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自由と金と大量の差別

私は憂鬱な気持ちでカプセル内で目を覚ました。

誰かが私をアルトバウまで運んでくれたらしい。


リビングに行くと、人工の顎を付けたアモンがフィアンセのホログラムを歩かせていて2人分のワインを注いで一杯やっていた。

私に気付くとサッとホログラムの上に座って隠してしまう。


アモン:「""ロロア、大丈夫か?""」

「うん、アモンは?」


アモン:「""これが絶好調なんだよー“”」

アモンがあからさまなな嘘をつく。


「そうなの??ロボットの顎も似合ってきた」


アモン:「“”俺も気に入ってるって、馬鹿野郎“”」

「ふふふ。重そうだもんね。早く治して元気になってね」

アモン:「"ああ"」

「マイキーとシードはどこ?」

アモン:「“”シードは知らないが、マイキーなら屋上にいると思うぜ?“”」

「ありがとうアモン!」

アモン:「“”またな!“”」


部屋から出てアルトバウの螺旋階段を登る。

手すりの金属の部分をカタカタと指でなぞると、たまに、どこかの部屋から兵士達の言い争いがこだまする。


(目を閉じるとバグスの猿叫が聴こえるんだ!音楽でかき消さないとやってられない!!どいつもこいつもバグズみたいな顔しやがって!!ジャックだってたかだかロボットだ。俺らなんて駒としか思ってないんだよ!!)

(人生を悲観することなんて無いんだ!俺たちはいつもそうだったろう?今、ここが最底辺なんだ!だったらもう下がることはない!そうだろう!?駒なんて言うな!確かにバグズだらけで、陰謀論が蔓延り、疑心暗鬼にあることもあるだろう!しかし、俺らは変わらないんだ!これからも、この先も!!)


(黙れお前達!!少しは戦争から頭を離せ!)

(お前が黙れ!!くそが!!)



「はぁ・・」

きっとアメルアが負け越してから、ずっと殺伐とした雰囲気なのだろう・・。

階段の途中には死んだように座っている兵士が何人も居て、灰皿に立てた煙草の煙が抜けた魂のように静かに上に昇って行くのが見えた。


屋上に行くにつれてスパークピストルの射撃音が聴こえる。


「マイキー!」

「おう!ロロア!大丈夫か??」

「何をしているの??」


マイキーはスパークピストルで缶の試し撃ちをしていた。

撃ったバスターは缶のやや右を逸れて建物に当たる。


「チッ。ちゃんとエイムしてるのにな・・」

「レンズの絞りを小さくしたら?」


「そんなんじゃバグズを確実に仕留められないだろ??」

「バグズ・・」

私はふと、ニュートリノ発電所でのZMー200のやり取りを思い出す。


“”“”「ニイさん(ZMー200)は、最初から良い人だと思ってましたよ。だって、ライフコアが青くなっているんだもの」

「あっ!コイツはいっけねーや!あははははは!」“”“”“


「ロロア??」

「あ、、、うん。。何?」

マイキーに話しかけられて我に帰る。


「なんか撃ち方にコツがあるなら教えてくれよ?全くもって当たらないんだよ」

「え??うーんと。腕の吸収が甘いんじゃないかしら。引き金を握る時、マイキーは余計に強く握って銃口が上を向いてしまっているの。左手で手首を掴んで押さえるか・・やや下に照準を向けて撃ってみたらどうかな?」

「そ・・そうか!」


マイキーは私の指摘した通りに射撃する。

チュンッッ!!キュワン!

と言う音がしてバスターが地面を擦り、くの字に残光を残して飛んで行ってしまった。


「極端すぎるよマイキー。あなたはオシッコする時、チンコを上に握るの?」

「握んねーよ!ロロア、だんだん例えがアメルア人っぽくなってきたな・・」


「そう??」

「ああ」


マイキーがスパークピストルを放り投げると、ヘルメットを脱いだ。

ヘルメットにはバイザーが付いていて、銃を覗き込ん狙い撃ちしなくても、バイザーにリティクルと言う照準が表示されてバスターの飛ぶ場所が分かるようになっていた。

しかし、リティクルは正確な物ではなく。

兵士達は自分の握る癖や呼吸を視野に計算に入れながらリティクルのより上や下を狙うように調節するのだ。

しかしマイキーにはそれが出来ない。

戦場での経験値の低さと、そうした融通が彼には理解できないのだ。


「・・ロロア、そういえば、あれからジャックとどんなやり取りをしたんだ??」

沈黙を破りマイキーが話を変えた。



「…ジャックからみんなのデータを貰ったの」

「みんなのデータ?そんなの貰ってどうすんだ?」


「・・・ヤタガラス隊を探したいの。ヤタガラス隊は、フォレストパークのどこかにいるフォレストマンの情報を知ってる筈だから、あなた方兵士達の中でヤタガラス隊に近い人物を探そうと思ったの」

「ヤタガラス隊を探して、アメルア軍より先にフォレストマンを撃破するって訳か」

「そう」


「ジャックはロロアの狙いを知ってるのか?」

「隠そうと思ったんだけど、うっかり喋っちゃった」


「そっか(笑)ロロアはきっと嘘がつけないんだな。あーあ」

マイキーは屋上のベンチに座ると屋上を見た。

私も隣に座る。


空は真っ青で美しく、何かがキラキラと舞っているのが見えた。

おそらくはアルミで、雲もよく見ると何かの爆発で形成された雲で、漂っている今もプラズマ放電を行っていた。

大きく見れば綺麗なのに、個々に見るとゾッとする空だ。

「・・・俺のデータも見えるのか?」

「え?」

マイキーが空を見ながら呟いた。


「見てもいいの??」

「・・聞かなくても見えるんだろ?いいよ」


私はマイキーを見た。

暫くするとマイキーの上にデータが表示される。


マイケル(マイキー)・コーディアシム(15)

出身:コーディアス

アメルア軍 エース攻略隊 第2大隊所属

共民生コーディアスの崩壊後も西コーディアス時代の大型共同住宅は“労働力の生産”の機能を有したままであり、その機能が停止するまで崩壊した政府崩壊状態のコーディアスの再建を大きく支える事となった。

しかし大型共同住宅出身者には財産の概念すら無く、無人権で無報酬の者も多く、その生活を続ける保守的な民間人も存在した。

それ故、大型共同住宅崩壊後が完全に機能を停止した頃には、いち早く主民主義を取り入れた東コーディアスとの深刻な格差社会に陥ることとなり、大型共同住宅の最後の出身であるマイケルも崩壊しつつある建物の中でアルダンス(無能・働けない者・浮浪者)として嫌われ、十分な対価の仕事に就く事が出来なかった。

コーディアスの大統領が完全主民主義を宣言、マイケルはアメルア軍再救済プログラムに志願。

アメルア軍として従軍する。



「マイキー・・!」

「うわわ!おい!!」

私は思わずマイキーを抱きしめて泣いた。


「大変だったねマイキー!!」

「な、俺のデータの何を見たんだよ!」


「マイキーの人生!しかも下の名前、コーディアシムって言うんだね!それにマイケルで、マイキーじゃないんだ!」

「いや、名前がマイケルだからマイキーって呼ばれてるだけで本名じゃないよ。コーディアシムは、手続きが面倒くさくならないようにアメルアが適当に付けた名前だよ」

「そうなんだ・・!マイキーは経歴を偽る事なくマイキーなんだね!」


「俺は偽る必要が無いからな。南部生まれのアメルア人からは差別されるが、そんなのどうって事ないし」

「・・産まれや育ちで差別されるなんておかしいよ」


「俺も南部のアメルア人は大嫌いだ」

「もう、マイキー!」


「ははははは!・・さて、もうひと頑張り!」


マイキーは立ち上がるとヘルメットをかぶり、スパークピストルを構えて缶を狙った。

一応彼なりのルールがあるらしく、15発入りで5発当たれば合格らしい。


バシュン!

「当たったか??・・くそう!」

「上に逸れたね」



「ロロアやってみろよ」

「私がやったら100発100中だよ。マイキーの開けた缶の穴にバスターを通す事だってできる」


「ちぇ!」

「ふふふ。頑張ってマイキー?」



私がマイキーの射撃を見ている間、不意に屋上に5〜6人の兵士達が登ってきた。

皆、軍服を破るなどして機械化した二の腕を出したり電気刺青(エレクトロタトゥーなどを顔に施して全体的に派手だった。

今も私達を見る度にエレクトロタトゥーが動き回り、赤い攻撃的な図形を作っている。



「ロロアって言うのはどいつだぁ??アステロイドのガキなんだが!」


私は驚きながらマイキーを見る。

マイキーは呆れながら言った

「あ?見てわかんないか?俺がロロアだよ」

「貴様がロロアか・・あ!!?」


「ゴホッ!!」

マイキーが突然ゴロツキに顔を殴られ思い切り吹き飛んだ!

「ちょっと!何するの!!」


マイキーは鼻血か口腔出血か分からない出血を出し、私は思わず駆け寄って口の様子を確認した。

前歯だけは復活させるのにクレジットが異様に高いのだ。

「前歯は大丈夫!?!?!痛みは!?」

「大丈夫だ。突然殴ってくるなんて南部の輩は違うな・・!」


これがサイフォノイスの特色が強い南部のアメルア人。

「あなた達、アステロイドと人間の違いも分からないの!?あなた達は罰せられるべきよ!督戦隊に言いつけてやるから!!」

私が叫ぶとゴロツキ達が下品に笑う。

悪意と憎悪に満ちた本当に酷い顔、ハルミオ小学校のどこを探しても見ないような弱者をバカにして笑うような蔑んだ顔だ。


ゴロツキ達の中の2人がバカにしたように言う。

「俺らサイフォノイスからしたら機械嫌いが“人間”で、他は全部エーアイなんだよ。コイツがロロアかそれ以外なんてどうでもいいね!」

「どっちにしても、こいつは共民主義の犬だろ??お前ら共民主義の犬は"使えない人間"を何て呼ぶんだっけか??」


「・・アルダンスだ!お前らにピッタリだな」

マイキーが睨みながら兵士の問いに答える。


「アルダンス!まんまお前らに返してやるよ!!!」

「アルダンス!」

「アルダンス!!」

「このアルダンスが!!」

「クソったれアルダンス!」

ゴロツキ達が唾を飛ばしながらここぞとばかりに私達を罵る。


なぜ彼らはここまで私達を目の敵にするのだろう?

きまじめなマイキーとは比べ物にならない奴らに、なんで罵られなければならないのだろう?


「黙って聞いてれば…!!」

「わわわ!おい!よせロロア!」


私は右手がバスターに切り替わりそうになり、マイキーが慌てて私の腕を隠した。

マイキーが叱りつけるように私に囁く。

「・・ロロア!BAN機能を忘れた訳じゃないだろう!?今は他勢に無勢だ。高出力の兵器を出したら奴らは一斉にロロアを告発して君を追放するだろう。アメルアは主民主義・・数で物を言う社会なんだ!今は我慢しろ」

「・・くっ!」


私はいつかの日に1人の兵士がBANされるのを見たことがあった。

どうやら作戦中に味方を誤射してしまったらしく、それについて他の兵士に問い詰められていたのだ。

そして極限まで問い詰められた兵士は、持っていた手榴弾に手をかける。


しかし、アメルアのマザーデータが『アメルアに対する深刻な敵対行動』を感知し、兵器の使用をロック。

督戦隊が来て質問を2〜3した後に、キャプチャーバスターという電気砲を受けて拘束された後、どこかへ連れ出されてしまった・・。

シード曰く、従軍する味方に対する敵対行動は重罪らしく、自身の人権を破棄する事と一緒らしい。


「・・私達を機械人形やアルダンスと罵りながら、私達が何かやれば敵対行動として通報するなんて、とんだお笑い草ね・・!!」

私はアメルアのゴロツキに言った。


「面白いだろ?ここはアメルア軍のキャンプであり、その瞬間からここはアメルア領なんだよ。アメルアの法律ではアメルア人を侮辱する言葉は通報の対象であり外国人を侮辱する言葉は禁止ワードには含まれていないんだ。分かったか?エーアイさんよ」


「このクソ野郎!!!主民主義が聞いて呆れるわ!」

私は頭にきてゴロツキに暴言を吐いた。

その瞬間、ヘッドギアの奥からアラームが鳴り

『キャンプ内で禁止されたワードが検出されました』と機械的なアナウンスが出た。

一応、私もアメルア軍と一緒に従軍しているので他の兵士と同じようにアメルアのデータをダウンロードしているのだが、面倒くさい規則やルールばかりで本当に無用の長物だった。

その無用の長物のガイドラインの中に味方兵士に対する言葉使いの注意事項と監視するシステムの記述があったようで、私も例に漏れず警告を受ける事になった。


「ロロアさんよ、共民主義時代の異物を腕に隠し持ってんだろ?見せてみろよ?」

「え?」


「バルバが言っていたぜ?得体の知れないメルヴィアのアステロイドを監視していたら、コーディアスの“極共団体”が作り出した秘密兵器をかざしているのを見たってな!!」

マイキー:「あの野郎!!」


当のバルバはここに居らず、マイキーが地団駄を踏みながら歯を食いしばった。

流石に私も言われっぱなしてイライラして、言い返す。

「秘密兵器があるから何だって言うのよ?貴方達には関係ないでしょ?」


「その兵器で何をするつもりだ?俺らを後ろから撃つつもりだろう??」

「はぁ??なんで??」


「それは*****───」

もうそれは私が呆れてしまうような内容だった・・。




この目の前で得意げに話しているゴロツキは

クリステン・カーチス(38)と言う男らしい。

彼らはアメルアの80州ある内の南部で生活している人間で、富裕層の為の車や宝飾品の製作を生業としている極めて保守的な地域の出身者だった。

しかし、ロボット人権運動の波が北部に続いて南部にも押し寄せ、メカニロボより高度で人間に近いアステロイドが南部の政界にも入り込むようになった。


やがて人間の職人による丁寧な手仕事を売りにしていた高級車大手のハイスラー社が、密かに人間の技師からアステロイドの技師に変えていた事を曝露され、それが南部の労働者の逆鱗に触れる事となった。


怒りはハイスラー社製の製品の不買運動から始まり、製品の破壊、アステロイドの破壊、やがては街の破壊や暴動に発展し『反機械主義者(サイフォノイス)』と呼ばれ、やがては嫌厭され恐れられる事になる。

それは、プログラムできない人間を雇用する『ヒューマンリスク』として企業として認知される様になり、皮肉にも企業による本格的なロボット参入を後押しする事になってしまった。

サイフォノイス達は過激さを増し、アメルアから正式な『除外対象組織』の烙印を押され、追放される事になる。

その最たる受け皿が、アメルア軍としての従軍による住民票の再取得と信頼回復だった。

彼らはそこで自分の考えを変えるどころか、サイフォノイス同士で根拠不明の噂話を共有し合っているのだ。



カーチスの暴言は続く。

「───それはお前ら共民主義者と、それをプログラムされた貴様のようなアステロイドが、アメルアを裏から牛耳る為だろうが!!俺は知ってるぞ!!」

「何よソレ!!初めて聞いたわ!」


「嘘をつくな!!」


「根拠は何よ??情報の発信源は??」

「『アメルア速報』だ」


「え!?は?アメルア速報!?!?」

私が聞き返すとマイキーが言う。


マイキー:「アメルアの南部の連中が見ている情報共有サイトだよ」


「・・マイキー?それは公的な期間の情報サイトなの!?」


私がマイキーに聞くと兵士が怒鳴るように割って入る。

「そんな事、貴様にはどうでもいいだろう!?」

「はぁあ!?どうでもあるわよ!!こうして変な噂話を立てられて罵られて、おまけにバルバとか言うサイフォノイスに監視されて不公平じゃない!!まず、そんな情報の出所が不確かなサイトの情報を引用して喧嘩腰に私に話しかけてこないでよ!!それがアメルアの南部の人間のやり方なの!?」


他のゴロツキ:「黙って聞いてれば“南部の人間”とはどう言う事だ??あ!?」

「五月蝿いわね!!貴方は黙ってなさいよ!!」



───もう本当に、こうした何の解決の糸口も見えない取り留めもない口論合戦が夕方まで続いた!────



「ハァ・・ハァ・・やっといなくなったぜ・・!」

「もう・・何なのよアイツら・・!!」



私とマイキーはすっかり憔悴して部屋に戻った。

念のためドアのロックの他に、閂までする。


「“”遅かったな!2人してデートか??“”」

アモンが私達に冗談を言い、言い返す気力もなくて2人でアモンを睨んだ。


「“”悪い・・。冗談だ“”」

「シードは??」


「シードならそこにいるぜ??」

シード:「おう!2人とも!!」


「「シード!!」」

私とマイキーは同時に叫んだ。


ロロア:「どこに行ってたの??サイフォノイスが来て大変だったんだから!!」

シード:「あ、ああ。そうみたいだな。ジャックにロロアに何をしたのか聞いてたんだ」


「ジャックは、なんて言ってたの?」


「“ロロアの欲しいものを与えた”って。サイフォノイスはロロアに疑いの目を向けているし、ジャックや俺らのパーティーにだって疑惑の目を向けてきている。俺らがグルになって主民主義のスパイをやってるんじゃないかってな」


マイキーは握り拳を作りながら俯いた。

私はマイキーの拳に触れると言った。

「それもアメルア速報のせいね?私達の事を有る事無い事書いているんでしょ??」


「そうだ。ネットの情報は所詮は閲覧数で稼いでいるからな。相手の都合の良い情報を極端に書く。嘘か本当かなんて二の次なんだ」

アモン:「“”“バルバが取材に答えている記事もあったぜ?”“”」


「アモンも見てるんだね」

「“”あくまで閲覧しているだけだ。信じちゃいないさ“”」


シード:「何はともあれ、ディナーにしよう。気分を変えようぜ。ここは安全地帯だ」




私達は届いた支給品で晩御飯にした。


後味悪い事があっても、私が“ロボット”でも、

アモンが人工の顎であってもお腹は空くのだ。


私達はテレビを点けず、黙々と支給品を開ける。

支給品を開ける時にロックが開く電子音が部屋に響いた。



アモンは液体栄養剤を飲み。

マイキーは相変わらず『軍用栄養固形物 ─A─』だ。

何となく今日あったサイフォノイス達のやりとりの話をするのも憚られ、かと言って能天気な日常会話をする気分にもなれなかった。


年季の入った白い照明が、時に接触が悪いのか薄暗くなる。

私達4人は不気味に照らされ、その中で食器が歯に当たり咀嚼する音が響いた。


「しかし不味いな・・顎が疲れる」

マイキーが固形物を齧りながら言う。


アモンはテーブルの上で手の平を見せ

“なんか言ったか?”と皆にジェスチャーをする。



「・・あ!独り占めしちゃってごめんね」

私は話を変えようとフォークで煮込んだ合成肉チキンの一つを突き刺すと、マイキーのトレーに入れた。


「よし、俺からも・・!」

シードもマイキーのトレーにミートパイの一つを入れる。

「ああ、いや!物乞いするつもりで言ったんじゃ無かったんだ!」


「いいから食えよマイキー?」

「そうよ!」

「“”俺の事なんか気にせず食べるんだ“”」




「余計食いずらいよ!っったく!!」

「あはははははは!」

「笑うな!!ロロア!」


「あはははははは!!・・うん!美味しい!」

私はマスカットを口にして笑った。



───


「機械仕掛けのお嬢様、俺の素晴らしき1日の動きを聞くか??」

食事中、不意に沈黙を破ってシードが言った。


「ん?活動報告?」

私がチキンを口に運びながらシードに聞く。

シードは掬ったマッシュポテトを口元でクルクルしながら言った。


「ああ。・・ジャックに会ってきたんだ。“ロロアとどんなやり取りをしたんだ?”って」

マイキーが口をモグモグしながら私を見る。


「─それで、ジャックは何て言ったの??」

 「“彼女の欲しいものは与えた”って」


「それだけ??」

「ああ。それだけで伝わると踏んだんだろう。現にロロアはその後、兵士の個人データを読み上げてみせ、バスターを見せつけた。“俺ら”からしたら十分すぎる情報さ」


「バスターはもともとあったけどね」

「ロロアよ」


シードが向き直って神妙な面持ちになって私に言う。


「ここの連中は信用できない。君もそう思うだろう。だけどな、一応の情報共有はしておかないと誰も信用しなくなるぞ?君が信用しないと・・俺らも信用できなくなるんだ。分かるかい?」

「ん?・・それはシードは私を信用していないって事??サイフォノイス達のように──」

「極端な例を出すなロロア。アイツらはサイフォノイスなんだ。俺らとは違う」

「・・でも私を信用していないんでしょ??」


アモン:「“”落ち着けロロア。信用して無かったら一緒の部屋で寝たりはしないだろう“”」

マイキー:「一緒に訓練もしないよ」


「・・あなた達は・・お互いを信用しているの??」


「・・・」


「お互いの生まれも育ちも国の思想も違う人たちでしょ??アメルア軍はどうやって背中を預けているの??」

シード:「だから合言葉があるのさ。ウーアー。俺らはアメルア兵」

アモン:「“”俺らは同じ目的を持つ光の戦士“”」


「・・ドライな関係ね。でも同じ目的あるって訳ね」


シード:「どうせ作戦が終わり、パーティが解散しちまえば2度と会わないからな。だからこうしたドライな関係は文化であり、あまり悲観しないで欲しいんだ」

「ふーん。。。」








──────



私達が待機中、憂鬱な日々が続いた。

日中はサイフォノイス達の嫌がらせが始まり、休暇中だと言うのに否応なしにそれの相手をするハメになった。

罵詈雑言の嵐。


私は睡眠の時間になると現実逃避するように自分のデータの海にダイブした。



青いワイヤーで形成された地平線にメモリーを意味するダイヤが立っている。



私のデータ内は兵士達のデータが立ち並び、こうして2号機(ユナ)のデータまで行くと毎晩のように語りかけた。


「───それからが大変だったの!多くの兵士が鬼の形相で私に怒号のような質問攻めをしてきたわ!ドアを叩いてね・・兵士共が入ってきたの。

私は無理やり電源を入れて叩き起こされて!

あとね、アイツら降伏したZMを虐めるのよ?

だから言ってやったの。

"そんな所で燻ってないで少しはメルヴィアやアメルアの為に戦ったらどうなの“って。

そしたら・・うふふ!“”腕が機械じゃなきゃとっくに出撃してる“”って、言ったのよ?

それでね、私は言ってやったの!

”あなたの言い分じゃ私は出撃できないわね!だって全身機械なんだもん!って!!」


ユナのデータが赤く点滅する。

それが彼女の反応なのか、私の声が反響したのかはわからない・・。

それでも私は続けた。


「あのね、毎日のように奴らを相手にして分かったの。

アメルア兵達は差別には慣れっこなのよ。

もしもアメルア兵のアイデンティティーを批判すると、他のアメルア兵が食いついてくるわ。

彼らは愚かで知恵が無い癖に国籍の批判に対する反論方法を幾つも知っているから・・。だから私は極力個人を攻撃するようにしているのよ?」

ユナのデータが呼吸をするように赤く光り、反応しているようにも見える。


「ユナ?皆のデーターは入隊理由ばかりでヤタガラス隊に関与していそうな兵士は誰も居なかったわ。アメルア兵に紛れたら分かると思ったのにドン詰まり…。

もしもエースの攻略が終わったら隊を抜け出して単独でフォレストパークを旅しようと思うの。

どうかな?」


私が聞くと、ユナが2回点滅する。

きっとユナは賛同してくれているのだろう。

「ね。私もそう思う。そろそろ戻るね」


私はこうして自身の分身に語りかけると、サイフォノイスとの会話バトルに身を投じるのであった・・。







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