原初の火
ロロアの乗るホワイトスペクターが上空を飛ぶ。
その地上ではアメルア共和国の兵士達が進軍し、ロボ達の行動を偵察していた。
ロロアは驚くべきスピードで進撃すると、ついに先の尖兵の偵察隊である『ヤタガラス』の頭上まで到達したのだった。
「よっこらせと・・あーー、身体が軋む」
古い型のZMが運送用のステゴサウルスに収穫した枝豆を摘みながら言った。
ガイアコアを奪われたフォレストパークは、その大陸を自在に変えながら無秩序の気候を作り出していた。
外界を遮断する鉄の雨とアルミの嵐。
気候変動で砂漠化し、その周辺をサバナ地帯が回り、やがてガイアコアが外れた中心にジャングルと湿地帯が広がっている。
ZM達はマッド師団と砦や防衛陣地を築きながら、元々やっていた職を思い出すように思い思いの生活を楽しんでいた。
「ちょっと休みにしようやー」
「うぃーー」
「あいよー」
「オ茶ヲ、ドウゾ」
樽型の医療用メカニロボが、頭に乗ったエナジー液を配り、5体のZMが畦道に座り込んだ。
「いやー。ここは温かいですな」
「温かい?気候が・・ですか??」
「いえいえ。ここにはメルヴィアには無い物があります。ロボ同士が温かく、そして労働を分かち合う者達がいる・・充実感が違うんです」
ZMがエナジー液の入ったコップで自分を映す。
「確かにな。メルヴィアにいた頃は同じ作業、同じ風景の繰り返しで・・・今日が明日でも、昨日でも変わりは無かった・・。俺らは意味のない競争を強いられ、自分の身体が壊れると消耗品のように破棄されたんだ」
「ええ。しかし、この幸せが続くかどうか」
「俺らが幸せを作るんだ。これから先は」
「ん?」
すると、曇った待機から爆発音がし、一機の戦闘機が暴れ回るように飛来した。
ZM達は慌てて伏せると空を見る。
「あ!あれは!!」
「ガン・スパロウだ!!海岸の六角楼の砦の方からだ!!」
「傷ついている!」
ガン・スパロウは畑を巻き込みながら土ぼこりを立てて墜落すると、チェン!チェン!と悲痛な鳴き声をあげた!
ZM達が慌てて駆け寄る。
「これは酷い!!だれかエンジニアはいないのか!?」
「みんな単純作業用メカニロボですよ・・!」
「本部に知らせるか!?」
焦げ臭い煙が立ち込める中、ガン・スパロウが苦しそうにハッチを開け機能を停止する。
立ち込める煙が無くなり、そこには右肩を撃ち抜かれて息が絶え絶えのウィングが乗っていた。
「大丈夫か!!しっかりせい!」
「六角楼が陥落したと『ナルキリア』に伝えてくれ・・ホワイトスペクターが敵の手に渡って向かってきていると・・」
「あっ!!」
ZMが見上げると、アメルア共和国の爆撃機、メガネウラが羽音を立てながら編隊飛行するのが見えた。
「あれはアメルアの爆撃機!!」
「爆撃機が飛んでいる!!」
「それってつまり・・!」
「報告じゃ!!ナルキリアの砦に報告をするんじゃ!!」
「あ・・あぁ・・ああ!大変だ!大変だぞぉ!」
ZMの1体は半分腰を抜かしながら走った!
危機を感じたのかステゴザウルスが民家に走り出し、ZMがそれに掴まる。
「ひぃい!大変だ!!地主の民家まで頼むぞ!!」
4体のZM達が戦闘機のウィングを救出しようとする。
それを、ZMはステゴザウルスの腹にしがみついて心配そうに見ていた。
「はぁ、はぁ!!」
田畑を抜け、納屋に降りるとZMは地主の居る母屋に走って戸を叩いた。
「ごめんください!!ごめんください!!」
暫くすると玄関に気配がし、白い陣羽織と錆が目立つ年季の入ったZMが戸を開けた。
「おぉ、若いの。一体どうしたんじゃ?」
「大変なんです!!電話を借りてもいいですか!?」
「あぁ。かまわんが」
「おじゃまします!!」
ZMは靴の底にあるゴムユニットを外すとドタドタと座敷に上がった。
奥の和室にはニュートリノ発電所で散っていったZMを祀った小さな祭壇とちゃぶ台があり、そこにティッシュと黒電話があった。
「え・・えっと・・!」
ZMはちゃぶ台のティッシュの裏に書かれた電話番号にダイヤルを回す。
暫くするとセロテープを貼ったような粗末な音声が出た。
『はい。こちらナルキリア本部。事故ですか?救急ですか??』
「え!?えっと・・!!どっちだろ!?あっ!!“”ハシル トンボ”“!!」
『”“ハシル トンボ”“!?つまり、敵の爆撃機を見たと!?』
「はい!!そちらに飛んでいくのを見ました!しゅしゅしゅーって!」
『それは大変だ!!いやね?六角楼から連絡がないからおかしいなって話はしていたんですよ!!分かりました!上様に報告します!』
「うわ!」
外で爆発音がし、ガタガタと障子を揺らした。
それから複数のスパークライフルの連射音。
いつの間にかナルキリア本部の連絡は切られ、代わりに『トントンキー』と呼ばれる信号のみが発信されるのみとなった。
これは緊急連絡信号であり『連絡があるまで待機せよ』を意味していた。
メガネウラを目撃してからの電撃的な早さに、ZMはただならぬ恐怖を感じた。
「はぁ・・はぁ・・一体何が・・!?」
「(ぐおあ!!)」
銃声と玄関口から悲鳴。
それに伴って扉が倒れる音がした!
「あっ!!地主の爺さん!!」
年季の入ったZMが玄関の扉ごと赤黒い循環液を流しながら倒れているのが見えた。
「は・・早く・・逃げるんじゃ・・!ペケポーが来た!!ワシらを殺しにきた!」
「ひいい!!」
ZMはドタドタと和室に避難すると、床の間に飾ってあったK−1スパークライフルを掴んでジェネレーターを装填し、息を潜めた。
メガネウラより細かいスズメバチの羽音。
そして爆発音が鳴り響き、障子の向こう側がオレンジに光るのを見た。
不気味な静寂と共に、受話器のトンキーの信号が静かに響く。
「く・・くそう・・!誰かいないのか・・!」
ZMは電波を飛ばして他のZMと通信を試みる。
しかし、その時だった。
「・・・!!」
障子を破ってアトムナイフが飛び出し、ZMの額に突き刺さった。
「が!!あ・・!!」
ZMは倒れ込み、あっけなく絶命した。
「オールクリア」
「オールクリアだ。ふぅー」
それはアメルア共和国の尖兵、ヤタガラスだった。
「命中よシルス。一発で仕留めた!一発で!」
隊長であるベネリはシルスを褒め、握り拳を突き合う。
ベネリ:「あなただけで何体目?」
シルス:「10体。私にかかればこんな奴ら屁でもない」
シルスは額に突き刺さったアトムナイフを抜くと、ZMのボディで拭いた。
「安全確保!敵のエネルギー反応計測中!」
「その必要はない。音がしないもの」
心配性のアルネリアと、狙撃手のニキータもやってきて縁側の障子を開けると土足で上がった。
「大丈夫ね?みんな、怪我はない?ベネリ、セバスチャンに報告を。愛をこめてね」
最後に衛生兵のミラルルが上がる。
アルネリアは肩に下げてるポーチをちゃぶ台に置くとドリームパクトと言うクリスタルのコンパクトを開いた。
コンパクトの鏡が光り、通信される。
『作戦本部よりヤタガラス隊。作戦本部よりヤタガラス隊。
聴こえるか??オーバー。こちらは作戦本部・・君たちの夢を叶える執事だ。オーバー』
ベネリが中央のクリスタルのボタンを押して応答に答える。
「聴こえるわ!!セヴァスチャン!!」
『OK!!お嬢さん方!!チェックポイントに到達したな。点呼を取るぞ!!』
『隊長 ベネリ!!』
ベネリ:「サー セヴァスチャン!!」
『良い返事だ!隊長に相応しい。優等生だ』
『攻撃手 シルス!!』
シルス:「へーい。セヴァスチャン」
『うむ。相変わらず尖ってる。尖った物は妹の次に好きだ。1番はミートパイだがな』
シルス:「死ね」
『狙撃手 ニキータ!! ・・・ニキータ??』
ニキータ:「イエア(手を挙げる)」
『ニキータ、もう少しやる気を出せ。それが君に課せられた任務だ』
ニキータ:「イエアッサー」
『通信手 アルネリア!』
アルネリア:「サー セヴァスチャン! 通信状態、周囲の脅威、オールクリアです!!」
『もう少し落ち着きたまえ、もたないぞ?』
『衛生兵 ミラルル』
ミラルル:「サー セヴァスチャン 私から愛を込めて」
『ミラルル!変な疑いがかかるからこう言う言い方は辞めてもらえるかね?』
ミラルル:「ふふふ、辞めませーん」
『まったく・・困った子だ』
『コホン・・。みんないるな!?
お嬢様方、状況報告を頼む』
ベネリ:「ヤタガラスは予定通り“ナンバー・エイト”を制圧しました。このまま進軍して偵察し、ナルキリアに向かいます」
シルス:「あっ!!誰か逃げたぞ!」
勝手口から音がし、年季の入ったZMが生きていたのを知る。
アルネリア:「もう!だからエネルギー反応を測定すれば良かったのに・・!!」
ニキータ:「うるさいな。あんな古い型じゃ、エネルギー反応も出ないわよ!」
シルス:「追いかけるか??ベネリ?」
ミラルル:「あんだけ撃たれていたら遠くへは逃げれないと思うけど・・?」
ベネリは暫く考えた。
『なにかトラブルかい??』
ドリームパクトの声にニキータはベネリを見る。
ベネリ:「なんでもないわ、セヴァスチャン。アルネリアがヒステリを起こしただけ。問題はないよ」
アルネリアが反論しよう口を開こうとしてニキータが制してニヤッとする。
『まあいい。話を戻す。君達に良い情報と悪い情報が2つある。ヤタガラスの目的はなんだったかな?』
ベネリ:「ナルキリアの戦況報告です」
『正解だが、違うぞベネリ!』
ミラルル:「猛烈な愛を叫び、薔薇の花を咥えてくる事?」
『ミラルルよ、その情熱を愛国心としてアメルアに使ってくれ』
ニキータ:「メルヴィアの尻拭い」
『イエア!そうだ!!まぁ、悪い情報は、その事なんだが。我々はアメルアを偵察する必要が無くなった』
シルス:「はぁあ!?」
『まぁ、諸君の言いたいことは分かる。君達、お嬢様方が謂わゆる“”バグズ“”や“”コルコド“”やら名前を付けて、もっと遊びたいのも分かっている。しかしだな、遂にメルヴィアを本気にさせたのだ』
ミラルル:「私たちのティゲラルー(アメルア共和国にある卑猥なネットスラング)な動きに興奮したって事?」
『つまりそう言う事だ。我々の動きに焦ったバグズは、ヤル気のなかったメルヴィアなら強引にベットに誘い込めば口説き落とせると思ったんだ。
そして我々アメルアをどうにかこうにか叩き潰そうとした。
しかし、それはメルヴィアの戦いの女神としての激しさをかえって呼び覚ましてしまったんだ』
ミラルル:「それはすごい!」
『どうも。そして、そのなかでも、1番ブチギレた女の子が居た・・それは』
「「ロロアちゃん!!!!」
アルネリア:「私達と同じカインナンバーズの!!」
ベネリ:「姉妹!!」
『そうだ!!君達の愛するロロア・フローラウス・メリアスさ!!彼女は攻めてきたバグズの戦艦、ホワイトスペクターを奪うと、そのままUターンして海岸を急襲した!頭のネジがぶっ飛んでるだろ!?』
シルス:「ワォ」
シルスがニヤリと笑い、手をあげる。
ベネリはドリームパクトに喰らいつくように質問した。
ベネリ:「ねぇねぇセヴァスチャン??そもそもロロアちゃんは私達の存在をテリトルしているの??(※存在を認知・存在を理解していると言うアメルア語)」
『あーー、それは分からない。彼女がどこまでテリトルしているかどうか・・いや、広い範囲で言うならば、確実に認知はしていると思う』
アルネリア:「データベースはロロアちゃんも見ることが出来るし、何かしらのテアスタンス(知ること・知るために探求することのアメルア語)はしていると思うわ」
ベネリ:「じゃあ、私達を知っていて、此処に来ている事を知っている事もゼロでは無いって事?」
アルネリア・セヴァスチャン「『そういうことになるね」』
ベネリ:「・・・・!!!!」
ベネリは感動のあまり指を咥え、泣きそうな顔をした。
ベネリ:「つまり私の為に戦ってくれてる可能性もゼロでは無いってことでしょ!?!?」
シルス:「それは飛躍しすぎ・・うっ!」
ベネリがシルスの両手を握る。
ベネリ:「ロロアちゃんは私達を深くテアスタンスして、心の底からテリトルしている・・!!だから、白鳥に乗って駆けつけてくれているのかもしれない!!その考えもできるよね!?いえ!その方が全ての行動に納得が行くと思わない!?シルス?」
シルス:「あ・・・。あーー。そうかも」
ミラルル:「うふふ。そう考えた方が幸せかもね」
アルネリア:「まぁ、プラスに受け取るのは良い事だわ」
ニキータ:「ベネリが言うならそうなんだろ。ベネリの中ではね」
グォオオオオーーン!!
アルネリア「な、なに!?巨大な高エネルギー反応を観測!!」
その瞬間、凄まじい飛行音が家中を揺らした。
ニキータ:「なんの音だ!?アメルアの飛行機じゃないな!?」
シルス:「まさか!?」
『さぁ、始まったようだ!縁側でパーティーだお嬢様方!!ロロアちゃんからのプレゼントだ!開けて見てごらん!?』
「え!?なになに!?」
ヤタガラスが動揺しながら障子を外し、辺りの田畑が一望できるようにようにした。
そこには優雅に羽ばたくホワイトスペクターが陽の光を浴びてキラリと光った。
おそらくこの遥かに先に、目的地であるナルキリアがあるのだろう。
ベネリとシルスはちゃぶ台に座り、他の隊員は壁にもたれるように外を眺めていた。
『君達のこれからの任務が決定した。
“ナンバーナイン”の拠点を守り、海岸から進軍するアメルア軍の師団と合流、ここを拠点とせよ。
しかる後“ロロアの花”の開花を確認し、敵の損害評価を確認、報告せよ。それまで待機。良い夢をお嬢様方オーバー』
アルネリア:「わかりましたわオーバー」
ホワイトスペクターは青く輝くと巨大な光の玉を発した。
すぐさまアメルア共和国の空軍部隊が散開し、ホワイトスペクターも上昇して回避行動をとる。
それはあまりにも呆気なく、この”ナンバーナイン“の日本家屋から見る限りでは、あっという間の出来事に感じた。
そして・・。
「「「あ!!!」」」
巨大な閃光と共に空がパッと明るくなり、それからすぐに巨大な轟音が大気を満たした!
雲が半円に飛び退き、やがて消え、その広大な明るさの中に巨大な虹の光輪ができた。
シルス:「これがロロアのクソか!」
アルネリア:「怒り!!大地を穿ち、天空を焼く怒りよ!!」
ニキータ:「これはすごい・・初めて見る!!」
ニキータは猫耳のヘッドギアを外して呆気に取られ、ミラルルはベネリの肩にそっと手を置いた。
轟音はゆっくり、そして確実に大きくなり、巨大な光の帯が鍋にぶちまけたスパゲティーのように広がり、その中でも一際巨大な光の線が上空にそそり立ち、さながら向日葵が咲いたように巨大で膨大なエネルギーが巨大な大輪の花のように咲くのをこの目で見た。
それは“原初の火”と言う禁断の破壊兵器の威力を惜しげもなく見せつけ、それは味方であれロボットであれ震え上がるものだった。
ベネリ:「私の中でだって構わない・・会ってみたいわロロアちゃん・・こんな狂ったものを平気で使うんだもん。きっと私達の想像を遥かに超える戦闘兵器よ。素晴らしい花を見せてくれたわ」
ベネリら、ヤタガラスは大気に出現した巨大な死の花をデータに焼き付け、フォレストパークの一連の戦いが予想より早く終わるだろうと考えていた。
───────
ナルキリアは巨大な星形の砦で、その周囲にマンタ型爆撃機が着陸していた。
その爆撃機の周辺にはロボ達が蟻のように動き回り内部の武装を解体しているのがわかる。
「あれは何をしているの??」
私がアウルに聞く。
「きっと“本来の作戦”に回帰したのでしょう。空挺部隊を使わず、あくまで地上作戦で持久戦に持ち込む作戦のようです」
「あっ」
私達の前を飛行していたアメルア共和国の爆撃機メガネウラが旋回し、それに続いて戦闘機のスズメバチが追随する。
ナルキリア周辺がキラキラと光り、対空砲を撃って居るのがわかる。
すぐさまバトルスパロウとの交戦が始まり、メガネウラが火を吹いて撃ちおとされるのを見た。
「ご安心をロロアちゃん。アメルア共和国が我々を導いてくれているのです」
「あそこの村は??」
「あそこは、アメルアの呼称で『ナンバーナイン』と呼ばれているZMが作り出した村です。特に脅威は観測されていませんので進みます」
私は、モニターでホワイトスペクターの真下を見た。
一面の田園風景の中に、煙を出して不時着したバトルスパロウが見える。
制圧済みなのか、田畑を掻き分けるようにZM達が倒れているのが見えた。
「───っ!!」
私は頭が痛くなって不意に押さえた。
「どうしましたか!?ロロアちゃん!」
「・・アウル??ZMは食物を食べないのでしょ?」
「はい。メカニロボですから」
「じゃあ・・なんで────うっ」
私の中で共に踊ったZM達がフラッシュバックする。
そしてニュートリノ発電所で会話したZMー200(ニイさん)との会話も
“”「ニイさんは、最初から良い人だと思って居ましたよ。だってライフコアが青くなっているんだもの」
「コイツはいっけねーや!あははははは!」“”
「アウル??やっぱり私・・」
「どうかなさいましたか??」
「ZMと会話がしたい・・なぜこんな事をするのか・・この食糧は誰のためにあるのか・・」
「ロロアちゃん?もう作戦の変更はできません。あなたは諸悪の根源を断ち切る為に最終決断を致しました。そして私もそれに賛同いたします」
「でも・・・アウル」
「ロロアちゃん。悪の根源を撲滅するのですよ。ごらんください、ロロアちゃんの恨みを晴らすべくナルキリアに続く道をアメルア共和国の空軍が拓いてくれています・・!!さぁ!原初の火を投下いたしましょう!!きっとロロアちゃんもその破壊力に満足する筈です!!」
『投下可能空域に入りました!最終決断を!』
私は落ち着きなく顎を触り、額に手を当てて考えた。
「ロロアちゃん!!ZMの前に散って行った同胞の事を考えなさい!!そして、その身体の傷を誰に負わされたか思い出しなさい!!」
私は身体が痛みで疼くのを感じ、フツフツと怒りが込み上げてくるのを感じた。
そうだ。
ZMやマッド師団さえいなければ、みんな幸せになれるのだ!
それだじゃない・・!
未来に直面する悲劇だって、今ここで止める事だってできるかもしれないのだ!!
「ロロアちゃん、いいですね?心に愛国心を!」
「うん!お願いアウル!!」
「最終容認が下った!!艦長ロロア・フローラウス・メリアス。副館長アウル・フォン・フフルにおいて命ずる!”原初の火”を投下せよ!」
『原初の火の投下シークエンスを発動します。膨大なエネルギーを要しますので必要電源以外が落ちます!!』
コックピットの照明が消え、座敷の雪洞の灯りとモニターの明かりだけになった。
ホワイトスペクターは、四方八方から飛んでくるミサイルに回避用のチャフを飛ばしながら、原初の火の投下の期を伺った。
スズメバチが目の前で撃墜され、空中分解する。
はやく終わらせなければ!!
そして・・!
「原初の火ーーー!!投下ぁーーー!!」
巨大な咆哮と共にホワイトスペクターの嘴が開き、巨大な光の玉がナルキリア上空へ撃ち出された!
光の玉は、まるで意志があるように直角に上昇する。
『原初の火の投下を確認!!繰り返す!原初の火の投下を確認!!方位角45度に上昇し、離脱します!!重力に備えてください!』
「ロロアちゃん、体勢を低く取ってください」
「うん・・・」
強力な重力で畳についた手に力が入る。
「きゃぁ!!!!」
その瞬間、カッ!!と空いっぱいに輝き、モニターには巨大な一本の光の柱を形成した後に一気にナルキリアに直撃するのが見えた!!!!
雲が消え、地面が瞬時に干上がり、強烈な光りと共に何も見えなくなる!
ビビビビビビ!!!
ビビビビビビビビビビビビ!
『超波動フレアが来ます!!総員、衝撃に備えて下さい!!安全体勢をとり、オートパイロットに切り替えてください──!!』
私の右頬に感じるはずの無い熱を感じ、ホワイトスペクターの船体がビキビキと軋んだ。
ウィング達が”うぉお”と恐怖と驚きの声をあげ、アメシスト達も私を庇うように伏せた。
「ぐぅう!!ぐぅう」
強力な重力と衝撃波に、私達は船体に貼り付けになる。
ビキッ・・パンッ!
アメシストの腕が割れ、手を添えてあげる。
私は震えながら、ZM達と戦った日の事を思い出していた。
ゴゴゴゴゴ…。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
『作戦完了。電源を復旧させます』
一斉に電気が点き、ウィング達の安堵した声が聞こえた。
「すごい兵器ですね。恥ずかしながら、この目で見たのは初めてです」
アウルも烏帽子を被り直し、アメシストも身体を治したり、私の着物を直してくれる。
後部を映したモニターには、不気味に咲いた巨大な花が輝いていた。
その下は灼熱で…どんなロボ達も生きてはこれないだろう…。
アウルは立ち上がると興奮したように話しかけてきた。
「どうですロロアちゃん!満足いただけましたか!?この原初の火の、独創的で神々しい破壊の力を!!
キグナスの艦隊の中でも、搭載を許されたのは12艦の中でも数える程です!!
その中でも、ホワイトスペクターは機動力、攻撃力、そして美しさは群を抜いています!!
ロロアちゃん、この艦はあなたの物なのですよ!?」
「・・・」
「感動で言葉も出ませんか!?そうですとも!そうですとも!!
でもロロアちゃん!貴女の手にかかれば、全ての敵対勢力を無にし、貴女だけの世界だって創る事もできるのです!!
想像してご覧なさい!!貴女の好きな人が共に笑い、共に共存し、数万年と約束された争いの無い世界を!!
いいえ、貴女が”粛正師”となって人間を正しい世界へ導く事だって可能なのです!
いいえ、貴女が”神"となって、この星を正しい世界へ導き、時に罰を与える事もできるのです!私が貴女を導きます!!素晴らしい光景です!!」
アウルが興奮するなかアメシストの冷たい手が私の頬を触れた。
私はアメシストの手に触れながら、焼け付くされる地上を見ていた。
「アウル・・。ナルキリアはもっと兵器があって、殺伐とした場所だと思っていたわ・・でも・・そこにあるのは」
アメシストが私の頬に付いた涙を拭う。
「一面の畑と・・田園風景だった・・!私は・・みんなの“何もかも”を燃やしてしまった・・!!」




