破滅の歌
「ロロアちゃんは腹の虫が治まらなかったんだろう」
生き延びたZM-300は、ロロアの行動をこう解釈する。
「いや、戦いの収拾がつけれなかったんじゃないですかね?まだ少女ですから・・」
ZM-200が腕を組んで言った。
パワーマンを破壊されたにもかかわらず、束の間の平和にうつつを抜かすロボット達。
戦いを終わらせられない。
ロロアは暴力と怒りに支配され、ロボットを食らう鬼と化す・・。
それからロロアがどうなったのか空白がある。
ロロアは日記を止めていて、ロロアの母はアクセス不可になっていた。
ニュートリノ発電所のデータベースによるとバーサーカーの悲鳴が録音されており。
生体反応が消えるまで数メートル引き摺った後、なぜかニュートリノジェネレーターまで戻り、しばらく座り込んだようだ。
数分後、突然思い出したようにニュートリノエナジー保管室まで戻った後、パワーマンの連絡を不審に思った10人のレッドキラーと対峙。
8人を破壊せしめた後、2人のレッドキラーは敗走する。
しかし、2人は防護シャッターを閉めた後に口論し。
追い付いたロロアに防護シャッターもろとも破壊されてしまった・・
ZM-300が非常事態を出す前の事だ。
ロロアは生体反応に反応する蜘蛛のように見つけたメカニロボ達を破壊してゆく。
そして、より多くの生体反応があるフロアを見つけた。
※※※※※※
「・・で、今期のボーナスの支給は明後日です!みなさん、本当に良く頑張りました!拍手!!」
ここの最高幹部である4本腕のホワイトデビルが、コの字に並べたディスクの先端で発表した。
「おぉ!」
拍手と感銘の声が会議室にこだまする。
そこには事務仕事を終えたグリーンキラーや見習い達。
沢山のレッドキラーや好戦的な民間メカニロボYWシリーズ。ZMシリーズも何人かいた。
ブラックアイ達はホワイトデビルの周りで立っている。
皆ボーナス支給を肩を叩いて誉めあい。
健闘を称えあった。
「私たちは努力に金銭を惜しまず、努力する者に金銭を惜しみません!私達は共同体なのです!1つの仲間なのです!」
ホワイトデビルが言い拍手がおこる。
深く頷くZM、僕も嬉しくなって拍手した。
僕はYWシリーズからグリーンキラーに昇格したメカニロボだ。
もともとYWシリーズは繊細な仕事を多く任され、外骨格もクリーム色の青が多い。
一生懸命防衛する所をレッドキラーに声をかけられ。
「グリーンキラーにならないか?」
と誘われた。
それから叱られたり、Aタンクの補充と掃除を経てようやくグリーンキラーの外装を貰えたんだ。
まだ体がピカピカで馬鹿にされる事は多いけど・・。
「それで、ボーナスの支給ですが。支給の後、皆で飲み会をしようと思っています!」
ホワイトデビルが言う。
「えっ!外に出れるんですか?」
「えぇ、出られますとも!チームガンバは疲弊していますし、スーパーコンピューターの算出によると、攻めてくる確率は20%!!」
「おぉ!!」
「なら大丈夫だ!」
20%って、かなりの確率な気がしたが。ホワイトデビルが言うなら大丈夫だろう。
「特製のバスに乗って送迎になります。最近、ロボット居酒屋の領収書を出す輩がいますが・・みんな平等に・・ん?なんですか?」
「ん?」
ホワイトデビルがブラックアイに肩を叩かれて止まる。
ブラックアイの聴力が何かをとらえたようだ。
「どうしました?」
「なんだ?」
「女の子の声が・・しませんか?みんな静かに!」
その瞬間、会議室のライトが薄暗い予備電源のオレンジに変わった。
「なんだ?何がはじまるんだ?」
「・・みんな・・なきゃ・・。戦いを・・終わら・・きゃ・・」
「!!!ド、ドアの向こうに何かいるぞ!!!」
皆がガタガタと、ドアから飛び退く。
その時、よくやくZM-300による『非常事態宣言 オーダー80』が発令された。
けたたましいサイレンが鳴り響き、『バンガシラ』と呼ばれる戦闘に特化したメカニロボが発動した筈だ。
「オーダー80だと!!侵入者か!!」
「そこにいます!!そこ!」
「皆!武器をもっているか!!臨戦態勢をいそげ!」
皆がガチャガチャとスパークライフルを構える。
重機関スパークライフルに慌てて装填したり、右手のバスター型の者達もいた。
盾と剣をもったZMが前に出て、二番目にレッドキラーのスパークライフルやバスター。
後ろにグリーンキラーの重機関スパークライフルが構える。
「おい!グリーンキラー!お前はこれだ!」
「は、はい!」
僕はスパークピストルをもらった。
これだけ居たら、侵入者も太刀打ちできないだろう。
僕は味方に当たると嫌なので、スパークピストルをしまうと後ろに隠れた。
「戦いを終わらせなきゃ。みんなを助けなきゃ。」
女の子の声が聞こえる・・。
隊長は女か!?
ドアの向こうでバンガシラ達が捕捉した音がした。
「・・これで奴等も終わりだな・・」
手間のグリーンキラー先輩が言い、頷いた。
しばらくバチバチと戦闘する音が聞こえる。
轟音と雷が破裂する音が聞こえる・・。
扉が開き。
「・・任務完了、オーダー80解除。」
廊下には3体の巨大な装甲のバンガシラが何かを囲んでいた。
バンガシラは仕事を終え、倒れた者をスキャナーでスキャンし。
リュックからクマのぬいぐるみを乱暴に出した。
「なんだ?なんだ??ひとり?」
「女の子だ!・・女の子型のアステロイドだ!」
「みんな!戦闘態勢解除!!」
張りつめていた緊張がとけ、ホワイトデビルが倒れた女の子に近づく。
「・・クマさんを持った、女の子だ!クマさんを持った!カカカカカ!!」
ホワイトデビルがクマのぬいぐるみを拾い上げて、右手で指差して僕らに話した。
後ろのバンガシラの様子がおかしい・・。
なんだか嫌な予感がする・・。
「ホワイトデビルさん!!」
「うしろ!うしろー!!!」
「ホワイトさん!!早くこちらへ!!」
「あなたが死ねば・・戦いを終わらせられる・・」
それはハッキリ聞こえた。
ホワイトデビルの後ろに赤い陽炎が立ち上がった。
赤い陽炎の真ん中に黒い影があり、2つのライフコアらしき部分が白く光っていた。
「うっうぁあああ!」
ホワイトデビルが反り返り、クマを離す。
胸が盛り上がりホワイトデビルが持ち上がった。
バンガシラがブルブル震え、頭がボロボロと崩れて行く。
「ぐ、ぐぇえ・・ゴホッ、ゴホッ。」
ホワイトデビルが口から赤いオイルを吐き出す。
そして・・。
まわりから悲鳴が聞こえた瞬間、僕は逃げ出した。
僕はグリーンキラーに就任し、そして・・。
ニュートリノの戦いの終焉をこの目で見たんだ・・。
「ぐぇあああ!」
ホワイトデビルの断末魔が聞こえ木っ端微塵に砕け散る・・。
「うわっ!」
「はぁあ!!」
「ひぃ!」
他のロボ達の恐怖におののく声がする。
「サンダーブレイク!!」
パワーマンの技を女の子が叫ぶ!
その瞬間、皆の絶叫と電撃が走り抜け、弾けとんだ仲間の腕が僕の顔に当たった。
「撤退命令を発令しろ!!繰り返す!撤退命令!守備隊は会議室に・・ぎゃーー!!」
女の子が、メッセンジャーを破壊する。
フロアには最初のサンダーブレイクで倒れた仲間が山になり。
他のロボ達は壁を壊して逃げ出した。
僕は恐怖で腰のボルトが抜けてしまったのか、動けない。
「お前はロロアか!!パワーマンに殺られた腹いせに、ここまで進化するとは!!」
「あなたを生かしておく訳にはいかない。刺し違えても、あなたを破壊する!」
「ホワイトデビル様を破壊した罪は重いぞ!!」
ブラックアイが5名飛び出し、黒いロロアを包囲する。
「私の邪魔をするモノは破壊シマス・・。」
ロロアがバスターを構えた瞬間、パタ(腕に装着するサーベル)を装備したブラックアイがステルスモードで見えなくなった。
ロロアが3回、サーベルの風切り音を交わす。
「よし!とらえた!!」
僕は思わず口にする。
ロロアの体から体液が噴き出した。
ブラックアイが腹を貫いたのだ。
「うっ!?ぐぐっ!」
(どちらの声か不明)
しかし、透明になったブラックアイの腕を掴むと右手のバスターを放った!
バスターはブラックアイの腕と、横にいたブラックアイに当たる!
「ぐあーー!」
片腕を切断されたブラックアイの体液が飛び散る。
飛び散った体液がステルス機能にかかり、他の仲間のブラックアイの体の輪郭が露になる。
「暴れるな!俺らの位置がバレるだろうが!あぶない!」
バスターが霞め、後ろのブラックアイに当たって首が吹き飛ぶ。
ロロアの黒さが増す。
フロアが熱くなり、ガタガタと揺れはじめる。
「も、もうやめて下さい!」
そこへ、さっきホワイトデビルが掴んだクマが割って入った。
一時的にオフラインだったようだ。
「パワーマンやホワイトデビルが亡くなりました!あなた方の負けです!撤退してください!!」
「パワーマンが!?」
「なるほど、どおりでパワーマンの技を・・」
残ったブラックアイ2名が話す。
「ロロアちゃんの強さを見たでしょう!?あなた方が敵意を見せている限り、ロロアちゃんの暴走は止まらないの!武器を捨てて降参してください!でないと、ロロアは・・!ロロアは・・!!きゃあ!」
ロロアはしゃがむと、クマの右足を掴んで不思議そうに覗きこんだ。
もはや女性型アステロイドの恥じらいもなく、ブラックアイの方に足を広げている。
もともとパンツ型の外骨格だが、普通のアステロイドやサイクロイドは膝を閉じるか、スカートを付けるのが嗜みだ。
「コイツはバケモノだ!ここで破壊しないと!!いくぞ!!」
1人のブラックアイが飛びかかり、ロロアが回転した。
カキン!
と言う音がして、腹に刺さったパタとブラックアイのパタが当たる。
「コイツ!戦いの型がない!!」
ブラックアイは、ロロアのバスターを瞬時にかわすと次に控えていたロロアの左フックを右手でブロックした。
しかし、バスターがブラックアイの顎を砕く。
そして、さらに飛び上がってブラックアイの頭に思い切り左手を打ち付けるとブラックアイの頭を力ずくで落とし、もう1人のブラックアイの両足をバスターで破壊した!
「うあああ!!足が!!足がー!!」
両足を失ったブラックアイが倒れる。
ロロアはクマを乱暴にリュックに押し込むと歌を歌いだした・・。
※※※※※※※※※
「俺は確かに見たんだ!あれは人だった!」
「あれはメルヴィア様に違いない!メルヴィア様が助けてくれたのだ!」
隊員達が噂し、皆でバリケードに登ってニュートリノ発電所を双眼鏡で見ていた。
俺らの陣地に‘’嫌がらせ‘’していたロボ達が潮を引くように撤退してゆく。
解放されたバリケードを攻めていたと思われるロボ達も丸腰の状態で走っていた。
「ニュートリノ発電所で侵入者がいたようです!」
ダーパの伝令が伝えにきた。
「侵入者は・・ロロア!!小学生です!」
「ロロアちゃん!!」
「ロロアちゃんだって!?」
テリンコがバリケードにもられるように近づくと、俺の部下の双眼鏡を引ったくる。
「助けにいかないと!ロロアちゃん・・!」
テリンコがフラフラしながらボロボロのスパークライフルを掴む。
「そんな体でどうするってんだ!?」
「でも、1人で戦っているのよ!?私達だって行かないと!!あなたも壊れた野砲にしがみついてないで準備なさい!」
「しがみついてるって・・そんな風に見えるのか!」
「二人とも!発電所を見て下さい!」
諜報部の隊員が発電所を指差す。
「発電所が燃えているのか・・?」
「いいえ、何か強力なエネルギー反応が移動しながら放出されているようです!」
「敵の兵器か!?」
「現在、解析中です!」
「へ、兵器ではないようです。今、ニュートリノ発電所から『退避命令』が発令されました!」
伝令が諜報部の言葉に割ってはいる。
それは発電所を包み込むようなカゲロウのような光りだった。
何度か、ライフルがキラキラと瞬いた後
カゲロウに呑み込まれてゆく。
ニュートリノ発電所のバリケードは沈黙し、嫌がらせをしていたロボット達もなぜか佇んでいる。
そして、脱出用の船が何隻か飛び立つ。
「歌が・・聞こえませんか?」
「え?」
「みんな静かにしてくれ!」
真夏「聴こえる・・!」
鎧の隊員「女の子の声だ!」
鎧の女隊員「ロロアが叫んでいる!!」
伝令「僕には、泣き声に聴こえますが・・。」
野砲隊「いや、怒号に聴こえる・・。」
テリンコ「いえ。確かに歌っているわ!大気いっぱいにロロアちゃんが歌っている!!」