ロロアの反抗期(2)
ストリームマンとの戦闘を終え、終わりなきZMの討伐をするロロア。
その中で、ママのビーコンを頼りにロロアの父であるカイン・メリアスが到着する・・。
それから一年後…。
ロロア率いるホワイトスペクターは、マッド師団やZMシリーズの掌握した村々や拠点を破壊し、そこへアメルア共和国の部隊が進軍する掃討作戦が開始された。
主民主義国であるアメルア共和国の戦争学者 モルドモンド・アメルはロロア率いるホワイトスペクターの爆撃が『効果的では無く、かえって戦争を長引かせてしまったのではないか』と評価した。
ロボカバリーチャンネルと言う番組で、アメルは語っている。
「ロロア達の最大の誤算は、ロボ達に計算させる猶予すら与えずフォレストパークの最大頭脳を先に叩いてしまった事です。首領との通信を失ったマット師団は混乱し、戦闘を継続するか迷いました」
***「降伏もあったと?」
「勝ち目が無いと分かれば降伏する可能性もあったでしょう。しかし、本来の作戦が持久戦であったので、各個体は個々の判断を任されるようになります。ですので必然的に持久戦に流れるようになり、用意された地下巨大ネットワーク網である”キリカルテ”に移行して行く事になります。
キリカルテは、フォレストパーク全体に密かに張り巡らされた地下網なのですが…ロロア達の爆撃や、ロボ達に意図的に寸断され、単独豪になったものもありました。
(中略)
アメルア共和国の誤算は、ZMシリーズの並外れた耐久力と、職場を守る強い責任能力を甘く見ていた事でした。
主民主義国であるアメルアの兵士達は、フォレストマンが逃亡ないし、破壊されれば戦闘は終結すると考えていましたから、これは兵士達の士気に影響し、政府不信に繋がる物でした…」
後の『キリカルテの戦い』は、こうしたZMの責任能力によって引き起こされた戦いだった。
アメルアの兵士達は泥沼の戦争に疲弊し、マット師団やZMシリーズの独特な戦い方に混乱する事になるのである。
───────
私は十二単を引き摺りながら、王笏と言う金の延べ棒を持って甲板が一望できる廊下を歩いていた。
五重塔は撤去され、より戦闘に特化した甲板や出撃ドックに改造したのだ。
キュアーーーッ!!
上空から悲痛な声がして、傷ついたバイパーイーグルスが不時着する。
「火を消せ!!」
「救護班急げ!!」
「乗組員を下ろすんだ!!」
慌ててウィング達や整備士のクルーメカニロボが駆けつける!
バイパーイーグルスがお辞儀するようにコックピットが開くと、充満していた煙が舞う。
「大丈夫か!?しっかりしろ!」
私も思わず甲板に出るシールドを開ける、すると油と合成シリコンが焼けるような強い刺激臭がした。
アメシストの女中が駆け寄り、私に注意する。
「ロロア姫!誘爆の危険があります!どうか下がってくださいませ!」
「大丈夫です!」
「ロロア姫!!」
医療用メカニロボが傷ついたウィングを引っ張り上げると、ウィングの着飾った宝飾品をレーザーでカットする。
「破片が深くまで突き刺さってイマス・・!ここでオペをシマス!」
医療用メカニロボが甲板の隅にウィングを運び、他の部隊がバイパーイーグルスに消火液を浴びせる。
負傷したウィングがメカニロボを押し退け、私を呼んだ。
「ロロア・・・姫」
「敵の拠点にやられたの!?場所は?爆撃するわ!」
「いいえ・・ZMの・・ゲリラ部隊です・・」
「ゲリラ部隊!?」
「最近の戦い方なのですよロロアちゃん」
するとシールドを開けたアウルがやってきた。
「どういう事?」
「頭脳の無くなったZM達は、元にあった地下壕を駆使し、縦横無尽に攻撃を仕掛けて来ています」
「アウル!どういう事?私達は1年に渡って敵の拠点を破壊してきた・・!なのに、まったく状況が好転しないのはなぜ!?」
「敵も賢いですから・・。マッド師団の目的は、戦闘を長引かせてメルヴィアを疲弊させる事」
「あぶのうございます!ロロア姫!!」
キュアーーー!!
アメシストの呼びかけに私が振り返ると、上空のバリヤーを解いて入り込む炎上したバイパーイーグルスが甲板に頭から突っ伏した。
「お下がり下さいロロアちゃん」
バイパーイーグルスが爆発し、アウルが翼で爆風から守ってくれる。
炎上するバイパーイーグルス。
私は悲しくなり、王笏を負傷したウィングに渡した。
「!?ロロア姫!このような高価な物を良いのですか!?」
「うん。貴方はよく頑張ったわ・・生きて戻って来てくれて有難う。よく休んでね」
「有難き幸せに御座います・・!!有難う御座います!!」
私は作り笑みをしてその場を去った。
爆発音とウィングが歓喜する声・・。
廊下に並ぶ黄金。
豪華絢爛にあしらったホワイトスペクター。
その中を、アウルと私とアメシストと歩いた。
口を開いたのはアウルだ。
「ロロアちゃん、これから────」
「爆撃して」
「は」
「バイパーイーグルスが攻撃を受けた一帯を爆撃してよ」
「・・それはできません」
「なぜ?」
「迂闊に出撃してしまえば、急を要する爆撃要請が疎かになります」
「じゃあ、ストライクホークスを───」
「目標が分からない場所の爆撃は無意味に等しいでしょう。また、ウィング達を危険に晒すリスクが高まります。それは出来ません」
「アウル!?」
「は」
「味方がやられたのよ?貴方はクレジットが無いと攻撃出来ないの!?」
「無意味なのです。ロロアちゃん」
「でも敵がいるのに?」
「今から出撃しても敵は地下深いキリカルテです」
「キリカルテ・・!!」
「きゃっ!!」
私は頭にきて、バスターで廊下に無造作に置いてあった王冠を撃ち抜いた!
「地下に潜っては攻撃が届かない!!」
「ロロア姫、少し落ち着いてください・・。お言葉ですが、アウル様はロロア姫に意地悪を申している訳ではないのです。・・それどころか、ロロア姫の気が済むまで爆撃を行なっているのですよ!」
「わかってるよ・・!!わかってるけど・・!!一体いつになったら平和がくるの!?私はいつ帰れるの?」
「ロロアちゃん・・」
「ロロア姫」
「なに?」
私が憤ると、二体はバツの悪そうな顔をする。
「ロロア姫、お言葉ですがメルヴィアのレベル1市街地に降りるにはパスポートが必要なのですよ」
「え!?パスポート!?」
アウルが気まずそうにアメシストを見て、アメシストは悲しい顔をした。
「なに?どう言う事?」
「その・・ロロア姫・・」
「ロロアちゃん。君はもうメルヴィアの国民じゃないのです。
『自由アメルア兵』として主民主義国アメルアに仮亡命している立場なのですよ」
「えええ!!」
──────
「あそこだ間違いありません。レーダーには移りませんが、超音波スキャナーの結果、ホワイトスペクターで間違い無いでしょう」
「ロロアちゃん…!ママ…!!」
暫くするとアルミの雲の合間から輝く巨大な白鳥が目視できるようになった。
ロロアの父であるカイン・メリアスが飛行モードのサポートカーから外を見る。
運転しているのはチームガンバの作戦用アステロイド アベルと、同じくチームガンバの隊員のテリンコだ。
チームガンバブルーの青い外骨格と目を隠すアイバイザーをしたアベルが言う。
「本当はミュラー大統領やダーパ作戦長にも来て欲しかったのですが仕方がありませんね。ロロアちゃんを下手に刺激しては怖いですから・・」
「ロロアちゃんはそんな凶暴な娘ではありません」
テリンコが言う。
「でも、カイン博士。今はロロアちゃんは原初の火を最初に使用したアステロイドとなったのも事実です・・。」
「それは・・おそらくアウル達に洗脳されているのでしょう・・。ママとの通信が途絶えたのが気掛かりですが・・私はロロアちゃんを信じています」
「カイン博士?もしもロロアちゃんが口を聞かなかったらどうします??」
「へ??」
「ママとの作戦を無視してストリームマンと一騎討ちを挑み、ホワイトスペクターを自ら向かわせている・・きっとロロアちゃんは一筋縄ではメルヴィアには帰らないわ・・」
「バイパーイーグルスがアクセスを求めています!!」
アベルが言い、遥か高高度で一機のバイパーイーグルスが翼を広げて回っているのが見えた。
「私達をスキャニングしようとしているわ」
「手を上にあげよう・・スパークライフルを床に。ジェネレータは外した状態に」
暫くすると直線上の電子パルスが照射され、サポートカーを隈なく行き来する。
「・・許可が降りたようです。ホワイトスペクターと同機。操縦権を渡します」
操縦がオートパイロットに切り替わり、みるみるうちにホワイトスペクターとの距離を詰めて行く。
「あそこにバイパーイーグルス・・あそこにも・・」
テリンコが呟き、空中で包囲されている事に気がつく。
「“おかしな真似はするな”って事か・・」
カインが呟く。
甲板には数機の戦闘機が羽を休めており、対戦闘機用のミサイルが配備されていた。
「データによりますと、ストリームマン亡き後にロロアちゃんが改装を依頼したとの事です」
アベルが解説する。
「戦闘に特化した形に?」
「ええ。本来は五重塔や屋敷。庭園や舞台があったのですが・・」
「あそこにあるのは??」
カインが避雷針に刺さったツェッツの亡骸を指差す。
アベル:「あれはストリームマンの指示のようです。データによりますと、ストリームマン自体、こうした独裁的な行動が多く、あまり部下から好かれて居なかったようですね」
テリンコ:「よかった・・あれはロロアちゃんの手ではやっていないのね・・ん?あれは・・」
テリンコが甲板の隅に置いてある石塔を見つける。
アベル:「あれは・・チームガンバや、ここで散ったロボ達の供養塔だそうです・・」
サポートカーが甲板に着陸すると、数体のウィングが通路に並び、スパークライフルで通路を作った。
すると僧侶姿の小柄のメカニロボがやってきた。
「・・ようこそ、ホワイトスペクターへ。スパークライフル、ピストルなど武装をお盆にのせて下さい・・ご協力感謝します」
メカニロボが深いお辞儀をしカインやテリンコ達を通した。
通路を暫く歩いたが・・ロロアは謁見の間にはいなかった。
しかし、最初に見つけたのは廊下で白くなったぬいぐるみだった。
「あっ!!ママ!?ママなのか!?」
「パパ・・」
カインが駆け寄り、ぬいぐるみの“ママ”を抱き起こす。
「白熊になっているのはなぜだいママ!?」
「・・・・」
「ママ?」
「・・・ロロアちゃんが全てを知ってしまった・・メリルを助けた時よ・・アルガ(トオル)から密かにデーターを貰っていたみたいなの・・」
「な、なんだって!?」
「私が・・カナコである事も知っている」
「ロロアちゃんは・・どこまで知っているんだ?」
「・・・分からない・・少なくとも・・」
「少なくとも・・?」
「私とロロアちゃんとの絆は・・なくなってしまった・・」
テリンコが息を呑み、アベルを見る。
アベルは肩をすくめて‘’どうしたらいいかわからない“と言うジャスチャーをした。
隔壁のハッチを開け、かつてモニタールームがあった場所にロロアはいた。
いまは主民主義国の財宝が並べられ、その中央のホログラムが映し出される巨大な円卓に、とても不釣り合いなバトルドームが置かれていた。
バトルドームは頂点にある穴からパチンコ玉を入れて、下にある逆すり鉢状の山の頂点に落ちてきた玉を、自分の陣地の左右にあるフリッパーで弾いて敵の陣地に入れるゲームだ。
4人プレイができるのだが、必然的に誰もいない陣地に玉が集まり・・。
ロロアは恨みがましくカインを見て。
だれもプレイしていないゴールから、パチンコ玉を掬い上げて、上からジャラジャラと注ぎ入れた。
カインは静かに空いている椅子に座るとバトルドームをプレイした。
暫くの沈黙の中、フリッパーが玉を弾く音と、鈴に当たる軽快な音が響いた。
──────
「それじゃあ、全部話してもらいましょうか」
バトルドームが終わると、私は機材が入っている長持ちに足を組んで座った。
バトルドームは、私が考えた嫌がらせだ。
アウルもアメシストも最初はよく分からなかったようだけど・・私が説明すると最後は共感してくれた。
「何を説明しなければいけないんだい??」
パパが聞く。
「このバスターの事・・。ママの正体・・。マット博士。メルヴィアの国籍の剥奪・・。お父さんの記憶喪失。どこから説明してくれるの?」
私が言う。
「・・分かった。全て話すよ。ママ、来てくれないか」
「うん。ごめんなさいロロアちゃん・・悪意は無かったのよ・・ごめんなさい・・ごめんなさい」
「謝るならプログラミングで何とでもできるわ」
私は腕組みをして吐き捨てるように言う。
パパはママを抱き寄せようとし。
(その資格は私には無いわ・・)と小さく呟いてママは拒否をした。
「ロロアちゃん・・僕が記憶喪失だと言ってすまなかった。ロロアちゃんにストリームマン討伐に専念して欲しかったのと・・完全な記憶として復元できて居なかったので説明をやめてしまったのだ」
「・・うん」
「さて・・どこから話をしよう・・。ではまずそのバスターの事だが。これは僕が共民主義国の分断中のコーディアスで作っていたんだ」
「これを??””お父さん””は共民主義者なの・・??」
「いや・・。少し難しい話なのだが・・僕は共民主義者ではない。マット博士をリーダーとする研究チームが、西コーディアスのエスタガレー・サーダ将軍の出資で働いていたんだ」
「なぜ!?」
「皆を救いたいからさ・・!見てごらんロロアちゃん」
私はパパに促されて外を見る。
そこには荒野に一直線に並んだアメルア軍の装甲車がいた。
「・・・あ。死んでる」
しかし、装甲車は進軍しないまま留まっており、よく見ると側面が黒く焦げていて炭化した人間が転がっていた・・。
「キリカルテから奇襲を受けたんだ。しかしロロアちゃん。彼らは他の空挺団や援軍の助けがあれば防げたんだ」
「じゃあ、なんで死んだの?」
「消耗品だからさ。」
「消耗品!?」
アウル:「ミスター・カイン。それは違いま────」
「違くはないだろう??君達、主民主義者達は人員や物資を大量に送りつけて、政治的に優位に立とうとする。この下で死んでいる兵士達も、メルヴィアが金を出して要請したペープス達だ(ペープス:ペーピィー。主民主義国で使用されるVRやBBS(脳内ダウンロード)で訓練されただけの未熟な兵士達・または実戦経験の無い元民間人の兵士達)。
湯水の様に動員され、虫ケラの様に死ぬ。メルヴィアが大金を出す以上、彼らは買われ続け消費されていく命だ・・。
ロロアちゃん、アウル氏、あれを見てくれ」
私とアウルが外を見る。
そこには塹壕の中にたくさんのアメルア兵の死体が隙間に詰まるように死んでいた・・。
「アメルア軍は軍事AIが統括していて『塹壕まで進軍せよ』と指示されると永遠と同じ指令を繰り返すんだ。一波が塹壕で死ぬと、後部にいる二波が塹壕まで進軍する。
二波が塹壕で死ぬと三波が来る。結果、塹壕内は死体の山になり、こうした光景が生まれるんだ。私はそんな兵士達を安心させる為の“”見かけだけの軍医“”だった。軍医自体に思想による差別や壁を隔てるのは許されていない。だからマット博士率いる軍医チームは数々の戦場や病人に、失ったパーツを供給し続けた」
「うん」
「そして、共民主義国のエスタガレー・サーダが私達に依頼したんだ。『思想をそのままに人間からロボットに変換はできないものか?』と。初めはロボ化したパーツの簡単な強化だった。しかし」
アウルが聞く。
「僕が言うのもアレだが・・戦闘用ロボットは使い物のにならなかったのですか??」
「戦闘用ロボはコストがかかりすぎるし、捕虜として捕まった時に洗脳される危険性がある。それに・・」
私はパパを見た。
「時に人間は、ロボット以上の残忍性と、執念深さを合わせ持っているんだ。君達のようにクレジットや単純なプログラムではない、“”正義“”と言う名の残忍性を・・。僕はサーダ将軍の非合法とも言える被験者である“”同輩達“”を使って研究と強化に没頭した」
「パパが所属していたのはマット博士の率いる『M号部隊』ブルーシグナルズ・・」
私が呟き、パパとアウルが私を見た。
「お父さんはブルーシグナルズを実験台にして人間をロボットにしていたのね」
「“実験台”と言い出したのは主民主義の東コーディアスの言い方・・いや・・そうだな・・当時、僕も狂って居た・・否定はしない・・。
とにかく僕はクライアントから資金を供給してもらい“”戦争を終わらせる方法“”を模索し続けた・・。
僕らは
そして産み出された最強の武器。ジェネレータの概念がなく、高火力な兵器・・それがこのバスターだったんだ。
私は早速、ブルーシグナルズの強い志を持った兵士にバスターを装着させたんだ。それがカナコ・・僕の思想に誰よりも賛同してくれた人だった」
「・・・」
「しかし、バスターはカナコの生命エネルギーを吸収しだした・・!僕はカナコを救うべく記憶のバックアップを取り、処置をしていた・・が」
「主民主義国 西コーディアスが攻めてきた?」
「そうだアウル氏。君も参戦したコーディアス解放戦線だ。ブルーシグナルズの大半は壊滅。僕らチームは研究の情報と引き換えにメルヴィアに亡命した」
「ママとは何処で知り合ったの??」
「カイナ・メリアスはコーディアス出身の歌い手であり、共民主義を実現させようとメルヴィアで歌い手をしていたんだ。メルヴィアは思想の自由があり・・僕らの内部工作でマット博士が大統領にしようと内部工作が始まった」
「なんとしてもメルヴィアを共民主義国にしたかったのね」
「ああ。僕も若かったから・・それに、同じく内部に潜ませたブルーシグナルズの残党、トオル達が居たから・・・しかし、ここに来て大きな誤算が生じる」
「メルヴィアに共民主義が根付かなかった」
「そうだアウル氏・・。まったく、これには驚かされたよ。メルヴィアはコーディアスと比べて裕福であり、お互いを助け合う根本的な共民思想が根付かなかったんだ」
アウル:「共民は貧困者の思想だ」
パパ:「さすがは主民主義のアステロイド・・」
アウル:「どういたしまして」
「話を戻すが・・メルヴィアの空気は、いつしか僕から思想の実現を失わせたんだ。サーダが暗殺され、ほどなくして西コーディアスが滅亡。コーディアスは主民主義国コーディアスとして再建された。
メルヴィアに密入国したブルーシグナルズのロボ達は『来る時が来るまで』機能を停止して歴史舞台から消え。私はカイナとロロアとの生活を謳歌していたんだ。・・過去の野望は、私の贖罪に変わった。
しかし『過去の精算』は、私に安息を与えてくれなかった。かつてのブルーシグナルズ。
いや、それ以前の青派の若者達である””マイキー””ヒサヒコ””が私にコンタクトを取ろうとしたのだ。
過去の遺物として忘れ去られたバスターを持ってな。
僕ら研究者に、揺さぶりをかける為なのは明らかだ。
しかし、そこでバスターが暴発し。
僕たちは吹き飛ばされた」
「・・お父さんは、マイキーとヒサヒコに会ったの?」
「いや。ママが君を心配して予定より早めに帰ったんだ。僕らを乗せた車が、メルヴィア音楽堂前の道路を通った瞬間、対向車線を走ってきたマイキーとヒサヒコの乗った車が爆発した」
「なぜ?」
「爆発した理由は分からないが、上げるとするならバスターが意志を持って自らのエネルギーを解放したとしか・・」
「・・・そして───」
ママこと、ぬいぐるみのカナコが続ける。
「カイナ・メリアスは亡くなったわ。ロロアちゃんも、カイン・メリアス氏も瀕死の重症だった。カイン氏はカイナとロロアちゃんの事を必死に叫んでいた。
私は、この人が壊れてしまうと思った。だから・・」
「ママに成りすましたって訳ね」
「そんな事言わないで、ロロアちゃん・・!私は───」
「ブルーシグナルズのあなたがメルヴィアに居てパパを助ける!?そんな都合の良い話『命の恩人です』なんて言える訳ないじゃない!!」
ヒュルルルルル・・・ドン!!
いつしか夕陽が窓から射し込み
私は睨みつけるように窓を見た。
Z Mのゲリラ部隊が対空砲を撃っているのだろう。
パパとカナコが心配そうにアウルを見る。
「心配ないよ。あんなショボい攻撃じゃ、ホワイトスペクターに擦り傷一つつけられない・・話は終わりよ」
ヒュルルルルル・・ドォン!!!!ドン!!
一際強い爆発が轟き、私は少しだけよろけた。
「・・ロロア姫。少し休まれては??」
「それは、ゲスト達に聞いて。私は・・うっ」
「ロロアちゃん、少し休みましょう。そうだディナーにされては??」
「アウル?」
「はっ」
「対空砲がうるさいわ。爆撃して頂戴」
「おおせのままに」
私は身体の関節の痛みを堪えながら、なんとか平常でいようとお父さんを見た。しかし、ホワイトスペクターから射出される爆撃の衝撃が身体に響き、苦しくて身体を摩った。
「ロロアちゃん。これから先、まだこんな無用な爆撃を続けるのかい?」
「いいえ。もしも効かないのであれば・・私自ら地上に降りてフォレストマンを倒しに行くわ!」
「その身体でか?君の身体は、ストリームマンとの戦闘に疲弊し、1年近くメンテナンスしていないんだ。十二単で隠しても分かる・・ロロアちゃん、身体が動かないのだろう??」
「うるさい!汚い手で私を触らないで!!」
「ロロアちゃん頼む。身体を詳しく見せてくれ。僕は君が心配で・・!」
「触らないでよ!!私は大丈夫だから・・!!あっ」
十二単がはだけ、私は硬い床に倒れ込んだ。
突いた左手を見るとヒビが入り、青い光が漏れていた。
「あああ・・ロロアちゃん!!」
「ロロアちゃん!!」
パパとカナコが近寄る。
「こないで・・!!医療用メカニロボを呼んでよ・・!」
「君の身体は複雑なんだよ。僕にしか治せない・・!ママ!解熱剤を!!」
「はい!」
「触らないで・・!」
胸にも亀裂が入り、光が漏れる。
瞳の中の表示にはシリアルコードのログが狂ったように流れている。
「・・私も・・トオルやみんなの犠牲の賜物なの??」
「・・・。僕はカインナンバーズとして全身全霊を込めて仕事をしている・・信じてもらえないかもしれないけど、人体実験ではないんだよロロアちゃん・・」
カナコがパパを見る。
“カナコ”は“ママ”と偽っていた時に『過ち』や『人体実験』と言っていた・・。
カナコは・・一体どちら側の人間なのだろう??
「いいね?ロロアちゃん・・休んでくれ」
「・・・・」
瞳の中のログが減り、意識レベルの低下を示す警告が出る・・。
パパが何かを投与して、そのシグナルも消え、やがて静寂の中で暗闇が訪れた・・。




