1.RDO〜ラグナ・ドリーム・オンライン〜
RDO (ラグナ・ドリーム・オンライン)
そのゲームは、ゲーム内硬貨とRMが公式で交換出来るという機能を持った、フルダイブ型VRMMO。
それに加えて今までにないリアリティのVR映像と、現実との差異を極限まで減らした動作。換金システムやゲーム性全てがRDOを有名にしていった。
換金システムについては至るところから批判があり、開発会社でありアメリカに本社を持つ、マウス・エンター社と各国の政府で幾度も討論が行われた。
だがマウス・エンター社があの手この手で法律を掻い潜り…今回発売に至った。一部の報道では、政府との出来レースなのでは?という話もあるのだが、真意は分からない。
更にそのRDOはアメリカに留まらず、全世界で同時発売をすることが決定する。アメリカ・ドイツ・イギリス・中国・韓国・フランス…そして日本でも。
初回販売は全世界で200万本。VRMMOとしては異例の初版数なのだが、その購入倍率は更に驚く50倍にも登った。
単純に計算をすると1億人もの人がこのゲームを欲しているということ。既に増産も決まっており、1週間毎に50万本が販売される。
そのサーバー仕様は国毎では無く、全世界共通とされる。
それに伴い言語の自動変換機能を標準搭載している。
もし相手の言語が分からなくてもプレイヤーが設定した言語に自動で変換される機能で、この機能により世界中の人と楽しめることも売りのひとつだろう。
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そしてRDO内での死亡時ペナルティ。
死亡してから一定の時間、蘇生魔法や蘇生アイテムを受けなかった場合…装備品を除いたアイテムと金が全てロスト(消失)してしまう。
それに加え、キャラクターが今まで獲得した総経験値が半分になってしまい、レベルが大きく下がる事も有る。キャラクターレベルの低下はMMOゲームでは致命的で、プレイヤーは死亡ペナルティを受けないように努めねばならない。
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そして現在、日本。
RDOのソフトは既に発売され、後はサーバーオープンを待つばかりとなっている。そのRDOの話題は絶えず、その熱は増す一方だ。
テレビをつけてもRDOの特番ばかりで、それらは多くの人が見飽きた内容だ。
そして、50倍もの倍率を潜り抜け、RDOを購入することが出来た強運を持つ…東京に住む青年。
上野 樹高校三年。
身長は172cmで体格は普通。だが中学時代に格闘技をやっていた事で体は締まっている。顔は普通だが地味。
幼い頃から格闘技をやっていた影響で反射神経に恵まれている。
そしてその反射神経を生かし、ゲームの大会で全国優勝も経験しているほど。またMMORPGも好きで、一時期トップギルドを率いるほどにはまった時期もある。
大会の成績から、ゲーム業界では少なからず名前も知られており雑誌の取材も受けたことがある。そして高校生にも関わらず2社程スポンサーもついている。
スポンサーによる支援と大会の賞金で、RDOの購入資金を工面出来たわけだ。
また樹の実家は新潟で、中学までは地元で暮らしていた。
だが中学の時にとある理由で父親と喧嘩。
それを理由に地元を離れて東京の私立高校へと進学し、一人暮らしを始める。そして卒業を控えた現在もその生活が続いている。
なお高校入学後の三年間は実家には帰っておらず、父親との和解は成立していない。
現在三年生の3月ということで自由登校となっており、樹はゲーム三昧の日々を送っている。
進路については進学はせず、プロゲーマーの道を目指すつもりでいる。ただそれは…ゲーム以外に特にやりたい事が見つからなかったからという理由で、流されるままに決まった進路のようだ。
そして彼はRDOでプレイ動画を配信する事を条件に、スポンサーから資金援助がもらえる事になっている。その為に生活面での不安も無い。
更にスポンサーからは最高級のゲーミングチェアが送られてきた。何時間ゲームをプレイしても体が痛くならない謎素材だ。
…とにかく。彼はRDOをプレイする最高の環境が整っていて、知識も経験も充分。
そんな彼は…RDOを始めて、どのようなプレイヤーになっていくのだろうか?
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…オレはRDOのサーバーオープンが近づいてきた事で、落ち着かずにソワソワしていた。
仮眠も十分取ったし、食事も終えた。既にシャワーも浴びてある。数日は外出しなくていいようにインスタントの食事や飲み物も充分準備してあるし、RDOの説明書は隅から隅まで何回も読んでシステムの内容は全て頭の中に入っている。
MMOは数多くプレイしているので、そういった経験面でも遅れをとるつもりは無い。
オレはRDOでスタートダッシュを成功させ、トップ層と呼ばれる層になるつもりだ。
そして換金機能を利用する事で、あわよくば一攫千金を夢に見ている。その為には初期でどれだけ効率良く動き、お金を稼げるかが重要となるのだ。
「ふう…そろそろ座るか。さあ、待ってろよRDO!」
最後に顔を洗い、気持ちを切り替えてからゲーミングチェアに腰を掛ける。膝の上にはRDOがダウンロードしてあるヘッドセット。
RDO~ラグナ・ドリーム・オンライン~ サーバーオープンまで、後数分まで時刻が迫っていた。