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万能工具で異世界修理屋  作者: 武川やまね
プロローグ 万能工具の性能確認編
2/37

万能農具の使い方がわからない ー アーク切断工具


気がつくと真っ暗で何も見えない水中にいた。


「ガボガボガボ!!!」


慌てて息を止めるがしょっぱい水を少し飲んでしまった。まさかあの女神の言った通り本当に海底に転移させられてしまった?


そして勢い良く海流に流されていって……。



「ゲホッゲホッゲホッ。」


次に気がつくと陸地に打ち上げられていた。


周りは苔むしてゴツゴツした岩に囲まれた洞窟。そこの波打ち際に打ち上げられた。薄暗く光る謎のコケが自生していてそのおかげで周囲がうっすらだが見える。


「ここは……海底洞窟?」


幸いどこもケガはしていない。体は問題なく動く。海水でビショビショになった体をなんとか動かして立ち上がる。


すると、


ザバーーーン!!!


バクッッッ!!!


さっきまで自分のいた所にサメみたいなワニみたいなとにかく「大きな牙」が見えた。その「大きな牙」はすぐに海に引っ込んだ。


えっ? これってもしかして俺を狙ってた?


怖っ。


……ゾワゾワッ。


「ウワアアアアアアア!!!」


もたつく体をなんとか動かして走った。後ろを振り向く暇なんてないし頭の中は真っ白で視界も狭くなる。


洞窟の奥へただひたすらに走った。



「はあ、はあ、はあ。」


洞窟の最奥というか行き止まりまで走った。


行き止まりの石の壁の真ん中辺りは高さ2メートルくらいの「鉄の壁」のようなものが見えた。


なんだろう? この鉄の壁。


石の壁と鉄の壁には若干の隙間が見えるがとても人が通れるような隙間じゃない。



まあ、でもとりあえず後ろを振り返っても何か来る気配は無いしちょっと心を落ち着けて状況を整理しよう。


ここは……やっぱり異世界で……俺は勇者召喚されて……スキル万能農具をお願いして……。


そうだ、万能農具……!


女神から万能農具を貰ったみたいだがどうやって使うんだ? 万能クワの出し方は? 万能カマや万能オノは?


なんて色んな事を考えてみたり念じたりしても特に何も出たりしなかった。


うーん、万能農具の使い方がわからない。

スキルってどうやって使うんだろう。



ズン!


突然、大きい足音が聞こえてきた。


ズン、ズン、ズン、ズンと


俺が来た道から何かが向かってくるような足音。もしかしてさっきの大牙の奴か? なら逃げないと! でもどこへ?


この鉄の壁は隙間がありそうだけど指が入らないほど狭いし、万能農具はなんだか使えない。


やっぱりスキルなんてものを貰ってないんじゃ?


どうすれば……!? この大きな足音の奴と対峙する? 無理無理! じゃあ逃げる!? どうやって! 周りは石の壁に囲まれた洞窟だし鉄の壁も頑丈そうで穴も開けられそうにない!



……ん?



……えっ!?



何だか「鉄の壁に穴を開ける道具」を想像したからか体に異変が起こった。



俺の顔の前に「鉄の面」が現れて、

体には難燃材のような「前掛け」が現れて、

同じく難燃剤のような「手袋」と「安全靴」をいつの間にか身につけてて、

そして俺の手はボタンを押すと「火が出そう」な工具を持っていた。


これは……


この道具は使った事が無いけど見た事がある。


これは多分、「アーク切断工具」だ。


試しにボタンを押してみると、


シュゴーー!!!


真っ青なアークが飛び出した。


うわっ!


思わずその工具を手放すとシュン! と足下で立ち消えた。


と、同時に面や前掛けも立ち消えた。


何だこれ?


もしかして俺のスキル万能農具?


でもこれは農具じゃなくて工具じゃね?



ズン! ズン! ズン! ズン!


聞こえる足音がだんだんと大きくなってきた。とにかく今は細かい事を考えている場合じゃない。俺は「アーク切断工具」を装備して「鉄の壁」に穴を開ける事にした。


ただ俺は「アーク切断工具」なんて使った事が無い。やってるような様子をチラッと見た事があるだけだ。だけどやるしかない。


俺は壁に壁にアーク切断工具を押し当ててボタンを押す。


ジジジ! ……ジジジジジジ!


押し当てながらゆっくり動かすと鉄の壁が切断されていく。火花が飛び散るかとも思ったがそんな事は無かった。よく見ると穴を開けようとしている奥側に火花は全部飛んでいた。


そしてなんとなくだがこの工具の「適切な使い方」がわかるような気がした。


ここはゆっくりゆっくり真っ直ぐ動かして……穴がしっかり空いたのを確認しつつ……人がちょうど通れるくらいの30cm四方の穴が空けば……十分!


ガゴン!


外れる音がした。


「おりゃ!」


俺はその鉄の壁の部分を蹴破って急いで穴に入る。


「熱っ!」


切断面を手で触ってしまってかなり熱かったけどそんなのを気にしてる余裕はない。俺は鉄の壁の向こうに転がり込んだ。


「はああああ、なんとかいけた……。」


開けた穴を見てみると大体10cmから20cmくらいの厚さの金属を切断している事がわかった。


「金属にこんな穴を開けられちゃうもんなんだな。」


アーク切断工具ってすごい。


と、ちょうど穴の向こうの俺のいた場所に、


ズン!


ゾウのような大きな足が見えた。そいつの全貌はわからないがとにかく巨大な事はわかる。


「はわー、……ちょっと穴を開けるのが遅かったら奴に……。」


あー、怖っ!


そいつは俺を見つけられないと分かると来た道を戻って行った。


とりあえず一安心。



ところでこの鉄の壁を蹴破った中は暗い。

何か明かりになるようなものは出せないだろうか?


アーク切断工具は確かに火が出るけど、

明かりのために使うには危なすぎる。


どうしよう? 何かそういう道具は出せないかな? 

暗いところで作業するような……炭鉱採掘とか?


……あっ、


またなんか体に異変が現れた。

頭にはヘッドライト付きのヘルメットが現れて、

作業服と軍手と安全靴を装備していて、

手には「ツルハシ」を持っていた。


これは炭鉱採掘の装備か? ツルハシって農具なのか?



とりあえず頭のヘッドライトをつける。光量調節や点滅も出来る高性能なヘッドライトだ。この内部を照らすと通路のような物が見えた。


この鉄の壁を蹴破った中は……もしかして人工的な建物かな?とりあえず何か無いか探すか。



ヘッドライトの点滅はいったい何に使うのか?

先輩からはイタズラ用としか考えられんと言われて目の前で点滅させられた。眩しかった。

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