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リクトと模擬戦

ニュートリノ発電所に出撃する、少し前の話。


ロロアは戦い方の他に様々な事をクラスメイトから学んだようだ・・。

特訓初日の朝が来た。


「これを4人で操縦するんですか?」

俺は不安な気持ちでホログラムの博士に話しかける。


「リクト君、正解!ロロアにはコピー能力がある。実戦を重ねれば重ねる程、娘は強くなるんだ!また生存率も上げる事に繋がるんだ。」


ロロアちゃんのお父さん、カイン博士に言われて体育館の真ん中にあるパワーマンのスーツを見た。


体育館の床には特殊な粒が敷いてあり、VRモードにするとバーチャル世界に則った造形が目の前で形成される。


トモヤとカイセイ。

ガキ大将のダイチも一緒にいる。



パワーマンのスーツは190センチくらいある巨大な体に横もある。

そして不揃いなくらい巨大な腕。

なんとなく蟹を連想する。


「とりあえず乗ってみるか。」

「・・・。」

「・・・。」


「「誰が乗るの!?」」

スーツは1人乗りだ。


「そりゃリクトだろ?ロロアちゃんと仲いいし。」

「えええ!じゃあ、3人は何してるの?」


「あそこの操縦席で操縦だな。」

「リクト!頑張れよ?俺らも全力でサポートするから!」

「よーし、やるかぁ!」

3人は準備体操をしながらモニターに向かった。


「えぇえ・・!!」

確かに俺はロロアちゃんを最強のロボにすると言ったけど、まさかこんか形で実るとは思わなかった。


「頑張ってね!リクト君!肩の力をぬいて、リラックスするんだ!」

博士に言われ、僕はしぶしぶ踏み台を登ってパワーマンのスーツに体を入れた。


ガゴン!

と言う音がして、開いていた上の胸部が下がり頭の中に操作方法が入ってくる。


「リクト君聞こえるか?君の医療用ナノマシンからダウンロードしている。」

「すっごいですね!!」

「すごいだろ?これを応用すれば君達の勉強の概念が覆る!さぁ、ゴーグルをつけて?」


俺はゴーグルをはめると右手と左手のコントローラを動かした。

眼前には、体育館が見える。

右手と左手は重く・・。


「ダイチ君、君達の補助がないとパワーマンが動かせない。そう、そのボタンを・・」


「うぉお!」

プシュ!と言う音がして右手がスムーズに動かせるようになった。


向こうで歓声がきこえる。

このエアーブラストの補助でパワーマンがスムーズに駆動するらしい。


「すまないが、僕の技術的な問題でパワーマンを動かすには動力補助のエアーブラストを吐き出す必要があるんだ。すまない・・。」

「わかりました。」

「リクト君、ロロアのスペアパーツはいくらでもあるから遠慮なくやってくれたまえ。君からロロアは生きる力を導きだす!容赦なくやってくれ!」

「わ、わかりました!」


しばらくして、体育館の入り口のハッチがカキカキカキと言いながら開き。

ロロアちゃんが入ってきた。


ヘッドギアを目深にかぶり。

右手は既にバスターで、ぬいぐるみのクマをおろして話し合っている。

そして準備体操をすると、俺の前に対峙した。

緊張しているようで、手の平に『人』の字を書いて呑み込んでいる。

そして、ふうとため息をついた。




「リクト、よろしくお願いします。私を・・私を最強のロボにして下さい!」

「・・・わかった。」


体育館が競り上がり、不思議な機械やパイプが伸びる空間に変わった。

『ニュートリノ発電所』を再現したようだ。

緊張して顔の強張ったロロアちゃんがバスターを向けて臨戦態勢になる。

俺を撃つのか?ロロアちゃん。


「いくぞ!!ロロアちゃん!!」

全身のエアブラストが出てロロアちゃんに突っ込んだ!

「きゃあ!!」

尋常じゃない音がした後にロロアちゃんが吹き飛ぶ。

しかし、パイプを掴んで受け身を取るとバスターが顔のまわりを掠めた!


バシュン!!

と言うその空間を歪む独特な音に鳥肌が立つ。

「リクト君!行くんだ!!」

「は、はい!!」

小さなバスターが左手に当たるも、右手がロロアちゃんの頭をとらえる。


そして地面に叩きつけると、ロロアちゃんは白目をむいて痙攣しだした。

「わぁああ!!ロロアちゃん!!」

「リクト君、落ち着いて!」


「ロロアの沈黙を確認。エネルギー、フィードバック。コンティニュー!」

クマさんに背中を操作され。

ロロアちゃんが立ち上がる。


「ぐぬぬ、なかなかやるね!」

そして何事もなかったかのようにバスターを構えた。

「まだ、やるんですか!?」

「ロロアが勝つまでやるぞ!!」

「えええ!!」


「いくよ!!リクト!!」

ロロアちゃんが必死な顔をしながらバスターを撃って突っ込んでくる。

俺はバスターを受けながら左手でロロアちゃんの体に右ストレートを撃った。

「ぐう!きゃあああ!!」

吹き飛び、壁に当たって崩れる。


「ロロアちゃん!頑張れ!!パワーマンは容赦しないぞ!」

博士の声が響き、ふらふらと立ち上がる。

「リクト君、ロロアの為に容赦はいらない!!やるんだ!」

「はい!ゴメン、ロロアちゃん!」

俺は煙と共に立ち上がるロロアちゃんに向かって、腕を振り下ろした。


ロロアちゃんは成すすべもなく頭に受けて倒れる。

蛇に睨まれたカエルのように、ここぞと言う時に動けないようだ。



「ロロアの沈黙を確認。エネルギー、フィードバック!コンティニュー!」


ロロアちゃんはムクリと立ち上がると、煙を体から吐き出した。

尽かさずクマさんが聞く。

「ロロアちゃん、ボディを交換する?」

「まだまだーっ!!」


ロロアちゃんは飛び退くと、俺のまわりをグルグルまわり始めた。


「リクト!俺にまかせろ!」

ダイチの声が聞こえ、胸についたエアーブラストが吹き出す。


「いだい!!」

突然の体当たりにロロアちゃんは壁に打ち付けられ、俺は右手を振り下ろした!

「くっ!同じ手を食らわないわ!!」

しかしロロアちゃんはヒラリと交わし、バスターを撃った反動で空を舞った。


しかし、すぐに全身のエアーブラストが俺の体を持ち上げ。

咄嗟に出した左手がロロアちゃんを掴んで、そのまま地面に投げつける。

パイプや機械がロロアちゃんの衝突で粒にもどり苦痛で体を仰け反らせる。


「ぐはぁ!!!」


ロロアちゃんは悶絶すると、俺の飛び蹴りを全身に受ける。

そして口から電解液を吐いて大の字に倒れた。


「ロロアちゃんの沈黙を確認・・!ロロアちゃん! 」

「・・・。」


ロロアちゃんは浮遊する担架に運ばれて扉の向こうに消えた。


俺はたまらずにパワーマンスーツを脱ぐとロロアちゃんの所に向かった。


「ロロアちゃん!!」

「きゃっ!エッチ!!」

「リクト君!見ないであげて下さい!」

クマさんに注意されて、思わず上をむく。

どうやら博士のサポートカーを体育館の外に広げて、新しい体の即席のラボにしているようだ。


しばらくして。

「お待たせ、リクト!・・どうしたの?」

ロロアちゃんがびっくりするくらい何事もなく颯爽とやってきた。

「ロロアちゃん、大丈夫!?」

「新しいボディにしたから大丈夫だよ?」

見ると、ボディはピカピカで。

顔も綺麗だった。


クマさんがAタンクとジュースを持ってきてくれて、せっかくなのでベンチで飲む事にした。

クマさんがサポートカーに戻り。

ダイチ達の遊ぶ声が体育館から聞こえる。

カシュッ!

と言う音がしてAタンクを飲むと、ロロアちゃんはフゥとため息をついた。


「ロロアちゃん。パワーマンが怖いんだね?」

「えっ?」

「俺が腕を振り上げた時、ロロアちゃんの体が固まるんだ。1回目も2回目も、ロロアちゃんは俺の攻撃を受けてしまったから。」

「・・・うん。」

ロロアちゃんは右手をバスターにしたり手にしたり、動かしながら聞いた。


「私の体は新しくなっても、メモリーが『あの時の事』をフラッシュバックとしてリピートするの。それを『恐怖』と言うなら、私は怖いのかもしれない。」

「そうか。・・でも-」

「でも、それを克服しないと勝てない事だって私にも分かってるよ。」


「ロロアちゃん・・。それはパワーマンも同じだと思う。」

「え?」

「考えても見てよ?今まで普通に仕事して、ひょんな事から戦争になって。目の前にロロアちゃんがいる。これほどの恐怖があると思う?」

「そうね。・・確かに。ニイさんとZM-300がパワーマンの薬の話をしていた・・もしかしたら・・ブツブツ」

ロロアちゃんが顎を持ちながら何かを考える。


「さぁ、ロロアちゃん!稽古に戻りましょう!」

クマさんに言われて俺とロロアちゃんは、ハッとした。


「ありがとうリクト!怖いのが私だけじゃないと聞いて、すこしだけ安心したわ!」

「うん!」

ロロアちゃんは、Aタンクを握り潰すとゴミ箱に入れる。


「あとロロアちゃん!」

「なに?」

「俺はロロアちゃんの味方だ!みんなだってそうだ!ここには敵はいない。緊張する必要がないんだ!」


ロロアちゃんは少し拍子抜けしたような顔をした後、ニコッと笑った。


「そうだったね!リクト!さぁ、行きましょう!」

「そうだな!みんなが待ってる!!」


それからロロアちゃんの戦いの日々が始まった・・。

ニュートリノ発電所にロロアちゃんが出撃している間、そんな事を思い出していたんだ・・。


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