ダンジョンの女神セサミ様 ー 女になる。えっ、俺も?
ややアブノーマル注意
ダンジョンの祭壇に来た。
禍々しい雰囲気の祭壇。
「やっぱりこの空間は女神様を感じる。ここの女神様は背徳感を刺激してくるから……あふーん。」
感じているパエリアは置いといて。
女神セサミ様ー、いらっしゃいますかー?
(あら。あらあら珍しいのー。召喚勇者なの。)
はい。
(しかも2柱の女神から保護をもらっているの。
……だから「保護消去」が効かないのー。)
なんか、いきなり俺たちの「女神の保護の消去」をしてきたっぽい。メーコ様のおかげで保護は消去されずに済んだけど。
(いったい何しに来たのー?)
女神セサミ様に事情を説明する。
(事情はわかったの。私は「変質」の女神の保護を持っているからその保護を与えれば【性別変換】できるのー。)
なるほど。
(どっちがその保護、必要なのー?)
こっちのミナコです。
「うーん、でも俺いらないわ。」
えっ。
「そうだ。デンちゃんが女になっとくか?
そしたら諸々、オーケーじゃね?」
いや。何がオーケーなんだよ。
元々女だったのはミナコだろ。
元の形に戻る方が筋だ。
「いや、でももう男の体で馴染んじゃったし。
女神様、女にするのはこちらのデンちゃんで。」
いや、こっちのミナコで。
「デンちゃんを女にしてください!」
いやいや、こっちのミナコを女に!
お願いします! 女神様!
やばい、なぜかミナコが俺を女にしようとしてきている!
(いったいどっちなのー。もー、両方ともなっちゃいなさいなのー。)
え?
俺達が光に包まれる。
えっ? えっ? 嘘っ?
目の前のミナコが……「女」になった。筋肉でゴツゴツだったのが多少筋肉質だがスラッと細くなって「女」になってた。
「あっ……デンちゃんも女になってる。
思ってたより可愛い……。」
まじか。俺も女になったのか?
……色々と確認するとマジで女になってた。
「ん……! 大変。デンが女に。」
「えっ? 何が起こったニャー!」
周りの皆も慌てる。
まじかよ。
女になってしまった。
俺もう男に戻れないのか?
一生、女のままなのか?
もうレーンやフォーと……、
それは嫌だ。
男に戻りたい。
……ん? あれ、
……男に戻れたわ。
「あっ、俺も戻れたわ。」
目の前のミナコも男に戻っている。
(あははは。何を慌ててるのー。性別変換「できる」って言ったのー。戻れるに決まってるのー。)
女神セサミ様に笑われた。
(やっぱり人間をおちょくるのは面白いのー。)
メーコ様の言ってた気まぐれってこれか。
ー
(そうだ。せっかく話せる相手だからアイデア募集なのー。)
アイデア?
(ダンジョンをもっと面白くしたいのー。)
ダンジョンを面白くするアイデア? いきなり聞かれても。……あっ、じゃあ逆に女神セサミ様は「どんな瞬間」を面白いと思いますか?
こういう時はニーズを深掘りだ。
(そうねー。やっぱり「命の輝き」なのー。命をかける死闘が見たいのー。)
なるほど。
じゃあセサミ様が面白いと思う死闘をした者により良いアイテムを授けたりするのはどうでしょう。
(ふむふむ。でも人間は全てのアイテムを掻っ攫ってくから何が良いアイテムかわからないの。)
それでは……セサミ様の感動の度合いを「数値」にしてその分をお金だったりダンジョン内で使える「ショップ」のポイント付与だったり「数値」で与えるとわかりやすいと思います。
(ふむふむ。ダンジョン内にショップなのー? 盲点だったの、面白そうなのー。)
ーー
(色々と参考になったのー。)
それは良かったです。
(私も勇者を召喚しようかなの。ダンジョンを運営させたら面白そうなのー。)
それはやめといた方が……って言おうとしたけど、この女神様は気まぐれっぽいから適当に濁す。
(私は【召喚】の保護も持ってるの。その保護もあげるの。)
えっ、いやー、別にいらないです。しかも召喚って戦闘用の保護ですよね? 俺、戦闘とは無縁なんで。
(むっ、いらないの? 私があげるって言ってるのに。ちゃんと戦闘用以外にもあるの。その【万能工具】に近い力も持ってるの。)
俺がいらないと言ったらセサミ様はムキになられた。
(ほら。【工機召喚】なの。ありがたく使うのー。)
えっ? 工機召喚?
(じゃーなのー。)
女神様の気配は一気に無くなっていった。
セサミ様は聞いた通り気まぐれな女神様だったな。
ーー
ダンジョンから戻った後、
「デンちゃん」
女の姿とミナコと少し話をした。
ミナコはこの異世界に来て男メンタルとして振る舞ってたが女に戻ってちょっと考え直したらしい。男の自分はやっぱり「仮」だったと。
「でも男の体は楽だったわ。生理も無いし頭空っぽで力技で解決しちゃえー、みたいな所あるし。」
そういうもんかね。
「そうよ。セイヨクだけで相手の気持ちもこれっぽっちも考えないし。」
ちょっと前のミナコがそうだったじゃん。
「う、あの時はごめん。」
別にいいよ。男って頭空っぽのバカ同士だから、
多少のことは笑って終わりだ。
「……デンちゃん。男の時はなんだか形が違ったけど女の私が感じるこの気持ちだけは……やっぱり特別。思い出させてくれてありがと。」
そう言ってほっぺにチューされた。
「言っとくけどハーレムとか異世界だけの事なんだからね。普通は1人の女を大事にするものなんだからね。他の人は良いかもしれないけど私はそうじゃ無いんだからね。きちんと責任を取ってくれる人じゃないと……。」
くどくど言われたけどその口を塞いだ。
会わない間に美人になったな。ミナコ。
「……バカ。デンちゃんも会わない間にこんなかっこよくなって。バカ。」
ーー恋人が増えた。
ーー
「たまにはデンちゃんが女になっても良いのよ? 私が男で。」
ミナコからとんでもない提案をちょいちょいされるけど断っている。
流石にね。