フォレストパークの戦い
ロロアと父であるカイン博士の確執が始まる。
それは科学者としての価値観の違い。
父と娘の意見の違いだった。
心配する“ママ”は“ママ”ではない。
ロロアは父親を嫌いながら、メルヴィアの平和のために突き進む。
{{{・・だから!!それが許せないのよ!!!!!}}}
ドォン!!!
ホワイトスペクター内にロロアの怒号とバスターが響く。
アウルはティーカップを持ちながら天井を見上げ、アメシストやウィング達が不安そうに見ていた。
「アウル様、ホワイトスペクターは内側の防御壁はあるのでしょうか??」
「・・・わからない。でも一つ言えることは・・」
「・・なんでしょうか??」
「前よりバスターの回数が減ったと言う事だ」
「ロロア姫のお給仕をしてきます・・!」
アメシストが怯えながらティーセットが入っている浮遊型ワゴンを押して歩く。
廊下には破壊された壁や装飾品が無惨に広がり、お掃除ロボットが黙々と片付けていた。
ロロアはかつてブレードマンと戦っていた日本庭園でカイン・メリアスと会話をしていた。
カインはロロアが癇癪をおこしてバスターや怒りで叫んでも動じる事なく、淡々と世界の情勢をはなし続けた。
{なんでみんな仲良くできないの!?そんなに思想の違いが許せないの!?}
{ロロアちゃん。世界はそんなに単純じゃないんだよ}
{うるさい!!!!その迷惑に私たちが迷惑してるんでしょ!!!!あーーーー!!!!}
ドォン!!ドォン!!!!!
───────
あぁあああ!!もう!
私は自分が嫌いだった。
私は特病と、事故の苦しみから逃れるためにアステロイドになった。
ママこと、カナコがなぜそこに居たかはわからない。
世界には宗教戦争があり、そこから発展した二つの思想が戦っている。
パパとママは共民主義派で、カナコは過激派の一員であり、パパからバスターの装着と改造を施された。
しかし、バスターとの相性が悪く。
カナコをそのままにした状態でコーディアスで内戦が勃発。
パパは混乱の中でマット博士の故郷でもあるメルヴィアに逃亡した。
パパの所属する集団は、中立を保ちながら兵士達の治療にあたり。
目をつけた先進国の斡旋を受けて飛躍的な進歩を遂げていた。
その推たるものが、人間のロボット化であり。
幾人かにロボットになる手術を施し、その先端が私である事。
私より前に改造された女の子達が『カインナンバーズ』として、このフォレストパークの戦闘に加わっている事を吐いた。
パパによる科学者としての冷酷さ。
それを行うまでに至る世界の無情さ。
どこまでも自己中心的な世界。
そして、その混沌の中で生まれ変わった私。
戦闘に巻き込まれるクラスメイト。
見せかけの平和でフォレストパークの闇を隠してきたメルヴィア。
その平和が世界であると勘違いした私。
私達にできる事を世界ができない疑問。
戦いでしか解決できない世界。
戦いでしか解決できなかった私。
私。
私。
私。
私は全てに怒り、パパに怒り、そんな混乱に生まれた私を憎み、怒りにまかせてバスターを打つ私が大嫌いになった。
聞けば聞くほど大人というのは傲慢で、パパは優しそうな人畜無害な顔をして言うので嫌気がさした。
「ロロア姫。少し休まれては?」
私が悶々としながら、庭園のど真ん中にあるテーブルで”パパへの質問”をしていると、アメシストがティーセットを入れた浮遊ワゴンを引き連れてやってきた。
「・・・。パパと同じ空気を吸いたくない。悪いけどイオン濃度を高くして。パパが喋った後は、フィルターを2回通してね私のパーツが穢れるから」
私はパパを睨みつけるとアメシストに指示した。
パパは、私が欲しい情報しか言わず。
特にそれ以上を話さなくなった。
もちろんヘッドパーツから直接世界の歴史をBSS(脳内ダウンロード)する事もできる。
でも私は、こうしてカイン・メリアスや、カナコや。
カイナ・メリアスがやってきた事を話させる事に意味があると思った。
それが、科学者である事の贖罪であり、懺悔の時間であると思ったからだ。
カナコは、建て直した日本家屋で料理と固形飲料を作っていた。
私のリュックに、頼んでもないのに詰めている。
「言っとくけどリュックは持っていかないから!」
「…駄目よ。リュックは大事!」
「その料理なんていらない!それならA缶を」
「A缶も入れるつもりだわ。あなたの事を近くで見てきたもの・・」
「ふん!」
私はイライラしながら庭園を歩き、ストリームマンの作った”書道”を見た。
「ハァ!!」
大きなため息をつき、ついた自分が嫌になる。
枯山水を足でかき乱し、パパが考案した軽量化された新しいボディーに、更にイライラした。
気付いたらアウルもやってきていた。
「ロロアちゃん」
「アウル!」
「アメシストが、怯えています」
「私は皆を撃ったりはしないわ!癇癪を起こすけれど!」
「怯えています」
「何!?私に指図するわけ??」
私はアウルを睨んだ。
アウルは瞬きすることなく私を見ると、お椀に入った抹茶ラテを出した。
少し口に含み、少しだけ心が落ち着く。
きっと古の戦士達もこの味を楽しみ、戦いに身を投じたのだろう。
その時戦士達は何を思ったのだろうか。
「・・ありがとうアウル。少し落ち着いたわ」
「ロロアちゃん・・乱心していては早死しますよ。このウィング・・鳥型アステロイドは常に冷静さと気高さを持ち合わせている事を基本としています」
「ストリームマンは??」
「彼は・・戦いに取り憑かれていました。『美』を追求し、古の戦士達に想いを馳せていたのです。そして『美』に殺された」
私は庭園の庭石に座りながら唇を噛んで自問自答した。
「パワーマンと戦った時、彼はZM-300ら数体のロボ達とトランプをしていたっけ。
クーデターを起こした主導者にしては、彼はどこか孤独そうで、とてもロボ達を指揮するカリスマ性は無いように見えた。
ストリームマンだって”歌舞伎”をしながら戦う事で、仲間を必死に鼓舞して人気を取ろうとしているように見えた。
ロボ達やアウルの反応を見ても、とても尊敬できるアステロイドでは無かったのだろう。
・・・私はどうだろう?どうだろうアウル??」
私は抹茶ラテを見た。
ラテは泡立ち、私の顔を伺い知る事はできなかった。
「ハァっ」
私はため息をつくと日本庭園を後にした。
このままではフォレストマンを討伐しに行くより、自分のメンタルが壊れてしまいそうだ。
通路ではスズメ型の若いウィング達が走り回り、上級のウィング達の身の回りの世話をする。
私を見るとハト型とキジ型のウィングが立ち上がり、お辞儀をした。
目はギンギンに血走り、呼吸も荒い。
「ロロア姫。航空支援はお任せください」
「指定の場所を確実に爆破してみせましょう」
「ありがとう。期待してる。あなた方の活躍がメルヴィアの明日を作り、あなた方の撃破数が私の道を照らす光りよ」
私は作り笑顔をして手を振ると通路を歩く。
ウィング達はお互いを励まし合い、士気も高かった。
何も考えずに戦いばかりに専念できる彼らが羨ましい。
ウィング達にとって、敵や味方なんて関係ないんだ。
彼らは如何に戦果をあげてクレジットを稼ぎ、自身を着飾る事しか興味がないんだ。
「ロロア姫ーー!!」
「ロロア姫ばんざーい!」
スズメ型の若いウィング達が私を見ると手を振り、私は手を振りかえした。
空中庭園は様変わりし、滑走路と対空ミサイルが新たについた。
鳥居は撤去され、小さな雪花黒曜石の石塔が立っている。
その石塔の下には同じ材質の石板があり、マナツをはじめとするチームガンバの写真の永久保存URLが貼り付けてあった。
体内にあるナノマシンを感知するとURLが自動に発動して映像データが目の前に現れる仕組みだ。
きっとテリンコさんの前には、私の知らないマナツとの思い出が映し出されているのだろう。
「マナツ・・・!」
「・・テリンコさん」
テリンコは私の声を聞くと顔を上げた。
「ロロアちゃんが作ってくれたのね・・マナツや、他のチームガンバの代わりにお礼を言うわ。ありがとう」
「ここで散った魂を祀っています。マナツさん達が私を繋げてくれたから・・」
「・・マナツはロロアちゃんの戦果に天国で喜んでいるでしょうね」
「・・そうでしょうか」
テリンコは鼻を啜ると立ち上がった。
私はテリンコに話しかける。
「テリンコさん?」
「なに?」
「テリンコさんはZM達をどう思っていますか??パパや・・カナコの事は??私の本当のママは??」
「ロロアちゃん・・」
「私の呪いで、テリンコさんやマナツさんを苦しめているようにみえるの・・私のパパやママ・・過激派だったカナコ。そして、マット博士に作られた目的不明のロボ達」
「ロロアちゃんはZMシリーズと会話したのよね??」
「うん・・」
「どんなロボ達だった??」
「・・・・・・・・良い人達だった」
「それがロロアちゃんを苦しめているのね??」
「うん」
私が相談する中でも、バイパーイーグルスが数機飛び立つ。
「ここで話すのもアレだし、サポートカーに行こっか」
私達は甲板に停泊しているサポートカーまで歩いた。
サポートカーはデッキの窓から見るくらいだった。
正方形と独立式の長方形を付けたような無骨なデザインの船体に、横のハッチを開けると真ん中に手術台があり、様々な機材や私のパーツが置いてある。
今もチームガンバのアベルが本部と連絡をとったりメンテナンスをしており。
時にウエスト・ドラゴ(ストリームマンと戦った山脈)では、メルヴィアと繋ぐ中継基地になっていた。
「あ、いらっしゃい」
「こんにちはアベルさん」
「アベルでいいです、ちょうどユナのメンテナンスを完了した所です」
そして今も、アステロイドのアベルは黙々と任務を続けていた。
今、サポートカーのメンテナンスする為の手術台には身の丈が似た布を被せられたアステロイドが置かれていた。
「ユナ??」
「カイン博士から…聞いてなかったのですか?」
「うん・・ユナって誰??」
「ユナは仮の名前です。カイン博士のロロアさんへの贈り物ですよ」
「贈り物??」
私が無意識に眉間に皺がよっていたのを見たのか、テリンコが私に弁解するように説明した。
「ロロアちゃん、貴女がパワーマンに破壊された時・・カイン博士は大変取り乱したの・・」
「この“人形”は私が死んだ時の代わり??」
「そんな事言わないで、ロロアちゃん。このロボは専門用語で『残機』と言われているわ。
定期的に記憶を更新し、万が一ロロアちゃんが・・あまり言いたく無いのだけど・・破壊されてしまって回収が不能になった時に記憶を同期して動く事ができるわ」
「私が死んだ時、私の意識はどうなるの??」
「ロロアちゃんがユナになるわ。意識データ・・つまり『魂』に当たるものは、メルヴィア最高機密のマザーデータに保存されているから、ロロアちゃんの意識的には変わらないの・・人間で言う魂の入っていないクローンね」
「・・それがユナ」
私はユナが被っている布を捲った。
そこには私と瓜二つの女の子が目を瞑って眠っていた。
肩が動いていないので機能は停止しているようだ。
優しく頬を触ると、自分の頬に感触がある・・気さえして、流石の私もズンと穴に落ちたような言いしれぬ不安と孤独感が襲った。
「ごめんねロロアちゃん。ユナはあくまでロロアちゃんと識別する為の簡単な呼称なの。深く考えないでね」
「うん。分かってる・・。ユ。ユナ。セナ。セラ。アナ。アスタの事だものね??」
「そう!よく知っているわね」
「今調べた。アカナ神話に出てくるマザーアカナに仕えるオブシディアンの乙女達ね」
「そう。・・でも深くは考えないでねロロアちゃん。あくまで保険としてのボディーだから。パワーマンの時のような記憶の引き継ぎの誤差は生まれないはずよ」
「うん・・・うん。ありがとう」
私はユナに布を被せるとテリンコに向き直った。
「私は私。撃破されたりなんかしないわ」
「分かってる。カイン博士はそれだけ貴女を心配しているのよ。これからのフォレストパークのサポートはカイナさんと───」
「できればテリンコさんがサポートして??」
「え??でも・・」
「お願い。パパとママと話をしたくない」
「うん・・伝えておく。」
アベルが何か言いかけ、テリンコがすぐさま割って入る。
私はそれを気が付かないフリをし、それが逆にテリンコさんに悟られてしまった。
「・・早く戦いを終わらせようねロロアちゃん」
「・・・うん」
テリンコの手が私の肩に触れる。
「みんな貴女を心配しているわ。そして早く戦いを終わらせ、日常に戻りたいと思っている・・それは本当よ」
「・・うん」
「そして、貴女がZMと共鳴した事も理解できるわ。目的は違えどZM達も平和を願っている・・確かに良い人かも知れない・・でも、私達が対立する以上勝たなければならないの。それが戦いなのよロロアちゃん」
「うん・・・頑張ってくる」
───────
それから数日が経ち、恐るべきスピードで環境が変わってゆく。
ガイアコアが失われたフォレストパークは、中心部に亜熱帯ジャングルと、残りは荒野が広がっていた。
荒野では再生可能な資源であるセルロースの巨木群が姿を消し、伐採用の大型メカニロボが伐採と再生を効率よく行っていた棚田が、階段状のピラミッドのような形で禿げ山となり、虚しく聳えていた。
マット師団が潜伏していたキリカルテは湿地と竹林の消滅とともにことごとく露出し、アメルア軍や義勇軍に討伐されてゆく。
個体数を減らすマット師団とは違い、ZMシリーズは根強くゲリラ戦を展開し、同機種が滅ぶまで戦い続けるのだった。
切り立った渓谷を、兵員を乗せた装甲車が5両走っている。
途中に破棄された卵型の乗用車を装甲車が撥ねて押し飛ばした。
その拍子に砂が舞い、ここが旧型のハイウェイである事がわかる。
『ポイント340から本部へ!!ポイント340から本部へ!!!ZMの団体の情報アリ!既に交戦し、死者が出ている!直ちに軍を派遣し、これを撃破せよ』
「了解!!町まであと30分で着く!」
アメルア兵の兵長が受話器を起きて椅子に座る。
装甲車の中にはアメルア兵が20人ほど、縦並びの座席に10人づつ座って運ばれていた。
その中にローブを纏った小柄な兵士が1人居て、ただでさえ狭い兵員輸送車の不快さに拍車をかける。
「おい!窓を閉めろ!その小さい穴からでもバスターが飛んでくるんだぞ!?」
「うるせぇな!こんなに熱くちゃやってられねーだろ??」
トカン!!
何処から撃ってきたのかバスターが装甲車を叩く。
「ひぃ!!」
「ホラ!言わんこっちゃない!!」
『───ごく少数のZMだ。心配には及ばない』
「ああ、そうかい!」
トカンッ!!
パンッ!!
カン!
バスターの音が激しくなり、兵士達は上を見上げてヘルメットを目深に被る。
アメルア兵の1人が、向かいに座っているローブを着た小柄な兵士と目が合うと(このザマだよ)と戯けてみせた。
兵士S:「楽しい遠足だろ?自由アメルア軍か??」
「・・・・うん」
兵士S:「まだ幼いな・・??お前は」
兵士A:「“生き人形”だろ、あんまり話しかけるな。情が生まれちまうぞ?見た目は弱そうでも兵器は兵器だ」
別の兵士が割って入り、ローブを着た小柄な兵士が顔を伏せる。
兵士S:「生き人形でも名前や識別番号くらいあるだろ??なぁ、お前、名前は??俺はシードだ」
「・・・ロロア」
兵士S:「は?」
「ロロア。自由アメルア軍メルヴィア支部所属、軍用アステロイド」
兵士B:「おいおい気をつけろロロア。アメルアには反機械主義者も多い。俺のようにな」
シード:「おいおいおいおい口の聞き方に気をつけろよ?ここでは差別は禁止だぜ??」
兵士B:「知るかよ。どうせ俺らは戦争が終わる前に死ぬんだ…」
兵士一同:「「おいーー。辞めろよ。冗談じゃないぜ」」
「辛気臭ぇ」
「ふざけんな」
兵士Bの言葉に兵士達が呆れ返り、兵士Bのヘルメットをバンバン叩く。
シード:「誰も死にやしないさ。バグズ(ZMの差別的な呼び方)も減ってきてるし。俺らの方が数が多い。大丈夫だ。問題はない。なぁ、衛生兵?」
衛生兵:「そうですよ。なぜ僕に話をふったのか理解に苦しみますが・・・ところでロロアさん。君はもしかしてホワイトスペクターに乗っていたって言う・・あの?」
兵士C:「俺も気になっていた。ロロアと言ったら、それしか浮かばねぇ。そうなのか?」
「・・・」
ロロアは徐にフードを外した。
緑青色のボディーに胸の赤いライフコア。
ヘッドギアの襟元に垂れるブロンドの髪に青い瞳。
そして首にはメリルから貰ったヘアゴムを首に巻くチョークにし、目には眼帯をしていた。
衛生兵:「目を・・怪我したのですか?ストリームマンとの激闘で・・」
「・・・ちょっと拗れちゃった」
ロロアは気まずそうに眼帯を外して目を見せた。
シード:「・・・お、おう。まぁ、分かる。俺もそう言う時があった」
ロロアは眼帯を元に戻すと、静かにチョークを触った。
────
私が出撃する前のホワイトスペクター。
カイン博士と白熊のカナコが見守る中、テリンコとアベルがロロアの最終調整をする。
「いい?ロロアちゃん。あなたの目的をおさらいして?」
「うん。わたしの最大の任務は『フォレストマンの撃破』」
「そう。アメルア軍とメルヴィアの一番の目的であり重要任務」
「・・アメルア軍に任せる事はできないの??」
「・・ここ数年のアメルア軍の活躍を見てきたでしょ?彼らの本当の目的はメルヴィアからの資金援助と、軍部の活躍によるメルヴィアの主民主義の思想の変化よ。彼らがフォレストマンを討伐したとなると、これからメルヴィアはその代償をアルムシュアの戦いで支払わなくてはいけない事になるわ。
それだけじゃない。私達に有効的であった共民主義国ですら敵に回してしまうことになる。自由アメルア軍でありメルヴィア出身であるあなたがフォレストマンを倒す必要があるの」
「うん・・」
「まずフォレストマンの同行を調べないといけないの。ロロアちゃんは極力アメルア軍と戦闘に参加し、アメルア軍に広くロロアちゃんを認識と信頼を獲得させてほしいの」
アベル:「信頼は大切ですから。今の世の中、優良なデータはいくらでも改ざんでき複製することができますから信用はされていません。しかし、ロロアさんの活躍により兵士達は心を開き、より良い情報を開示する事があるでしょう。彼らは目で見て聞いた情報に弱く信用する傾向にありますから…」
「単純ね」
「単純だけど重要な事なの。ロロアちゃんはフォレストパークに降下後、アメルア軍の軍団と行動を共にして??そこに中立を保っていた『ネフラス』と言う町があって、そこで必要な物資と情報を貰ってほしい。良ければそこでフォレストマンを追跡している『ヤタガラス』の情報を得られるはず」
「うん。わかった。『ネフラス』ね」
「ロロアちゃん。ロロアバスターを使う所をアメルア軍に見られないで・・まだ彼らが完全な味方だと決まった訳じゃない。貴女のハイパーカノンバスターは有機生物には負担が大きすぎるし、メルヴィアがアルムシュア条約に反して大火力の武器を所持しているとなると外交問題に発展する可能性があるわ。一応貴女の国籍はアメルアになっているけど、無駄な問題は起こさないようにね」
───────
私は作戦内容を思い出して深呼吸した。
シード:「攻撃が止んだな」
兵士C:「おちょくるのに飽きたんだろ?・・お前もやるか??」
兵士Cが震える手で煙草に火を点ける。
そして灰皿に刺すと膝の上に置いた。
殺伐とした空間に不釣り合いなハーブの香りがした。
『これから向かうのは『ネフラス』だ。長い間、伐採用メカニロボ達と共生した中立町であったが、キリカルテに捕えられていたアメルア軍がここで処刑されていると言う情報が入った。アメルア軍がキラービーで降下しようとした途端、ジャイアントモアで撃たれたらしい。キラービーの乗組員の安否、内通者の安否は不明だ。到着まであと10分!!セーフティーを解除』
シグナルが青になり、兵士達が立ち上がる。
私も立ち上がり、スパークライフルを中折れしてジェネレータを込めた。
少しだけ開いた窓には破壊された車や廃墟が目立ち、ゴムの焼けた臭いがする。
心のフィンが高まり、他の兵士達の口数も少ない。
ヴーーーーーーン!!!!
バスターが駆ける音がし───
ドォン!!!!!
間髪いれずにバスターが炸裂して装甲車が揺れる。
シード:「ぐわ!!」
兵士B:「野戦砲か!?いまのは近かったな!」
『ハッチ解放後、ヘッドキアの指し示す『A』を目指せ!!ZMシリーズは戦闘民扱いだ!!見つけ次第殲滅せよ!』
兵士一同:「「「了解!!」」」」
装甲車が停車し
ガタン!
と言う音がしてハッチが開き、前の兵士が飛び出そうとした瞬間、炎上したサイドカーに乗ったZMが目の前を通りすぎた!
「いけいけいけいけーー!!」
「固まるな!!散れーー!!!」
兵士達が飛びだし、キラービーがバスターを撃ちながら空を駆ける。
私は飛びだす兵士達に混じって駆け抜け、装甲車の援護射撃を受けながら、なるべく近い遮蔽物を探した。
装甲車の外は道路が破壊されてボロボロになっており、昔はどんな建物だったのか分からないけどメインストリートに沿うようにレンガで装飾されたレトロ調の3階建ての低い建物が並んでいた事は分かった。
ヴーーーーーン!!
「伏せろ!!」
「きゃーーーっ!!」
野戦砲が炸裂し、荒廃して骨組みとなった建物に炸裂する。
衝撃波がフードを押し上げ、眼帯が外れる。
破壊された建物の破片が不気味な音と共に飛び交い、ローブを切り裂いた。
私は伏せてスパークライフルを抱いて伏せた。
兵士:「来るぞ!!敵のZM!!コンタクト!!!」
「・・えっ・・どこっ」
口の中に砂利が入る不快感の中、砂埃の中をZMの放つ赤い閃光が走った。
「うぎゃあ!!」
前に居た兵士が火花を立てて倒れる。
私はZMの閃光を見かけた砂埃の場所にスパークライフルを撃つ。
3点バースト機能をもったCー1スパークライフルは3つのバスターを連続して射撃した。
シード:「援護感謝する!!みんな急げ!遮蔽物を目指すんだ!」
装甲車の上についている機関砲が鈍い音を立てながら放たれ、他の兵士と共に倒れた遮蔽物に向かう。
遮蔽物には既に数人の兵士が隠れており、屈んだ頭上をバスターが飛びかっていた。
「こっちだお嬢ちゃん!」
「ロロアって呼んで!」
老兵:「ロロア!ハッハ!!このクソみたいな世界へようこそ!!」
シードも私の後ろに隠れてバスターをやり過ごす。
途中でヘルメットにバスターが当たり、シードは小さな悲鳴をあげた。
シード:「まったくもって最高だぜ!バグズの数は!?」
老兵:「あそこだ!隙間から見ろよ?撃たれちまうぞ?」
顔に穴が空いて死んだ兵士を退けると遮蔽物の隙間から向こう側を見る。
捻り鉢巻をしたZM達が集結し、野戦砲にジェネレータを込めていた。
(装填準備完了・・!)
(急げ!アメルア軍がくるぞ)
私は覗き込みながら話した。
「ZMが20体、野戦砲を2門確認できる・・!相手は・・」
「伏せろ!!お嬢ちゃん!!!!」
ヴーーーーン!!
野戦砲のバスターが頭上駆け抜け、高エネルギーの塊に立ちくらみがする。
そして次の瞬間、兵員を降ろし終わってハッチを閉めようとした装甲車の内部にバスターが直撃した。
「きゃっ───やっ!!」
凄まじい爆風と共に装甲車が破裂し、私達は地面に突っ伏して貼り付けになった。
衝撃波と爆風に私の頭が混線する。
(次の装填をいそげ!)
(すすめ!すすめ!)
確かな手ごたえを感じたZM達が野戦砲を押して進撃してくる。
老兵「撃て撃て!!野戦砲を近づけさせるな!」
兵士B:「このままじゃ、皆殺しにされちまう!!」
兵士C:「キラービーや航空支援は出来ないのか!?通信兵!!」
シード:「キラービーでは火力不足だ!ストライクホークスに攻撃を要請したいが、俺らが敵と近すぎるし正確な座標を導き出せないだろう!」
兵士A:「じゃあ、その“生き人形”になんとかしてもらえよ!?ホワイトスペクターから来たんだろ!?」
シード:「おいやめろ!アンディー!!次にその呼び方で呼んでみろ!?軍事裁判所に行く前に、その頭を吹っ飛ばして小さい心臓でキャッチボールしてやるからな!!」
私は兵士達のやり取りを聞きながら遮蔽物から少しだけ頭を出した。
見ると遮蔽物の少し先の建物に穴が開き、2階に登れる階段が見えた。
「おじさん!!シード!!あそこまで私を援護できる!?」
老兵・シード:「え!なんだって!?」
「っぺ!(砂を吐く)上手くいけば2階から撃ち下ろせるかもしれない!」
シードと老兵は顔を見合わせる。
シード・老兵:「やろう!!」
兵士Aはシードに睨まれ胸のアーマーを叩かれる。
老兵:「ロロアが活路を導く!!次の野戦砲が飛んできたら一斉射撃だ!!せいぜいこっちに飛んでこないことを祈るんだな!!」
兵士一同「おう!!ウーーーアーーー!!」
(あそこに居るぞ…!!)
(撃てや!!)
(装填せい!!)
老兵:「ロロア、よろしく頼む・・!」
私は頭を撫でてもらうと、遮蔽物をぬうように端に進んだ。
シードは私の後ろに付いてくる。
遮蔽物に釘付けになった沢山の兵士達と目が合い、皆が怯えているのがわかった。
1人の兵士はスパークライフルを固く抱きしめ、震え上がりすぎて口の隅に泡が付いていた。
「大丈夫・・私が皆を導くから・・」
私が呼びかけると、兵士は何度も頷く。
きっと経験の浅い兵士なのだろう。
ヴーーーーーン…!!
シード:「撃って来たぞ!!反撃開始!!!」
私は遮蔽物の隅から飛び出すと、全速力で穴の開いた建物へダッシュした。
その瞬間、野戦砲が炸裂し吹き飛ばされる。
兵士達のバスターが飛び交い、私もスパークライフルを構える。
しかし右手が無意識にバスターに切り替わってしまい
、ライフルを落としてしまった。
バスターを撃つべきか!?
““ロロアちゃん。ロロアバスターを使う所をアメルア軍に見られないで・・まだ彼らが完全な味方だと決まった訳じゃない────メルヴィアがアルムシュア条約に反して大火力の武器を所持しているとなると外交問題に発展する可能性があるわ。一応貴女の国籍はアメルアになっているけど、無駄な問題は起こさないようにね”“
「分かってるよテリンコさん!!」
私はスパークライフルを拾い上げると、破壊されたサイドカーを跨いだ。
市民型メカニロボの残骸に躓きながら、なんとか2階に上がれる廃墟を目指す。
「貴様!アメルア兵か!!」
「きゃっ!!」
廃墟の中にZMがいて私と目が合う。
ZMがスパークライフルを構えようとした瞬間、私が飛びかかり、階段の踊り場に押し倒してスパークライフルの銃口をZMの顎に向けた。
「ぐわ!まいった!」
引き金を引いた瞬間、有り余る3発のバスターがZMの頭を吹き飛ばし、私の顔に電解液がかかる。
「くっそう!!」
私は乱暴に顔を拭うと、階段を駆け上った。
「なんの音だ!?」
階段の頂上から出てきた別のZMを撃つ。
「ホワーーー!!」
ZMは両手を挙げて絶命したあと、階段を転げ落ちた。
「ハァハァ、いい感じいい感じ。早くみんなを助けないと…!」
中は広いフロアのレストランだったようで辺りの椅子やテーブルが粉塵を被って放置されていた。
私は割れたガラスや、テーブルを押して鳴らさないように慎重に窓に向かう。
(おい!しっかり持て!)
(担ぐ時はよぉ?神輿と同じだからよぉ?丁寧に持てよな!)
(へい!)
私が慎重に半身を出すと、破壊されたゴミ収集車を遮蔽物にして野戦砲の準備しているZM達が見えた。
ああ、バッチリね。
最高の狙撃ポイントだ。
2階から狙っているとは夢にも思っていないのか、ZMの全身や野戦砲の射手も捉える事もできた。
その無防備さと敵の一瞬の隙を突いた事に、私は恐怖と緊張を突き抜けた強い征服感を感じた。
その幸福がお腹の下を満たし、膣が縦に締まる感じがし、じんわり濡れる。
パパに作ってもらった“人間の部分”が喜ぶ。
…それは、もともと私が戦争経済で作られたアステロイドだからなのだろうか。
それとも私は、私自身が戦闘による勝利を欲しているからなのだろうか。
(押してるぞ!!)
(もっと進めい!!)
「(待っててね…今、皆殺しにしてあげるから…)」
私は静かに興奮しながら唇を舐めると、音を立てないようにスパークライフルの銃口を向けた。
…そして。
(野戦砲にジェネレータをつめろ!)
(うんとこどっこいし───ぎゃあーーー!!)
チュチュチュン!!
私の撃ったバスターがジュネレータに被弾し、爆発する。
ZM達が倒れ、散り散りに逃げ惑う。
(ギャア!!)
(ヒィィ!!)
私は壁に隠れると、スパークライフルを折る。
撃ち尽くしたシリンダーが飛び出し、間髪入れずにジェネレータが装填されたシリンダーを叩き入れる。
「うおーー!!今だ!行けぇーー!!」
ZM達が私に向かってスパークライフルを構えた瞬間、アメルア軍の一斉突撃が始まった。
ZM達がたちまち敗走し、もう一つの野戦砲もあっけなく奪われてしまう。
老兵:「ここは我々が落とした!よくやったなロロア!アクメルガ級の栄誉だ!」
シードと老兵が私に手を振って言う。
私は頷くと、兵士達の進軍に加わった。
瓦礫だらけの商業区を進む。
左右には3階建ての味のある石造り風の建物があり、
浮遊バスが建物に突っ込んで壊れていた。
窓が割れ、投げ出された身体や腕に生気がない。
どれも若い女性や子供達のようだった。
兵士A:「窓を警戒しろ…!壁に近づきすぎるなよ?砲撃の破片が飛んでくるぞ?」
シード:「この一帯は”ネームド”の報告がある。気を緩めるなよ?」
「ネームド??」
シードは私に向かって指を差した。
私は思わず寄り目になる。
シード:「ロロア。戦闘に参加してるアステロイドは君だけじゃないんだ。国籍も所属も不明なアステロイドが数体確認できている。俺らが束になってやっと倒せる相手だ」
「あの兵士が私に偏見を持つのも…」
シード:「それも一理あるが、根本的な問題だ。反機械主義者はロボットに産業を奪われた貧困民だ。主民主義が生んだ影の部分なんだよ」
私は物音がして、不意に建物を見た。
そこにはコンビニに入った兵士達が中の商品を物色していた。
(スンスン・・これは食えそうだ)
(これも・・いいな金めになりそうだ)
私が見つめているとシードに肩を叩かれる。
シード:「ロロア。故郷が荒らされて許せないだろうがやらせておけ。無駄な衝突は身体が保たないからな」
「・・・うん。わかった」
(おい見ろよ?クマの人形があるぜ??)
(おい。いらねえよ・・そんなもん)
兵士が倒れた商品棚の隙間にクマの人形を見つける。
そして徐に広い上げた次の瞬間だった。
私の後ろでコンビニが大爆発をした。
シード:「な?身体が保たないだろ?戦場にあるものは疑ってかかれ。これは鉄則だ」
「うん。勉強になった行きましょ」
私はシードのもとに駆けたのだった。




