スティンガー・アリゲイツ
ロロアとアメルア軍のフォレストパーク攻略戦が始まる。
それと同時に反抗期を迎えるロロア。
メルヴィアとの無線を断ち孤独な戦いをする彼女は、戦闘の泥沼に身を汚し、メルヴィアの負の部分に荒んでゆく。
荒廃した街に砲撃の音やヘビースパークライフルの音が響く。
私達は、首の無いアメルア兵の死体がある一つの施設にたどり着いた。
どうやら車両をメンテナンスする基地らしく、たくさんの修理用ドックに繋がるハッチは全て封鎖され、薄汚れた壁には旅先で集めるシールやURLがベタベタと貼られていた。
市街地のように石造りにしている以外は、倉庫のような作りだった。
頭に通信が入る。
『メカニカルセンターにおいて“ネームド”を確認。名前はスティンガー・アリゲイツ』
「アリゲイツ??」
シード:「ワニ型のアステロイドだな・・」
「アステロイド・・」
私の中にツンとした緊張が走った。
ここに居るアメルア兵が束になってようやく倒せる相手だ。
バスターを使うべきだろうか??
老兵が既に到着しており、こちらに手を振る。
老兵:「こっちだ!!スティンガー・アリゲイツの討伐隊の仲間を募っている!来れるか??」
シード:「ああ!ちょっと待ってくれ!……大丈夫か?ロロア?」
「……」
シードが私の頬を両手で持って上にあげる。
私はシードと目を合わせた。
シード:「どうしたロロア?緊張してるのか。大丈夫だよ、俺らがいる。そうだろ?」
「うん…」
シード:「さっき衛生兵から聞いた。ずっと独りで戦っていたんだってな…」
「チームガンバや、みんなが居たよ」
シード:「でも、基本的に単独行動じゃないか。ロロアがどんな手品を使ってロボを倒したのかは分からんが、正規軍がいる今、無駄な心配だよ」
「うん。少し甘える」
シードが頷くと私の頭を撫でる。
老兵がヘルメットの右側のボタンを押して、参戦してくれる兵士のマッチングを初めていた。
兵士B:「彼女は素早い。ポイントガールにできないか?」
シード:「あ?」
兵士B:「いや!いや!ロボットだからとか、そういう悪気はないんだ。先の状況がわかれば動きやすいだろ!?」
「それもそうね。やってもいい??」
シード:「ロロアがそう言うなら許可しよう。そうだよな?あそこにいるルーキーよりは間違いなく使えるだろうからな」
ルーキーは私達の話し声が聞こえたのか、ドシドシさせながらやってきた。
「僕はルーキーじゃない!マイキーだ!」
「マイキー!?!?コーディアスの!?」
私は驚く。
マイキー:「ロロアちゃん、なんか驚いてるけど、出身は合ってるよ。マイキーはあっちでは標準的な名前なんだ」
「そうなの。どうしてアメルア軍に??」
マイキー:「コーディアスの共民主義に嫌気がさして自由コーディアス軍に入隊したんだ。今はアメルアの国籍を取るために参加してる」
「そうなんだ。頑張ろうね??マイキー?」
老兵:「コイツ、赤くなってらぁ!」
老兵に小突かれてマイキーが赤面する。
私はトオルさんのメモリーに入っていたマイキー達を思い出して少し寂しい気持ちになった。
どのマイキーも真っ直ぐで、世界情勢に翻弄されてきたからだ。
老兵のマッチングが終了し、20人のアメルア兵が集まった。
作戦本部の解説によると、内部はZM達のアジトだったらしく、キラービーが掃射を行ったものの内部の安全の確保と占拠ができていないらしい。
私達は10人で隊をなして、老兵の指揮する『ブラボー』が施設の外周を包囲。
私とシードとマイキー。そして衛生兵がいる『チャーリー』が内部の捜査をすることになった。
「それじゃ、いきましょうか」
シード:「頼む」
私はライフルを左手に添え、右手でスパークピストルを持つと、ゆっくりとドアを開けた。
都市電源が生きてるらしく、アーチ状の無骨な鉄筋がある通路がのびてる内部は、難民が生活していた痕跡があった。
兵士C:「新車とかあるかな??」
兵士A:「そりゃあるだろうよ」
兵士C:「じゃあさ、先に車があるドックに行かねえか??」
「まったく・・2人とも、ムーブするよ。ダイヤモンドフォーメーション」
私は兵士達の呑気なやりとりに呆れながら車のあるドックを警戒しながら目指した。
私がスパークピストルを構えながら進軍し、安全を確保してから、しゃがんで左手を振ると、後続の兵士たちがついてくる。
マイキーは経験が浅いので後方を警戒するポジションになった。
ドックに突き当たるハッチに着く。
ビビーーーッ
両開きのハッチが音を出してアクセスを拒む。
「あれ??」
シード:「どうした??」
「ドックに繋がるハッチが開かないの」
ビビーッ
兵士C:「なるほど。新車はお預けって訳ね」
兵士A:「ぶっ壊すか??」
シードは閉ざされたハッチを叩いて確認する。
シード:「内部を何かが満たしているな・・叩くと音がくぐもる・・」
衛生兵:「ヘラクレスを要請して破壊してもらいましょうか??」
シード:「いや、上階から攻めてみよう。一階は後だ。異論はないな??」
兵士達:「「了解」」
途中の通路で階段を発見し、私はスパークライフルで上階を狙いながら進んだ。
踊り場まで来ると構えたまま座り、シードが先に進んで構えたまま階段を登る。
後続の兵士もそれを行い、最後から2番目の兵士が私の肩を叩き、一番上に登った。
最上階に行き『ドアを開けるジェスチャー』をする。
シードが銃口をドアの隙間に差し込み、私がゆっくり開けてゆく。
「(クリアね・・誰もいない)」
階段まで登ると一本道の通路だった。
ここには廊下沿いに部屋がいくつもあり、機材もあるので部品倉庫であることの察しがつく。
廊下から各フロアを覗くも無人のようだった。
「・・あ!!コンタクト!!ZM!!」
バシュン!
突然一番奥のフロアから飛び出してきたZMの、スパークライフルが私の横を駆ける。
私は怯む事なくスパークライフルを撃った。
「ギャアーーー!」
ZMが倒れ、奥のフロアからロボ特有のエアの足音がする。
見つかってしまっては応援を呼ばれ、囲まれてしまうだろう。
このような時、いつも私は先手必勝だった。
兵士C:「ロロア!!先走ってはダメだ!」
「大丈夫!!マイキー!後方の確認を────」
マイキー:「うわぁ!!」
マイキーと衛生兵が前方の出来事に気を取られ、後ろを見ていなかった。
後方からZMのバスターが飛んできて被弾した兵士が崩れ落ちる。
兵士C:「いかん!6時の方向にZM!挟み撃ちにされてるぞ!」
シード:「6時の敵と応戦!!他はロロアと安全の確保!!」
シードと兵士達が後方から来たZMに対処し、ZM達は素早く撤退すると階段を利用して隠れて撃ってきた。
私は後方を任せ、チャンスとばかりに飛び出してきたZMをスパークライフルのストック部分で叩き伏せた。
倒れたZMの喉をアトムナイフで切り裂き、次にやってきたZMを兵士Bが対処をした。
「ナイスファイト!ありがとう」
兵士B:「・・・」
兵士Bがバツの悪そうに私の手を握って起こしてくれる。
ZM達の気配が消え、3階に生体反応は確認できなかった。
シード:「こちらチャーリー、階段にいたZMが最後みたいだ。3階はクリア…。損害評価は、6キル1KIAだ。彼は死んだ。オーバー」
老兵:『了解だ。先ほどZM達と交戦した。やはりここは生きてる基地だ。注意せよ。アウト』
私と兵士達がフロアの中を見てまわる。
中には、様々な車のエアコンや重力安定装置などの細かな部品がクリアボックスに入れられて雑然と重ねられていた。
兵士Cがさりげなく部品を取って、胸のプレートアーマーの中に忍ばせる。
作業用の机があり、使用済みのA缶が規則正しく並べられていた。
シード:「これはZMが飲んでいたA缶か。本数からして倒した奴らが呑んでいたのだろう」
「ん?」
私は作業机の奥に置いてある”長持ち”が目に止まった。
あまりにも不似合いなそれは、きっとZMが運び込んだ物なのかもしれないとすぐに分かった。
兵士C :「これはなんだろうな??」
「開けて大丈夫??」
私はさりげなく離れる。
兵士Cは警戒するようにアトムナイフで器用に錠を破壊するとコトコトと長持ちの蓋を開け始めた。
兵士C:「お宝!おいでませーー」
パンッ!!
シード:「あ!!おっ!!」
「えっ!?」
フロアの床が、机から先の長持ちまでスッポリ無くなっているのを確認した。
「ウワーーーーーー!!!!!」
小さな部品を荷上げするためのエレベータをわざわざ落とし穴に改造したようだ。
兵士Aと兵士Cが目の前からいなくなる!
「2人ともーー!!!」
「うわーー!」
2人は奈落の底に落ち。
暫くするとドボン!!と言う音がし。
兵士の悲鳴が聞こえた!
どうやら無事のようで
(なんだこれはクソッタレ!)
(早く助けてくれ!!)
と言う声が聞こえる。
シード:「何だこれは!?落とし穴か!?」
マイキー:「最初からここに誘導するのが作戦だったんだ!」
「2人を助けないと!!」
私が穴に入ろうとした瞬間、シードに止められる。
シード:「待てロロア!これは罠かもしれない!」
「じゃあどうするの!?一階のゲートを爆破する!?」
シード:「それは更に危険だ。この臭い・・おそらく潤滑オイルの臭いだろう」
「だから何!?」
シード:「迂闊に強エネルギーを加えると、この施設ごと爆発する危険がある・・!それに集中するとZMが力をつけて戻ってくるかも知れない!一度撤退してブラボーと合流、冷静に作戦を練ろう」
「でも、そうしたら落っこちた兵士が死んでしまう!」
兵士B:「あいつらは強欲だ。自業自得ってもんだよ」
シード:「おい!戦友に自業自得もないだろ!今度、お前がピンチになったら同じ事を言ってやるから覚悟しろよ?」
兵士B:「じゃあ助けてみろよ勇者さんよ!俺らがこれからやる事は撤退だ!逃げてる事と変わらないじゃないか!」
シード:「てめぇ!」
「それでも仲間なの!?いいわ!私が助けにいく!!」
シード:「よせ!ロロア!!」
「みんなは撤退して、新しい活路を探して!もしも私の反応が消えたら…その時は…」
シード:「アメルアは、誰も置いて行ったりはしない!」
「その言葉…期待してるから…」
私は穴に飛び込んだ。




