メルヴィアの闇
ロロア達アメルア軍は忘れ去られたキリカルテに潜入する。
忘れ去られた地の底で、ロロアはメルヴィアの闇を見る。
4メートル四方の“キリカルテ”は緩やかな下り坂になっていた。
壁には等間隔に白いランプが点き、それが遥か地下まで伸びている・・。
私とシードはスパークライフルを構えると前方を警戒し、脅威が無いと右手を挙げて、後続の兵士達に進むように合図した。
後続にはマイキーとアモンと兵士が2人、さらに後ろにはDADAを装備した兵士と通信兵と兵士が3人居た。
マイキー:「かなり古い施設みたいだな・・人工樹木の根が突き破ってるぜ?」
「そうね・・ZMが要塞にする前は何の施設だったのかしら・・?あ!」
私の頭のサーキレットの中心に付いているライフコアが光り、ホログラムを映し出す。
そこには簡略化された施設の地図と、奥には私の隠しパーツ。
そしてエネルギーコアと、ネームドや敵の位置が映し出されていた。
兵士:「すげえ、ここの見取り図だぜ?」
シード:「マップ探知システムか。宇宙から常に降り注ぐミューロンを使って、暴露が遅い場所を空間としてマップとして映しだしているんだ」
マイキー:「この青いマークはなんだ?」
「私の隠しパーツみたいね」
マイキー:「隠しパンツ?」
「なんで下着を隠さなきゃいけないのよ」
兵士:「個室のフロア、気になるな」
アモン:「””お宝がありそうだな!””」
「罠もあるかもしれない。慎重に進みましょう」
私はホログラムのデータを保存すると、先に進んだ。
下り坂が終わり、さらに奥へ進んでゆく。
兵士達は壁沿いに出来るだけ身を屈めて待機し、私も慎重に前へ進んだ。
通路は左右に個室があり、侵入した根で壊れていたり開け放たれた物もあった。
内部にはK1スパークライフルの空になったジェネレーター、壊れたプレーナーや解体された野戦砲が放置されていた。
そこへ前方の通路からZMの2体が走ってきた。
「はっ!!コンタクト!!」
ZM:「む!!ペケポー!!」
対面したZMの頭をC1ライフルの単発バスターが捉える。
撃たれたZMは崩れ落ち、もう1体はアモンが仕留めた。
兵士:「2ケーアイエー!!」
シード:「まだ来るぞ!」
通路の奥からZMの声が聞こえ、複数体走ってくる音がする。
「通路で戦うのは不利ね!フロアに隠れましょう!」
私は右のフロアを開けると、壁沿いに沿って素早く索敵し、他の兵士を誘導した。
「クリア!中に入って!!」
シード:「バグスが複数接近!コンタクト!」
兵士達がフロアに身体を半分出してZMと戦う。
兵士:「グレネード!!」
通路でZMの投げた手榴弾が炸裂し、火花が散って砂埃が舞う。
その煙に乗じて、間伸びした赤くて太いバスターがこちらへ飛んできた!
シード:「今のは危なかったな!!相手は俺らから鹵獲したターナ574を使ってやがる!上下の跳ね上がりが凄いから、遮蔽物より下に伏せればまず当たることは無い!!」
マイキー:「さすがシードの分析能力だぜ!!」
シード:「おいお前、そのスコープの付いたC1を貸してくれ。・・ロロア!」
「は、はい!」
私が兵士達の頑張りを見ていると、不意に誰かの兵士のC1スパークライフル(スコープ付き)が飛んできた。
シード:「C1はC2と違って3点バーストが出来ないが、威力がある!援護射撃するからバグスの頭を確実に狙うんだ!射撃だったらロロアが一番だからな!」
「うん!わかった!」
私はC1スパークライフルと自分のライフルを交換した。
握ると僅かにカタツキがあり、スコープの留め具も緩くて持ち運ぶだけで動いた。
グリップも誰かから貰った部品を付けているからか、親指の部分が削れている…。
兵士:「俺のC1ライフルは女の子のように繊細なんだ。丁寧に扱ってくれよ?」
「女の子として言わせてもらうけど。私だったらとっくに愛想尽かして別れてるわ」
シード:「みんな!準備はできたか!?」
「ええ!」
アモン:「””いつでもオーケーだ””」
私の肩にシードの手が乗せられる。
シード:「よし!突撃!」
シードがパンッと叩くと兵士達が飛び出し、一斉射撃が開始される。
私は素早く前に出ると床に伏せる。
シード:「リロード!!」
シード達がフロアに隠れ、ヘビースパークライフルが頭上を駆ける。
「スゥー」
私は静かな気持ちで深呼吸するとスコープを覗き込んだ。
ZMは通路を泥の流入を防ぐシールド状のメカニロボで塞ぎ、ターナ574をメカニロボに据えたまま落ち着きもなくフロアを見ていた。
きっとフロアから飛び出してくる兵士を待ち構えているのだろう。
(・・ん?あれはなんじゃ!?)
ZMが私を見た瞬間、放ったバスターがZMの頭を貫通して吹き飛んだ。
(なんじゃ!!なんじゃあ!)
ZMは懲りずに倒れたZMに代わってターナ574を構えようとするので、それも吹き飛ばす。
「目標ダウン!!」
私が叫ぶとシード達が飛び出し、残りのZMにバスターの雨を降らせる。
3点バーストのスパークライフルは確実にZMを捉え、あっと言う間に制圧してしまった。
倒れたZMの撃破を確認しながら私達は警戒して進む。
シード:「・・クリアだ!良い仕事だ ロロア」
「ありがと!」
シールドを担っていたメカニロボは通路を塞ぐのを諦めて投降する。
兵士はメカニロボに触れると呟いた。
兵士:「武装解除・・と」
「何をしているの??」
マイキー:「知らないのか?俺らアメルア軍には体内にナノマシンが入ってるんだよ。俺らが触れると指紋から認証できる」
兵士:「だから、落ちているものを拾うと、自分の所有物として登録もできるんだ。これは君の物だ」
兵士はターナ574を指差した。
兵士:「登録すると、運搬メカニロボが運んでくれるぞ?」
「・・へぇ」
私は置かれているターナ574を触った。
すると触れた先が光り、瞳の中に『その場で使用する・持ち帰る』の表示が出た。
『持ち帰る』を押すと『運搬中…』の表示になる。
他の兵士達も、ZMの身体や武器に触れて『所有物』にする。
ZMの身体も元は部品なので売り物になるらしい。
アメルアは主民主義だから、なんでも資産にしてしまうのね・・。
シード:「さ、これはロロアの所有物になった。あとの処理はスカベンジャーメカニロボがやってくれるから先に行くぞ??」
「うん。あ、このライフルはあなたの所有物だったね」
兵士:「ああ。しかし、君のスパークライフルは使いやすいな。俺のと交換しないか?」
「嫌よ。浮気する男は嫌いだってライフルが囁いてたよ?」
アモン:「“”ふふふふふ“”」
────私達のキリカルテの探索は続いた。
ナノマシンを聞いた後だと、なんとなく兵士達の目がギラギラしているように感じて、ZMの索敵というよりも“金めの物を探している”気がしてならなくなる・・。
どうやら主力部隊は全滅したらしくZMのエネルギー反応はおろかメカニロボの反応すら消えていた。
通路は何度か屈折するものの、変わらずにフロアが左右にあり、そこには手当てされずに野戦病院のように寝かされたZMの死骸や、使えなくなったプレーナが積み重なるように放置されていた。
「あれはいらないの?」
シード:「ライセンス生産されていない兵器の販売は禁止されているんだ。装備していたとしても、国外には持ち出せないだろう」
アモン:「“”つまり無価値って事だな“”」
「ふーん。ライセンス生産されていないって・・プレーナってどこの兵器なんだろう・・」
『ロロアちゃん、プレーナはマット師団が考案した国産兵器よ』
「国産兵器?このメルヴィアで?」
『共民主義国アルシウスのツイステン33と言うヘビースパークライフルを参考にした兵器で、ツイステン33の特徴であるショートバレルと発射機構を受け継いだ物なの』
「すごい武器じゃない」
『ええ。だけど非合法だわ・・。私は好きだけど・・』
「テリンコさんが好きなの?」
『私、銃や兵器が好きだから・・。ZMの職人技で高純度に精錬されたレンズをカラット加工して集中させ、小口径化する事で貫通性能と連射性能を飛躍的に高めているわ。
でも、理論的には合っては居たのだけど、カラットしたレンズは泥や水分の影響を受け、ツイステン33から受け継いだ弾板は高めた連射性能を発揮できていなかった。
そしてフォレストパークのような森林地帯では精密で繊細なプレーナは故障が多かったみたいなの。
プレーナは連射性能を上げたばかりに弾板が食い込み、巻きあげた泥で給弾不良やレンズの照射不良を良く起こした・・。
マッド師団が実戦経験の無いロボ達の集合体で、泥や天候の想定を一切してこなかった証拠ね』
「そうなんだ・・ありがとうテリンコさん」
私は通信を切った。
アモン:「“”どうだ?テリンコさんはプレーナにいくらの値をつけるって?“”」
アモンが笑いながら私に聞く。
「無価値だってさ」
アモン:「“”オーライ!間違いない!!“”」
アモンが調子良く膝を叩いた。
───
兵士:「おい・・あれ・・」
別のフロアには規則正しい間隔で四角い箱が置かれていた。
兵士:「ヒャッホウ!!宝箱だぜ!!」
「え!?宝箱!?」
マイキー:「マジかよ!!俺も───」
「あなたはここに居なさい!!」
兵士:「別のキリカルテでも見たことあるんだ!これは価値のあるモンだぜ!?」
「なんでこんな物が??マット師団が置いたの?」
兵士:「まぁ、見てなって!」
兵士はアトムナイフを握ると逆手に持ち、四角い箱に刻まれた線をなぞり始めた。
兵士:「罠は仕掛けられてないみたいだ」
兵士が箱にナイフを突き立てると、箱に電子音が鳴って上部が消滅した。
そして私たちに是みよがしに財宝を見せた。
兵士:「ホラ、見ろよ。グリーンサイファーのネックレスだ!綺麗だろ!」
マイキー:「すげえ!!」
アモン:「“”フュー!!“”」
それはグリーンサイファーと言う希少鉱物のネックレスらしかった。
兵士:「誰にも渡さないぞ!!ネームも付けたからな!」
兵士は皆に忠告すると首に下げる。
マイキー:「俺もやりたい!!どうやって開けるんだ??これ!?」
シード:「マイキーも開けたくなったか・・見てろよ?」
シードも開け方を知っているのかアトムナイフを突き立てる。
「シード?あなたはどこでこれを??」
シード:「俺も別のキリカルテだ」
「シードは欲しくないの??」
シード:「ここは他の奴らに譲るよ。俺の目標はもっとデカいんだ」
シードはどこか楽しそうに開いた宝箱に腰をかけた。
マイキー:「おおっ!?これは!?」
マイキーが宝箱を開けて四角い金属を見せる。
シード:「それはライトニウムだ。宇宙でも使える頑丈な金属さ」
マイキー:「売ったら高いか?」
アモン:「“100クレジットだな”“」
マイキー:「ゴミじゃねーか!!」
アモン:「”“ゴミなもんか!!ちゃんと懐にしまっておけ”“」
兵士B:「ふむふむ。これは・・発酵酒だ。年代物だな」
別の兵士は頑丈そうな金属の筒に入った古そうな呑み物を発見した。
「呑めるの??」
兵士B:「呑んでみたいが価値のあるものだから呑まないよ。作られた年代と人の名前が書いてあるぜ」
DADAを装備した兵士:「こっちは指輪だ。…そんな高い物に見えないが・・貰っておこう」
兵士C:「こっちは、かなり昔の電子マネーのカードだ!ガラクタだ!」
マイキー:「あれはなんだろ?」
マイキーが不意に壁に掘り込まれている規則正しい配列の穴を発見する。
「ちょっとマイキー!罠かどうか私がスキャンするから───」
「へ?」
私の忠告を無視してマイキーが穴に触れ、壁に幾何学模様が光る。
マイキー:「なっ!なんだ!?」
私は腕をバスターに切り替えて天井を警戒した。
天井には様々な星がホログラムされ、遺伝子配列の図とゲノム情報、現代では使われていない言語が飛び交った。
「マット師団の防衛システムでは無いみたい!マイキー!こっちへ来て!!」
私がマイキーに叫ぶと伏せさせ、バスターを構える。
ホログラムの謎の演出は終わり、規則正しい穴の配列の壁が青く透明度を増して輝き、それがまるで透明の青い引き出しである事に気づいた。
マイキー:「何か・・入ってるぞ・・!!」
「うん」
アモン:「“”お宝では無さそうだぜ!?“”」
「そんな気がするわ・・!」
私はコクンと唾を飲み込むと、壁の引き出しに近づいた。
壁の窪みは手をかける物で間違いないらしく、力を加えると簡単に引っ張り出せた。
内部は重くて白い霧がかかり、低温に維持されている…。
それが壁一面、このフロアの四方に存在しているのだ・・。
もしかしたら私たちが見てこなかっただけで、この横に枝分かれするフロアはそう言う役割の部屋なのかもしれない。
「これは何・・!?」
私は冷凍保存されている何かを引き出しから取り出す。
確かな重量。
恐る恐る特殊な培養保護フィルムを剥がすと・・それは凍った人間の脳だった!
兵士:「脳みそだ!!!冷凍された脳が引き出しに入ってる!」
「・・ヒッ!!」
私はおぞましいものを触って血の気が引き、脳を落としてしまった!
脳がガラス細工のように割れ、ガシャンと飛散する。
シード:「わかったろ?ここは墓場なんだ」
マイキー:「なぜ、脳みそを…!?」
「普通、人って火葬でしょ!?」
シード:「未来での復活を信じているのさ。脳さえあれば未来のテクノロジーで復活させて貰えると思ってる」
DADAを装備した兵士:「今じゃ使えない電子マネーのカードど、宝飾品を持ってか?」
シード:「あぁ。メルヴィアあるあるだよ。メルヴィアは古代から中立国である事を良い事に、外国から『不安』を買っていたんだ。この墓は『死の不安』。メルヴィアはその時代の富裕層から融資をしてもらいながら、彼らに復活を約束したんだ。
不安ってのは金になるんだよ」
アモン:「""それを言ったらフォレストパークは『未来の不安』だな。
メルヴィアはこの星の気候変動や天変地異の不安をフォレストパークの緑化とソーラーパネルで答えた。先進国から融資をしてもらいながらな…""」
「・・・・」
私は”お父さん”の事を思った。
「私のお父さんはメルヴィアでロボット義手や義足を作っていたの。
でも、過去にはコーディアスで反乱軍の元で人間のロボット化に着手し。
学生連合の理想を逆手に取って研究材料にしていたの…。
私がアステロイドとして生まれ変わり、やがてZMが決起してマット師団が生まれた。
そして、マイキーをはじめとするアメルア軍の介入。
もしも全ての事が、メルヴィアの思惑であり私達はその上で動かされている駒だとしたら…」
シード:「所詮俺らは駒さ・・今更驚かないよ」
アモン:「“”違いない“”」
「ハァ・・駒歴が長いと会話にもならないわね」
私はシード達の捻くれた言葉に呆れて引き出しをしまった。
マイキー:「・・これ冷凍保存されてるって事は排水のドレーンもあるってことだよな?」
シード:「ああ。さっき顔を洗ってただろう?」
マイキー:「あれ!?ウエエ!飲んじまったよ!!」
「空気中の水分だから大丈夫よ!本当に害があったら止めるわ!」
マイキー:「知ってたなら最初に言ってくれよ」
「さっき分かったのよ!」
シード:「じゃあ、探索を続けるぞ」
───私たちはキリカルテの奥へ奥へと進んだ。
緩やかに下へ続く通路。
下に続くと社会的地位が高かった者が安置されているのか、人間のシルエットの形をした箱がそのまま壁に埋め込まれている通路に直面した。
私達が来る前から内部の人体を透かすように青く光り、防腐処理の意味なのか正常に機能していると言う意味なのか、不気味に光った。
脱ぎ捨てられたアメルア兵のアーマー。
ZMが縫った千人針の布。
所々、配線が遮断しているのか電気が灯っていない箇所や棺桶に異常を示す赤いシグナルが点灯しているものがあった。
暗い中の赤いシグナルが血を連想させる。
アモン「“”スンスン・・臭うな““」
マイキー:「人間が腐った臭いだ」
シード:「有毒ガスや二酸化炭素の量は??」
DADAを装備した兵士:「問題は無い」
「つまり臭いを我慢すれば進めるって事ね」
シード:「そうだ。エースよりマシだろ」
「そうね。私達がこうしている間に終わってくれたらいいのにね・・」
シードが先に進み、私達が続く。
シードがしゃがみ、手をグーパーした。
前方は完全な闇であり、T字に左右に枝分かれしているようだ。。
アモンがアーマーのポケットからサイリウムを取り出し、捻って放りなげる。
サイリウムはオレンジに強く輝き、前方の空間を照らした。
その瞬間、子どもくらいの何かが走り抜け、それがけたたましい笑い声をあげた!
「アハハハハハハ!!」
兵士:「なんだ!?」
アモン:「“”クソっ!!なんだってんだ!!““」
シードがアーマーについた赤いライトを点ける。
しかし声の主を特定することは出来ず、私達はお互いの顔を見た。
マイキー:「まさか幽霊じゃ」
兵士B:「そんなわけないだろ」
アモン:「”“あっちに行ったか??”“」
兵士:「ああ。確かに見た。ハッキリな」
シードは床の僅かな埃を触り、確かにここに何者かが駆けた痕跡を見たようだった。
シード:「奴は確かにここに居た。隊列を乱すな。動揺を誘う作戦かもしれない。試されてるぞ?」
「うん。私がポイントマンになる。マイキー?私のライフルの方が銃身が短くて近接戦闘向きよ。使いなさい」
マイキー:「サンキュウ。使わせてもらうぜ」
シード:「アモンと他の奴らは後方を警戒せよ。ロロア、異常を見ても深追いするなよ?」
私はバスターに切り替えると先に進んで安全を確認し、サイリウムを投げた。
『敵を知り己を知る事』
『諸悪の根源の探究』
そう書かれたマット師団の機関紙と人体解剖図らしき走り書きが落ちていて・・箱が暴かれ、培養ガラスに入った皮とスライスされた骨が割れていた。
踏むとパキッと音がして解凍が済んだ細胞が徐々に壊れていくのがわかる。
静寂の中を私の足音が響く。
私はVサインを瞳の前に差すと兵士に指示をし、向こう側の箱のあったであろう左右の窪みを指差した。
シードがDADAを装備した兵士を呼び、私の先に行かせる。
アモンやマイキー達は伏せ、DADAの巨大なノズルがエネルギーの蓄積を始めた。
「ロロア、伏せてろ!バーベキューだ」
DADAのビーム放射が放たれる。
一瞬のうちに通路がオレンジに明るくなり、猛烈な熱線が空間を支配した。
「うぎゃあああーー!!!」
「がぁああああ!!!」
箱があったであろう左右の通路から火だるまになったZMが飛び出す。
しかしすぐに足の機構が破壊されて倒れ込むと、すぐに溶けて炭化した黒い塊になってしまった。
シード:「よく伏兵に気付いたなロロア」
「うん。この割れている人工ガラスはワザとね。私達の足音を感知するための」
アモン:「“”体温検知センサーも使わずにか??“”」
「センサー系は感知のリスクもある・・原始的な方法で私たちを知ろうとしていたのね・・本当に賢い奴らよ」
マイキーはギョッとして踏み締めていたガラスから足を離した。
「さぁ、行きましょう・・クリア」
──────
暗闇の中、未来の復活を約束された死者の箱が通路に左右に並ぶ。
なかでも、少しだけ身分の高い者には個室が設けられているらしく、宝箱の中には希少な宝石や使えない電子マネー、宇宙開発の図面などが入れられていた。
シードはマット師団の資料を見かけるとつぶさに撮影し、音声データとして残していた。
シード:「ロロア、どう思う?」
「すごく・・深いね・・」
通路の突き当たりのフロアに差し掛かるとエレベーターがあったであろう巨大な縦穴があった。
どうやら空調は生きているようで悪臭を放った冷気が縦穴から吹き上げている。
「まるで化け物が息をしているみたい」
兵士:「ゴンドラが下に降りたまま電力供給が落ちたみたいだな。どれほどの深さなんだ?」
マイキー:「やってみよう」
マイキーがサイリウムを放り込むと、壁にカツンと当たって、中途半端な所で発光した。
「ありがとうマイキー」
「・・すまんロロア」
DADAを装備した兵士:「ざっと20メートルはあるな。いずれにしても、ワイヤーを持ってこないと無理そうだ」
兵士達は交互に下を覗き、どうするか考える。
どうやら上に連絡するという考えは無いらしい。
「大丈夫、私が行く」
DADAを装備した兵士:「え??」
「私のフットパーツにはスパイクが付いてる。降りて下の様子を見てくるよ。もしかしたら電力供給用のコントロールパネルを見つけられるかもしれない」
シード:「命綱無しで降下するのか?」
「うん。私は落下に強いし、きっと大丈夫」
マイキー:「怖くないのか?」
「何がいるかわからないんだから怖いに決まってるでしょ?・・ふぅ」
マイキーはシードを見る。
私は足の底からスパイクを出すと、穴を見た。
そして右足を下に、左足を前にかけると、ゆっくりと降下する。
アモン:「””幸運を祈る。ウーアー””」
DADAを装備した兵士:「大丈夫だと思うが、階下のガス濃度も測ってくれよ?」
「分かった。ウーアー」
私の前髪が冷気で持ち上がる…足を付けながらゆっくりと降下する…。
マイキーの落としたサイリウムまで到達。
そこから階下のエレベーターのゴンドラが僅かに反射していて、兵士達のライトの光が壁を走るようにあたりを照らした。
ありがたいけど、私の瞳は暗視センサーと赤外線センサーがあるのだ。
ライトの光は逆に邪魔なのだけど、マイキーが私を思っての事だろう。
『ロロアちゃん?』
「テリンコさん」
『微弱なエネルギー反応があるわ。ZMでは無い』
「なに?」
『おそらく人間ね』
「ひと??こんな所に?」
『武器の反応は無い。でも、念のために気をつけて』
私は股のあたりがヒュンとするのを感じた。
遥か下、暗黒の中に『人』が居る。
私は腕をバスターに変えると、最後の5メートルをそのまま飛び降りた。
チュン!!
「降下完了っと」
フットパーツが僅かに大きくなって衝撃を吸収する。
私はバスターを構えたまま瞳を『赤外線モード』に切り替えた。
「たすけてくれ!!」
「きゃあー!!」
その瞬間、色白の痩せ細った半裸の男が私に飛びかかってきた!
臭い吐息とヌルヌルした身体。
怯えきった顔は、まるで亡者のようだった。
それが私の頬を掴み、頭を振ると、上に登ろうと必死に助けを求めている!
「たすけてくれ!!助けて!!」
「今助けるから退きなさい!!」
「助けて!!!!」
『ロロアちゃん!相手はパニックを起こしてるわ!』
「そんな事分かってる!!どうしたらいいの!?」
『バスターの出ない状態でロロアショットガンとピリタス!持ってなければマーマレド!』
「空砲を撃つって訳ね!やってみる!」
私はジタバタする男の顎を左手で持ち上げると、間髪入れずにロロアショットガンを腹部にお見舞いした!
男はギャッと吹き飛び、壁側に積み重なった資材に飛び込んだ!
『何があった!?大丈夫か!?』
バスターの音で驚いたのかシードから通信が入る。
「生存者を発見!!パニックになっている!!可能な限り存命処置をとる!」
『ここは地下深いキリカルテだ。最悪な場合は殺してしまえ。君を失いたくはない!』
私はリュックのユニットを外すと必死にマーマレドを探した。
クソッ!きっとマイキーあたりがピリタスを持っている筈なのに、なんで今いないのよ!!
「あった!」
私はマーマレドを取り出すと上を向く───でも。
「あれ!?どこに行ったの??」
謎の男は消え、私の胸のフィンが高鳴る音だけが耳の奥で響いた・・。




