63.政府関係プレイヤー
(なるほど。テントの中は別マップ扱いの部屋になってるのか)
入ったテントの中は見た目以上に広く、外観の数倍の広さがあった。
そして…中には既に4人のプレイヤーが居た。
並木さん、その隣には刀を持った日本人男性、壁際にライフル銃を持った若い黒人女性、そして中央にはガタイの良い斧を持った中年白人男性。
「こんにちは上野樹です。よろしくお願いします」
挨拶をするとそれぞれが目を向けてくる。中でも黒人女性の目は鋭く睨んでいるようにも見える。
恐らくだがテントの中に居るプレイヤーは、政府からの依頼を受けたプレイヤー、或るいは政府関係者だろう。
そしてこのテントの効果は、音の遮断と入室制限といった所だろうか。
そして白人男性はアメリカ政府関係者で上位の立場の人だ。並木さんと話になったのだけど、アメリカのRDO専門部隊ギルドのギルドマスターをしている……確かリチャードさんだったか。
白人男性はオレを確認し周りを見渡しながら話し始める。
「まだ全員集まっていないが、いつ侵攻があるか分からないので話を始めたさせてもらう。私はアメリカ陸軍所属、現在はRDO特殊部隊司令官のリチャードだ。そうだな…まずは軽く自己紹介をしようか」
思った通りだったが、その貫禄を見るに軍の中でも偉いのだろう。リチャードさんは話を続ける。
「まず、私の職業は傭兵で斧によるアタッカーでレベル96。私は戦いに自信があるが、今回は指揮に回ると思う。直接の戦いは君達に任せる。よろしく頼む。…では次はシンディ」
リチャードさんはライフル銃を持った女性を見やる。シンディと呼ばれた女性は気だるそうに話を始める。
「……私はアメリカのシンディ。元々はFPSのプロゲーマーで、職業はガンナー。戦い方はスナイパースタイルで後方支援に回る。レベルは97」
シンディと名乗った黒人女性はオレも見たことがあった。FPSの大会で有名なゲーマーで、一部ゲームでは"FPSの神"呼ばわりもされるほど。
実際にプレイを見た事があるが、その時もスナイパーをしていたと思う。
シンディが終わりの意味を込めて手を横に振る。すると、並木さんの隣にいた刀を持った日本人男性が話し始める。
「某の名は佐山 二郎と言う。現実では剣道の道場を経営している。ゲームは疎いのだがこの度日本政府から依頼を受け、RDOをプレイしている。職業はサムライで近接戦闘が主でレベルは92。余談だが、そこの並木君とは現実でも知り合いだ」
(いかにもな侍の格好で、某。こ、これはそういうロールプレイなのか、それとも現実でもそうなのか…!?)
しかも佐山さん、並木さんと知り合いなのか。
どのような関係かは気にはなったが、今話す事では無いだろうし出かかった質問を飲み込んだ。
(でもあれ……剣道で佐山って確か…)
頭によぎったこともあったが、自己紹介の番になってしまった。
話そうかと思ったら、並木さんの方が早かった。
「並木 礼司です。ゲーム配信メインでお金稼いでます。職業は騎士で、レベルは95。盾よりのスキル構成で、耐久だけなら自信あるかな」
それぞれが頷き、オレの番だ。
「オレは上野 樹です。職業はモンクで近接戦闘するスタイルです。本日レベル99になりました。」
「「おお」」
佐山さんとリチャードさんが驚くが、シンディさんの表情は相変わらず。
「チッ」
しかも舌打ちまで…オレ何かしただろうか?
「今回、オレの信憑性も無い情報で集まって頂いて本当にありがとうございます。…でも神達は絶対に侵攻してきます。必ずプロテアを守り抜きましょう」
オレの言葉にシンディさん以外が頷いたところで、リチャードさんが口を開く。
「次は作戦について話そうと思う。それとまとめて話すが、質問は最後にして欲しい」
テントの中に居る全員が頷き…リチャードさんは作戦説明が始める。




