態)でやるのは危ないんだけど高性能なゴム手袋もしてるし勢いでやったった。
他にも切れた配線を頭の中の3D図面を頼りにしながら接続していく。コツコツとした地味な作業だ。だが着実にこのロボットは直っていく。(はずだ。)
「ふう。これで胸の中の配線は全て修復完了だ。」
1〜2時間は作業していただろうか? 修復した配線は100を超えている。だってかなりの数の配線があったから。
ところでロボットは配線を全て直しても動かない。別の所も問題があるのかな?また「デジカメ」を取り出して胸以外の場所を撮っていく。
両腕……図面上は問題なし……。
両足……図面上は問題なし……。
デジカメで撮るとその部分の構成や大体の機能がわかる。
へー、腕や足の駆動方法は電気信号と駆動電力を受けて動く人工筋肉が金属体の内部表面にあってそれが動くみたいだ。
「人工筋肉とは……さすが異世界。高度な機械文明が発達してるんだなあ。」
この人工筋肉が損傷したら俺の出す万能工具で直せるのかな? なんて考えてると俺の手に「シリコンガン」が現れた。
これは風呂のタイルの隙間や窓の隙間なんかをぴっちり埋めるためのシリコンを打ち出すものだ。こんなんで人工筋肉が直せるのかな?
……まあ、いいや。人工筋肉は別に損傷していないから次に行こう。
次は頭部。
……あっ、問題有りだ。頭部の中の基盤が一部やられている。図面上で赤くなっているからわかる。この基盤の仕組みは図面によるとスゲーややこしいけど一つ一つの機能がわかるからかろうじて全体像がわかる。
人間で言うと脳みたいな役割の基盤。よし、じゃあこの基盤を直せばこのロボットも動くようになるかな? 動力であるバッテリーは無事みたいだし。
ちょっと頭部をよく観察してみる。頭部は……あっ、よく見たら小さいけど星型のネジが頭にあった。ちょうど頭の半分、後頭部を外せるような感じで。
今度はネジの頭をナメないように慎重に外して……後頭部の部分を開けた。
活線作業はマジで危ない。