表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか。  作者: 飛楽ゆず
2章、そして全てが動き出す
34/85

33.プロテア観光

…流石に気持ちの切り替えが出来ず、RDOへログイン出来ないでいた。

その間、コーヒーを飲んだり、シャワーを浴びたが未だに気分は晴れず。


…現在の時間は午後11時半で、まだ寝るには早い。

気分転換がしたいのだが外に出る時間でもない。

そして、こういう時気軽に連絡する友人も居ない。…悲しい。


オレは少し迷ったが、VRヘッドギアを被ってRDOにログインすることにした。

だがレベリングをする訳ではなく、プロテア内の観光による気分転換ぎ目的だ。


目的地も無くプロテアをゆっくりと周りを見ながら歩く。


RDO内の視界は現実と相違がなく、現実にある国のように錯覚する。

近くの家屋を見ても。

真っ白なレンガが一つ一つ丁寧に置かれて建てられているし、手作業で行われているような目地のムラまで再現されているのだ。

違和感があるのは、レンガに汚れが一つ無くて綺麗過ぎるという点だけだろうか?

舗装されている道に関してもそうだ。

家と同じように白いレンガが埋められて舗装されてはいるのだが、土による汚れや馬車が通る時に出来る傷も全く無い。


ここまでの再現がされているのに、何故汚れは再現しない?

…それとも意図的に再現していない?

RDOの謎は深まるばかりだ。


でも…目的も無く歩くのにも飽きてきた。

だからといって行くところも無い。


(あ、そうだ!どうせ気分転換するなら、あそこへ行ってみよう)


どこがいいかは全く情報が無いので、適当に目についたその建物へと入る。

…中にはテーブルと椅子がきれいに並べられていて、そこに座る数人のNPC。

中に入ると同時に漂ってくる、料理の良い匂い。

オレが気分転換に訪れたのは…食堂だ。


RDOでは食事も再現されており、視聴者情報によるとかなり美味しいものも有るそう。

でも現状は情報が無いので当たりの店が分からない。

ま、マズくても良い思い出だ。



席に着きメニューを確認する。

どうやらこの店は洋食系の食堂のようだ。

メニューにはハンバーグやビーフシチューといった見慣れたものが並んでいる。

ここでは残念なことに主食はパンだけのようだ。

米派なだけに誠に残念である。


少し悩んだが、ビーフシチューとパン2つを注文した。

それだけでなんとお値段500G。RMで250円すか。

高くないですか運営さん…。


そしてこの値段だからか、プレイヤーの姿は見られない。

サーバーオープンしてからまだ二日目だし、普通のプレイヤーは娯楽にお金を使うのはまだ避ける時期だ。

2日目でここまで疲れ切ってるオレがおかしいんだ…。

あぁ…癒しが欲しい。


数分後ビーフシチューとパンが運ばれてくる。

配膳してくれた女性に、礼を言い料理を確認する。


な、なんということでしょう。

目の前にビーフシチューが置かれると、おいしそうな匂いが鼻を刺激してくるではないですか。

香草や肉の香りがうまく混ざり合う匂いに、食欲がかき立てられる。


(…明らかにレトルトとは違う匂いッ!)


オレは暫く香りを楽しむ…。

この匂いだけでご飯三杯はいける。食べるのがもったいない。


だが…!だがしかし…!食べたらどんな味がするのかッッ!


…オレはその誘惑に負けてしまった。

ビーフシチューをスプーンで掬って、もう一度鼻の近くで匂いを楽しんでから…口の中へ。


…口の中で広がる、肉の濃厚な旨み。

玉ねぎを多く使用し、しっかりと煮込んだであろう、甘み。

肉も野菜も形を保ってはいるが、口の中に入れると溶けていく。


素晴らしい…星三つ…この料理を作ったシェフに拍手を送りたい…。

これが料理のコンテスト会場であったなら、スタンディングオベーションだ。


(…ハフッ、ハフッ、ズズッ、うん、うまい)


オレはそのまま手が止まらずに、またたく間にパンとビーフシチューを食べ終わった。


(ふぅ…ご馳走様でした)


…これで500Gは有りだ。高いと言っていた奴の気が知れない。

ファミレスとは全くレベルが違う、高級レストランのビーフシチューを味わった気分だ。

あぁ…一人暮らしをしてから、長らく味わっていなかった美味しい料理だった。


こんなに美味しい料理を味わえるのなら、各国の料理を味わう観光も良い。

今はまだ無理だが落ち着いたら必ず!

待ってろ米料理!

…そのためにオレはお金も経験値も稼ぐぞ!


「…美味しかったです。ご馳走様でした」


カウンターに代金を置き、食堂を後にする。

食事だけで気分が晴れてしまった。

今の気分なら狩りも出来そうだ。



そう思っていると、フレンドコールを知らせる着信音。


相手は、リリー・グリーン。


(そう言えば、朝もフレンドコールあったな。なんだろ)


「こんばんは。上野樹です」


『あ、リリー・ローズ・グリーンです。こんばんわ?』


「あぁ…またやってしまった。そっちは朝だよね?おはようリリー」


リリーの笑い声。

『あー時差に慣れないね!もう気にしないで良いんじゃない?』


「そ、そうだね。今度間違えてもスルーして。…で、何か用事かな?」


『あ、そうそう!樹ってRDOでも有名なんだね!イギリスの情報サイトに樹の動画リンクが載ってたよ』


ん…?RDOでも?


「あー…それは初日にたまたまレベル上げがうまくいっただけだよ。現にレベルも抜かれてるし」


『いやいや、今日の放送のボスモンスターでも話題になってるよ?これだけ話題なら私も見なきゃね』

また笑い声がするが、これは絶対揶揄われてる。


「そ、それもたまたまで…」


『あははっ、たまたまでも続けば実力だよ。運も実力のうちってね』


「は、話を変えよう…」


『樹は思ったより照れ屋なんだねー。本気のゲームモードだとカッコいいのに…って、そ、そうじゃ無くて!』


「ん?ゲームモード?かっ…『あ、そうそう!スキルクエストのスケルトンアサシンとアーチャーが強くって、コツを教えてよ!』


見事に遮られたが、再度聞く勇気がない!


「あーそれなら対処方法分かってれば簡単だと思うよ。今教えようか?」


オレはフレンドコールで対処法を教えれば済むだろう、と思ってそう言ったのだが。


『ありがとう!今友達の子と二人で教会墓地ダンジョン入り口に居るから!待ってるね!』


えっ、一緒に行くの?今すぐ?まじ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ