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コイタン

アメルア軍とマット師団の市街戦が続く。


ロロアは幾多の戦闘を経験し、やがてこの後の人格形成や人生すらも変えようとしていた。

シードが建物の影からスパークライフルを打つ。


シード:「リロード!!」

撃ち終わった瞬間、シードが飛び退き私の顔にピースをした。

次は私が前に行き、スパークライフルを撃った。


4階建てのビルの下に墜落して炎上したキラービーがあり、2階の瓦礫でバリケードをされた僅かな隙間からZMが撃ってきていた。

やはりC-1スパークライフルは遠距離向きではないらしく、牽制こそできるものの3点バーストは窓の周りに大きくブレて着弾した。



「行って!!」


シード:「行くぞ!!」

兵士:「 GO!!GO!!」


私が援護射撃すると6人の兵士達が飛び出し、ガチャガチャと瓦礫を飛び越えながら4階建のビルの方へ進む。

そして窓に手榴弾を放り投げると、閃光と共に窓が爆発した。



マイキーは胸を抑えながらスパークライフルを抱きしめて動けないでいた。

私は撃ち終えると、マイキーを見ながらシリンダーを交換する。


「マイキー、行ける??」


マイキー:「すこし、待って!」

「援護射撃にまわる??」


マイキー:「ばかにするな!」


兵士が人差し指を作って高く手を振り、突撃のために兵員を集めているのがわかる。


「じゃ、私が行くわ!」

マイキー:「ま、まってよ!」

私はライフルを背負うとしゃがんで進軍のチャンスを伺う。


「マイキー!!援護を!」


私が駆け抜け、マイキーが歯を食いしばりながら窓を撃つ。

手榴弾を投げ込まれた筈の窓からKー1スパークライフルの太い銃声がし、他の兵士達が慌てて伏せた。

私も間一髪で撃墜されたキラービーの陰に逃げ込んだ。


兵士:「クソ!!バグズがまだ生きてやがるぞ!!!」

シード:「いけいけ!!」


兵士達がドアのガラスを破壊して突入し、バスターの音が響く。

破壊されたキラービーのコックピットにはパイロットが搭乗していて頭を撃ち抜かれていた。


私は窓を向くと、新しいパーツを使って2段ジャンプをした。

外の窓の下には90センチ角のダクトが剥き出しのまま走っており、そこに着地すると窓の隅に隠れた。

真横でスパークライフルが放たれ、マイキーの方へバスターが飛んでいくのが見えた。


(ち・・あそこにいるぞ!!)

(もう敵がすぐ近くに来ているかもしれん・・!!)


ZM達の囁きが聴こえ、私は手榴弾のピンを噛んで外した。


カチン!

と言う音がした瞬間、ZMのライフルが窓から飛び出し、慌てて敵のライフルを掴んだ!


「な!!こんな所に敵がいた!!!!出合え!!出合え!!」

掴んだライフルが空にバシュンと放たれ、私は手榴弾をZMの腰にくっつけると押し倒し、慌てて退避した!


「ぎゃーー!!たすけて!!」


ドカン!!

と言う音と共に大爆発し、窓からZMの部品が吐き出される。

その瞬間、アメルア軍が2階のフロアまで突入し、ZMの掃討が始まった。


ヘビースパークガンの威力は凄まじく物陰に潜むZMが掃討されてゆく。

私も窓からスパークピストルで援護射撃をし、ZMはどちらを狙ったら良いのかパニックになり、グルグル回った。




そして数分とたたずして

(ああ・・味方もいなきゃ弾もない。・・申し訳ない)と呟いた後、最後のZMが自決する形で掃討が終わった。




シード:「オールクリアだ。ありがとうみんな、作戦終了だ」


応接間を改造したZMの溜まり場には、ZM用の充電ケーブルと、『寿』と書かれた樽が2つ置いてあり、壁にはZM達の製造番号が書かれた毒々しいマット師団の旗が掲げられていた。

シードがそれを乱暴に剥がすと、兵士Bが樽を銃床で叩き割って匂いをかいだ。


兵士B:「なんだこれ??酒か??」

シード:「辞めたほうがいい。ZMのだ。人間には呑めない代物だろう」

兵士B:「そこの生き人形は呑めるんじゃないのか??」


私はムッとして樽のある所まで歩くと、近くにあった桝に入れて呷ってみせた。

呑みながら口の中で分析する。

「ひっく!大丈夫。人間も呑める」

兵士B:「本当か?」


「私を信じない??それとも生き人形の言う事は聞けないかしら??」

兵士B:「なんだと!?」


私は微笑むと桝を兵士Bに渡した。

兵士Bは私を見ながらそれを口にする。


兵士B:「ブーーーー!!ぐえあ!!なんだこれ!?喉が熱い!!」

「あははははははは!!ロボ焼酎よ!お子様には早かったね!!」


兵士:「ははははは!!」

シード:「いっぱい食わされたな!!ロロアを虐めるからだぞ!?」


兵士B:「くっそう!!!」

兵士Bは桝を投げる。

桝はカンカラカラ!と吹き飛び、自決したZMに転がった。





私は髪を耳にかけながらZMの死骸を覗き込む。

ZMは腹のパーツに刀を差し込んで自決をしていた。


「ねえシード??」

シード:「ははは!・・なんだ??」


「なぜZMは自決するの??」

兵士:「最後に“申し訳ない”って言っていたろ??罪悪感で俺らに謝ったんだよ」


「そうかな・・」

シード:「それは違うだろ。死んだ仲間のZM達に“このような形になって申し訳ない”とZM達に詫びたんだ」


「どうして詫びる必要があるの??一生懸命戦ったのに?」


シード:「しかし我々に敗北した。バグズは、自分の弱さを恥じて自決の道を選んだのだ」

兵士B:「捕虜になったロボがどうなるか、わきまえているんだろうよ」


「・・どうなるの??」


シード:「同機種なら、労働力や戦闘員として軍隊に。しかし、こうして戦闘に参加したZMは・・」

兵士B:「宇宙島流しだ」


「宇宙島流し!?」

兵士B:「それだけの事を奴らはしている。それを平然と行うのがロボってもんなんだ。俺は…認めないぜ」



通信兵が敵の拠点を制圧した事を知らせる15センチ角のビーコンを置く。


兵士:「こりゃ、すげえ。貰っていいか・・?」

相変わらず兵士達の手癖は悪く、ZMに刺さった刀を抜いて感動のため息をもらした。



シード:「ロロア?そういえば、マイキーはどうした?」

「あ、いけない。援護射撃してもらったままだわ!」

シード:「ダメじゃないか。後方支援した兵士を見守る。確かに先手で先手で勝ちたいのは分かるが、誰も1人にしてはいけない」

「ごめんなさい」


兵士が破壊された壁の隙間から慎重に外を伺い、ヘルメットに付属された通信機でマイキーに通信を行った。

私は心配になり通信兵を見る。


通信兵は本部との連絡の他、味方の救難信号や生体反応と位置情報を検知できた。


通信兵:「大丈夫だロロアちゃん。マイキーの生体反応はある」

「良かった。あそこの陰にいるの??」


通信兵:「そうだ。ただ、近くで味方のバイタルサインが複数消失している。何か厄介な敵がいるのだろう。何人かは撤退し、こちらのビーコンに気づいて向かってきている・・」

「ヘラクレスは!?」


通信兵:「俺らくらいの少分隊で出動してくれるとは思えない・・この間はネームドだったからな」


シード:「皆はここで待機!防衛体制をとって、撤退する味方を向かい入れよ!ロロア、君もマイキーに呼びかけてくれ!隙間から顔を出すときは慎重にな!」

「分かった・・!」


私は、崩壊した壁の隙間からマイキーがいるであろう場所を見た。

キラービーと人間の焼ける臭いが鼻を突き、緊張が走る。


「マイキー・・!応答して・・!!」

マイキーのヘルメットのマイクモードが切られているので、瞳の倍率を高くして目視で探す。


すると・・。


「いた!!!マイキー!!」

マイキーは瓦礫の陰に伏せてこちらを見ていた。

私以外の兵士達も確認し、援護射撃できる体制をとる。

マイキーに来るように呼びかけようとした瞬間、兵士達が別の方向を向く。


兵士:「11時の方向に味方が走ってくるぞ!!」


「マイキーを呼ぶ!?」

シード:「いや!!少し待て!!」

兵士達数人はヘルメットや胸のアーマーをボロボロにしながら走ってきていた。

マイキーもそれを陰から確認したらしく、そのまま出て行こうか迷っているようだ。


シード:「ありゃ、完全に緊張の糸が切れているな・・」

兵士B:「無防備だ・・!」

「無防備!?」


衛生兵:「ほぼほぼ敗走兵です。幾度となる緊張と士気の低下でああなるんですよ。味方が死に、圧倒的な戦力差を前に、孤独になった兵士達は警戒心を忘れて飛び出してしまうのです」


兵士B:「戦いのショックで動けなる兵士と同様に使い物にならない状態だ。叫ばれると困る。撃ち殺すか?」


シード:「ダメだ。味方を撃つのは督戦隊の仕事だ。俺らがやってみろ??悪報が広がり、クレジットは減額され支援を受けられなくなる」


敗走兵士:「ぎゃ!!」

敗走した兵士が手を大きく挙げて倒れ込む。

ZMの姿は見えないが、撃たれたようだ。


敗走兵士A:「居るんだろ!?たすけてくれ!!」

敗走兵士B:「たすけてー!!」



兵士B:「どうするだ!?シード?」

シードは頬を伝う汗をそのままに固まってしまう。


他の兵士達は、ヘビースパークガンを据えてシードの指示を待ったり、スパークライフルを構えていた。


その時だった。


────!!


「マイキー!!こっちへ来てはダメっ!!」


マイキーが顔を出したすぐ横をZMが歩いて居るのが見えた。

お互い至近距離にいるのに気づいてないらしくZMが敗走兵士に向かって構えるのが見えた。


私は思わずスパークライフルを構えると、マイキーの方に射撃した!

ZMが慌ててバスターを交わすと、何かを叫びながら砂埃に消えてしまった。


シード:「我々がいるのがバレた!!援護射撃開始!!兵士を確保後、建物の内部で敵を迎える!」

兵士:「撃て!!撃てー!!」


猛烈な援護射撃でマイキーは隠れ、敗走兵達が、我先に建物に入ってきた。


兵士:「マイキーの奴はどうする!?」


シード:「通信ができないんじゃ仕方ない!!ZMの脅威が分からない今、何とかやり過ごして撤退だ!!」


衛生兵:「ZMが来ます!!」


私がZMを見ようとした瞬間、壁に無数の穴が空いた。

その無数の穴は隣にいたヘビースパークガンを持った兵士に向かい。


穴から差し込んだ日光が赤く染まった。


「腕が!!俺の腕はどうなってるんだ!?」

兵士が叫んだ瞬間、倍のバスターが飛んでくる。


兵士は瞬く間に原型がなくなり、壁が崩壊して部屋の中が半分露出して明るくなった。

ギョッとした衛生兵が慌てて此方に避難する。

ZMもこれには驚いたらしく、少し時間をおいて撃ってきた。


兵士:「ロロア!なにやってんだ!アイツはもうダメだ!こっちへ来るんだ!!」

通信兵:「ジャイアントモアが来るぞ!!!!」



フルルルル!


と言う独特な音が駆けると左から上へ通り抜け、建物に炸裂した!

「きゃあっ!!」

兵士:「うわー!」


爆発音の後、頭上から破壊された瓦礫が落ちてくる。

建物が大きく軋んで亀裂が走り、奥の応接間の机に崩落した天井が積み重なった。

その間にもZM達がジリジリと遮蔽物から遮蔽物へ移動し、確実に近づいてきていた。

もちろんこの位の距離なら撃つことも可能だが、その代わり私達より倍の火力と高威力のバスターがお返しとして飛んでくるだろう。



兵士B:「このままじゃ不味いな・・!!味方を助けるどころか、瓦礫の下敷きになるかバグズに殺される・・!!」

シード:「貴様は悲観的な事しか言えないのか!?何か道はあるはずだ!!」


通信兵:「でも、ヘビースパークライフルの射手がやられた以上、我々には対抗する術はありませんよ!」


シード:「極力相手を引きつけ、確実に撃破しろ!1箇所に固まるな。撃ったら素早く別の所から撃て!」


私は唇に指を当てながら考えた。

迫り来る圧倒的な火力のZM、その猛攻にここに居る兵士達は勝てないだろう。


「あっ!」

すると、倒壊した天井に上の階に続く大穴が空いているのが見えた。


「私の2段ジャンプで登ってみる!!」

兵士B:「登ってどうするんだ!?まさか逃げるんじゃないだろうな?」


兵士Bの言葉にシードが軽く殴る。


「私が撃ってZMを引きつける!ZM達は分隊が移動していると思って追いかける筈!」


シード:「それは危険だ!ZMの大群相手をロロア1人に任すなんて!」

通信兵:「勝てる見込みはありません!」


「勝てなくていいの!このままZMに包囲されて全滅するくらいはマシだよ!私なら隣の建物に飛び移る事もできる!」


シード:「待てロロア!!」


ヒュルルッ


兵士達が一斉に伏せ、私は天井に向かってジャンプした。

ジャンプの最高到達点に着いた瞬間、土踏まずからジェットが噴き出して、更に高くジャンプする。


「やったぁ…!」


3階は、炸裂したジャイアントモアの影響で破茶滅茶になっていた。


後ろ手に縛られたメカニロボ達が頭を撃ち抜かれていた。

埃を被ったそれらを踏みながら、破壊された窓に向かう。


外ではZM達が警戒しながら進軍しており、中央では軍配と一升瓶を持った古びたZMが指示を出していた。

おそらく年長者で、この大隊の長なのだろう。

ZMを引きつけるのも作戦だが、ここからならバスターが届くかもしれない。


私はスパークライフルの引き金に指をかけると年長のZMが射程に入るのを待った。


(相手も必死ぞ!!各ZMは距離を縮め、これを包囲せよ!!奴らに救難信号を出させ、誘き出されたアメルア兵を撃破するのだ!)

年長のZMは軍配で瓦礫を退けると、陣を置くのに最適な場所を探し始めた。


(ああ、いかんいかん!!ここはちと狭すぎる!)

年長のZMがヨロヨロと瓦礫を歩く。


(うへい。喉が乾いたわい・・!こうも熱くちゃ、やってられん・・!)

ZMが一升瓶を豪快に呷る。


私は呼吸を整えると小さく呟いた。

「・・くらえ・・」


チュチュチュチュン!!!!

一升瓶が砕け、瓶の首を持ったままZMが吹き飛ぶ!


(親方様!)

(親方様が撃たれた!!)


ZMの胸からは火花が噴き出し、他のZMに抱き抱えられたまま何かを言うとバタリと絶命した。


(まだ抵抗するつもりだ!!!!ひと思いにアメルア兵を殺せ!!!!)

(オオオーーーー!!!!)


「ひいい!!」

私が飛び退いた瞬間、無数のバスターが壁を貫通して飛んできた!!


とにかく大人数が3階に居ると見せかけないといけないので、私も負けじと応戦する!


(ホワーーー!!)

建物のすぐ近くまで向かってきたZMを仕留める!

すぐさま近くにいたZMが私に向かって撃ってきた!


(プレーナを使え!!)

「ひいい!!」


私は歯を食いしばると、建物の端まで走った!

ヘビースパークライフルの凄まじいバスターが処刑されたメカニロボ達を吹き飛ばし、赤い光の残像となって残った。


私はスパークピストルで窓を破壊するとそのまま外へ飛び出した!

そして2段ジャンプして前転すると、そのまま隣の瓦礫の一部に飛び移った。


(ありゃ!!女の子だ!!)

(バカもん!アステロイドだ!!撃ち殺せ!!)


そのまま飛び退くと、フッ!と言う風切り音と共にバスターが顔をかすめた。

それが私の頭を貫通すると思うとゾッとし、さすがの私でも背筋が凍った。


トン!

と言う着地音と共に私は道路で前転し、そのまま味方から離れるように離脱する。


(二手に別れろ!!)


ダメ!

私はZMから付かず離れずの位置でバスターを撃った。

追いかけてきたZMが倒れ、私は建物の地下駐車場に続く通路に逃げることにした。


(しめた!!アイツ、駐車場に逃げおったわ!)

(袋の鼠だ!破壊して上様に見せよう!)

(どこのメカニロボか知りたい。ヘッドは狙うなよ??)


作戦を変えたのか、ZM達が集中して建物の地下にある地下駐車場を包囲する。


地下駐車場にはトノサマバッタ型のバイク(バッタモンダー)が大量にスタンバイされていた。

奥には整備するための加工場があり、ハッチを開けて中に入った。


そこには大量の工具と、ナットールと言うナットの形をした小型のメカニロボが放置されていた。

何かしらの影響で電力の供給が一時的にストップし、加工場を彷徨っているうちに切れてしまったのだろうと察しがついた。

私はZMに警戒しながらスパークライフルを改造する。


『ロロアちゃん・・ロロアちゃん聴こえる??』

「テリンコさん」


『だいぶ苦戦しているようね・・』

「うん」


『バスターは────』

「使わない」


『頑固ねロロアちゃん』

「うん。。」


私はスパークライフルのストックを折って断面をタオルを巻きダクトテープでストックからグリップを覆った。

そしてバレルの部分をレーザーカッターで切断し、3点バーストのサブスパークガンに改造した。


「テリンコさん、敵は何体いる??」

『エネルギー反応を確認すると20体はいる。さっき、通信兵の救難信号を受信したヘラクレスが来てくれる事になったわ』


「そう・・じゃあ、アメルア兵は大丈夫ね?」

『アメルア兵は大丈夫だと思う。それよりロロアちゃん、自分の心配をしないと・・!』


「テリンコさんはマイキーの位置を。私は勝ってみせるよ」

『アメルア兵を救出したらすぐにヘラクレスを向かわせるから・・!!がんばれロロアちゃん』

「うん」



スパークライフルのジェネレータクリップの個数と、ピストルの装弾数を確認する。

ここでヘラクレスを待つ持久戦をするより、私の得意とする近接戦闘に持ち込んだほうが勝算があるだろう。

首のチョークを触り『メリル・・私を守って・・!』と願い事をし、近くにあった部品を放り入れるワゴンにナットールを大量に詰め込んだ。

そしてワゴンの後ろに寝そべると、両足でワゴンを力強く押した!!



────


「加工場で音がする!!」

「さっきのアステロイドか!?」


ハッチが開き、ナットールが入った鋼鉄のワゴンが勢いよく飛び出す。


「撃て!!」

驚いたZM達がワゴンを撃つ。

それにプレーナが加わり、たちまちワゴンに風穴が空いた。

「・・・!?撃つのをやめろ!」


勘のいいZMが叫ぶも、その頃にはワゴンの内部にあるエネルギージェネレータのタンクに着弾した後だった。

外殻を破壊されたタンクが内部のバランスを崩し、内包していた強大なエネルギーが地下駐車場に襲いかかった!


「きゃあ!」


ビシッッ!!ズドン!!

と言う音と衝撃波と共に、加工室のハッチが誤作動で開き、熱を持ったナットールの破片が四方八方に吹き飛んだ!

バッタモンダーが倒れ、爆発し、炎上する。

すぐさま換気口が塞がれ、重窒素ガスの重くて白い煙が降り注いだ。


今だ!

今しかない!


私は敵の混乱を突くようにバッタモンダーを飛び越えると、敵の懐に食らいつく猛獣のように襲いかかった!


「アステロイド・・ぎゃあ!!」

3点バーストがZMの2体を獲え、その場で倒れ込む。


「銃剣、または抜刀せよ!」

ZM達は負傷した味方を引きずって出口付近で陣形を作ろうとする。


私はガスに隠れ、横にステップしながら、その陣形に撃ち込んだ。


「うぐぁー!」

銃剣の準備をしていたZMの太腿が吹き飛び、絶叫が駐車場に響く。

「あそこだ!」

私を発見したZMが刀を持って走ってくる。


私の3点バーストを跳ね返し、私の前に飛び出すと刀が宙を切り、私の後ろに置いてあったバッタモンダーの首を不気味な音を立てて切り落とした。


私は前転しながらガスに隠れると、バッタモンダーの後ろ脚を拾って斬りつけてきたZMの足を払い、倒れたZMの頭にスパークピストルを撃った。


「うぉお!」

さらに向かってきたZMのライフルを叩き壊し、脳天にバッタモンダーの脚をぶつける。

私の猛烈さにZM達はたまらず駐車場の外へ撤退した。


「コイタンを呼べ!!俺らじゃ太刀打ちできん!」

「作戦戦闘員の保護を最優先!!」

ここで追いかけたら、待ち構えたZM達に蜂の巣にされるだろう。


私は爆発で負傷したZM達にトドメを刺すと、地下駐車場の奥に隠れた。



『ワーニング!!ワーニング!!』

「え!?」


そこでテリンコから通信が入る。


『ロロアちゃん隠れて!!高エネルギー反応が迫っているわ!!“コイタン”よ!!』

「コイタンって何!?」


『元々はフォレストパークの林業に従事していた大型メカニロボ!!剛性、攻撃力は高くて近接戦闘では勝ち目はないわ!!』

「じゃあ、どうしたら!?きゃああ!!」


外から2本の鉤爪が付いた腕が飛び出し、私の肩周りを掴んだまま後ろへ吹き飛ばした!!

そしてバッタモンダーをなぎ払い、そのまま後ろの加工場の壁に激突した!!


「がはぁ!!」

壁に激突した衝撃で視界にノイズが入り、口から電解液が出る。


『ロロアちゃん!!大丈夫!?』


「サンダァーーー!!ブレイク!!!」

私の強烈な放電にコイタンは驚き、鉤爪が離れて太いワイヤーが収納されて行った!


私は慌ててバッタモンダーの影に隠れるとスパークライフルを構えた。

「ちっ!」

しかし、スパークライフルは先ほどの衝撃でシリンダーが折れていて使い物にならなかった。

その時でも重いメカニロボの足音がこちらへ歩いてくるのがわかる。


「テリンコさん!付近にZMとアメルア兵はいる!?」

『いないわ!!シード達が交戦を始めて、慌てて引き返している!』

「分かった・・!!なら、心置きなく戦えるね!!」


『そうね・・!!遠慮なくバスターを使いなさい!!』


ガシャ・・!!ガシャ・・!!ガシャ・・!

ウィーーーン。ガシャ!


巨大な逆三角形のボディに可動に特化した小さな下半身。

そしてワイヤーで収納された巨大な鉤爪が三角形の両端についていた。


赤い単眼が中央について瞬きをし、私を発見すると鉤爪を振り下ろした!


「シャドウ!」

私はシャドウで素早く鉤爪を交わすと、コイタンの左脇腹に毎分2000発のバスターを浴びせた!


コイタンはバスターを受けながら恐るべき機動力で飛び上がると、鉤爪を天井に突き刺してワイヤーの力で昇降し私に向かって鉤爪を飛ばしてきた!

時にそれは蛇行に動き、ストリームマンから得た技のシャドウと、新しく新調した軽量に特化したボディーが無ければ到底交わすことができなかった・・!


私はカウンターとばかりにバスターを撃ち込む。


撃っては交わし、ワイヤーが伸びて収納した隙を付いて撃ちまくる。



早く戦闘を終わらせないと、アメルア兵のサイフォノイスが私を怪しみ、もしもZMが勝利して駆けつけてしまうと私を脅威とみなして全戦力を私に投入してしまうだろう・・!


「ビビビ・・!!ヒダリカタノ破損ヲカクニン・・!!イタイ・・!!」

コイタンの左肩の分厚い装甲の外骨格が脱落し、ワイヤーを巻き上げる歯車が悲痛な駆動音をあげながら頑張っていた。

余程の激痛らしく、天井に突き刺していた鉤爪を外すと、壊れた部分を庇って地面に着地する。


私も素早い動きを強いられて疲れ、ガスの臭いを気にしないくらい肩で息をしていた。


「ハァ・・ハァ・・あっ!!」

その時だった・・!

コイタンが負けじと鉤爪を飛ばし、左の鉤爪で私の首を掴み、右の鉤爪で腹を掴んだ!!

「しまった・・!!獲えられた・・!!」


ワイヤーが一気に巻きあげられ、コイタンの瞳の近くまで持ってきて私を睨みつけた。

赤い瞳には私の必死な顔が反射し、腕が逆方向を動いて私を捻り切ろうとする!!


「うぐぐ!!」

「オマエハ・・何者ダ??ソノヨウナ芸当ガ出来ルノハ・・人間ジャ・・アルマイテ??最後ニ質問シテヤル。貴様ハ、何者カ??何処カラキタ??質問ニ寄ッテハ、武士ノ情ケヲ考エテヤルゾ??」


「わ・・私は・・うぐぐ!!」

「問ウ・・!下手ナ事ヲシタラ・・!五臓六腑ミナ、飛ビ出スゾ」

「分かったから・・!!言うから・・!!その鉤爪を緩めてよ!!」


コイタンの赤い眼が私を見る。

もしもここでサンダーブレイクをしたら、学習したコイタンは電力の力を借りて一気に私を捻り切ってしまうだろう。

腕は鉤爪で拘束されて、コイタンに致命傷を与えられる部位までバスターが向けられない。


「観念シタカ??答エハ・・何ダ??」

「私の答えは・・」


「答エハ・・??」

「答はこれだよ!!ペッ!!」

私はコイタンの瞳に唾を吐きかける。


コイタンは唾を吐きかけられた事が理解できずに固まり、私は間髪入れずにヘッドパーツを揺るがすほどの頭突きを瞳にお見舞いした!


バキッ!!!

と言う眼を支えていた部分が割れる音がして、急な暗闇と激痛にコイタンが手を離して暴れた!

「ミドルバスター!!」

私の緑色のミドルバスターがコイタンの露出した左肩の部位に直撃して爆発し、巻きあげられていた左手のワイヤーが低い音を立てながら一気に外へ排出された!


「うおおお!!!」

私はその期を逃さずに右ストレートをコイタンの瞳に当て、バランスを崩して倒れたところを跨って露出した瞳を両腕で掴んだ!

硬い瞼は先ほどの頭突きで電気回路が故障して閉じず、右手の鉤爪は設計上の欠点で跨った私を掴む事は出来なかった。


バチバチバチバチ・・!!!

重要な部分を流れる濃厚な白い人工血液が瞳から噴き出し、私の胸や腹を汚す。

それがパワーマンの屈辱を嫌でも思い出し、おもわず顔が憎悪で歪んだ。


私はローブを脱ぐと、身体を後ろに倒して一気に瞳を引っ張り出そうとした!

コイタンの脚が必死にうつ伏せになろうとするも、激痛で何度ものたうった。

私はUSBケーブルなど外せそうな物を瞳から外し、両脚でケーブルを固定しながらバチバチと捻ってゆく。

赤い瞳は私に対する恐怖を映し出し、いつしか右手は地面をタップし露出した眼のケーブルは恐怖のあまりフィンが昂ぶって荒く動いていた。


次はコイタンが命乞いをして武士の情けを乞う番だった。

「・・コイタン!!私は武士ではないし、残念ながらコイタンを許すほどの許容をメモリーに内蔵していないの!!

貴方が許されるとしたらただ一つ、私の前でスクラップになることだよ!!」

コイタンが恐怖で身体を震わす。


「白熱した闘いをしてくれてありがとう!!!!さようなら!!」

ブッ・・!!バチバチバチ!!ブッチ!!!バシャッ!


瞳が分離した瞬間、コイタンがビクンと反り返った。

そしてフィンの稼働音が消え、ダラリと全身の力が抜けた。

私は取り出した眼球を持ったまま後ろへ倒れ、切断されたケーブルから出るドロドロとした人工血液を全身に浴びて眼を瞑った!


『高エネルギー反応の消失を確認・・ロロアちゃんよく頑張ったね。ZM達も敗走したみたい。アメルア兵達がそちらに来ているわ!』


「ハァ・・ハァ・・ゴホッ!ゴホッ」

私は眼球がぶら下がるコードを持ったまま人工血液が付いた髪をかきあげ、コイタンの亡骸から飛び降りた。

そして壊れたスパークライフルをたすき掛けにして駐車場を後にする。


照明が一斉に私を照らし、たくさんのアメルア兵が入り口を包囲していた。


兵士:「・・・!!出てきたぞ!!」

兵長:「ロロアだ!!銃口を下げろ!A班はロロアの護衛!!B班は駐車場に残る脅威を排除せよ!!行け!!行けーー!!」


兵士達がガチャガチャと駐車場に入ってゆく。


久しぶりに地上に出ると、すでに空は夕陽がかり、沢山の甲冑魚型の装甲車が兵士達を降ろし上空にはキラービーが編隊飛行をして駆け抜けていた。



そこへ、一際装備を着慣れない男の子が歩いて来ていた・・。

あれは・・

「マイキー!!!!」

「ロロアちゃん!!」

マイキーが私を見ると駆けてくる。


私は思わず抱きしめてしまいそうになり、慌ててブレーキして言った。

「ゴメンねマイキー!!後ろを確認しないで先に行って!!」

マイキー:「まったくだよ!後ろ見ずの無鉄砲娘!!無事で良かったけど!!」


「それはこっちのセリフよ!建物から通信したのに!!どうして返事しなかったの!?心配したじゃない!!」

マイキー:「ゴメン!通信を切ってしまっていたんだ!!それからZMが来て・・情けなく隠れてた!」


「情けなくなんかない!!マイキーが無事で本当に良かった!」


シード:「その声は・・!!ロロア!!無事だったのか!!」

「シード・・!!」


そこにはシードや敗走兵達も居た。


「その腕は・・??」

シード:「あ?ああ。右手の平が無くなっちまったがどうって事ない。クローンでまた生えてくるさ」


「すぐに生えてくるの??」

シード:「大丈夫だ。少しクレジットを使うが・・」


「クレジット・・!?」


兵士B:「ロロア・・!!」

私が向いた瞬間、兵士Bは拳を目の前に上げて挑発する素振りをした。


「何よ?アンタ」

私は少しムッとして兵士Bを睨む。


兵士B:「お前が撃ったせいでZM達が存在に気がついて撃ってきたんだぞ?お前の無鉄砲のせいで3人も犠牲者が出た・・分かっているのか!?」


シード:「よせ。敗走兵士はこちらに向かって来ていたんだ。遅かれ早かれあの建物に避難し、ZM達に包囲されていただろう。ロロアは無許可での発報ではあったが悪い事じゃない・・!マイキーや敗走兵を想ってやった事なんだ」


兵士B:「しかし、立派な規律違反だ。俺らを危険に晒した!!奴らは持ち場を放棄し、情けなく敗走した兵士達だ。マイキーは知らん。この“生き人形”に見捨てられた哀れな兵士として終わっていただけの存在だろうが」



兵士Bの言いように私の怒りが燃え上がる。


「まるで私が殺したかのような言いようね??じゃあどうすれば良かったの??大人しく指を咥えてマイキーや助けを求める兵士を見殺しにすれば良かったの!?!?ZMは20体以上いて、コイタンって言う巨人も居た。私が何もしなければみんな死んでいたのよ!?少しは感謝して欲しい所ね!!」


兵士B:「なんだと!?なんで規律違反をした生き人形なんかに俺が・・!!!!」


敗走兵士:「少なくとも・・」


兵士B:「あ??なんだ貴様!!」


敗走兵士:「少なくとも俺らは、ロロアちゃんに助けられたと思っているよ・・」


兵士B:「な・・くっ!!」


敗走兵士が私とBの口論に割って入り、私は勝ち誇った顔をしながらBを見た。

Bは自分と同じ考えを持ったサイフォノイスの兵士を探し、何とか私を“規律違反”として言い返そうと辺りを見回して躍起になった。


「無駄な努力よ。あなたの負け!!みんな行きましょ?これはほんのお土産よ!」

私はBの胸にコイタンの眼球を押し付けると、わざと肩を当てて歩き出した。


その後ろをマイキーが続き、敗走兵士がBを挑発しながら続いたのだった。

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