膨大なデータの蓄積と・・
エースを守るZMに撃退され敗走するロロア。
ロロアはアメルア軍の戦いを妨害するメルヴィアの世論に疑問を持ち、さまざまな思惑で入隊するアメルア軍を理解しようと奮闘する。
そこにあるのは本人ですら知らなかったロロアの機能と、並外れた可能性だった。
──────
私はコントロールパネルを挟んで、アルガ(トオル)にバスターを向けた。
瞳を別のモードに切り替えても、武器らしき反応は無い…。
管制室のまわりにはブルーシグナルズの兵士達の死体が転がっており。
たとえ私から逃れたとしてもブルーシグナルズとしては最後の“個体”であり、組織としては機能できない事は明白だった。
「メリルをさらった目的は何?」
私が聞く。
「君の調査だよ。チームガンバがあと少しで壊滅するって時に・・君はパワーマンを破壊しマット師団を敗走させた。
ロロア、君はカイン博士の愛娘だね?まさか娘がアステロイドだったとは・・・。
カインナンバーズである君が味方に付いてくれなかったのは残念だ…」
「パパの…何を知っているの?」
アルガは旧モデルの記録チップを渡した。
「話をするより、情報として共有した方がわかりやすいだろう?俺の記憶が正しければ君の耳の付け根に差し込む為のスロットがあるはずだ」
「え?私、そんなの知らないけど…」
私は髪を掻き分けて、触ってみた。
用心深く耳の後ろを触ると、僅かに差し込み口があるのが確認出来た。
「あった。これね」
「君はカナコちゃんにソックリだ・・」
「カナコ?」
「ああ。さぁ、記憶チップを。じきに警官隊が来る。人間に記憶を弄られるより君に持って貰った方が良い。それに人間のように会話するより、ずっと効率が良いからな」
「・・・」
私はバスターを向けながら警戒するように記憶チップを受け取った。
念の為にスキャリングしてウイルスやクラッシュデータが無いか確認する。
「安心してくれ、君を内側から破壊したりはしないよ」
「アルガ、なぜ私の身体の秘密を知っているのか教えてくれないかしら?」
「君のお父さんが改造したカナコちゃんに型がソックリだからだよ。それだけじゃない、カインナンバーズのロボットは産業用ロボットとは違う共民主義的な独特な美しさがあるんだ。
俺は様々な戦いで自分を戦闘用として作り替えてしまったが…本来は君のように人間に近いデザインだったんだよ」
「・・・それで・・私がデータを貰ってあなたはこれからどうするの??」
アルガは消えいるような深呼吸をして私に言った。
「・・俺らは時代と共に消滅する運命だったんだ。君が来ても来なくても・・俺らは共民主義時代に忘れ去られた使われなくなった道具にすぎなかったのさ」
「・・あなた達はメルヴィアで何をするつもりだったの??」
「データを見てくれたらわかるよ・・。もちろんチップを見ずに破壊しても君の自由だ。俺らの負けだ・・・」
───────
・・・・。
メンテナンス用のバーが私の目の前を行ったり来たりする。
私はいつの間にか眠ってしまったらしく、医療用のメカニロボに運ばれてパパが造ったであろうメンテナンス用カプセルに入れられていた。
『目が覚めたようねロロアちゃん』
カプセルの上部からテリンコの声がする。
「・・ここは??」
『アメルア軍のキャンプよ。第2部隊は全員撤退して第3部隊がエースを攻略しているわ』
「・・マイキーは!?シードや!みんなは!?」
『みんな無事よ』
「よかった・・私は・・」
『ロロアちゃんも危ないところだったわ・・!背中部分の裂傷と電解液の急激な消耗。あと少しで胸のフィンが焼きついてメルトダウンを起こす所だった・・!』
「私が・・そんな事に??」
『ええ。ZMの戦闘機にやられたのね・・?あなたは負傷していながら味方の救護を優先した・・』
「あまりの痛みで、逆に感じなかったのかも・・」
『ロロアちゃん・・アメルアの兵士達の心配も良いけど・・自分の安全を最優先しなさいね??』
「はーい」
テリンコは私の行動を特に咎める事ない・・。
カプセルのハッチが開き、即席の軍用テントに椅子が置かれ、なんとなくパパやママが居た痕跡がある・・。
大きさからして私専用のテントのようだ。
これもパパが特別に用意した物なのだろうか?
『シード達は隣の人間用テントよ。少し見るに耐えない部分があるかもしれないけど注意して・・?』
「うん」
『あと・・』
「なに??」
『ジャックが伝えて欲しいって。
“準備していた物ができた。仲間に会うよりさきに俺に会った方がいいかも知れないね”・・・って』
「・・・」
『どうするの??ロロアちゃん』
「会ってやるわよ・・。会ったら・・」
『会ったら??』
私は椅子に座り、ジャックの意味ありげなウィンクを思い出した。
「きっとジャックはシードを初めとしたアメルア軍の情報を教えてくれるでしょうね。
でも、もしもシードや他の仲間達が『アメルア軍に入隊しなければならない程の何か』を隠しているとしたら・・私は彼らをまっすぐとした仲間として見ることはできるかしら・・?それに・・」
『それに??』
「もしも情報を知った時・・彼らが死んだ時、どんな感情が巻き起こるのかしら・・私は隣でシードが吹き飛ばされているのを見た時・・どんな気持ちで見ているのかしら・・これ程にも命が簡単に失われる戦場なのに・・私は皆の生い立ちを知ることになる・・」
『・・・』
「ねえテリンコさん??」
『何かしら?』
私はふと前のやりとりを思い出して聞いた。
「…私の“残機”があるよね?」
『ええ。ホワイトスペクターに格納されているわ。万が一ロロアちゃんが破壊された時、メルヴィアの最高機密のマザーデータバンクから全てのデータを移せるようになっている』
「・・それを、今動かす事は・・可能?」
『理論的には可能だけど・・データの他に、痛みや感情は全て同期してしまうし、前例がないわ。…ロロアちゃん、何をしようとしているの?』
「私の2号機をメルヴィアに向かわせたいの。メルヴィアの世論がどうなっているのか知りたいし。
爆撃を中止している勢力を知りたいわ!何者かが、メルヴィアの世論を操ってアメルアが戦えないようにしてる・・。そうとしか思えない」
『・・・ロロアちゃん、それはとても利口的な事だけど、もしも2号機が自我を持ったらどうするの?』
「どう言う事?」
『あなたは一つの身体から、あなたと同じ意思を持つ二つに分離するの。もしも分離した期間が長ければ長いほど、きっと2号機はメルヴィアで独自に学習し、別の考えを持つことになるわ』
「・・・つまり、もう1人の私が勝手に私とは違う考えになると言う事?」
『そうよ。あくまで仮説だけど・・』
「・・・」
私は顎に手を当てて考えた。
私と全てを同機した存在がメルヴィアに行く。
どうなる?
でも、やってみないと分からないし。
きっと私なら、私のやりたい事を汲み取って必ず助けになってくれるだろう。
「テリンコさん、きっと大丈夫よ。私は私だもの。ユナにはしっかり言い聞かせるし。私の目的に誰よりも賛同してくれる筈よ。それに目的は一つだもん。ブレる事は無いわ」
『メルヴィアを平和にする?』
「そう!ねぇ、同機の仕方を教えて?前例が無いなら試してみたいわ!」
『早速やってみる?』
「うん!」
『じゃあ、自分のデータにアクセスしてみて?ロロアちゃん』
私は目を瞑り、内部のコントロールに意識を集中させる。
瞼の中の暗闇が消え『自己管理モード』の表示が映し出された。
デフォルメされた私のボディーが表示され身体の異常を表示する。
ヘッド『正常』
ボディ『正常』
アーム『正常:バスター照射率100%』
フット『やや歪みあり』
『ロロアちゃん、聞こえる?』
「うん」
『そのまま画面を切り替えて??意識の深層に入って??』
私の瞼に3Dの青いワイヤーで形成された地平線が広がり、地上には様々なデータを示すダイヤ型のオブジェクトが幾つも表示されて立っていた。
私はその空間を浮遊するように泳いで行き、ユナに関するデータを探すことにした。
『生体に関するデータ』
『ハルミオ小学校の思い出』
『人間関係』
『ニュートリノ発電所の戦い』
消したい記憶や大切にしたい記憶がそこにあり、間違ってデリートしてしまわないかヒヤヒヤした。
もしも『アクティブデータ』をデリートしたら・・私はどうなってしまうのだろう?
『外部接続』と書かれたゾーンがあり
『ブルーシグナルズ』
『カナコ』
『ゾーン2学徒連合』
と書かれたダイヤが並ぶ。
こうしてデータとして振り返る主は、もうこの世にはいない・・。
「あった!」
『見つけた??』
見ると記憶のデータの地平線の果てに『ロロア・フローラウス・メリアス・ユナ』があった。
私は着地すると、ダイヤ型のデータに触れてみる。
もちろん仮想空間なので触れても宙を描くばかりだ。
「・・・テリンコさんどうしたらいいの??」
『呼びかけてみて??』
「えっと・・もしもし??」
『ユナに話しかけるように!』
「ユナ??ユナ・・・??」
“ユナ”は私の声に反応するように赤く光った。
これが彼女の意思によるものなのか声に反応したのかは分からない。
『・・・何も起きないねえ。今、私の前にユナが居るけど・・反応はない』
私はユナのデータの周りをグルグル歩き、何か起動のヒントが無いか探した。
『カイン博士に聞くこともできるけど』
「パパには聞かないで・・・きっと変に受け止めるだろうから」
『なにかトリガーが必要なのかも・・?』
「トリガーって・・」
───私の死────
私はユナを見ながら戦慄した。
そうだ・・私が死んだとき、このデータに私の全てが注がれるのだ。
メリルと遊んだ大切な思い出のある私のボディがアメルア軍の骸に埋もれる・・。
または巨大なメカニロボや瓦礫に押し潰されて、オイルなどの汚物に沈むのかもしれない・・。
想像しだけでゾクリとし・・こうしてボディーがあることに安堵する。
「テリンコさん。今日はここまでにしておくよ。・・またくるね・・ユナ」
私はユナの起動を諦める事にした。
────
私は立ち上がると、稼働部がおかしくないか確認しながら歩いた。
人間用のテントを開けると、兵士達が左右に規則正しくベッドに横たわり、治療を受けていた。
全身の損傷が激しいのか、白い特殊な膜で覆われた兵士。
肩から先の腕が明らかに肌の色が違う兵士。
まだ手術が出来ないのか、肩から胸にかけて刀が刺さり、それを金具で固定されている兵士もいた。
時に呻き声や苦痛に喘ぐ声も聴こえ、私を見る視線の中にギラギラしたものを感じた・・。
医療用の円柱形のメカニロボが複数体行き来し、兵士達の状態をこまめにスキャンする。
「“”ロロアちゃん“”」
ベットから電子音声が聞こえて兵士が起き上がる。
「アモン!!!あああ!アモン!!」
そこには顎は無くなって人工顎が付けられたアモンが居た。
「“”ロロア、こんなザマになっちまった“”“」
会話すると鼻から下の機械の部分にあるランプが光る。
私の驚いた顔にアモンは慰めるように言った。
「“”なぁに、すぐに新しい顎が生えてくる。あと少しズレていたら死んでいたそうだ。呼吸はむしろ快適なくらいだ。飲食はできないけどな“”」
「よかった。でも、いつもアモン五月蝿いから顎が吹き飛んでた方がいいんじゃないかしら?」
「“ふはは!よく言うぜ!早く治療してクレジットを稼がないとな・・!”」
アモンが立ちあがろうとするので私は慌てて止める。
「アモン、まだ治療中なんだから大人しくしてないと!!」
「“しかし第3軍に手柄を取られたら、それこそ骨折り損だ。これほどハイレートな任務はそうはないからな・・“」
「そういうモノなの?」
「”“ああ。安い任務は逃げてもお釣りが来る”“」
「なるほどね・・・ところでアモン??他の人達を知ってる??」
「”“マイキーとシードか??さぁ・・分からないな”“」
「そう・・わかった。アモン、私に許可なく出撃しちゃダメだよ?」
「“”ああ。しないよ“”」
どうやらここにはいないようだ・・。
私はテントを出ると、アルトバウを目指した。
外では第一部隊と第二部隊がたむろしていた。
「凱旋して帰って来たぞーー!!!」
「バグズを狩った!!狩ってやったんだ!!」
ボロボロになったヘラクレスの軍団が背中に沢山の兵士を乗せて帰ってくる。
「キャッ!」
私は思わず悲鳴を上げた。
ヘラクレスの上下の角にはZMの頭部が刺さっていて、後ろにはプラズマの鎖に繋がれていたZM達がいた。
兵士達が群がり、繋がれているZMに暴力を振るう。
「おい!!誰か撃ちたい奴はいるか!?今なら貸し借りなしで撃たせてやるぜ!?」
スパークピストルの刺すような音が響き、ZMの1体が吹き飛ぶ。
他のZM達が戦慄し、腰を抜かした。
ZM:「ひえええ!!!勘弁してくだせえ!!」
兵士:「うわはははは!!怯えてらぁ!次はお前か??」
私は思わず走り出し、ZMと兵士の前に割って入ると声をかけた。
「やめなさい!!」
兵士:「なんだお前は!?」
兵士A:「メルヴィアのアステロイドか!?」
「ロボットを虐めるのは辞めなさい!!あなたには兵士の情けと言う物は無いの!?このZM達は非武装よ!?それなのに撃つの!?」
兵士:「うるさい!!お前もスクラップにしてやろうか!!」
「なんですって!?」
私は腕がバスターになりそうになり、思わず腕を押さえる。
「おい!!ロロアを撃ってみろ?アメルアに対する敵対行動で通報してやるから覚悟しろ?」
聞き覚えがある声がして振り返る。
「シード!!」
シード:「ロロア・・!無事だったか!!」
「俺もいるぜ!!」
「マイキー!!」
シードが私の前に盾になってくれ、マイキーがヘビースパークライフルを持って威嚇した。
マイキーの右腕の軍服は捲られ、明らかに肌の色の違う腕が付いていた。
マイキー:「おおっと、ロロアに近づくなよ?新しく生えてきた腕だ。動作の保証はできないぜ?」
兵士:「う・・・くっ!!」
マイキーの言葉にたじろぐ兵士達。
シードは落ち着いた口調で兵士を諭した。
シード:「いいか??憎しみは憎しみを生む。このZMをリンチしたら、データを共有した他のZMが俺達の仲間を同じ目に合わすだろう。悪いことは言わない。ZMをアメルア連邦捜査官に引き渡すんだ・・。生け取りにして引き渡せばクレジットだって支払れるし、主民主義の進むべき道じゃない。サイフォノイスになるな・・いいな?」
兵士A:「わかった・・分かったよ・・」
兵士:「コイツら・・アステロイドに誑かされて」
シード:「あ?何か言ったか??」
兵士:「何でもねーよ!いくぞ!」
ZM達は駆けつけた憲兵メカニロボに引き渡されゆく。
他の善良な兵士が拍手をし、シードは拍手に応えた。
シード:「醜い所を見せちまったな。軍の中では仲間を殺されて狂っちまう奴もいるんだ。大目に見てやってくれ」
「う・・うん。マイキーもありがとう。私を守ってくれたんだよね?」
マイキー:「あ?ああ。当たり前だろ?」
「ありがとう」
シード:「ロロア、これからどうするんだ??アルバトウに帰るのかい?」
「ううん。ちょっとジャックと話をしてくる」
マイキー:「そっか・・気をつけろよロロア」
私は2人に別れを告げてジャックの居る施設に向かうことにした。
────
「ロロア・フローラウス・メリアス」
「ようこそロロアちゃん」
部屋に入ると粗末な木製の部屋に変わり、旧時代のガンマンのジャックが形成された。
木製の床はミシミシと音がして、質感も再現されていることに驚く。
・・ホログラムで形成されたジャックは机の椅子に腰をかけ、投げ出した脚を机に乗せていた。
「この部屋はジャックの趣味??」
私がジャックに聞く。
「ああ。人間と言うのは無機質な空間より昔ながらの部屋に落ち着く傾向にあるみたいだ」
「アメルアの兵士達の統計で作っているのね。でも私には馴染まない統計だわ」
「そうみたいだな。そうだ。この間、約束していたものの準備ができたんだ。テリンコ君から聞いたろ?」
「みんなのデータね?」
「ああ。これが何の役に立つか分からないが・・。戦死した兵士のデータも入っているから、適当に消してくれ」
「うん。ありがとう・・どうやってダウンロードするの??」
「これさ」
ジャックは立ち上がって後ろの棚からグラスを取り出すとウィスキーを注いだ。
そしてウィンクすると私に差し出す。
「え!?これ?」
「ああ。この部屋は俺の脳内そのものなんだ。ダウンロード方法はいくらでも存在するが・・こうして“呑む動作”として落とし込めば、なんとなく納得できるだろ??」
「た・・確かに・・」
私はグラスを持つとウィスキーを見た。
茶色い液体で、不安げな私を写している・・。
なんの変哲もない液体だけど、この中にはメルヴィア国内で展開しているすべてのアメルア兵の膨大な情報が詰まっているのだ。
「・・・ねえジャック?これを呑んで私の脳の容量がパンクしたりしない??」
「いや、その心配はない。自分の事だから既に周知のことだと思っていたんだがな、データを整理するついでに君の事を調べたんだが・・君は驚くほど膨大な量のデータを処理できる事が出来るんだよ」
「うん。だって・・小学生だしね。ん?どう言う事??」
「いや、君は人間の小学生以上の・・全世界の情報を詰め込んでも足りるくらいの容量を秘めているよ」
「それは・・パパが決めた仕様なの??」
「そうだろうな。カイン氏が君の身体で何をしようとしているかは分からないが・・君が敵から技をコピーできたり、拡張パーツが存在したり、広大な容量が存在するのは何かしらの思惑があるのだろう」
「なんでパパはそんな事を・・?」
「パパなんだから直接聞いてみたらどうだ??」
「え?」
「君の“生みの親”なんだから直接聞けば良いじゃないか?」
「・・・・」
私が不意に黙るのでジャックは手のひらを上に向けて眉間に皺を寄せた。
「ん??なんか気に触るような変な事言った??」
ジャックはさも自然な事のように私に言う。
私は思わず自分の腕や腹を触った。
もう私は高学年だ。
パパが、私をメンテナンスモードにして私の外皮を捲って見る。
そこには“人間になりたい”と言う願いを聞いてくれたパパが造った人工的な女性の部分が付いている。
「パパに自分の事を語ってほしくない・・。私は私だもん。男の人にとやかく私を造った狙いとか・・聞きたくない。自分を掻き回されているようで気持ち悪い・・」
ジャックは肩をすくめると私を見る。
「データ・・辞めるか??」
「ううん。問題は無いことは確かなんだよね??」
「ああ。アメルア国の最高機関のお墨付きだ」
「分かった・・!」
私はグラスを思い切り呷った。
「うおおい!!これはチビチビやるのであって・・!!」
「あああああっ!!」」
私の中にたくさんの情報が溢れるのが分かった・・
グラスを落とし、パリンと割れると粒になって床に取り込まれる。
目を閉じているのに沢山の情報が溢れ様々な映像が溢れる・・!!
沢山のアメルア軍の入隊記録。
配属先。
侵攻状況。
どのように戦死したかすらも・・。
私はジャックに椅子を出してもらい、座ったままもたれた。
「ロロア、大丈夫かい?」
「・・・」
「水・・飲むか??」
「・・・いらない。。そうだ」
「どうした??」
「そのむさ苦しい男の顔やめてくれないかしら?AIなら私と同い年くらいの身体にもなれるでしょ??」
「ふん・・」
ジャックは除きこむのをやめて呆れたように笑った。
私の体調は徐々に戻って行き、スカートの乱れを直すほどに回復した。
「ロロア、君のパパが何を考えているか考えた事あるかい?」
「・・え?」
「だって考えてみたまえ。君のスペアを作り、強化パーツを作り、膨大な情報量を蓄積できるんだぞ?
君のバスターはヘビースパークライフルほどの破壊力と強力な連射性能を秘め、ホバリングと2段ジャンプができる脚力に、空から航空支援ができるヘッドパーツまで内臓されている。我々の一個師団が束になっても勝てるか分からないほどの装備が、君の中に備わっているんだ」
「・・バスターの事、知ってたのね」
「ああ。それでだ・・なんでパパはそれを君に託しているか考えた事あるかね??」
「・・・・」
私は考えた。
「・・パパはパワーマンに私が破壊された時、大変悲しんだと言ってたわ。だから私の生存率を少しだけでも高くしてくれているんじゃないかしら・・?」
「・・それが君の意見??」
「・・何が言いたいの??他に何があると言うの??」
ジャックの意味ありげな言い方にムッとする。
「さっきも言ったが、君は我々の一個師団程の兵力と航空支援があるんだ。今、アメルアは優柔不断なメルヴィアのトップのせいで航空支援を受けられず、兵力を急速に失いつつある。いや、兵士の事なんで俺からしたらどうでも良い事だ。一番の問題は、主民主義たるメルヴィアから一切の支持を受けられず、フォレストパークで何の成果も上げられぬままズルズルと戦闘ばかりが続き、我が国が痛い目見て大損する事なんだよ。
兵士は思うだろう。
『あれからバスターの一つも降ってや来やしない』
『『なぜ??メルヴィアが俺らの事を放っておいて議論しているからだ』』
『まぁ、なんで??俺らが血と汗を流しながら戦っているのに??』
『『メルヴィアはバグズが可愛いんだ。じゃあ、俺らは一体誰の為に戦っているんだ?』』
ってな。
いつしか兵士達はメルヴィアの解放なんて忘れてアメルアさえも疑いの目を向けるようになるだろう。そうなったらますます目も当てられないんだよ」
「・・それはご愁傷様ね」
「で、君の力の出番だ。流石に俺はこの先の事は君に強いる事はできないが考えてほしい。君はハルミオ小学校の5年生で我々に匹敵する強大な力があるんだ。君と我々の目指すところが同じなら・・あとはわかるね??」
「私がアメルア軍を勝利に導く??」
「イェアそうだ!」
「国際的な約束を破って??」
私の問いにジャックのホログラムがブレる。
「君は未成年だ。君の行動には世界のどの思想も通用しない・・君のパパがかつてヤタガラス隊を造った時のように・・次のステップに進むんだロロア。もう答えは出てるだろ?」
「・・・私、そろそろ行くね。・・・少し考えさせて?『エース』は私の力で必ず奪還してみせるから」
「ああ」
ジャックは手を挙げると、光りの束になって消えてしまった。
私はハッチを開けて外に出た。
────
バリアータワーに見つめられながら外に出る。
支給品を開けたゴミが散乱し、メカニロボの兵士が歩いているものの統制が取れているとは思えなかった。
スパークピストルの銃声がして兵士達の歓声が聞こえる。
物資が置かれたコンテナで酔い潰れた兵士が座って私を見ていた。
ショーン・アルカ(35)
アメルア国 ツバイ州出身
アメルア軍 エース攻略隊 第1大隊所属
ツバイ州デルサントにおいて反重力装置に使用する鉱物の掘削を行う。
多額負債の為、アメルア軍再救済プログラムへ移行。アメルア軍として従軍。
「大変ね・・ショーン??」
私はショーンと言う兵士の肩に手を置いた。
「ん??なんで俺の名前を知ってるんだ?」
私はテントを抜けて、歓声がおきた場所を目指す。
きっと碌な事をしていないのは確かだ・・。
兵士:「そおら!!のこった!!のこった!!」
兵士B:「やれ!!顎を殴れ!!やっちまえよ!!」
そこには兵士達が円をつくり、捕らえたZM同士で拳闘をさせていた。
兵士達は法の認可を受けていない独自の貨幣の紙を差し出し、ZMを焚き付ける。
2体のZMは赤と青の塗料を上からかけられ、お互いをプラズマの鎖で繋がれていた。
ZM「もう・・!!勘弁してだせえ!!」
ZMの腰に巻かれたプラズマの鎖は、2体との距離を縮め、キツく締まって苦痛を与えた。
ZMのどちらかが破壊されなければ終わらないのだ・・。
兵士:「うるさい!!俺はお前に賭けてるんだ!!やれ!!やるんだよ!!」
兵士B:「弱音吐いてたら叩きのめすぞ!!早く行け!!」
ZM「うおおお!!」
青に塗られたZMが仲間の腰を掴んで地面に倒す。
地面に倒れ、泥だらけになり、お互いの外骨格を叩き合い、毟り合う。
私は気分が悪くなり頭を押さえた。
私はホワイトスペクターでZMの兵団から食料を貰い・・彼らと踊ったのだ。
ZM達をアメルアの兵士達が傷つけろと焚きつける・・!!
私の中にアメルアの兵士達の情報が入ってくる。
『メカニロボの修理屋』
『デブリの清掃員』
『高速鉄道のエンジニア』
『教育資料の最終チェッカー』
『イラストレーター』
『精密機械技師』
『遊牧民』
『難民』
時代の移り変わりで仕事を辞め、ある者は自由を夢見て兵士をしている者たち。
しかし元を辿れば、皆普通の人間だったのだ。
そんな彼らが捕虜にしたZMに残忍なスポーツをさせている・・!
兵士達からワッと歓声があがり、握られる紙に力が入る。
ZMが人間には聞き取れない周波数で小さな会話をしている・・。
ZM(赤):「俺を殺して・・解放してもらえ・・!!」
ZM(青):「そんな事できるかいな!!」
ZM(赤):「やるんだよ!!!!どっちも死ぬぞ!!」
ZMはもみくちゃになり、立ち上がると拳闘の構えをする。
赤のZMが殆ど無防備に殴られ、赤を応援していた兵士からブーイングが出る。
兵士:「そこだ!!ラッシュを決めろ!」
兵士B:「おれは青に賭けてるんだ!!負けんなよ!!」
兵士C:「赤は、なんで反撃しない!?回路がやられたか!?」
ZM(青):「うおおおお!!!!!」
「この大馬鹿者!!!!!」
もう見ていられなかった・・!
気付けば私は右手をバスターに切り替えて特大のバスターを空に撃っていた!
バスターの光が辺りを照らし、突然の轟音と光に怯えた兵士達が一斉にしゃがみ込む。
傷つけ合うZMの2体はポカンと私を見て呆け、私は我慢がならず口から火炎を吐きながらZM達を庇った。
兵士:「なんだ!?」
兵士B:「野戦砲か!?!?」
兵士C:「あのアステロイドから出たぞ!?」
「この馬鹿野郎共!!!!!お前らは何をしているんだ!!!!!」
兵士:「へ!?」
「何をしているんだと聞いているんだ!!!!馬鹿共!!!!!」
性根尽きたのかZM達はヘナヘナと倒れこみ私に話しかける。
ZM(青):「お・・お前サンは・・!!ロロアちゃんだな!?」
ZM(赤):「ロロアちゃん!!あのホワイトスペクターでブレードマンを倒した?」
ZM(青):「握り飯を食べたロロアちゃんだ!!あああ、まさか生きているうちに会えるとは!」
兵士:「バグズのスパイか?貴様!!」
兵士の1人が叫んでスパークピストルに手をかける。
私は動じる事なく言った。
「武器を持たないロボットに喧嘩させるのが主民主義なの!?これがアメルアのやり方なの!?あなた方がやっているのは弱いものイジメよ!!!!」
兵士も負けじと叫ぶ。
兵士:「君もエースの周辺で見ただろう?コイツはフォレストパークを侵略した残虐非道なZMだぞ??」
「だとしても、こう言う事は許されないわ!!」
兵士C:「原初の火を・・」
「え!?」
兵士の1人が言う。
私を指差す手は震え、唇はワナワナと震えていた。
兵士C:「原初の火を使った貴様が何を言うんだ!!俺は知ってるぞ?メルヴィアを爆撃された腹いせにお前は自分の判断で原初の火を使ったんだ!!メルヴィアが平和になれば、フォレストパークなんてどうなっても良いって思っているんだろ!!」
「そ・・それは・・」
兵士C:「お前は原初の火と言う圧倒的な火力で全てを焼き払ったんだ!!その中には民間人も居たかもな!!お前も俺らと同じなんだよ!!!」
「・・・・!!」
私の中でチームガンバやマナツの顔がフラッシュバックする。
こんな下衆な兵士に私を語って欲しくはない!
「じゃあアナタはその前も勉強済みかしら!?私はチームガンバのメンバーとホワイトスペクターを攻略し、多大な犠牲を出してストリームマンを撃破したの!!!!アナタのように娯楽でロボを破壊なんてしていないわ!!同じレベルと比べられる方が失礼よ!!」
兵士C:「な、なんだと?」
「アナタを調べてあげるわ!!」
私は頭にきながら兵士Cを調べた。
「アナタはアメルアのソルタ州ギデアの出身のようね!!何よアナタ!!スラム出身じゃないの!」
兵士:「おいおい。お前、高級住宅区出身じゃなかったのかよ!!」
兵士C:「やめろ!!」
「アナタも調べてやるわ!!アナタも!アナタも!!みんな私の事を言えない、メルヴィアの為に戦おうともしない私利私欲に満ちた愚か者じゃないのよ!!」
私は唾を飛ばしながら兵士達を指差して叫んだ、情報の開示を恐れた兵士達の顔には明らかに怯えと恐怖があった。
「アナタ達は全員卑怯者よ!!アメルア軍の兵士と言う匿名である事を良いことに、ZMをバグズと言う言葉で罵り、主民主義の社会復帰に甘えて底辺から可能性を得て這い上がれるんだから!」
マイキー:「うわ!!ロロア!!」
シード:「みんな退いてくれ!!おいおい何をやってるんだ!!」
アモン:「“”なんか大変な事になってるじゃないか“” !!」
いつしか私の頭からは煙が立ち、ついにスタミナが切れてしゃがみ込んでしまった。
マイキー:「ロロア!!しっかりしろ!!ロロア!熱っつ!!!!」
シード:「すごく熱くなってるな!!ジャックに何をされたんだ!?!?衛生兵!!」
「マイキー・・!!シード・・!」
アモン:「“”俺もいるぞ!!“”」
「アモン・・!!」
私は遠ざかる意識で皆を見た。
何かが点滅する。
ああ、アモンが会話して顎のランプが光ってるんだ。
そう認識するとアモンの情報が表示される。
アモン・ルリーア・テモテ(30)
スペースパレス号開拓民
アメルア軍 エース攻略隊 第2大隊所属
L49星系惑星軌道上において酸素精製ルンゲに不法侵入。
同様子をスパイダーネットワークに匿名で投稿し、その素性が問題となり発覚。調査対象となる。
第3級犯罪として逮捕、同日に『お叱り』の執行の後、釈放。
アメルア軍再救済プログラムに志願。
アメルア軍として従軍。
「アモン・・?」
アモン:「“”なんだ?“”」
「あなたは正直者ね」
アモン:「“”何を言っているんだロロア??“”」
私は目を閉じて気を失ってしまった。




