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VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか。  作者: 飛楽ゆず
2章、そして全てが動き出す
37/85

36.リリー=ローズ・グリーン

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私はリリー=ローズ・グリーン。

イギリス在住の18歳で、卒業を控えた高校生。


これは今から一年ほど前のお話です。


サラとは家も近くて昔からの幼なじみ。

抱える悩みも同じで、かけがえの無い存在。

本人には言わないけどね!


両親は生まれた家庭は昔の貴族に縁のある、由緒正しい家だそうだ。そのために家庭は厳しかった。

けれど、優等生を演じていれば両親は何も言わない。

それが分かってからは適度な勉強をして、好きなことに時間を使っていくように。


家庭の事情もあり、学校では猫を被って優等生をしている。

…けど、実際はゲーム好きで、特に格闘ゲームが大好き!

サラは銃で戦うFPSの方が好きみたいだけど、たまに付き合ってくれる。ま、まあ…向き不向きは有るよね。



私はそうして勉強とゲームを両立する日々を送っていた。

そして…運命のゲームに出会う。


それは剛拳5という家庭用ゲーム機、アーケードので展開された日本の格闘ゲーム。


この剛拳5は、今までのボタン型コントローラー方式を撤廃し、グローブ型のモーション感知コントローラー方式へと移行した。

それに加えてヘッドギアを使用したVRシステム。


格闘ゲームというよりも、擬似格闘といった感じ?

ネットでは賛否両論だったけど、私は見事にハマってしまった。


あまりにハマりすぎて毎日寝不足だし、成績も落ちてしまった。

…三ヶ月で流石に生活を戻したけど、ゲーム禁止令が出るスレスレだったかもしれない。


でもそのお陰で私はネット対戦で世界ランク一桁を維持できる程になった。

その知名度はイギリスのゲーム雑誌にインタビューが載るくらい。

顔は色々とマズいから隠したけどね。


プレイヤーネームは"プリンセスローズ"。

これは私が好きなキャラクターがお姫様のようなドレスを着ている事と、ミドルネームから。


そんな一桁常連のわたしでも、ランキング二位には1度も勝てなかった。

一位にはまぐれで勝てたのに二位の人だけは何度やってもダメ。

格闘ゲームだしキャラの相性もあるんだろうけど、私は勝手にライバル視していた。


そのランク二位のプレイヤーネームは"ゴッドツリー"。


ネットで調べてみると、彼は上野 樹という日本の高校生。

様々なゲームの大会に参加していて、どれも良い成績を残しているみたい。

ってスポンサーまで付いてるじゃない!

私が全てを費やしている剛拳5も、彼にとってはやっているゲームの一つでしかない。

一方的にだけどライバル視していただけに悔しくて仕方がなかった。

その日は枕を涙で濡らした。



翌日どうしても悔しくてサラを家に呼んだ。

そしてわたしの姿を見て、目を見開いて驚いた。


「ちょっとリリー!?あなた目が腫れてるわよ?どうしたの!?」


「うぅ…サラ聞いてよ…」


私はサラに泣いた理由を話した。


「ぷっ…くくく…あはははっ!」


サラはもう我慢できない!とばかりにお腹を抱えて笑う。


「あははっ!ゲームで勝手にライバル視していた人が、片手間でやってたのを知って悔しいって!リリーはどれだけ剛拳が好きなのよ!」


「だって!自分の好きなゲームが片手間でやられてて、そんな人に負けたら嫌じゃない!私よりも強いんだったら、剛拳だけをプレイしてよ!」


「リリーは束縛するタイプ?何故か恋人に浮気された話みたいに聞こえるわ。不思議ねぇ」


サラの表情はずっとニヤニヤしながら私をからかう。

こっちは真面目に相談してるのに!

私は思い通りにいかずに黙り込む。


「あはは!リリー笑ってごめんごめん。でも聞いてるとリリーがその人を好きで、私を見て欲しい!っていう風に聞こえるのよ」


「そ、そんなわけ無いじゃない!相手の顔だって知らないのに!」


「えー?ネットで上野くんの顔写真出てたじゃん?嘘はよくないなー」


サラがスマートフォンの画面を近づける。


「な、なんでそれを…」


「少し地味だけど優しそうな顔ね?それなのに身体が締まってるのは、ギャップ萌えで高ポイントだわ。はぁ、学校の告白30人斬り天使リリーは、こんな人がタイプなのねー」


「な、何を言ってるのよ!直接会ったことも無い人を好きになるわけ……」


「あら。今はネットで出会って結婚が半分以上になってる時代よ?それに…」


「そ、それに…?」


「ネットの浸透で国際結婚も年々増加傾向よ?それに、高速ジェット機のおかげでイギリスと日本も片道6時間よ?」


「確かにそうだけど…」


「更に遠距離国際カップルには、こんなアプリが!二人だけのVR空間でラブラブデート!なんと触った感覚も再現されて、キスまで出来る!リリー…今なら間に合うわ」


「わ、私…自分の気持ちに正直に……って!ちがああああう!別に異性として好きなわけじゃないし!同じゲームのプレイヤーとして気になるだけだし!」


「ちっ、そのまま流されなかったか。ま、でもさーリリーが誰かに興味を持つだけでも珍しいと思うけど?ましてやそれが男の子なんて」


サラが指を鳴らしながら悔しがる。

…あ、危なかった。あのまま流されてたら、上野くんにメッセージ送ってた所だった…。


「そういえば。剛拳5の世界大会いつだっけ?リリーは出場権あるんでしょ?」


「世界大会……?1ヶ月後よ?それで開催場所は…日本…って!えええ!にほ…ん…?」


「あらあら…日本なら上野くんも来るんじゃない?直接会っても居ない人を好きにならない、って言ったけど。直接会ったら好きになるのかなあ…気になるわね?…っておーい?リリーさーん?」


「にほん……上野くん…会う…かも…?」


ボッ!と顔が熱くなる。


「ちょっとリリー顔真っ赤よ!?」


(うふふ…世界大会…楽しみ……)


バタンッ。


「きゃああああ!?リリー!?」


後でサラに聞いたら、私は真っ赤でニヤけた顔をしながら気を失っていたそうだ。


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