第一回 新生ネビュラシオン会議 四天王全員集合
僕の名前は菊池斗真
転生者だ。
ある日、交通事故に遭いそうになった幼馴染を庇ってトラックにひかれて、気付けばこの世界で同姓同名の人物に転生……いや、憑依?
……まぁ、どっちでもいいか。
とにかく僕は異世界に来ている。
まぁ、元の世界とほとんど変わらないのだが……一点だけ、絶対的なまでに異なるものがある。
この世界には僕が愛した魔法少女モノというオタク文化が一切ないのだが、その代わりに……この世界では、魔法少女という実像が存在している。
この事実に狂喜乱舞した僕は……色々あって、彼女たちと敵対する組織のトップ、物語で言えばラスボスのポジションに君臨した。
で……今はその組織の立て直しをしているところなわけだけど……
「はい、それじゃあ新生【ネビュラシオン】の新たな総帥になりましたコードネーム【下僕】だ、よろしく」
「ちょっと待って総帥。
トップがそのコードネームなのはどうかと思うぞ」
意気揚々と挨拶をしたら、即行で待ったがかかる。
相手は筋骨隆々なまさに漢って感じで髪の毛に当たる部分が炎になっている怪人
この組織で一番の人格者であり、四天王を勤めていた方。
コードネーム【イフリート】
その名の通り、炎を自在に操り、岩だろうと鉄だろうと秒も掛からずに溶かしてしまう人だ。
ちなみに僕が組織革命のときにいの一番に倒して服従させた。
熱いと言えば熱いが、僕の場合はそこそこ熱めの風呂のお湯程度の感覚なんだよね。
強者に従う風潮が強いこの組織において、この人は一番その風潮に良い意味で真っ直ぐで助かった。
「といって、実際そう呼ばれてたし」
「総帥になたわけですし、改名すべきでし」
「改名か……まぁ、確かにそうかもね」
舌っ足らずな声でそう喋るのは、異形スライムのコードネーム【グラトニー】
発声器官を即席で作ったので無理もない。
本来のスライムは自我などなく、簡単な命令をこなすだけの使い捨てみたいなものだったのだが……こいつは特殊個体。
元々は僕と同じ下っ端だったが、魔法少女との戦闘を繰り返すうちに自我があることに気付いた僕が、かつての上司に相談して僕が引き取って面倒を見て、戦い方を教えるとめっちゃ強くなった。
結果、僕の相棒として一緒に戦う。
ちなみに上司はスライム苦手なので接触はせず、グラトニーも上司のことはさほど関心はない。
現在は新生四天王の一人としてこの場にいる。
最初はスライムが四天王ってことでうるさい奴がいたが、グラトニーに全部食わせた。
そこから文句を言う奴はいなくなった。
いや、こいつガチで強いんだよ。
物理攻撃殆ど効かないから、転生特典があるとはいえ、物理的な攻撃手段しか持たない僕では倒すとなると全力出して丸三日は費やさないと無理っぽい。
「ちなみにどんなのいい?」
「……先代と同じでよくね?」
「……ごめん、却下で。ちょっと自分であれ名乗るのは」
「じゃあなんでもいい、面倒くさい」
机の上に足を乗せて面倒くさそうに欠伸をする少年
顔はフードを深く被っていてよく見えないが、実際は人と話すのが苦手なのでああいう格好しているらしい。
自分の力をまだ完全に制御できず、魔法少女との戦闘+上司からお仕置きで弱った僕を介抱してくれたとてもいい人だ。
あの頃の上司はマジで厳しかった。
銀髪に赤い瞳で、ヴァンパイアの怪人らしい。
コードネーム【フォラス】
彼は先代の総帥の参謀という扱いをしていた。
参謀は権力的には四天王に劣るが、正直この組織は彼がいないと財政破綻を起こしていたと思うので、相当の権力を与えて働かせる。
意外と責任感はあるしね。
あ、ちなみに僕が殴り殺した先代のコードネームは【カイザー】だ。くそだせぇ。
「いいからまともなのつけろ!
テメェがそんなコードネームだとこっちの品格が疑われんだろうが!」
いきなり怒鳴ってきた獅子の顔を持つこの男。
コードネーム【ライオット】
見ての通り獣の怪人であり、その狂暴性は組織随一であり、圧倒的な力を見せつけた僕に対して一応は従っているが、いつか裏切る気満々である。
まぁ、組織的にこういう不和の要素があったほうが魔法少女側にもプラスになるからいいんだけどね。
ちなみに、実は集団を率いることが得意。超意外。
「うーん…………よし、じゃあ、僕は今から【ゲイザー】と名乗ろう」
「先代もじってないか?」
「そのままは抵抗あるけど、多少は残した方が他の連中も馴染みやすいかなって」
あと、魔法少女を観察するって意味でもこれ以上僕に最適なものはないだろう。
「じゃあ改めて、この新生ネビュラシオンの総帥ゲイザーとして、君達四天王には組織の体制についてこれまでの不満要素をあげて欲しい」
「不満だぁ? んなもんいちいち聞いてどうすんだよ?」
「いや、ハッキリ言ってこの組織ってクソザコだったじゃん」
僕の言葉に、イフリート、ライオットが殺気立つ。
二人は元々四天王だったので、僕の言葉には納得できないのだろうな。
まぁ、僕の方が強いから真っ向から否定はしないようだが。
ちなみ相棒であったグラトニーはうんうんと頷き、フォラスは無反応である。
「僕一人で、半日足らずで総帥倒されるとか……いくらなんでもお話にならなすぎでしょ」
「……お前が規格外なだけだと思うのだが」
イフリートが呆れながらそう言うが、僕は首を横に振る。
「だとしても、イフリートとライオット以外、僕のこと舐めてワンパンで倒されて終わったじゃん。あとは逃げ惑うだけで障害にすらならなかったし。
先代も、一発目からビーム出して勝った気になって追撃もしないからカウンターで倒せたし……一応こっち、グラトニーと一緒にトラップとか色々準備してたんだよ?
まず組織としても怪人異形個人ごとでも、すべてが弛んでる」
「……ここ最近……特にどっかの誰かの上司に離反の動きが見え始めた頃から、その組織を引き締めていた連中が次々暗殺されてたからなぁ~」
フォラスがジト目で僕を見る。
あ、やっべ、僕の仕業だってバレてる。
でも仕方ないじゃないか、あいつら上司にパワハラセクハラ三昧だったんだもの。
「と、とにかく……まずは組織の立て直しを図る。
人間を好き勝手襲うのは一旦自粛だ」
「待てやボケ!
俺たちは人間の“エナジー”を糧に力を得るんだぞ!
それを止めて、俺たちに死ねっていうのか!」
そう、怪人や異形の存在は、生きていくために基本的に食事を必要とはしない。
その代わり、人の恐怖、嫌悪、悲嘆など、マイナス的な感情……エナジーを吸収する必要がある。
ちなみに、襲われた人間はエナジーを吸われすぎると感情そのものが希薄になるらしい。
軽い症状なら時間経過で治るが、深刻な場合は一生植物人間になっちゃうとか。
「落ち着け、自粛させるって言っただけで……ここでフォラスの没案にしていた企画書を使う」
「……は?」
フォラスの間の抜けた声を発し、机から脚を下して前のめりになった。
「待って、それは酒に酔って作ったやつだ、実現性はないっ」
焦っているのがわかるフォラス
確かに、こんな企画普段の彼なら絶対に作らないだろう。
「だけどチマチマ通り魔するよりはよっぽど堅実だと思うよ。
あれって魔法少女からの追跡を防ぐために証拠消す必要あって、得られるエネルギーが少ないじゃん。
これなら金も入って、しかも下級連中だけで安全にエナジーも集められる。
金も稼げるから二度おいしい。
失敗しても組織としてリスクは別にないからそんな気負わないでよ。
というわけで、はい、この場所の空き店舗借りたから任せるね」
「……いや、いやいや……待て、私が主導するのか?」
「だって企画したのフォラスだし、計画書見たけど結構内容具体的だったよ。
構想だけならもっと前から練ってたんでしょ、頼むよ。
エナジーは譲れないけど……そうだな、売上の内1割は好きに使っていいから」
フォラスは美食家だ。
本来食事を必要としない連中の中でも、かなり食事にこだわりがあって、お金があればグルメにばかり使っているのは多くの者が知っている。
だからお金はかなり欲しがる。
「……それじゃあ少ない7割よこせ」
「それはもらい過ぎでしょ。
お金はこれから組織でも使うんだし、人員も資金もこっちで用意するんだからさ……まぁ、せめて2割かな」
「6割」
「2割5分」
「5割5分」
「刻むね。でもあんまり長々と話すつもりもないんだよね、僕」
そう言いながら軽く指を鳴らすと、フォラスは顔をしかめた。
「………………4割だ。
それ以下ならこの組織を抜ける」
「わかった、それで手を打とう。
業績が好調だったらもっと上げるから、頑張ってね」
僕の手から計画書を受け取って渋い顔をするフォラス
「……この立地か。魔力の使用は?」
「午後8時以降から午前3時までなら許可するよ。その時間なら勘付かれにくいし。
で、どれくらいで成果が出せそう?」
「……人員を自由に選ばせて、尚且つ文句言う奴には直々に総帥が折檻するとお墨付きをくれるなら半月で初期投資分は回収できるだろうな。
エナジーに関しても、魔力を使った分の3、4倍のリターンは見込めるはずだ」
「OK、じゃあそれで行こう。
ひとまずはこれでエナジー回収の目途はついた。
まぁ、急場をしのぐために数回ほど暴れるからさ、そのために彼女たちに勘付かれるような動きはさせたくないんだよ。
それが自粛の理由だけど、納得できた?」
「ガーディアンズか……ちっ、鬱陶しい」
ガーディアンズというのは、この世界での魔法少女たちの呼称だ。
より正確には、ガーディアンズというこの世界を守っている組織、その中の部隊の一つなのだが……つまり、この世界には僕がまだ見ぬ魔法少女がたくさんいる可能性があるってわけだ!
夢が膨らむね!
「ん……そういやテメェの上司、あっちに寝返ってたが……なんだ、未練でもあるのか?
あのツルツルに発情してケツ追っかけてたもんな、お前。
奴がいるから戦いたくありませーんってか?」
変質者を見るような目で僕を見るライオット
ちなみに、こいつの種族的には体毛に覆われていないのは幼児という扱いらしく、こいつから見れば僕も上司も幼児に見えるらしい。
だからってロリコン扱いされるのは凄く不満だ。
「それは違うよ。僕は彼女に恋愛感情は抱いたことは無い。尊敬はしてたけどね。
そして戦うことに関しては別に問題ないよ。必要とあらば戦うだけだしね。
あ、それと今後は彼女たちのことは“魔法少女”と呼称しよう」
「「「は?」」」
僕の提案にグラトニー以外は首を傾げる。
魔法少女って言葉自体この世界には無いもんね。
「そっちの方が可愛いじゃん」
僕がそう言うと、三人とも何とも言えない目で僕を見てくる。
だが文句は言わせん。
文句を言ったら殴ると、すでに僕は握った拳を構えているのだから。
「さて、それじゃあ話の続きだ。
イフリート、君は以前の組織でもっとよくできると思った点は無いの?」
「うーん…………やはり自己鍛錬をする者が少ないという印象があるな。
出撃し、適当にその日その日でエナジーを得られればいいという意識の低いものが多い」
「なるほど……ライオット、君のところは?」
「ふざけんな! 俺の部下にそんな腑抜けはいねぇ!」
「ほほぉ……ちなみにライオットの普段の部下の生活ってどんな感じ?」
「んなもん聞いてどうすんだ?」
「いや、今後の組織全体の活動に生かそうかと。
なんならライオットが全体指揮権でも握る?」
「てめぇは袋叩きに合いたいのか?」
「できる位に組織を強くしてくれるなら是非」
「っ……けっ」
僕の言葉にライオットはそれ以上何も言い返してこない。
生半可な実力で数を揃えた程度じゃ僕をどうこうできないというのはこいつ自身が一番わかっているからだろう。
つい最近に本気を出した僕の実力は、僕自身も想定以上の者だった。
いや、まさかねぇ……普段からかなりセーブしていたとはいえ、自分でも全力出すとああなるとは思ってなかったもん。
「……まず、俺の場合は強い奴にどれだけ利益があるのかを分からせる」
「ふむふむ……具体的には?」
「エナジーの供給量を増やすのは当然として、給金を出している」
「むっ……ライオット、お前も金を集めていたのか?」
イフリートの質問に、ライオットは不機嫌そうに目を細めた。
「悪いか?」
「いや、正直意外だったのだ。
だが、金など集めて何に使う?
組織で使うのならわかるが、個人で使う者はそれほど多いのか?」
「……部下たちの娯楽用だ」
「娯楽ぅ?」
イフリートは訳が分からないという感じに首を傾げる。
僕も内心は同じだ。
だって怪人や異形にはエナジーさえあればすべては事足りると上司には言われていたわけだし……
「俺だって気は進まん」
すると、ライオットは滅茶苦茶デカいため息をつく。
「だが、ここ十数年でこの世界には無駄に娯楽が増えすぎた……完全に規制するのは無理だったからな、限定的に推奨させた。
そうでもしないと、他の連中みたいに日々無駄に娯楽をむさぼって最低限のエナジーで満足するゴミしかいなくなる。
……エナジー集めだけに熱心だった連中はほぼ全員死んだか戦意喪失させられたからな」
あ、やっべ、ライオットにもバレテーラ。
いやだって、エナジー集めに熱心な奴って、快楽殺人とか度を超えたサディストとか、魔法少女モノにはあまりにもオーバーな凶悪性の連中ばっかりだったんだもん。
でもそっか、悪の組織的にはああいう連中が真面目って扱いになるのか。
「金を集めて娯楽の中でも上質なものを味わう。
そうすればまた上質な娯楽を求め、よりより成果を出そうと部隊の質は上がる。
……少し前まではエナジーの量と部隊内の序列だけで十分に士気は維持できたという、嘆かわしいっ……」
「なんと……そのような腑抜けな……自己鍛錬以上に大事なものなどないだろうに」
イフリートだけだと思う。その思考。
しかし……そうか、日本の娯楽文化はネビュラシオンをそこまで汚染していたのか。
知らなかった。上司ってこの組織だと爪弾き食らっていたからそういう情報は初耳だった。
「飴と鞭、か……なるほど、ライオット、君の部隊をモデルケースにして組織全体の引き締めをしていこう。
ちなみに君はどういう方法でお金を集めてたの?」
「人間社会にも裏があるからな。
魔力で認識ごかましてその裏組織を支配下に置いた」
「……参考までにそれ、なんて組織名?」
訊ねてみると、ライオットの口からニュースでたまに聞く指定暴力団っぽい名前が聞こえたような気がした。
「ちなみに具体的にどんな商売かは?」
「依存性の高い麻薬だ」
「アウト、薬物は今すぐ全部廃棄させよう」
「は、はぁ!?
テメェ何言ってやがる、貴重な俺の部隊の資金源だぞ!
だいたい、お前だって金を集めてるはずだろ!」
「いやだって」
「だってなんだ!!」
魔法少女モノに薬物とかそういうのはガチで笑えないというか……
もし魔法少女たちがヤクザとネビュラシオンのつながりに気付いて潜入捜査とかされて……そして返り討ちに合って薬物で…………ああ、駄目だ駄目だ!!
僕はそういう魔法少女は絶対に見たくないし認めない!!
くっ殺は異世界での女騎士の専売特許であって、魔法少女モノには絶対に不要!!
でもそのまま言っても納得しなさそうだし…………って、そうだ。代わりのものあるじゃん。
「その組織、警察にマークされてるじゃん、いつかはバレるって」
「なら資金はどうすんだ!」
「グラトニーなら、代わりを用意できるよね。
一般的には合法なやつ」
「――魔力使えば、同じ、効果の、もの作えあう」
グラトニーは特殊個体のスライム、食べた物を解析して同じものの複製、改良などお手の物。
超絶万能スライム様なのである。
魔力で薬物に近い効果の、それも薬物反応も出ず、そのくせ魔法の力でしか解除できない感じの物質作れるわけだ。
依存性が無駄に高く、その上、必要な時は意のままに操れるようにできてしまう悪の組織的に超素敵アイテム。
18禁的なちょっと強引な恋愛ゲーム御用達になること間違いなしなアイテム。
しかもこれの何が良いって、魔力に耐性のある者には効果がかなり薄いってこと。
つまり、魔法少女にそんな18禁展開はありえない点だ。
「よし、薬物は全面撤廃し、グラトニーと連携して、新しい薬を作って、増産体制を整えていこう!
最終的には酒として売り出させよう」
「酒だ?
なんでそんな面倒な……!」
「今言った名前の組織は規模はデカいし、酒を出す店も傘下にあるだろ、まずはそこで出して反応を見て、客を依存させて、その客の中から法律とかに詳しい奴を操って製品として販売させるんだよ。
堂々とこれは酒ですと販売されれば魔法少女たちには僕たちのものだと勘付かれない。
なんせ、全員未成年だったはずだから、まず確実に数年は気付かない」
僕の意見にフォラスが興味深そうに顎に手をあてた。
「時間はかかるが……なるほど、確かにそれなら金の安定供給できるし、人間を操れば戦力も増えるわけか。
その試作品、こっちの計画でも使いたいんだがいいか?
依存性を調整させればさらに収益が見込める」
「いいね、グラトニー、最初からかなり頑張ってもらうけどいいかい?」
「はい、頑張います」
グラトニーにはかなり世話になりっぱなしだが、何事も初めが肝心だからね、ここは甘えさせてもらおう。
「冗談じゃね、そんなみみっちことやってられるか!
元々こっちは人間どもが勝手にやっていたんだぞ!
余計な手間増やすな!」
ライオットが毛を逆立てて牙をむきながら怒鳴ってくる。
ああ、確かにあまりそういうの得意じゃないもんな……裏組織ってのも、ぶっちゃけ魔力でお金を貰うだけにしてたみたいだし。
「……そういうことなら、そちらもこっちで受けもとう」
「え、いいのフォラス?
当初の予定の数倍働くけど? ものすっごく面倒くさいよ?」
「むしろ一緒にしないと後々面倒だ。
この計画も、裏社会とのつながりがあった方が後々の面倒ごとも避けられる。
ただ、薬物に関しては一気に撤廃は帰って面倒になるし、むしろそのルートを使ってグラトニーの生成した薬物を売らせて段階的にそちらの量を増やすようにする。
それで問題ないな、総帥」
「うーん……まぁ、しょうがないか。
じゃあ、フォラスとグラトニーにはしばらく裏方やってもらうね」
まさか裏社会のルートをすでにネビュラシオンが持っていたというのは予想外の収穫だ。
これで、数年で日本という国をすべてを支配するという可能性が濃厚になった。
だが、それでいい。
あまりダーティーなことをできない僕が魔法少女たちから本気で敵視されるには、ガチの世界征服――それくらい規模がデカくないと。
「さて、で、他に不満とかは?」
「パッとは思いつかんな……それよりゲイザー、先ほど暴れるといっていたが、具体的にどうするんだ?」
「そうだ、勝手に人間襲うなとか言っておいて、下らないことだったらただじゃおかねぇぞ」
ふぅむ流石は脳筋。
組織体制よりも暴れることの方が好きらしい。
「まぁ、そうだね。
イフリート中心で暴れてもらう予定だったけど、ライオットもこっちに回るなら……もっと壮大に暴れてもらおうっかな」
上司の元で戦っていた時から今まで、魔法少女たちに足りてなかったイベントが、一つある。
絶対に必要というわけではないのかもしれないが、僕としてはやはりこういうイベントがあった方が後々の盛り上がりにつながる。
何より……正直現時点の魔法少女たちの実力では僕を倒し切れるかというと……うん、かーなーりー、怪しい。
僕の目的を達成するためにも、このイベントで魔法少女たちに活を入れさせてもらおうじゃないか。
そう、この――【敗北イベント】でね!!