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70.プロテア防衛戦 4

「あちゃー。またギリギリのタイミングだわ」


「本当に。サラが起きないのが悪いんじゃない」


 ギルドメンバーであるモンクのリリーとハンターのサラ。

 先ほどフルングニルの頭に直撃したのはサラの属性付与の矢だ。

 彼女達はヴァルキリーさんの時もオレを助けてくれた。そしてどうやら今回もオレは助けられたようだ。


 リリーがオレに話し掛けてくる。


「樹。メール気付くの遅れてごめんね。サラが全然起きなくて時間掛かっちゃった」


「イギリスはまだ早朝よ…時間考えて欲しいわ」


 サラはあくびをしながらオレに近づいて来る。


「いや、リリー、サラ・・・本当に助かったよ。これで二回目だ。あれが防御魔法のせいで倒せなくてさ」


「そうなの?風矢は効くみたいだったけど」


 サラが放った矢は確実にダメージを与えていた。


「そうそれだ。どうやら魔法は無効化出来ないみたいだ。それならやりようが有るかもしれない。サラも居るしな」


「そうよ、サラ様に攻撃を任せなさい」


 サラが胸を張りオーバーぎみに威張ってくる。


「ただ問題がアレだ」


 オレは佐山さんと鈴さんが中に居るトラバサミを指差す。


「中に二人仲間が閉じ込められている。中の二人の体力は限界だ。油断するとすぐに潰されてしまうだろう。出来る限りその余裕を作らせないようにしないといけない」


「まあ攻撃に集中できれば、ハンターの攻撃速度なら余裕よ」


「で……だ。作戦としては……」


 オレはサラとリリーに作戦を説明する。

 その内容に二人は驚愕していた。


 サラは…。

「嫌よ!流石にこの歳でそれは恥ずかしいわ!!」


 対するリリーは。

「それ面白そうですね!サラがそんな事されてるの見るのは、現実じゃありえないし!」


「他に手段が無い!サラ悪いと思うが頼む」


「はあ…絶対変な事しないでよね」


「でリリーは天使の注意を惹きつけてほしい。それで合わせて…」


 よしこれで作戦は出来た。色々と問題は有るし危険だが、とりあえずやってみよう。


 なおこの間にもフルングニルは魔法を使ってきている。

 会話はギルドチャットでしていたので…恐らく聞かれてはいないはずだ。

 だが種が分かっていれば回避は容易い。巨人族は初見殺しが多いのか?


「ふん。人が増えても結局逃げ回る事しか出来ないのか。そうこうしている内に、前線は押されているぞ」


「待たせて悪いな。ここから反撃だ」


 オレはサラの後ろへ廻り、その足の間に頭を突っ込む。

 …戦いの最中何をしているのか?一応言っておくが、これはちゃんとした作戦だ。

 オレはそのまま身体を起こしサラを肩車した。


 オレがサラの回避を担当し、サラは攻撃に集中してもらう。

 そのためには肩車が一番動きやすかったんだ。

 ただ予想外なのが……顔に当たる太ももの感触がリアル過ぎる。非モテにこれは…正直嬉しいが、


(…ダメだ。集中しないと!)


「サラって以外と…」


「……重いって言ったら、目に矢をぶっさすわよ」


「……いや、安心してくれ逆だ。身長のわりに軽いと思う」


 実際のところサラの身長は、オレよりも大きい。

 サラ173cm、オレは170丁度。

 ゲームの力補正もあるのだろうが、充分動くことが出来て、これなら攻撃を回避出来るだろう。


「あはは!サラ顔真っ赤!」


 リリーがお腹を抱えて笑っている。


「リリーうるさい!早く天使の所いきなよ!樹もさっさと終わらせるわよ!」


 顔を真っ赤にしたサラの怒声が飛んだところで、気持ちを切り替える。

 リリーも慌てて天使たちの方へと向かったようだ。


「…じゃあいくぞ」


 オレはサラを肩車したまま、フルングニルに近づいていく。

 その姿にフルングニルは驚いているようだ。


「そのような状態で、避けれると思うな!」


 フルングニルの声と共に、巨腕が襲ってくる。


オレはバックステップでそれを回避。

すると上にいるサラが声をあげる。


「もう少し動きを抑えて!これじゃ狙えない!」


「…善処する」


 サラの弓の腕は見事で、回避している最中でも確実にフルングニルの頭を打ち抜く。

 フルングニルの焦りようから、確実にダメージは蓄積されて来ているようだ。


 フルングニルは魔法、近接攻撃を駆使して様々な攻撃を放ってくる。地割れを起こしたり、岩が飛んできたり…石の槍が地面から飛び出してきたり。

 その一つ一つの威力は大きいのだが、魔法の前にはちょっとしたモーションがいるようで、それを見逃さなければ問題無く回避できる。


「…やっぱり樹の動きは変だわ。なんで人を乗せてこれだけ早い攻撃を回避出来るのよ」


「そうか?モーションあるだけ分かりやすいだろ」


 口を動かしながらも、オレとサラは自分の仕事を全うする。

 周りから見ればその光景はおかしなものに違いないが、その戦法のおかげで戦いは一方的となる。

 既にサラの属性矢は何十発も頭に直撃している。


「サラ、そろそろフルングニルが瀕死になるかもしれない。そうなると揺れるが我慢してくれ」


「ええ、覚悟しておくわ」


 オレはリリーの位置を確認する。

 

(……丁度良いタイミングかな)


 サラの風を纏った矢が、フルングニルの眉間に突き刺さる。

 するとフルングニルの動きがピタリと止まる。


「……倒した?」


「いや……多分くるぞ」


 オレは止まっている間に強化魔法をかけ直す。

 サラは今の内に、とMP回復ポーションを飲んでいる。


「もう我慢できん。岩の巨人の恐ろしさ……目に焼き付けろ」


 するとフルングニルの身体が赤く光り、全身から岩のトゲが飛び出す。恐らくフルングニルが瀕死状態になり、強化状態になったのだろう。

 こうなると回避も難しくなり厳しい戦いになる。

 オレは阿修羅の使用も考慮に入れながら、気持ちを入れなおす。


 そして岩に閉じ込められ、必死に耐えている佐山さんと鈴さんを早く助けないと。

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