パワーマンステージ
クマさんの操縦のもと、ニュートリノ発電所のパワーマンステージに戻ってきたロロア。
ロロアは雪辱をはらし、パワーマンを破壊する事ができるのだろうか?
「ママ!私を守って!!!」
クマさん(ママ)はブースターを切り離すと、ニュートリノ発電所に飛び出した。
余力で飛ぶ私。
久しぶりの、まったく変わっていない残骸の山。
即席のバリケード。
井上隊が突入した護送車。
そして私は、井上ルートめがけてバスターを思い切り撃ち込んだ!
「きゃああ!!」
思いのほか大きなバスターが私から発射される。
私を見ていたメカニロボ達が井上ルートを塞いでいたバリケードごと轟音と共に吹き飛び、グシャグシャになりながら私と一緒に弾け飛ぶ。
さらに失速させる為にバスターを撃ち込み、私はバスターの反動でクルリと回ると驚くほど綺麗に着地した。
「はぁ、はぁ・・やったぁ!」
私は瓦礫と砂ぼこりの中で残りの飛行ユニットを外した。
「ロロアちゃん、流石私の娘ね!はやくここを離れましょう!」
クマさんが私の背中に乗り、井上ルートをダッシュで進んでいった。
「早く!早く!!」
皆が気付く前にパワーマンの所に行かなくては!
「な、なにがあったんだ!?爆発がっ・・ぎゃああ!」
私は、扉から出てきたグリーンキラーの顔にバスターを撃ち込むと頭を失った体を蹴飛ばした。
体が倒れる音が響き、他のグリーンキラーが出てくる。
「なんだこれは!し、侵入者っ!ぐぁあ!!」
「なんでここに!ぎゃああああ!」
私は必死になって、動く者全てにバスターを浴びせる。
私を見ると一瞬ギョッとしたように固まり、肩にかけたスパークライフルを構える頃にはバスターの餌食になっていった。
「何か入ってきたようだ!至急、あぶない!」
レッドキラーが私のバスターを咄嗟に盾で弾いた。
弾かれたバスターが天井に穴をあける。
「お前!誰に向かってやってると・・」
レッドキラーが話しかけた瞬間に顔を殴る。
レッドキラーが大の字で仰向けに倒れたので、私は馬乗りになって首を捻る。
配線から火花が吹き出し痙攣する。
「おい!うわっ!大変だ!」
「わぁあ!」
私は馬乗りのまま2人組のZMに毎秒25発のバスターを浴びせる。
黄色い光の玉が容赦なく降り注ぎ、ZMは2人で談笑するように体を動かしながら破壊されてゆく。
「敵だ!!出合え!!出合え!!」
他のレッドキラーが4人と重機関スパークライフルを持ったグリーンキラーがやってきた。
私は、顔をボロボロにしたレッドキラーを思い切り持ち上げて投げつけた。
レッドキラー同士がぐちゃぐちゃになり、グリーンキラーがたじろぐ。
「構わん!撃てよ早く!!撃て!」
慌てたグリーンキラーが引き金を引く前に私が頭を撃ち抜き、もがくレッドキラーにバスターを浴びせた。
「がぁぁあ!やめくれ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ。」
私は沢山のロボを破壊しながら対井上隊に作られた2メートルある段差を越え、ズンズン進んでいく。
バスターが飛び、グリーンキラーが領収書を飛ばしながら絶命する。
土下座したまま破壊されたZMを盾にして、何も知らずにA缶をもって入ってきたレッドキラーにバスターを撃ち込む。
オイルまみれになった領収書には『ロボット居酒屋』とあった。
内部に入ったら、模擬戦のクラスメイト達より弱いなんて・・。
こんな奴らにチームガンバはやられたなんて・・。
私はクラスメイトを巻き込んで、ロボットの殺戮に磨きをかけていたなんて・・。
「お、お助け!!」
私は逃げ出すZMの背骨を外骨格ごと右足で踏み潰すと、さらに進んでいった。
「ロロアちゃん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ。・・うん。喉がカラカラ。少し休もう・・。」
私は見覚えのあるフロアにたどり着くと座り込んだ。
ちょうどA缶が転がっていたので、すぐに開けて喉をならして飲む。
体を液が駆け抜け、胸のライフコアが赤黒いのから鮮やかな赤に変わった。
もう1つ缶があったので、クマさんに半分与えた。
よく見たら私のリュックだ・・私と同じボディカラーの一部も転がっている。
破壊された壁、制御室のモニターも殆ど機能していない。
ここは・・。
「ロロアちゃんが一度死んだ場所ね・・。」
クマさんが破壊された私の一部を拾う。
「ZM-300のミーさんとZM-200のニイさんが集めてくれたのよ。彼らがいなければロロアちゃんを完全にバックアップ出来なかった・・。」
「・・・。」
「ママ行こう?私は産まれ変われる。パワーマンを倒すまで何度でもコンティニューしてやるわ。」
「ロロアちゃん頑張って!早くパワーマンを倒して普通の女の子に戻ろう!」
私はリュックを拾うと背中に付けた。
リュックと私の背中の窪みがカチリと音を立ててはまる。
そしてクマさんがリュックの中に入った。
手が震えだし、私は前に締めたバルブの上のタンクを思い出した。
私のバスターは盾で弾かれてしまう恐れもある。
「ロロアちゃん、何するの?」
「ロロアバスターを弾かれるかもしれないから、この光る棒を使う。」
私はタンクの窓を破壊すると、力ずくで拡げ、8本ある中から高温の棒を1本引っ張り出した。
素手で持つと危険なので、付け根の比較的温度の低い所を持つ。
左手から煙が出て、強力なエネルギーを感じる。
これを頭から降りおろされたらパワーマンと言えど一溜まりもないだろう。
私は模擬戦でパワーマンのリーチに入ればバスターより剣の方が強い事を学習していた。
懐を貫いてバスターを撃てば私だって勝てる!
重厚な扉を抜け、パワーマンがいるであろう場所を目指す。ニュートリノジェネレータも近くにあるかもしれない。
頭上を太いパイプがいくつもあり、まるで巨大なロボットの中にいるみたいだ。
もう1つの重厚な扉が開き、奥でパワーマンなど4人が座っているのが見えた。
口の中が乾燥し緊張で手が震える。
唾を飲み、呼吸をととのえる。
中には高い天井まで続く巨大なタンクと、巨大なカプセルの真ん中に丸いエネルギー体が輝いていた。
あれがニュートリノジェネレーターだろうか?
パワーマンは巨大なカプセルの下でZM-300とレッドキラー2人と折り畳み式のテーブルを囲んでトランプをしていた。
パワーマンは丸くて強靭なボディがあるのでトランプを持つのが大変そうだ。
「旦那ぁ、何回大貧民やるんでやんすか?」
「ぐぅう。次は負けんよ!」
「じゃあ、カードを2枚ください。」
「レッドキラーごときにやらん!」
「はぁあ?身分はレッドキラーですけどねぇ、私が大富豪なんですからね!!」
「ちぇっ。」
彼らは私が入ってきた事に気付かないでトランプに興じる。
私はメリルに話しかけるように自然な形で歩く。
「なんか、トランプがシナシナになるでやんすね。」
私の左手に隠し持った高温の棒『雷電(今名づけた)』の影響を受けるトランプ。
私はギリギリまで近付くと背を向けているレッドキラーの真後ろにバスターを向ける。
バスターの先端がレッドキラーの外骨格にあたる。
レッドキラーはビクンとして
「よっしゃ!!か・く・め・いアガリー!!!」
と、トランプをテーブルにぶちまけた。
「は!?うそだろ!?」
別のレッドキラーがテーブルを見る。
パワーマン、さようなら。
テーブルにトランプを並べようと・・レッドキラーが前のめりになった瞬間、出力を最大にあげたロロアバスターが炸裂した!
ドァアアン!!!
と言う共鳴したドラムとシンバルと機械音みたいな音が響いて辺りを明るくした!
それは5秒間に起きた。
「なんだぁあ!?ぐぁああ!!」
レッドキラーの体を貫通した正義のブルーのバスターがパワーマンをとらえて壁まで吹き飛ばす。
私は歯を食い縛ると巨大な風穴が空いたレッドキラーを踏み台にして、一気に駆け登り、もう1人のレッドキラーの首から肩にかけて雷電を振り下ろした。
棒はとてつもない切れ味で溶かし切り、レッドキラーの悲鳴さえ切り伏せた!
レッドキラーが崩れ落ちる。
パワーマンは壁に叩きつけられると、私の撃ったバスターを必死で受け止めていた。
「はぁああ!!ロロアちゃん!!あっしが悪かった!!許してくれ!」
ZM-300が腰を抜かし、必死に逃げながら命乞いをする。
パワーマンはようやく両手で受け止めたバスターをねじ伏せた。
「ロロアだと!?この間、俺がバラバラにした小娘か!!」
「そのバラバラされた私が復習にきたわ!!私が葬ってあげるから、バスターで撃たれるか雷電で斬られるか選びなさい!!」
私は力の限り叫んだ。
私の体はパワーマンにバラバラにされた恐怖より、溢れるばかりの怒りが支配していた。
「ふん!ガキが!!サンダーブレイク!!」
パワーマンが地面に手を付いたので、とっさに天井にジャンプした。
その瞬間、テーブルが跳ねてトランプが燃える。
レッドキラーの死体がバチバチ音を立てて震え。
腰を抜かしたZM-300が「ぎゃふん!」と言いながら跳ねあがった。
「不意討ちなんて卑怯ね!パワーマン!」
「ふん!何とでも言え!・・おい、ZM-300!」
「へい!」
「薬を持ってこい!」
「へい!」
ZM-300に薬を取りにいかせ、パワーマンは自信ありげに笑った。
「ロロアよ。俺は対キグナス用にパワーアップしたんだ。ここの電気が供給されている限り俺は無敵だ!サンダーブレイクも無限に撃てるのだよ!」
「・・くっ!」
「今度は跡形もなく消し去ってやるぜ!覚悟しな!!」
「いくよ!パワーマンっ!!」
私は意を決してバスターを撃ちながら飛び掛かった!
バスターを全てキャッチされ、パワーマンは叫ぶ!
「サンダーブレイク!!」
「きゃああ!」
ジャンプが遅れ、地面から電撃と言う名の激痛が走り抜け、全身が震えた!
「がはは!どうだロロア!いくらでもお代わりはあるぞ!!サンダーブレイク!!」
「きゃあああ!」
「ロロアを離しなさい!」
私が倒れようとした瞬間にクマさんがリュックから飛び出し、半分余ったA缶をパワーマンにかけた!
「ぐぁああああああっ!!」
A缶は電解液なのでパワーマンも感電する。
私は体勢を立て直すと雷電をパワーマンに叩きつけた!
「ぐぁっち!ぬぅわ!!」
雷電は庇ったパワーマンの左腕を切り落とし、私は右手のパンチを交わすと、振り向き様にパワーマンの右脇腹から背中にかけて雷電を突き刺した!
「ぐぁああああ!!」
雷電は融けたパワーマンの外骨格に呑み込まれてゆく!
パワーマンは不死身だ。
ライフコアを破壊しないと死なない!
「ぐぬぬっ!!小娘がっ・・!この棒はなんだ!?」
「これは雷電よ!」
「ちがう!!どこから取ってきたかと聞いているんだ!」
パワーマンと私は飛んで離れ、間合いをとる。
しかし着地した瞬間にパワーマンは苦痛で顔を歪め、口から循環液を吐いた。
息を絶え絶えに、すぐに奥にあったデバイスで左腕を配線カット用のハサミユニットに変えると雷電を取ろうともがく。
右手はパワーマンの違法改造のため手が届かない。
「お、教えてくれ!!まさかタンクから取ったんじゃないだろうな!!」
「その通りよ!」
「は!?」
ガシャン!
と、音がしてミーさん(ZM-300)が薬と水を乗せたお盆を落とした。
「お嬢ちゃん!!今の話は本当かいな!?」
「うん!!雷電って言うの!」
「馬鹿か!!ニュートリノジェネレータを人質に人間と戦ってきたのに、ニュートリノジェネレータを先に破壊する馬鹿がどこにいる!!」
「えっ!?ニュートリノジェネレータって、あれじゃないの?」
私は正面のカプセルを指差した。
「違う!!一体お前は何を聞いてここに来たんだ!!!?ニュートリノジェネレーターを破壊するとな!内部機関が暴走して取り返しのつかない事になるんだぞ!!」
「わ、私はあなたを破壊する為にきたの!アタマに来たからここに来たの!!そこまでチームガンバの人は教えてくれなかったし!私はバルブを閉めてこいと言われただけで・・ジェネレーターなんて奥にあるものだと普通は思うじゃない!!ややこしい所に置かないでよ!!」
「うわー!!お前と話すと俺まで馬鹿になりそうだ!!いやもう!違う違う!!どうしよう!!どうしよう!どうしよう!?」
※※※※※※※
それからパワーマンはミーさんを使って抜こうと試みた。
いろいろ試す様は、まさに哀れであった。
「熱いでやんす!!」
「早く抜け!!急げ!!」
「む、無理でやんすパワーマンの旦那!!よもや年貢の納め時では!?ここはロロアちゃんに謝って・・」
「なんだと!?貴様!誰に向かって言ってんだ!!」
ミーさんはパワーマンの平手打ちを受けて倒れた。
パワーマンの尋常じゃない慌てぶりに、ロロアはしばし怒りを忘れて心配になった。
発電所は怪しげな揺れを何度かし、配管が鳴る。
ロロアは全てを把握しないままパワーマンに戦いを挑んできたのだ。
それはロロアが社会人として自立する上でも直すべき欠点であった。
パワーマンは何かを思い出すと、慌てて体に雷電を刺したまま黒電話のダイヤルを回してブラックアイに電話をした。
極めて原始的な電話回線を使っているのはチームガンバに探られない為だろう。
何度かコールしてようやく出る。
「もしもし、もしもしブラックアイ!?」
「す、すいません。今ボーナスの決済の会議でして、また後程かけなおします・・ブツン」
「くぅう!」
パワーマンはイライラしながら守備隊指令本部に電話した。
「もしもし、守備隊本部?」
「はい!A-1~A-20地点、異常はありませんパワーマン殿!!」
「ふざけんな!こっちは異常だらけなんだよ!!バスターを持った小娘が攻めてきた!!既に仲間もやられているんだぞ!!」
「例の火の玉以外こちらでは異常はありませんが・・?」
「それが異常だろうが!!なんで報告しなかった!?」
「申し訳ありませんパワーマン殿。
A-21からA-22地点は管轄外でして・・」
「A-21からA-22のロボ達は何してる?」
「うーん。連絡とれませんね。」
「うわぁああああ!!!!くそぉ!!」
パワーマンが頭を掻き毟りながらダイヤルを回す。
百戦錬磨のバーサーカーが近くにいた筈だ。
「おい!!仕事だ!バーサーカー!!」
「はっ!仕事ですか!?」
「はやく此処にこい!!理由は後で話すから!!」
「いやいや(笑)来いって命令ですか?来て下さいの間違いでは?契約書にあったと思いますが1メートル動くごとに別途で手当てが・・」
「お前は金銭面でもバーサーカーだな!!ぬぁあああ!!誰も話が通じない!!話が通じない!!あぁあああ!」
パワーマンは黒電話を破壊すると頭を抱えて地面をバンバン叩いた。
思えば彼は力こそあるものの、ロロアを破壊してから常に孤独だった。
今ではYESマンを集めてトランプに興じるしか楽しみが無く、事務も経理も人材雇用も全てグリーンキラーに放り投げてやってこなかったのだ!!
「あ、ありがとう!」
パワーマンはロロアから水と薬を貰うと流し込む。
ようやく落ち着き、パワーマンはロロアの両肩を持って説教した。
「ロロアもロロアだし、人間も人間だ!
小学生にさほど期待していないとは言え与える情報が少なすぎる!
チームガンバのロロア軽視の根本的な問題もさる事ながら、それで敵地に踏み込むロロアも無鉄砲もいいところだ!社会人になってからじゃ通用しない失敗だぞ!?」
「ご、ごめんさい。」
「わかったら早くこの雷電を抜け!!」
「それはできない!!」
「なんでだよ!!!」
「私はあなたを破壊しにきたの!」
「馬鹿!!俺ら共通の危機がせまってるんだよ!そんなに頑固なのは、親ゆずりか!?親の顔が見てみたいわ!」
「ロロアちゃん!パワーマンの話は本当よ!今はニュートリノジェネレーターの暴走を止めましょう!」
「ママ!」
「お母さん!?えっ!?お母さん?」
パワーマンはため息をつくとロロアを説得するのを諦めた。
そして、とりあえずニュートリノジェネレーターの様子を見に向こうと言う話で合意した。 。
後ろからロロアも付いてゆく。
「どこのニュートリノジェネレータだ?」
「えっと、私を破壊したタンクの近く。」
「案内しろロロア。一時休戦だぞ!」
ロロアはパワーマンにバスターを向けながら訝しげに案内する。
「ロロア、お前の為でもあるんだからな!こっちか!?」
「ごめんさい。間違えた。」
「なにやってるんだよ!!」
「そんな威圧的に叫ばないで下さい!ロロアちゃんだって女の子なんです!優しく接してあげて下さい!」
「なっ!!こっちは雷電が刺さってるってのに!ぐぬぬぬ!!」
そして2回ほど間違えた後、明らかに温度が違う通路を見つけた。
廊下が熱で歪み、壁の規則正しく並んだランプが割れている。
「「うわー」」
ロロアもパワーマンも絶句する・・。
「あきらかに面倒くさい事になってるじゃねーか!!」
「そうね・・分かったパワーマン。あなたを信じます。」
「分かっただろ!?早く抜いてくれ!!しかもおい!!どうやって壊したんだよ!!」
「窓を割って!拡げた!」
「あぁ!あぁああ!神様ぁ!」
パワーマンは天を仰ぐと、ロロアはパワーマンに刺さる雷電を持った。
そして、30分かけて頑張って引き抜いた。
※※※※※※
「パワーマン、水と薬。」
「ありがとう。」
「汗!」
「ありがとう。」
パワーマンは雷電をタンクに入れると配線を繋ぎだした。
私はパワーマンの汗を拭いながら、自分の汗をふいた。
私達が汗をかくと言うことはどれ程高温なんだろう?
装甲と装甲がビキビキ言い出し、どことなく動きやすい。
体が温められて、関節が緩くなっているのかもしれない。
「ニュートリノジェネレーターが暴走するとどうなるの?」
私はママと、ミーさんが持ってきたA缶を飲んだ。
熱いからかA缶が進む。
ときより頑張っているパワーマンの口にも入れてあげる。
「それは・・」
「うん。」
「俺にも分からん。」
「えっ!?」
「分からんのだ。これだけ勤続していてもな、暴走するのは知っていても先は知らん。多分人間達も知らないだろう。だから人間達は怖いからここに来ないのだ。」
「あなた達は、そんな所で働き。そんな分からない物を人質にしていたの?」
「その分からない物の恩恵を受けていたのが人間たちだろ?」
「・・・。」
「俺は社会に不満をもっていたんだ。
人間の都合で俺らメカニロボやアステロイドは作られ、人間のやらない仕事をし。錆びて棄てられる。そんな社会、壊してやりたいと思わないか?」
「・・・。」
「俺は訴え、他の奴等も賛同した。そうしたら、あるお方が条件と引き換えに俺を強化したんだ。その条件が、あれさ」
パワーマンが指差す先に服の塊が床にへばりついていた。
「定期的にくる人間の工員だよ。俺はペチャンコにして、人質をさらってきて犯行声明をだした。そうしたら人間は俺らの話を聞くどころか攻撃してきやがった!不良品扱いしてな!その事をお方に話たら、武器を。そしてブラックアイを始めとする兵力をくださった。味方はどんどん増えて行ったよ。」
「それで、特殊部隊と衝突したの?」
「さすがに特殊部隊が出てくるのは想定外だった。ウェーブを撃退し、進撃した。そこから俺はメカニロボ達の象徴だけの存在になり。居場所がなくなったんだ。だから、俺は力を誇示する為に特攻してきた井上隊を人間を使って誘き寄せて殺したんだ。ロロア。お前も俺のパフォーマンスで死んだんだ・ ・俺が冷酷である事を示すためにな。」
「あなたは命を何だと思っているの?あなたは自分の立場を守るために殺人をして、社会のせいにして戦争を引き起こしたの?」
「うるせぇよ。人間だって悪いんだ!」
私はパワーマンの後ろに立った。
この人はどうしようもない人だ。
この人がいる限り戦火は燃え続け、罪のない人達が、この人の利益のために消費されてゆくんだ。
私を小さな名声と誇りを保つ為にバラバラにして・・。
そして、優しいZMを苦しめているんだ。
「ママ、私のリュックの中へ。」
クマさんが頷いてリュックに入り、私のライフコアが白く輝くのが見えた。
体が黒い陽炎で覆われた私は、怒りが全身を支配してゆくのを感じた。
胸のフィンが高鳴り、ミーさんが逃げ出す。
「よし、直ったぞ!後はタンクのまわりをどうするかだな!ロロアのバカ野郎。こんなに派手にこじ開けやがって。」
「パワーマン。その心配はないわ。」
「え?」
「あなたの強靭な装甲があるじゃない?」
「あぁ!なるほど。でも、そんな事をしたら俺が死んじまう・・ロロア!?」
私は座っているパワーマンを尻から持ち上げた。
私の体がミシミシ言い、パワーマンを持ち上げる。
「やめろ!ロロア!!他にも解決案はある!!ママさん、止めてくれ!!」
右手が宙をかき、左手の配線用のハサミが優しく私の太腿を挟む。
「パワーマン、このくだらない戦いを私が全て終わらせてあげる。みんな、みんな戦いをする者は、私のバスターの餌食にしてあげる・・」
「や、やめろロロアちゃん!!そうだ!お前を推薦してやるから!一緒に新しい世界をつくろう!・・ぐぁああああ!!!」
パワーマンの頭がタンクの奥に呑み込まれてゆく。
肩まで浸かったあたりから右腕と左腕が外れ、どんどん呑み込まれてゆく。
「ぎゃぁああああああ!」
しかし強靭なボディと発電所から電力を供給されている以上、パワーマンは不死身だった。
パワーマンの足は暴れ続け、大きなバックルがひっかかって止まった。
つまり、タンクから下半身のみ出した状態で溶解と熱放出は止まった。