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アメルア兵

マット師団とアメルア軍との戦闘が続く。

ロロアの興味を持ったものとは…

私たちはアメルア兵が占領したキャンプに帰る事にした。

テリンコは私にホワイトスペクターに帰るように言ってくれたけど・・。

私はアメルア兵達がメルヴィアでどのように生活し、なぜ外国の為に命を捧げて戦えるのか人間的な興味を持ったのだった。


キャンプと言っても”テント”ではなく、バリアータワーが張るシールド内と作戦指令用のAIが居る場所をキャンプと呼んでいているらしく。

私やシード達はチェックポイントを確保した功績を認められて占拠した町の中にあるアルトバウ(西洋的なマンション)が借り住まいとして当てがわれた。


このアルトバウの4LDKの一室が、私とシードとマイキーと敗走兵のアモンの仮住まいだ。


私達が来ると、部屋中央の円型のランプが点灯し。

ルームメンテナンス用のコンシェルジュAIが、四方の円筒形の水槽に泡を作って。

『おかえりなさいませ』と表示した。


シード:「スウィートルームへようこそ!」

アモン:「すげぇな」

マイキー:「うわーーー!壁や天井がある!」

「ふふふ!」


複数の荷物が乱暴に降ろされ、マイキーが子供のように当たり前な事を叫んでフロアを見て回った。

シードとアモンはブーツを乱暴に脱いで巨大なキングサイズのベッドに倒れ込んだ。


すぐさまコンシェルジュAIから放送が入った。

『サーゲス様の状態はDの判定が出ました。入浴と服の洗浄を強く推奨します』


「サーゲスって誰??」

私も武器を置いて、背中に付いたリュックユニットや装備を外しながら聞く。


シード:「前にここに住んでいた兵士だろう。わざわざ登録してたんだな」

「どこへ行ったの??」


シード:「きっと死んだんだろ。あー、腹へった。支給品はまだか??」

「死んだって・・!?」


私はシードのあまりにも軽い発言に言葉を失った。

アモンも特に気にしていないように服を脱ぎ、部屋に備え付けられているクローゼットの“洗濯機トルソー”に軍服や装備を着けて、ふんどし一枚になった。

みんなヘルメットをしていて分からなかったが、両サイドをツーブロックにしていて頭頂部はやや髪が長かった。

みんな同じ髪型なので、後ろを向かれると瞳の中に識別バーを表示しないと本当にわからない。


シード:「どうした?ヒーローガール。先にお風呂入って来なよ」

「うん・・」


シード:「ん?これか??」

シードがドックダグをどかして、毛むくじゃらのお腹を見せる。

そこには明らかに肌の色が違う部分があった。

「それは、どうしたの?」


シード:「ああ、これはバグズに撃たれたんだよ。ちょうど当たりどころと、近くに衛生兵が居たから助かったんだ」

「内臓は平気だったの??」


シード:「いや、使い物にならなくて、ほとんどクローン治療で新しいのと交換した。おかげでクレジットが殆ど無くなってしまったが」

「・・まるでメカニロボね」


シード:「確かにロボットと変わんねぇな(笑)腕も脚も一回交換してるし、変えてない所は頭部分だけだな・・」

「ふーん。頭に当たっても交換できるの??」


シード:「出来たらもっと利口でハンサムな頭に交換したいな」

「そう。でも私の考えが正しければ、もう交換の希望は叶っているわ」



洗面所や部屋の何処を見ても『サーゲス』の痕跡は見当たらなかった。


お風呂に続くゲートを開け、洗浄用のシャワーが降りてくる。

私はヘッドギアを外すと、洗浄に身をまかせた。





───

シード:「ロロア、そんな髪色だったのか!?」

「うん。汚れてたからね」

私は渇きたての髪色を見る。


フロアにはいつしか人数分のアルミで出来た巨大な箱が置かれ、すでにアモンは軍服を緩く着ると右下にあるタッチパネルに手をかざして箱を開けていた。


アモン:「支給品が届いたぞ?飯もある!」


「この箱は何??」


シード:「俺ら兵士の活躍に応じて支給されるんだ。

軍に貢献すればするほどクレジットが増え、それだけ豪華な物が送られて来るんだよ。開けてごらんロロア」

「うん!」


私はタッチパネルに手をかざす。

パネルが光り、箱にキラリと走ると蓋が消失して中身が見えた。

中にはジェネレータなどの弾薬や手榴弾。

スパークライフルを手入れするキットやソリッド(固形飲料水)とA缶が4つづつ。

そしてお弁当箱とリンゴが入っていた。


シード:「おお!!果物じゃないか!!」

アモン:「うひょー!」


「そんなにリンゴが珍しいの!?」


アモン:「戦争ばっかやってたら珍しくなっちまったよ。弁当はなんだ??」


私は弁当箱を開ける。

カチュッと言う音がして内部が温まり、そこには血の滴るような合成肉のステーキとパン、青々とした構成植物細胞のサラダとポテトフライ。

個別のお椀には、タンパク質の塊が入った焦がしたキチン質のビスクスープが入っていた。


「美味しそう!ねぇ、みんなでテーブルで食べよ?」


アモン:「そうだな!まるでファミリーみたいだ」


テーブルには皆の弁当箱が並び、シードは乳化タンパク質を発酵させたピザとポテトフライと、不健康そうな外国の清涼飲料水。

アモンは、合成肉と乳化タンパク質のハンバーガーとマッシュポテトとトマトスープ。


マイキーは…。

シード:「マイキーはなんだ??」


マイキー:「俺は1人で食べるからいい」


シード:「おいおいどうしたマイキー??」

アモン:「マイキー?そう言うのはよくないぜ?」


マイキーは(俺は・・活躍して無かったから・・)と小さく呟くと、手の平分の四角い弁当箱を出してきた。

中身は『軍用栄養固形物 ─A─』と書かれた長方形の固形物がキッチリ箱に4本と、正方形の粘土のような不味そうな物が入っていた。


「ちょうど4本だし、みんなとトレード出来るね?」

と私が言うと、アモンが

アモン:「冗談じゃないぜ!タダでさえクソみたいな作戦でゴミみたいに敗走したのに、ここへきてクソ不味い固形食料なんて食えるかよ。俺はお断りだね!」

とキッパリ言った。


マイキーは下を向き。

見かねたシードが

シード:「じゃあ俺のを分けてやるよ」

とピザを一切れプレゼントした。


マイキー:「いいの??」

シード:「ああ!」

マイキーは天から降ってきたようなピザを見て大きく喜び、ピザにかぶりついた。


私もピザを貪るマイキーにステーキを切り分けてあげることにした。


マイキー:「ロロア、こんな粗末な固形食だけど・・貰ってくれないか?」

「え?いいよ。シードだって・・」


マイキー:「いや・・頼むよ。俺としてのプライドを立ててくれないか?」

「うん」


アモンも仕方なくマッシュポテトで交換し、固形食料に齧り付いた。

私もどんなものかと固形食料を齧ってみる。

チョコレート味の栄養価の高い練り物を焼いて固めた物のようだ。


「モグモグ・・なかなか悪くないね」

マイキー:「本当か?」


「ゴクン。うん。すこし油が舌に残るけどイケるかも・・」

マイキー:「良かった・・もう1年ちかくコレなんだ」

「1年もコレだったの!?」


マイキー:「モグモグ・・正確に言うと、AとBを行き来していたけど。ゴクン。AとBは任意で選べるからさ。もちろん寝床も簡易兵士宿舎さ」

マイキーはスプーンでマッシュポテトを掬うと口にした。


マイキー:「美味い・・生き返る・・!」


マイキーが笑顔になり、アモンはハンバーガーを見ながらしみじみと言った。

アモン:「まるでそう・・ファミリーみないだな。こうして兵士達と囲んで食べるって最初だけだったからな・・」

「いつもは1人で食べていたの?」


アモン:「ああ。明日にはお互い生きてるかどうか分からないからな。いつしかお互いを干渉しなくなり、人間関係を構築する事もなくなっちまってた」

シード:「確かにな。マッチして戦闘に行って解散する。そのくらいの仲だよ」


「みんな、なぜアメルア軍になったの?」


アモン:「俺は第3級犯罪を犯して仕事が無くなったんだ」

マイキー:「本当かい!?」

シード:「マジかよ!?」


アモンは悲しそうに肩をすくめてみせ、ハンバーガーを頬張った。


「・・そんなに重罪なの??」


シード:「いや。友達のタブレット端末のペンを勝手に借りて、メカニロボの首のジョイントに差し込む程の罪だよ」

マイキー:「服役どころか、簡単なお叱りでおわるような罪さ」


「なのになぜアメルア兵に??」


アモン:「スパイダーネットワークに晒されたのさ・・」

「え??」


シード:「スパイダーネットワークは匿名性の極めて高いグローバルネットワークなんだよ。アモンはスパイダーの民の格好なオモチャにされたって訳だな。で?その記念すべき悪行はなんなんだ?」


アモンはバツの悪そうに首を掻いてポツリと言った。


アモン:「スペースパレス号の酸素精製ルンゲに忍び込んだんだ。あそこは緑陽体の緑のカプセルが空間全体に漂っていて、太陽光を受けると緑のカプセルが呼吸をするように光って幻想的なんだよ。そこでプロポーズしたのさ」

「素敵ね・・」


アモン:「だろ?プロポーズは成功。皆も賛同してくれると思ってネットで公開したら・・ドカン!さ。もう最悪だよ。"一万人分の酸素を汚すな""空気が不味くなるだろうが"って抗議のメッセージが大量に来てさ。プロポーズも破談になるわ、ネットは攻撃されるわで仕事すら出来なくなったよ」


シード:「あ、わかったぞ?それで君は、軍に入隊して国住権を取り直す魂胆なんだな?」

アモン:「正解!この兵役が終わったら、新しい名前で結婚するんだ」


「じゃあ、こんな所で死んじゃいられないね」



アモン:「ははは、そうだな。ところで、お前達も理由があるんだろ?マイキーは・・言わずもがな。

コーディアスの出身と見た」


マイキー:「あぁ、呪われたクローン技術で作られたコーディアス民さ」


アモン:「以上だ」

マイキー:「おい!もうちょっと聞いてくれよ!!」


アモン:「ロロアとマイキーは次回の楽しみだ。マイキーは共民主義国だった西コーディアスの出身。

ロロアはメルヴィアの限りなく戦闘用に近いアステロイドときてる。

アメルアの開拓時代からいた主民主義者と、反ロボット主義のサイフォノイスの兵士は、あまり君達の動きを良くは思わないだろう…。ところでシード、君はなぜ軍隊に?」


シード:「俺は…わからないんだ」


マイキー:「どういう事だ?」


シードは再生を促す分厚いシートに包まれた手を触りながら言った。

青い瞳は瞳孔が開き、ひたすら何かを思い出している様子だ。


シード:「身体の再生と治療を受けてるうちに、自分が何を目指して戦ってるのか分からなくなっちまった・・。たまに居るだろ?そう言う兵士。笑っちゃうよな」

「・・・」



暫くの沈黙。


「少し…夜風を浴びてくる」

シード:「おう、冷えるから気をつけていけよ」

私はスパークピストルのホルスターを腰に巻いてローブを羽織った。



アルトバウの屋上はネフラスの街を一望できた。

数機のキラービーが空を飛び、その先の街のはずれが夕暮れでもないのに紅く染まっていた。


私は羽織ったローブを風に靡かせながらリンゴを齧った。

すると独りを見計らったのかテリンコから通信が入る。


『ロロアちゃんアメルア兵達の私生活はどう??』

「うん・・。今日はなんで兵士になったかを聞いた」


『・・・どうだった??』


「みんな、メルヴィアの為に戦っているのではない事が分かったわ。ある者は国籍のため・・ある者は名誉のため・・ある者は目的すら忘れていた・・フォレストパークがいつまでも攻略できない理由が分かったよ」

『それは・・そうね。だれか1人でもメルヴィアの為って言ってほしいよね』

「うん」


私は不意に後ろを見た。

そこにはパパのカプセルがあり、私を認証すると大きく開いてパパのホログラムが映し出された。


『ロロアちゃん。なぜホワイトスペクターに戻らないんだい??』

「テリンコさんから聞かなかった?」


『すまない。知り合いに呼ばれていて暫くホワイトスペクターから席を外していた』

「それは・・」

私はパパを睨みつける。


「マット博士ね?向かった先はメルヴィア国際音楽堂」

『・・そうだ』


「・・はぁ」

私は呆れて言葉も出なかった。


「なぜパパは、このZMの決起に関与した怪しい博士に会いに行くの??もしかしてパパも悪い人なの??」

『ロロアちゃん。確かにマット博士の製造したロボット達が何かしらの関与をしていることは間違いないが、博士が動いている断固とした証拠がない限り、逮捕することはできないんだよ・・。わかっておくれ』


「パパが全てを話さないかぎり、私はパパを軽蔑するし、そんなにマット博士が好きなら音楽堂にずっといれば??」

『ロロアちゃん・・いつか君に必ず全てを打ち明けるから・・ZMを止めるためにもこのカプセルに入って欲しい・・』

「・・・・」

私は首元を掻くとため息をつき。

渋々カプセルの中に入ることにした。

なによりフォレストマンを倒してZMの反乱を止めないといけないからだ。


ウィーーーンガシャン!!

ドシャ!!


カプセルが瞬時に閉まり、強力なスパークと共に私の身体を洗浄する。

そして!

ヘッドギアが輝き、赤いライフコアの他に宝石で装飾された額飾り(サークレット)になった。


カキーン!


私は自然とポーズをとる。

そして自動的に街を見ると、瞳の中に座標を示す数値と爆撃範囲が表示されている事に気付いた。


テリンコから通信が入る。

『ロロアちゃん、ヘッドパーツを装着したようね。ヘッドパーツを装着するとロロアちゃんの瞳から正確な座標が送れて、強力な航空支援『シューティングスター』と『エクスプロージョン』を受けられるようになるわ。

シューティングスターは広範囲を火の海にでき、エクスプロージョンは地下まである施設を爆撃できるよ。

出動には限りがあるから上手に使ってね』

「うん」


『さぁ、あそこの無人になったビルを破壊してみよう』


私は廃墟になったビルを見つめた。

すると座標が送信された事を示すマークが付き、鳥のマークと共に到着するまでのカウントダウンが始まった。

私はリンゴを齧りながら待つ。



数分後…。

シード:「ロロア、随分長く居るが何をしている?」

マイキー:「冷え込むし、みんな心配してるよ??」

アモン:「随分おしゃれなパーツを付けているじゃないか」


「うん。みんな見て??私のパパがプレゼントしてくれたの」


キュアーーー!!


私の頭上をストライクホークスが駆け抜けた。

私をみとめると翼をひろげて旋回し、挨拶をする。

その時に発するイオンジェットが私のローブを大きく揺らし、兵士達がしゃがみ込んだ、


マイキー:「キグナス艦隊のストライクホークスだ!!近ぇ!!」

シード:「ロロア!!一体何を見せてくれるんだ!?」


「試しにあのビルを壊してみせるから、見てて!」


私が人差し指を挙げて天を示すと、ストライクホークスが急上昇を始めて両足のエネルギー弾をチャージして爆撃のシークエンスをとった。


そして。

「ロロア!!エクスプロージョン!!!!」


シード:「うぉあ!!」

ストライクホークスは急降下しながら2つのエネルギー弾を落下させ、その瞬間ビルが屋上から地上にかけて大爆発した!


地響きと共にビルが倒壊し、熱風が顔を撫でる。

破片はバリヤータワーのバリアで防がれ、まるで花火の様に夜空に輝いた。



シード:「こりゃすげえ・・マイキー、アモン。俺らが想像するよりも早くこの戦争は終わるかもな・・」


マイキーは呆然と立ち尽くしたまま私を見ていた。


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