39.サードデイ
プレイ3日目の朝。
天気は3月にしては珍しくい雲の無い快晴。
オレはRDO動画を眺めながら、パンとコーヒーで朝食タイムを取っていた。
生放送の視聴者は1日目に比べると全体的に減っていた。
そしてオレの動画は相変わらずの三位で、分不相応だけどありがたい。
取り敢えず生放送で最後の挨拶も出来なかったので、謝罪のコメントを入れておいた。
そしてここ二日の反響で…何と放送主としてのランクが上がっていた。これで広告料の単価が少し上がる。
うーん…毎日これだけ視聴者が付くと、広告収入だけで生活していけそうだ。
まあRDOフィーバーが何時迄も続くわけもなく、視聴者は右肩下がりだろうけど。
今は生放送一位のナミキー動画を見ている。
どうやらナミキーさんはパーティー狩りに移行したようだ。
VIT騎士のナミキーさん、魔法使いの女性、プリーストの男性。
バランスが良く、少人数パーティーなら理想的な構成だろう。
LvもLv64、61、60となっていた。
そして目がいくのが…ナミキーさんの装備。
その装備は全身キラキラのテッカテカに輝いていた。
もう一度言う。
店売り数十万Gのミスリル装備が…眩しいほどに紫色の光を放っているのだ。
長剣、大盾、鎧や兜、篭手やグリーブ全てが。
その輝きはオレの半漁人の手とは比べ物にならない。
急いで別の動画を確認すると…どうやら何百万円も使って全身+8らしい。
間違いなく現状RDOのトッププレイヤーではなかろうか…。
武器だけでも欲しいな…+8。
そういえばこういったMMOで、リアルのお金が強さに影響するシステムについては昔から賛否両論だったよう。
最初期のMMOは月額制で、リアルのお金が強さに影響することは無いものだった。
昔のプレイヤーはリアルと隔離されたゲーム内だけでの実力主義、という環境が好きだったのだと思う。
だが一部MMOでアイテム課金や、ガチャを始めた所…売り上げが数倍に膨らんだ。
その後は他企業もそれに倣い、MMO全体でアイテム課金が主流に。
そうして…月額制MMOは消えていった。
その後はスマートフォンのソーシャルゲームが流行り、ガチャやアイテム課金は一般的になっていったそうだ。
現在のゲームではMMOであろうが、ソーシャルゲームであろうが、現実のお金が強さに影響するのは”当たり前”の話になっている。
当たり前の事なのでオレはどうとも思わない。
だがお金を持っている人が羨ましい…とは思う。
そしてその延長線で、もっとリアルに影響した要素を取り込んだのがRDOだ。
もしRDOが成功しモデルケースが出来た場合。
他企業もそれを模倣し数十年後では、”当たり前”になっているのかもしれない。
オレはRDOで楽しみながら現実のお金を稼げたら良いな、という考えでやっている。
上手くやれば仕事として成り立つのでは?と思ったのだ。
その為には出来るだけ先行し、稼げる場所を早く見つける事が必要だ。
早く強くなって競争率が低いうちにボスモンスターで稼ぐというのも手段の一つ。
まあどちらにせよレベリングは最優先事項となる。
稼げる狩場で、効率良く、安全に狩る。
その為に強さは必要不可欠だ。
MMOに飽きて義務感でログインするだけ、周りの付き合いで狩りに付き合うだけ、オレはそんな風にゲームをしたくはない。
少しでも長くRDOを楽しみたいし、他プレイヤーにもそうであって欲しい。
その為にオレの動画で、一人でも多くプレイヤーが楽しんでくれるのなら嬉しいと思う。
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一方その頃…。
RDOサーバー内、unknown_area"神域"。
そこにある大きな神殿の中に、白髪白髭の体格が良い男と黒髪の華奢な青年。
「やあ、ポセイドンさん。どうやら人間と戦ったらしいね?」
「お主は…。儂に北欧の神が何の用だ」
「僕ら北欧は少しずつ動き始めるけど、ギリシャ側はどうするの?」
「ふん、儂は知らん。北欧が動きたければ好きにすればよい」
「ふーん…。でもあなたがギリシャ神の実質トップなんだから、ちゃんとして欲しいなぁ」
「儂はやりたいようにやる。もしギリシャ側でも北欧に賛同するなら別に文句も言わん」
「はいはい分かりましたよ。でも復活を楽しみにしてる神々も居るんだからさー、それだけは覚えていてよ」
それだけ言い残し黒髪の青年は去っていく。
「儂ら神をを信仰していた人々を滅ぼす…か。…ゼウス。儂はどうしたら良い……?」
広い神殿の中に1人残されたポセイドンは、誰にも聞こえない声で呟き…空にある大きな太陽を見上げた。
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